【完結】害虫生存戦略   作:エルゴ

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予約投稿忘れてたので初投稿です。


第14話「実習・姉妹③」

 

「惜しかったわね……」

「ええ、あと少しでしたわ……」

「ボッコボコだったぞ」

 

 二人が遅刻し、見捨てた俺ごと叱られて十分後。授業では山田先生がポンコツな登場をしたり凰とセシリアの二人を一人で倒したりと株が荒ぶっていた。

 

「セシリアが回避先を読まれなかったら……」

「鈴さんがあそこで衝撃砲を使わなかったら……」

「何よ!」

「こちらの台詞ですわ!」

「そこまでにしておけよ馬鹿ども」

 

 どちらも単騎ではそこそこの実力を持っているが、あまり仲がいいわけでもなく、タッグマッチの経験もほとんどない。それで即席チームで戦えというのが無茶だろう。

 まあ仮に仲良しでタッグマッチの経験があろうと勝てる実力差ではないが。

 ほら笑われてるぞお前ら。

 

「さて、教員の実力も理解できたところで実習を始める。専用機持ちの織斑、九十九、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰をリーダーとして六グループに分かれろ」

 

 織斑先生がそう言い終わらないうちに一夏とデュノアの元へ女子が殺到する。予想通り二人は人気者だな。

 俺の所? 二人の八分の一ぐらい。ぼっちじゃないからセーフ。

 

「この馬鹿者どもが……。出席番号順で一人ずつグループへ入れ! 順番はさっきの通り、次もたついたら今日の授業はグラウンド百周に変更だ!」

 

 罰は嫌なのか、二人に集中していた女子達はあっという間に移動。グループはすぐにできあがった。ありがとう俺の所に来てくれてた人達。

 

「最初からそうしろ、馬鹿者どもが」

 

 いやあお疲れ様です先生。まあ別れた後もこそこそお話してるけど。

 

「……やったぁ、織斑君と同じ班っ」

「九十九君かぁ、よろしくねー」

「セシリアー今度はいいとこみせてねー」

「デュ、デュノアくん……うふふ……」

「凰さんもねー」

「…………」

 

 好き勝手話す中、唯一ボーデヴィッヒのグループだけ静かだ。他と比べて異彩を放っている。

 何というか、威圧感がすごいんだよな。話しかけるなって感じ。一組の女子は自己紹介のビンタを見たのもあって余計気まずそうだ。

 

「いいですかー皆さん。これから訓練機を取りに来てください。【打鉄】か【ラファール・リヴァイヴ】かは早い者勝ちでーす。」

「俺取ってくるけど、どっちがいい?」

「「「「ラファール」」」」

「「「打鉄」」」

「………」

 

 一人無言がいたがまあいいや。多数決でラファールだな。

 

『各班長は訓練機の装着を手伝ってあげてください。とりあえず午前中で全員動かすとこまでお願いします。何かあったらいつでも呼んでくださいね!』

「はーい」

 

 気持ち山田先生の声に自信がこもっている。さっきいいところ見せられたので取り戻したらしい。

 

「早速装着から始めよう。番号順でいいか」

「はーい、じゃ私から!」

 

 うんうんこのグループは真面目にやってくれそうだな。後ろでデュノアのグループがしばかれているが気にしない。

 装着、起動、歩行。よし問題ないな。おっかなびっくりではあるが十分動けている。さすがはエリート校と言うべきか。

 

「はい次ー」

「うん……あれっ」

「どうした? ……ああ」

 

 二人目が困っていると思えば、訓練機が立ったままで装着解除されている。俺ならよじ登ればいいが、女子にそれを強要させるのもアレか。どうしたものか。

 何か台でもないか……ん、一夏の方も同じ状態になっている。山田先生が近づいて……なるほど抱きかかえろと。

 

「仕方ないな、じゃあいくぞー」

「えっ!? あ、はい……優しくしてね?」

「何言ってんだ?」

 

