【完結】害虫生存戦略   作:エルゴ

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寝落ちして予約投稿忘れてたので初投稿です。


第23話「臨海学校三日目・土産」

 

「作戦完了──と言うとでも思ったか馬鹿どもが」

「「「……」」」

「お前達の行動は重大な違反だ。帰ったら相応の罰が待っているから、そのつもりでいろ」

「……はい」

チッうっせーな 反省してまーす」

 

 バシンッ!

 

「誠に申し訳ございませんでした」

「よろしい」

 

 帰還から数分後。数キロ泳いでへとへとな俺たちは大広間の堅い床で正座していた。この姿勢でかれこれ三十分。そろそろ足とオルコットの顔色が限界だ。信号機みたい。

 

「織斑先生、そろそろその辺で……。怪我人もいますから……」

「ふん……」

 

 山田先生が女神に見えるよ。さっきから救急箱やら水分やら運んでくれて助かる。

 

「では一度休憩してから診断しますね。ちゃんと上から下まで脱いで──も、もちろん男女別ですよ!? ここで脱いじゃダメですからね!?」

「誰も脱いでませんよ」

 

 自分で言って顔を手で覆わないで欲しい、指の隙間から見えてるし。

 

「うえー口の中切れてら」

「全身大やけどよりマシだろ?」

「比べることじゃねーだろ……」

「……」

「な、なんですか? 織斑先生」

 

 傷を確かめる俺たちを凝視する織斑先生。まさかあなたまで山田先生みたいなこと言い出さないよな?

 気まずさからか、一夏が口を開く。

 

「……しかしまあ、よくやったな。全員で無事で帰ってきた」

「お」

「え?」

 

 先生が褒めた? マジ? この人褒めるの?

 一瞬だけ照れくさそうな顔を浮かべるも、すぐに背を向けて隠される。写真撮って束様に渡したらご褒美がもらえそうだ。

 

「ちょっともう一回お顔見せてもらってもいいですか」

「殴るぞ」

「はい」

 

 ダメか。

 

 

 

 

「あっ」

「む……」

 

 全員の検査が終了した俺たちに一先ず自由が与えられた。しかしこれと言ってすることもなく廊下を彷徨い、妹様に出会った。

 

「……」

「……」

 

 ……気まずい。俺は妹様を好き勝手罵倒した負い目があり、妹様も色々とやらかした負い目がある。別に俺は本心をぶつけたまでだし、後悔もしてないが罪悪感はある。

 

「……じゃ」

 

 うん。無理に話す必要もないよね。関わらない方があちらも気が楽だろう。

 

「待ってくれ!」

「え」

 

 何故呼び止める。無難に別れようとしたのに。こうなると無視はできない。

 

「その……今日は、すまなかった。私の行動で、とんだ迷惑をかけた。申し訳ない」

「……うん」

 

 うわすごい適当な返事しちゃった。正直改まって謝罪されるとは思っていなかったからな。

 しかしこうして謝られたなら、こちらも返さなければならない。

 

「こっちこそ悪かったよ。少し言い過ぎた、許してくれ」

「なっ……いや、私はあれぐらい言われて当然のことをした。九十九が謝る必要はない」

「マジ? じゃあ今のなしで」

「おい!」

 

 冗談だ。あんまり真面目な雰囲気になってたんでな。

 

「悪い悪い。じゃあ、お互いごめんでこの話は終わりってことで」

「ああ! ……よかった。実はみんなに謝罪して回っていてな、お前で最後だったんだ」

「へぇ」

 

 今会ったのも偶然じゃなかったのか。

 

「さっきは鈴に謝ったんだがな、お仕置きと称して思い切り背中を張られたよ」

「それで背中痛そうにしてるのか」

「間違いなく真っ赤になってるな……」

 

 顔にしないのは優しさだろうか。単に痛そうなところを選んだだけの気もするが。

 

「これぐらいで許してくれるなら安い物だ。それはそれとしていつかお返しするが

「お、おう……」

 

 なんかキャラ変わってないか? 束様が見たら何というか……いや面白がるな。

 

「じゃ、明日からはいつも通りってことで、よろしくな」

「こちらこそよろしく。それと……ありがとう」

 

 ……変わったよ、本当に。

 

 

 

 

「~♪ ~♪」

「……ここにいたんですね」

「やあとーくん。待ってたよ」

 

 夜。傷口によく染みる飯を食った俺は、一人岬へ足を運ぶ。

 きっとここにいる人、束様に会うために。

 

「『待ってた』って、やっぱり予想通りでしたか。敵いませんね」

「まあね。それよりも、態々この私を探すなんて一体何の用かなー?」

 

 高さ三十メートルはあろう高さの柵に、怪しい笑みを浮かべたまま腰掛ける。怖いもの知らずだな。

 

「用というか、()()()()()でもしてもらおうかと」

「答え合わせ?」

「はい」

 

 わざとらしい『きょとん』とした表情。これも予想済みか。だから何だというか話だが。

 

「今日の事件。福音の暴走は、貴女が引き起こしたものですよね? 束様」

「そうだよ」

「即答ですか」

「いや、これでわからなかったら馬鹿でしょ」

 

 ……それもそうだな。妹様に専用機が渡った今日この日に福音が暴走。偶然近くを通ってなんて、都合が良すぎる。気づかない方がおかしい。

 第一相当警備が厳重な軍用機をハッキングするなんて、この人にしかできないだろう。

 

「まさかこれが答え合わせ? 束さんガッカリだなー」

「違いますよ。今のはただの確認。答え合わせはこれからです」

「へーえ」

 

 そう。知りたいのはここじゃない。この先だ。

 

「今回の目的、それは妹様と紅椿のお披露目──じゃ、ありませんね?

