ありふれた……は?料理人ですけど何か?(威圧   作:黒姫凛

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かーなーりー短い。


再開

ーーー唐突の再会。感動の再会。偶然の再会。

 

ドラマチックかつ、まるで創作物のストーリーに準えて作られたもののように。

情熱的な場面が、彼らの目の前で起こっていた。

 

長身の男と、その男の胸にすっぽり埋まる身長の女。

言わずもがな蓮と雫である。

 

離さないと言わんばかりにギュッと抱き締め、お互いの体温を全身で感じ合う。

まるで天からの祝福と言わんばかりに、上から差し込む光が二人を照らし、より尊く涙溢れるような感動的なシーンを再現していた。

これがストーリーを一から説明されていたらどれ程の涙腺崩壊を呼んだだろうか。

最も、今の段階でもギャラリーとかしている周りの数人は目尻からツゥーッと涙を零している者もいる。

 

そんな事はいざ知らず、蓮に包み込まれていた雫は顔を上げると、蓮の顔をじっと見つめるのだった。

何秒、何十秒、何分と見つめただろうか。お互いの瞳を見つめ、それぞれ頬を緩めて仄かに笑い合う。

 

「ーーー」

 

雫が口を開いて何かを呟いた。しかし、なんと言ったかは分からないような一瞬。それに呼応するかのように、蓮はそっと雫の頬に手を添えて顔を近付けていく。

雫もその行為を分かってか、ゆっくりと目を瞑り、やってくる彼に身を委ねた。

 

『ーーーッ!?』

 

ギャラリーもその行為を理解し、情熱的な場面をこれでもかと言わんばかりに目を凝らして凝視する。恥ずかしがってか目を覆って見ないようにしている者もいるが、指の隙間を少し開けながらチラ見している。

 

ゆっくりと近付いていく二人の距離。まるでカウントダウンかのように、一刻一刻を刻むかのように一瞬一瞬が止まって見える。

 

後少しーーー、後少しーー、後少しー、後少しっ。

 

そしてーーー今。

 

 

 

 

「ーーーちょっと待ってくれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

何処からともなく現れた空気の読めない男が、道場破りかのように2人を引き剥がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー説明してもらおうか。君は、何者なんだ?」

 

 

今日という日ほど、私は光輝を殺したいと思った日はないかもしれない。

もう少しでお互いに一つになれたと思ったのに、彼奴が間に割り込んで私と蓮を引き剥がしてきた。事もあろうに、私を抱き寄せてきて「もう大丈夫だ」なんて耳元で吐いてくるんですけど!?

 

○っ殺してやりたい。これ程までに殺意が湧いたのなんて、光輝に近付きたい女達が私に三人がかりで勝負を挑んできた時ぐらいよ。

あれは流石に雰囲気をぶち壊しとかそういうレベルじゃない。空気読めないただの屑。生きてる価値のないただのゴミ。

 

なんなの?なんなのなんなの!?絶対彼処で割り込んでくるとか常識的に可笑しいでしょ!?あんなのドラマのシーンで言うラストシーンよ!?そんな丸く収まる為にやってるラストシーンをぶち壊しに来るシナリオあると思ってんの!?そんなのただのクソドラマクソストーリーよ!!

 

「何者、とは?」

 

「しらばっくれるな!!君が雫とどういう関係で何故ここにいるかと聞いているんだ!!」

 

「……んー、雫ちゃんとは幼馴染かな?なんでここにいるかは知らん」

 

「嘘をつくな!!雫にお前みたいな幼馴染はいない。雫の幼馴染は俺と龍太郎と香織だけだ。友達ならいざ知らず、そんな嘘を突き通せると思うなよ!!」

 

「……マジなんなのお前。ちょっと雫ちゃん?こいつどうにかしてくれない?」

 

「……ゴメンなさい、今は無理よ。今、殺意を抑えるのに必死だから……」

 

「おぉう、なんかむっちゃ怒ってるじゃん雫ちゃん」

 

「それ以上雫の名を口にするな!!貴様が無理やりしたせいで雫がトラウマになったらどうするんだ!!」

 

いやそれお前ぇー!!!

私は今内心で光輝を袋叩きにしている。殴り○す感じで一発一発全力入拳。

あぁっ、○ねっ!!○んじまえぇ!!