 【Bug-Human】を展開、一応優しく、変なところを触らないように抱きかかえる。女子一人ぐらいならパワータイプではない俺のISでも軽々だ。落とさないようにしないとな。

 

「ゆっくり乗って。乗れたら少しずつ動いてくれ」

「う、うん……」

 

 視線が泳ぎまくりだ。このぐらい大した接触でもないと思うが……ここ女子校だしな。免疫ないんだろう。

 

 

「はい交代、座って装着解除を──」

「えい」

「おい」

 

 また立ったまま降りやがった。これじゃもう一度抱きかかえなきゃならん。一夏とデュノアのグループも同じ有様だ。

 

「ごめんねー。私だけいい思いしちゃ悪いから、ね?」

「全く……次、来い」

「はぁ-い!」

 

 ……まあ避けられてないだけマシか。

 

 

「次ー」

「は~い」

「次ー」

「はいよ!」

「次ー」

「はぁーい」

「次ー」

「はい!」

 

「最後、来ーい」

「…………」

「どうした、君の番だぞ」

 

 何度も女子を抱きかかえ、やっと最後の一人。しかし何故か反応がない。体調悪いのか?

 

「おーい」

「…………」

「お、来たな……て近い近い。これじゃ……あ?」

 

 依然無言のままつかつかと歩み寄って来たが近づきすぎだ。これじゃ抱えられない。そう言いかけたところで足下の違和感で言葉が止まる。

 違和感の正体。それは最後の女子が俺の足をぐりぐりと踏みつけていた。

 

「どうした? 虫でもいたか?」

()()()()()のよ。なかなか潰れないけど」

 

 言葉を交わしている内にもぐりぐり、ぐりぐり、と踏みつける力が増している。どうせ装甲越しじゃ痛みは感じない……が、不快感はある。

 

「あたしはアンタのこと、ううん。男が気に入らないのよ」

「直球だな。俺は嫌いじゃないけど」

「男なんてバカだし、フケツだし。下半身で物事を考えてるような奴ばかり。そんなのがこの学園に来ると迷惑なのよ」

「酷いなぁ……」

 

 随分酷い言い草だ。ここまでテンプレートな女尊男卑主義者は初めてだぞ。他のグループメンバーも引いているし、さっさとしてくれないかなぁ。

 

「ISを動かせる男だからって、ちやほやしちゃってバッカみたい。今の世の中、優れてるのは女よ」

「あっそ。ではどーぞ」

「やめて。アンタなんかに抱きかかえられたくないわ」

「えー……」

 

 面倒くさい女だなぁ。だったら一人で乗ってくれるというのだろうか。そっちの方が手間が省けるしいいんだけど。

 

「踏み台になりなさい。這いつくばって」

 

 違った。女王様かよコイツ。俺にそういう趣味はない。

 

「そういうのはお店行こうな? まだ年齢足りないけどさ」

「うるさいわね……さっさとしなさい」

「その必要はないぞ」

「ん?」

 

 背後から声をかけられ、振り向いた先には織斑先生。返事を待たずに俺を跳び越え、ラファールを装着する。ジャンプ力すっげぇ。

 

「よっ……と。これでいいな?」

「どうも」

「……はい」

 

 そのまま屈み、装着解除。これで踏み台になる必要はなくなったな。

 

「あまり一人に時間をかけるなよ。ではな」

「ありがとうございましたー」

 

 助け船を出してくれたのだろう。実際助かったし、感謝しておこう。踏みつけ女子は不満げだが、もうシカトだ。

 これ以降は特にトラブルもなく、午前の実習を終えるのだった。

 

 この後やたら一夏が三人で着替えたがっていたがデュノアがそれに乗れるはずもなく、仕方なしに二人で着替えた。

 なんでそんなに残念そうなんだ。こいつ本当にノーマルだよな? 大丈夫だよな?

