ありふれた……は?料理人ですけど何か?(威圧   作:黒姫凛

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なんか最近流行っているので俺もビッグウェーブに乗って妄想して見た。


プロローグ

ーーーピコンッ、ピコンッ。

 

 

気付いたら真っ暗闇。そして目の前には突然出てきた枠で囲まれた『はい』と『いいえ』の文字。青と赤の色文字で宙に浮いており、まるでゲームみたいだと何となくそう思った。

 

 

ーーーピッ。

 

 

 

まるでキーボードで文字を打つかのように、今まで見た事ない文字が現れては変換され日本語に変わっていく。

もはや、ここはどこかとかそういう考えを持たせてはくれないのだろうか。

 

 

てんせいをのぞみますか?。|

 

 

現れた文字はこうであった。

てんせい。天性?天聖?………天声?天からのお告げって事か?

意味が分からないが、取り敢えずこの状況を聞きたいので、『はい』を押してみる。

 

瞬間、目の前が真っ白に変わったーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煙が立つほど炙られた鉄製のフライパンに油をぶちまけ、油を慣らす。油が滑らかな状態になったら油缶に油を切り、再び少量の油を入れて下味を付けた野菜をぶち込む。野菜はシャキッとした食感を出したい為に高温で一気に火を入れる。

全体に均等に火が入るように何度かひっくり返し、塩と合わせておいた合わせ調味料を野菜と一緒に混ぜてグルグルかき混ぜる。

 

フライパンを持ち上げ、事前に用意したお皿に盛り付け、供え物として遊び心で作った鳥の形をした人参を端っこに寄せる。

 

「ーーーホイ、冷蔵庫のギリギリ食べれそうなもので作った野菜炒めだ。この人参の鳥さんは食べても食べなくてもいいぞ」

 

そうして出されたのは、湯気立つ彩りな野菜炒めであった。ツヤだった野菜達が食欲を引き立たせ、使われたスパイスがより香りを醸し出してくる。

 

「……凄い、としか言えないわね。なんだか、女として負けた気分だわ……」

 

「勝負なんてしてないだろ。大体俺は男。それに、生まれて此方十数年。物心着いた頃から握っていたのは玩具でなく子供用の包丁と食材だった俺にとっちゃ、これぐらい普通なんですが?」

 

「……子供用の包丁って。そこは普通に包丁って言い切っても良いと思うけど……」

 

「細けえ事はいいの。さぁharryharry」

 

机に出された野菜炒めとお茶碗に盛られた白米。この白米も今まで見た中で1番と言っていいほど艶だっている。一体何をすればここまで艶立つのか不思議な程だ。

 

「……まぁ今に始まった事でもないし、取り敢えず頂きます」

 

「あ、待って味見するわ」

 

「なんでこのタイミング!?」

 

ちょちょいとお皿の野菜炒めを箸で摘み、パクリと1口。もしゃもしゃと口全体で動かすのは癖だ。物を口に含む場合は味を知るために必ずそうする。

 

「……んー、少し野菜が大きかったかな。火は通ってるけど完璧じゃないな。あと数十秒待てば良かったかも。あ、鍋振るいすぎたか。味付けも多分よし……。おけ、毒味完了だ」

 

「毒味!?貴方なにを入れたのよ!?」

 

ピシッと親指を立ててくる姿にイラつくも、いつもの事かと気を沈め、箸を手に取る。

教えて貰った作法で箸をとり、炒めた人参を掴む。

今日のは幅5mmだと作る前に聞いた。確かに薄い。定規を持ってきて測りたくなる衝動を抑えて、ホクホクとした人参を口に含む。

 

シャキッとした食感。それでいて人参特有の甘さと少し香ばしい香りが口の中に広がった。丁度いい塩加減がより甘味を引き出し、噛む度に病みつきになる食感は堪らない。

素直に言う。美味しいと。反則的だと。こんなものをよく作ってくれたなと少し怒り気味に説教してやりたい。

 

