後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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今回は短いです。


第78話

元レイフォル首都レイフォリアより、南へ数百キロの海域はグラ・バルカス帝国軍レイフォル方面総軍の哨戒圏内にある。

この海域には決まった時間に、完全武装の駆逐艦が数隻と、レイフォリアにある防衛基地からアンタレスが飛び立って共同による哨戒を行っている。

 

この哨戒を行う駆逐艦と航空機は主に、周辺海域を航行する帝国籍の軍・民間船航路の安全確保と護衛が主な任務だが、カルトアルパス戦以降、日本に派遣した潜水艦隊が全滅し、日本がシータス級にも匹敵する潜水艦を保有している可能性が高いと判断され、ここ1ヶ月近くは対潜装備の駆逐艦が警戒に当たっている。

 

 

………とは言っても、グラ・バルカスは前世界(ユグド)に於いては唯一の潜水艦保有国であり、ライバルのケイン神王国は潜水艦を実用化出来ていなかった事もあり、まともな対潜装備は無い。

 

 

 

グラ・バルカス帝国、レイフォル方面総軍所属のスコルピウス級駆逐艦『グラフィアス』は、いつもの如くマニュアルに従って、付近の警戒活動を行っていた。

 

 

 

「しかし暇だね………」

 

 

グラフィアスの狭苦しい艦橋に居る、艦長のジベールは欠伸をする。

 

 

「ソナー、付近に反応は無いか?」

 

『ありません。海流の音以外は静かなものですよ。』

 

「そうか。じゃあそのまま警戒を続けてくれ。」

 

『了解。』

 

 

報告を聞き終え、ジベールは艦長席へと腰掛け、腕時計で時間を確認する。

 

 

「時間だ。今日も何事もなし。さっさと帰ろう。」

 

 

グラフィアスは何事も無かったかのように現場海域を後にして、レイフォル方面へと去っていった。

 

 

 

 

まさかの侵入者が居るとも知らずに…………

 

 

 

 

「敵駆逐艦、ソナー探知範囲外に出ました。」

 

 

海中を息を殺して潜んでいた紺碧艦隊旗艦、伊601のソナー員の言葉に、艦橋に居た全員が安堵する。

 

 

「やはり、敵哨戒圏内の航行は神経を使いますな。」

 

「そうだな。相手がアクティブソナーを装備していない事に感謝だな。」

 

「全くです。」

 

 

司令室で前原は時計を確認する。

 

 

「そろそろ別働隊の空母からは攻撃隊が飛び立っている頃だな………よし、本艦も浮上する。」

 

「了解。浮上っ!メインタンクブロー、アップトリム5!」

 

 

伊601のメインタンクから海水が排出され、艦首を上にし、一気に海上に浮上した。続くように、他の艦も浮上する。

 

 

「各艦、航空機射出用意!」

 

「雷洋改1号機、射出用意急げっ!」

 

 

格納筒のハッチが開かれ、中から雷洋改がレールに載せられて外へと出される。

 

 

「さぁて、新世界に来て初の実戦だ!」

 

「腕が鳴りますね飛行長!」

 

 

コックピットでは大竹と宮城の二人が、久し振りの実戦に興奮していた。

 

 

「噴式春嵐に仕事取られたりはしたが、俺達や雷洋だってまだ役に立つという事を示してやるぞ。」

 

 

特に大竹は久し振りに実戦で雷洋の操縦桿を握れるとあって、前世界でのパナマ運河爆撃やホワイトハウスへの模擬爆弾投下、マダカスカル島の独軍レーダーサイトへの爆撃の時の事を思い出す。

 

 

「飛行長、先に春嵐が出るようです。」

 

 

宮城の言葉通り、伊501、502、503の3艦からは噴式春嵐が飛び立っていく。

 

 

「連中が先か………おい!こっちはどうだ!ボヤボヤしてると先越されるぜ!」

 

 

大竹が外の作業員に問い掛ける。

 

 

「今、準備できました!」

 

「よし!発動機回すぞ!」

 

 

正面の計器盤に備えられたスターターボタンを押すと、雷洋改の新しい心臓であるターボプロップエンジンが始動し、2重反転プロペラが回り始める。

 

 

「発動機、出力安定、回転数よし。発艦準備よし!」

 

 

ハンドサインで準備完了の合図を送り、カタパルト射出の秒読みが開始される。

 

 

「さぁ…蹴っ飛ばしてくれ!」

 

 

カウントが0になった瞬間、雷洋はカタパルトに押し出され、伊601から射出され飛び立った。

大竹の1号機が射出されると、続いて2号機が射出される。

 

 

「富嶽1番より全機へ!最低高度を保ちつつ、目標へと向かう!」

 

 

大竹率いる飛行隊は、レイフォル方面へ向けて飛び去っていく。

それを見送った紺碧艦隊も、潜行し海中へ姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

続く




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