 

 

 

 

「おひさー」

「…………」

「無視かぁ」

 

 転入生が来て四日経った放課後。対抗戦以来久々に足を運んだが、やっぱり簪さんはいる。

 

「今日はさぁ、転校生が来たんだよ。二人も」

「…………」

「しかも一人は男だってさ、あり得ないよな」

「…………」

 

 ずっと無視されている。前に揶揄ったことでまだ怒ってるのか? 誰にも言わなかったんだから許してくれ。

 

「……あっ、九十九くん……。いつ来たの?」

「はい?」

「え?」

 

 気づいてなかったのかよ。そんなに小さい声だったか? いや、これは違うな。

 

「簪さん、また無茶してるだろ」

「……関係ないでしょ」

「まーた徹夜したな? 飯もまともに食ってないだろ」

「……一昨日は寝たし、パンも食べた。私は平気」

「おいおい……」

 

 一夏みたいに健康オタクになったつもりはないが、その生活は不健康が過ぎる。どうせ寝たと言っても三時間かそこら、パン食ったからって栄養なんて足りるわけないだろ。

 

「マジで死ぬ気か? 人生RTAしてる?」

「これぐらい大したことない、アニメ四クール一気見に比べればっ……

「何と比べてんだよ」

「……なんでもない」

 

 アニメ好きなのか簪さん。今度お勧めでも教えてもらおうか、開発してる間は無理だろうけど。

 

「とにかくさ、そんな無茶してぶっ倒れられたら困るんだよ。楯無先輩が面倒くさい」

「…………」

 

 手を止めて静かに震える彼女。やっべ今度こそ怒らせたか?

 

「……足りないの」

「ん?」

「こんなんじゃ全然足りない! 力も、技術も、何もかも! 私は家族、ううん。妹として、お姉ちゃんの力になりたい。なのにお姉ちゃんは……私を“楯無”から遠ざけてる!」

 

 息を荒げながら先輩への想いを叫び出す。嫌ってるわけじゃないことは前に聞いたが、こういうことだったのか。

 

「確かにそうだろうよ、でもそれは……」

「優しさなのはわかってる。『関係ない』が本心じゃないことも。……でも、それじゃ私はお荷物と変わらない。支えてあげることなんてできないっ!」

 

 なるほどね、そもそも簪さんが怒ってるって前提が間違ってたと。そりゃ謝ろうとしたって意味ないわ。

 しかし『力になりたい』、『支えたい』ね。美しい姉妹愛だな。束様に見せてやりたいよ。

 

「そこで開発(これ)ってことか」

「一人で打鉄弐式を完成させれば、きっと私の実力を認めてくれる。……そして、()()()()()()()()()()()()()()()()

「ん? ああ……そうかい」

 

 少しばかり引っかかりを感じたが、彼女の行動理由はわかった。意志の固さも。

 しかしそれを見逃すわけにもいかない。が、今はどうしようもない。無理に止めて余計に意地にさせては終わりだからな。

 

「じゃー頑張れ。応援だけはしとくよ」

「言われなくとも。やってみせる……」

 

 さて、どうしたものかな……。

 

 

 

 

 寮へ帰って。先輩に今日の報告をする。今回ばかりは隠してもしょうがないのでそのままの情報を。

 

「そう、まさかそこまで……」

「もう謝ればどうにかなるとかの話じゃないですね。積み重なった不満的な」

 

 どちらかが悪いと言うことでもない。それでいて互いを想っての行動が裏目に出続けているだけに始末が悪い。

 そもそもこれはちゃんと話し合えすれば丸く収まるはずだったのだ。今更もしもの話をしても仕方ないけれども。

 

「そうだ、一つ気になったことがあるんですけど」

「なぁに?」

「『無能』がどうとか言ってましたけど。何のことですか?」

「……そうね。君には話さないといけないわね……」

 

 言葉の響きからしていい話ではなさそうだが、何かの手がかりになるかもしれない。見るからに話したくなさそうだが聞いてみよう。

 

「それはね、更識家の()使用人が言った言葉なの」

()ですか」

「ええ。三年前にね、使用人の間で変な噂が流れて。『私と簪ちゃんが後継者争いをしてる』って」

 