 

「じゃあ聞くけどさ、お前は俺に何をして欲しいわけ?」

 

「決まっているだろ。雫への謝罪と二度と近付かないという約束だ」

 

「それは無理。雫ちゃんは爆弾持ちだから俺がケアしてあげないといけない。雫ちゃんの命に関わる事だからな」

 

「爆弾持ちだと?そんな事あるわけないだろ!!雫は普通の女の子なんだぞ!!」

 

「話通じねぇー」

 

助けを求めるかのように私を見つめてくる蓮。ごめんホントに待って。ほんとに待ってほしい。今冷静を欠くと本当に此奴を○○してしまいそうになる。

お願いだから耐えて。もういっその事私を奪い返してどっかに連れてって。

 

「お前が雫にこれからも近付くと言うなら、ここで俺と勝負しろ。俺が勝ったら雫に金輪際近付くな。お前が勝てば、雫に近付くのを見逃してやる」

 

「いやお前マジ何様?いい加減にしてくれよ。話の通じない訳でも無いのに、態とこっちの話をあやふやにしてんのか?」

 

「何をごちゃごちゃ言ってるんだ!!行くぞーーーー」

 

 

 

ーーーバンッ!!

 

 

撃鉄音と共に、天井にあったステンドグラスの破片が落ちてきた。誰が打ったのか、そんな事を思い周りを見渡そうとすると目の前に誰かがいた。

青いドレスを身に纏った女目線で見ても完璧だと言えるスタイルを持った美少女。そんな美少女が、光輝に腕を伸ばしていた。

いや違う。ただ腕を伸ばしているんじゃない。手に何か持っている。それを光輝に向けているんだ。

私はそっと身体から腕に視線をゆっくりずらしーーー。

 

 

「ーーーそこまでだソフィア。仕舞え」

 

 

拳銃。一般人が普通は持ち歩いてはいないであろうソレを、ソフィアと呼ばれた美少女は、冷徹な瞳で光輝に銃口を向けていた。私は思わず固唾を飲む。

 

「……お言葉ですが、この男は貴方に対して多少なりと殺意があった。クライアントの指示通り、殺意を向けられたら問答無用で殺すという事を実行しようとしただけですが?むしろ、一発威嚇射撃にまわした私の配慮に感謝してもらわなくてわ」

 

「残念ながら此奴は俺の同郷だ。昔の俺みたいに、血生臭い世界とは程遠い世界に十何年と浸ってた奴らだ。向こうとは違う事を理解して欲しい」

 

「あらそうなのですか?てっきり私は貴方もこの男に対して殺意を抱いていたかと思ったのですが。あれ程までの魅力的なシーンで横入り、あら滑稽な事オホホホホッ」

 

「なんだ○ッチ。お前みたいな女じゃ男共もすぐ逃げて行くだろうな」

 

「なんですのヘタレ。折角覚悟を決めたら邪魔が入ってお預け。まるでイヌのようですわね。オホホホホッ」

 

「「あ?」」

 

……なんか違う争いが生まれちゃったんですけど!?

ちょっと待って蓮。その人拳銃持ってるから!!絶対○すウーマンだから!!

 

「……っ、なぁ君。それは本物か?」

 

「?当たり前じゃありませんの。持っていて当然の品物でしてよ?」

 

「そんなものを君が持っていては危険だ。俺に預けてくれないか?」

 

「?面白いことを言いますわね。ではあれですの?貴方はこの拳銃を私よりも上手く使いこなせると?」

 

「拳銃は使ったことはないが、君よりは上手く使いこなせるはずだ。それよりも、君のような女性が拳銃を持っているなんて俺は我慢出来ない。早く俺に渡してくれ」

 

「……私が、華奢な乙女に見えると?」

 

「ああ、だから早くその拳銃をーーー」

 

 

「ーーーよくもそのような事を言ってくれましたわね!!」

 

 

ーーーバシンッ!!

 

 

美少女の回し蹴りが光輝の顔面を捉え、後方までぶっ飛ばした。

綺麗な回し蹴りだ。素人目でも分かる完全に意識を刈り取ったであろう一撃。

私は全く影響がないまま、光輝だけを吹っ飛ばした。

 

「……うわー、やり過ぎー」

 

「こんな程度で気絶するなんて、余っ程あの男の方が華奢ですわ」

 

「……取り敢えず、拳銃仕舞ってくれ。みんな怯えているから」

 

「あら失礼。ドレスで回し蹴りなどどうぞ中を見てくださいと言っているようなものですわね」

 

「……だから○ッチなんだよ経験無しの似非○ッチが」

 

「聞こえてますわよチェリーボーイ。キスですら真面に出来ないチェリーに言われても何も響きませんわ。それに、私が迫っても顔を紅くしてやっと出来たと思ったらキスとか、ホントに貴方にはついてますの?」

 

「うううううっさいわ!!お前だってしどろもどろになって緊張しまくってた癖に」

 

「アナタノクニノゲンゴ、トテモムズカシイデスネ」

 

「はっ、大体お前はーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーチョットマッテ、キスッテナニ??




次は何時になるだろうか。

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