「感想は?……まぁ、その顔見たら中々いい所まで行ったんではないでしょうか?」

 

「……貴方は私をどこまで堕としたいの?正直言って、また貴方以外が作った料理で食べたいとは思わないリストに一つ増えたわ」

 

「何じゃそのリスト。どんだけ載ってんだよ」

 

「今まで作った料理は全部載ってるわ。見てみる?もう少しで一冊無くなるのだけれど」

 

「げぇぇー、そんなに作ってたか?しかも全部って……。ちなみに、いっちばん最初に作った料理は?」

 

「私と貴方の家族で行ったピクニックの時のおにぎりよ。その次がサンドイッチで、その次がハンバーグで、その次がーーー」

 

「いやもういいです分かりました。長くなるだろそれ……」

 

多分止めなく淡々と語られるであろう話を早急に打ち切り、食べる事に集中させる。

塩で味付けしたものは温度変化で味が変わるので、アッツアツの状態が前提で作ったものはアッツアツのうちに食べて欲しいのが作った本人の正直な気持ちだ。それは多分分かっているとは思うが、やはり一度火がつくと止められない。

無意識だが作った本人以上に作った料理に対する気持ちは一番と言っていいほど持っているようだ。

 

「……モグモグ、っんぐ。はぁー……、美味しいわ。そう言えば、貴方留学するって?」

 

「んお?なんで知ってる?」

 

「ウチの親が言ってきたのよ。場所までは分からないって言ってたけど」

 

「あー、やっぱり俺んとこの親が言っちゃったか。口が軽いのは母さんだから多分母さん経由かな。確かに俺は留学するよ。と言っても、どっかの店に住み込みになるかもだけど」

 

「料理の専門学校とかじゃなくてお店に住み込み?それ留学なの?」

 

「さぁ?分かんね。けど、何年間かは絶対こっちを離れる気でいるから」

 

「……そう。もう、決めちゃったのね」

 

自然と動かす箸が止まり、しんみりとした雰囲気になってしまった。

日常的だと思っていた2人の関係は、もうすぐ終わる。そう思うと、ぽっかりと胸に虚空感を覚える。

 

「何しんみりしてんだよ侍ガール」

 

ピンッとおでこにデコピン。突然の痛みに顔を上げる。

目の前にはいつもと変わらないニコニコした顔があった。

 

「泣くなよな。何も会えなくなる訳じゃないんだからさ。また戻ってきたら飯作ってやるよ。だから、お前も頑張れ」

 

「……何よ、何よ何よ。頑張るって言ったって、何を頑張れば……」

 

「取り敢えず剣道で明日から全試合全勝で全国制覇とか?あと、家事スキルを磨くとか。お前、これから剣道一筋で生きてくって訳でも無いだろ?もしかしたら結婚して子供拵えるかもしれないぜ?そうしたらお前、家事何も出来なくて愛想尽かされて未亡人確定とかなったら笑えないからな」

 

「何私が家事出来ない女だと思ってるのよ!!家事ぐらい面打ちするより簡単よ!!」

 

「お前は絶対面打ちの方が簡単だよ……。けど、色々と頑張ることだって見えて来るんだ。再会したら彼氏のひとりやふたりぐらい紹介しろよな」

 

「なんで彼氏が複数なのよ……。でもいいわ、絶対今よりも色々と凄くなってやるわ。……だから、もし再会した時に私に彼氏とかいなかったら、貰ってくれる?」

 

「何言ってんだよ。俺はーーー」

 

 

 

 

 

 

これは、数年後再会するであろう男女の他愛も無い会話であり、幸せな一時の閑話である。

そしてこれを機に、物語は歯車を動かしていく。

 

 

 

 

「ーーーじゃあな、『雫』」

 

「ーーーうん、バイバイ『蓮』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




プロローグでの2人は中学生です
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