中央歴1641年6月26日 マイカルのホテル
ムーは旭日艦隊の停泊地として規模が大きいマイカルを指定しており、旭日艦隊の将兵向けに市内のホテルを丸々1つ借り上げて、宿舎として提供していた。
その一室で、大石は持ち込んだコーヒーサイフォンとマイカル市内の店で調達したコーヒー豆を使って、コーヒーが注がれたコップを片手に空を眺めていた。
「いい休日だな……」
大石は久しぶりの休日を謳歌していた。と言っても、日中は部屋で本を読んでいる事の方が多い。
そんな所へ、室内にあった電話が鳴った。
「私だ。」
『司令、お休みの所申し訳ありません。警戒中の飛鴎とア号潜がムー本土に接近してくる不明艦隊を探知したとの事です。』
「分かった、至急そっちに向かう!」
大石は急いで着替えると、港の日本武尊に直行した。
マイカル港 『 日本武尊』
「状況はどうだ?」
大石は日本武尊の作戦室へと早足で入る。
作戦室では既に幹部と、原が待っていた
「はい。今から30分前に、付近を警戒中だったア号潜からの暗号でグラ・バルカス帝国のものとおぼしき艦隊をムー大陸北端で発見したとの事です。」
そこへ、追加の報告が入った。
「司令、敵艦隊が2分したとの事です!」
机の上にあった地図を広げて、イシュタム艦隊の航行ルートを線に描き、大陸南端で二つの線に分ける。
「敵は何を考えているのでしょうか?」
「恐らく連中の狙いはオタハイトとマイカルへの攻撃だろう。2分した敵艦隊の戦力から見るに奴らの目標は………オタハイトだな。」
「敵は何故この時期にこんな事を……」
「それは分からんが、これを考えた奴は軍事には疎い奴だな。だが、敵がこことオタハイトに向かってきているなら迎え撃つまでだ。直ちにムー国にこの情報を伝えろ。」
「了解!」
旭日艦隊からの情報は直ちに、ムーにもたらされ、統轄軍本部は、首都防衛艦隊に出撃を命じた。
首都防衛艦隊が出港していく中、オタハイト港に一隻の巨大戦艦、バルチスタ沖海戦で鹵獲されたヘラクレス級戦艦コルネフォロスを修復しムー海軍所属艦として配備された戦艦『ラ・ナガト』が停泊していた。
航空戦艦として改造が計画されていた本艦は、ムー本部は、グラ・バルカス帝国の艦艇と正面から戦える艦艇を欲していたため、航空戦艦から通常の戦艦として修復された。その外観はオリジナルから大きく変化し、檣楼部は支柱式から日本武尊と同じ構造と外観を持つ完全密閉型檣楼に改められ、日本から輸入した新型のボイラーへの換装による速力上昇、取り外された後部主砲跡には、ラ・カサミ級戦艦の後継艦に搭載予定だった新開発の38㎝連装砲塔を実戦テスト用として搭載している。その他に船体はバルジが設けられ肥大化しており、その性能はコルネフォロスから大きく飛躍している。
「何故我々には出撃命令が来ないんだ?」
ラ・ナガトの第1艦橋で、ラ・カサミからラ・ナガトの艦長として転属してきたミニラルは、統轄軍から出撃命令が来ない事を疑問に思っていた。
「どうやら上は、本艦を決戦兵器として温存しておきたいと思っているようです。」
ミニラルと共にラ・カサミから転属してきた副長のローハットの言葉にミニラルは拳を握り締める。
「不味いぞ………首都防衛艦隊の艦艇では、いくら改良して速度と攻撃力が上がったとはいえ、奴等相手には不利だ………こんな時こそ我々の出番だと言うのに……」
ミニラルはその場から走り出し、エレベーターへと乗り込む。
「艦長!」
「統轄軍本部に直訴に行ってくる。副長は出港準備を頼む!」
そう言い残しミニラルは統轄軍本部に出向き、本部長へ半ば脅しに近い直訴を行ない、本部長が折れる形でラ・ナガトに出撃命令が下った。
「出撃命令が降りた!出港用意っ!」
「既に完了しています!いつでも出れます!」
「よし!ラ・ナガト出撃っ!」
首都防衛艦隊から遅れる事、1時間半、ラ・ナガトはオタハイトから出撃していった。
続く
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