後世日本国召喚 新世界大戦録   作:明日をユメミル

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第84話

グラ・バルカス帝国軍進撃の報告を受けた、アルーの警備隊と第1師団は直ちに戦闘配備に入った。

 

 

「各員配置につけ!急げ急げ急げ!」

 

 

アルーの町は広い高原に作られた町であり、町の北には海抜203メートルの丘があり、それが過去に幾度の戦いからアルーを守る防護壁の役目を果たしている。

 

ここは2年前より、グラ・バルカス帝国によってレイフォルが支配されてから、危機感を持ったムー政府によって強固な要塞として生まれ変わっていた。

 

丘を下った先には叢があり人の背丈程ある雑草が覆い茂り、そこには様々なブービートラップが仕掛けられ、叢を真上から望める丘の中腹には塹壕と銃眼があり、丘の中には迷路のような地下トンネルが張り巡らされ、そこからは高射砲や軽・重機関銃が据え付けられ下を向いている。

しかも丘の地面には大小様々な岩石が堆積し、起伏も激しいため徒歩での進撃を阻んでいる。

 

 

まさに天然と人工の力が合わさった大要塞であり、それはまるで日露戦争で日本陸軍とロシア軍との間で激戦が繰り広げられた『203高地』を思わせる。

 

 

 

「師団長!各部隊配置完了!」

 

 

 

丘の中にある司令部ではムー陸軍第1師団長の『アーレイ』大将が、報告を受けていた。

 

 

「空軍の方はどうだ?」

 

「既にリュウセイ基地からは、デン・セイで編成された飛行隊が迎撃に出撃し、こちらへ向かってきています。キールセキからも日本軍がやって来ているとの事です。」

 

「よし。各部隊には空軍が到着するまでは攻撃を行わないように通達せよ。」

 

「はっ!」

 

 

アーレイはそう命令を下し、机に頬杖をつく。

 

 

「さて……敵が来るのが早いか、空軍が早いか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、リュウセイ基地所属のエース部隊『剣閃隊』は新型機のデン・セイを駆りアルーへと向かっていた。

 

 

 

「各機に告ぐ!そろそろアルーだ!索敵レーダーから目を離すなよ。」

 

 

 

隊長の『ナギー』大尉は、プレストークボタンを押込み全機に指示を出す。

 

 

「しかし凄いなこの機体は。」

 

 

ナギーはマリンからデン・セイに乗り換えて半年が経つが、マリンとは比べ物にならない性能をもつデン・セイに驚く。

 

 

「これならグラ・バルカスの戦闘機にだって遅れは取らないぞ。」

 

 

彼を含めた剣閃隊の全員がデン・セイに信頼を置いており、同じ全金属単翼機であるグラ・バルカスのアンタレスやアンタレス改にも決して引けをとらないと信じていた。

 

 

「ん? 来たか?」

 

 

索敵レーダーが、アルーより北から向かってくる目標を発見した。

 

 

「全機に告ぐ!高度を上げろ!敵に奇襲を仕掛けるぞ!」

 

 

剣閃隊はその場から一気に上昇し、高度8000につく。

 

 

「さて……敵は何処だ?」

 

 

各員は索敵レーダーと肉眼を使って下方を見る。

 

 

『隊長っ!11時方向っ!』

 

 

部下の一人が気がつき、ナギーはその方向に視線を向ける。すると、雲の切れ目からグラ・バルカスの航空隊を発見した。

 

 

 

「まだ気付かれていないな………そのままやり過ごせ。」

 

 

剣閃隊は奇襲を成功させるため、一旦やり過ごす。

そして、敵航空隊が後方に去ったタイミングでナギーは合図を下した。

 

 

「よし!全機、奴等の背後に回り込め!回り込んだら雲を抜けて一気に奇襲を仕掛けるぞ!」

 

 

ナギーを先頭に、剣閃隊はその場で一気に反転し、相手の背後につくと、急降下を開始した。雲へ向けて突入し、一瞬だけ薄い雲により視界が濁ったが、すぐに雲を抜けると、目の前には既に敵航空隊が居た。

 

 

「奴等の喉に噛みつけっ!」

 

 

そう叫び、ナギーはスロットルレバーにある機銃の安全装置を解除し、引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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