 それは……確かにおかしな噂だな。二人の話を聞く限りそんなことはあり得ないのに。

 

「もちろん出鱈目よ。その頃にはまだ継いではいなかったけど、ほぼ決まってたし」

「でしょうね」

「続けるわね。それで、その噂を信じた一部の使用人で派閥ができちゃって」

「先輩派と簪さん派ってことですか」

 

 噂一つでそこまでいくか。いやはや格が高い人の家はすごいな。

 

「すぐに先代──お父様がやめさせたんだけど、裏では続いてたのよね。そして、私派の一人が──」

「陰口言って、聞いちゃったと」

「そう。丁度私も一緒にいて、その使用人は即クビ。簪ちゃんも気にしてない素振りだったんだけど……」

「実際はあの通りと」

「うん……」

 

 そんな過去があったのか。確かにそれは引き摺るよな。彼女特にそういうの気にしそうだし。

 まあ謎は解けた。といっても手がかりになるかは……微妙だ。

 

「それよりもう体調も限界みたいだし、早く止めないと。でも無理に止めたら……」

「間違いなく反感買うでしょうね。今度こそ手遅れになりそう」

「確かに……。でも他にどうしたら……」

 

 止めるかぁ……。しかしあそこまで強情で、拗らせているとなると……。いや、待てよ。

 

「……一つ、考えがあります」

「えっ?」

「あくまで思いつきですが、上手くいけば説得できるかもしれないもしれません」

「聞かせて」

 

 食いついたな。納得してくれるかわからない危ない賭けだが、言ってみる価値はある。

 

「わかりました。ではまず──」

 

 

「──って感じです。どうしますか?」

「……わかった。それで行きましょう」

「いいんですか? 実は騙そうとしてるかもしれませんよ?」

 

 勿論騙す気なんてないが、所詮他人の思いつきだぞ?

 

「何もできないよりずっとマシよ。そもそも騙そうとしてる人間がそんな警告しないし。それに──」

「それに?」

 

「信じてみたいから、かな」

 

 ──こういうのは苦手だ。

 

「何より簪ちゃんのためよ!」

「知ってた」

 

 うん。この人はこういう人だ。

 

「わかりましたよ。やれるだけやってみます。失敗しても怒らないでくださいよ?」

「えー? どうしよっかなー?」

「勘弁してくださいって……」

 

 またいつもの顔に戻りやがった。こうなると面倒くさいんだ。

 

「簪さんのことはこれぐらいにして! も一つ聞きたいことがあるんですけど!」

「?」

 

 ついでだ。あのおフランス製男装転入生のことを聞いてみよう。

 

「今日うちのクラスに転入してきた、シャルル・デュノアってやつのことなんですけど」

「ああ、()()()()()()()()()ね」

「やっぱり知ってるんですね」

「あれだけお粗末な男装じゃあねぇ。むしろ隠す気がないんじゃないかってぐらい」

 

 確かにそうだ。今日日そこらのコスプレイヤーの方がマシな格好ができるだろう。

 

「知ってて転入を通したんですね」

「そうよ。あちらも訳アリって様子だったし、もし何か動きがあったらいつでも止められるようにしてあるわ」

 

 一応監視はあるらしい。あの調子で男装が長続きするとは思えないが、少なくともこちらに迷惑はかからなそうだ。

 

「ならいいんですけどね……一夏と同じ部屋ってのがなぁ……」

「妬いてるの?」

「違わい」

 

 ただあいつのことだからシャワー中に突撃とかやらかしそうだと思っただけだ。

 

「心配? やっさしーい」

「あーもうそれでいいですよ。じゃ、何かあったらお願いしますよ」

「はーい。うふふ……」

 

 本当にもう……切り替えの早い人だ。

 

 あいつは今頃、男と同室になれたとかで浮かれているのだろうか。『一緒に風呂!』とか『一緒に寝よう!』とか言ってないよな?

 ……心配するのアホらしくなってきた。寝よ。

 

 

 

第14話「実習・姉妹③」

 

 




都合のいい悪女
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