「……どうしてそう思ったのかな?」

「それは肯定ですか?」

「うん、正解。これはもっと別な目的がある」

 

 やはりか。どうにもおかしいと思ったんだ、この事件は。

 作戦会議の場にいなかったから詳細はあいつらに聞いただけだが、束様は不自然なまでに妹様を参加させることを勧めていた。それも、一夏と二人で戦わせることを。

 そもそも初めて戦わせる相手が暴走した軍用機なのもおかしい。あれほど溺愛する妹をこんな危険に晒す必要があるか?

 

「もしお披露目やデータ取りが目的なら、それこそ他の専用機持ちと模擬戦でもさせた方が手っ取り早いし危険も少ない」

「でもでもー、敵は強い方がいいって言うじゃない? それに関してはどう説明するの?」

 

 確かに、稼働率を引き上げることが目的なら強い相手が必要だろう。だがそれにはリスクが高すぎる。事実一夏が庇わなければ妹様は今頃重症か、最悪命まで失っている。

 

「そんなリスクを取ってまで福音と戦わせた理由、それはリスクこそが目的だったからだ」

「!」

「稼働率上昇も目的の内でしょうが……メインは妹様、或いは一夏が傷つくことで起こる何かを狙っていたんでしょう? それも恐らくは、第二形態移行なんてものじゃない。別の何かを」

「…………」

 

 答えは沈黙。つまりは正解か。最も今の俺には、これ以上わかることはないが。

 

「うん、正解。訂正も必要ないね。とーくんがこんなに賢くなってたなんて束さんびっくりだよ」

「どうも。ご褒美くれたっていいんですよ」

「それはお預けかなー」

 

 ケチくせー。どうせ期待してなかったけど。

 

「あはは、まあその内ね。それよりちーちゃんの気配がするなぁ。早く戻った方がいいんじゃない?」

「げ、やっば。じゃあ帰りますね」

 

 一応今は外出禁止だ。それを破ってこっそり来ている。バレたら死だ。先生が来るまでに戻らなければ。

 

「あ、そうだ。一つ聞いていい?」

「? 何です?」

 

 急いで去ろうとする俺を引き止める束様。いつもは適当に見送るのに珍しいな。

 

「いやぁ、大したことじゃないんだけどさ。一応聞いておかないとって」

「はぁ…それで?」

 

 勿体つけるな。こっちは急いでるのに。

 

「ねえ、とーくん。今の世界は楽しい?」

「──!」

 

 楽しい、か。この質問は久しぶりだ。前は確か四月。正確には学園生活はどうか聞かれたっけ。

 あの時は少し迷ったが、今は──

 

「楽しいです。とても」

「……そっか。じゃあ、またね」

「はい、また」

 

 あの時と同じ答え。でも今の言葉に迷いはない。本当に、この学園生活は楽しい。

 ……臨海学校(こんな時)じゃなきゃ言えねーけど。

 そして俺はバレない内に宿へ戻った。砂浜で何かが爆ぜる音が聞こえたのに気づかない振りをして。もう休ませてくれ。

 

 

 

 

 翌朝、臨海学校最終日。

 

「いつまで駄々こねてんだ! 観念しろ!」

「帰りたくない! あと一週間は泳ぐんだい!」

「お前一番泳いでただろ! さっさと乗れ!」

「やだぁー↑↑!!」

 

 撤収作業を終え、切らす別のバスに乗ろうという時、俺は全力で駄々をこねていた。

 だって海が楽しすぎたんだ。もうここに住みたい。

 

「……おい」

「ほら早くしろ! 殴られるぞ!!」

「ウッウッウッ……さよなら海……」

 

 さすがに頭を叩き割られるのはごめんだ。しぶしぶバスに乗り込み、海との別れを惜しみながらお土産を取り出す。

 

「……何だその箱?」

「ん? お土産。昨日海で取ったウニとかサザエとか……」

「それ密漁じゃない?」

 

 えっ。……あ。

 

「今すぐ返してこい」

「おっおう……そんなに厳しかったかお前?」

「いや、密漁って聞くとちょっとな……」

「?」

 

 後で聞いた話だが、一夏が撃墜されたのは密漁船を見捨てるかどうか妹様と揉めたのが原因らしい。そんなことがあった次の日にクラスメイトが密漁してたら複雑だよな。

 

「……返してくる」

「急げよー」

 

 おのれ漁業法め。生かしておくの大変だったのに。しかし法を犯してまでお土産なんて渡してもなぁ……。

 泣く泣く海へ戻り、集めたお土産を還す。こんな理由で海に入りたくなかった。

 

「いっそ海の中で食っちまうか? いやそれは超えちゃいけない一線か……」

 

 くだらない考えを巡らせながら最後の一匹を海底へ、これで大丈夫だろう。たぶん。

 

「さて戻るか……ん?」

 

 そしてバスへ戻ろうとした瞬間、視界の端で光る物が見えた。

 

 

 

 

「ただいま戻りましたー……って、そちらは?」

「あら、君が九十九透?」

「はい、透は俺です」

 

 海から上がってバスへ帰還。と、いうところで見慣れぬ人影。

 

「私はナターシャ・ファイルス。昨日はありがとう」

「ああ、福音の! もう動いて平気なんですか?」

「多少はね。白いナイトくんにキスするくらいは」

「それでバスが騒がしいのか……」

 

 窓の向こうにペットボトルが飛んでいるのが見える。こわいなー。

 

「君もどう? 頬にちゅっと」

「はは、遠慮します」

 

 別に嫌なわけじゃないが、なんとなく。

 

「じゃあ俺はバス乗りますね、それでは」

「え、それじゃ」

「あ、そうだ一つだけ。どうせわかってるでしょうけど──」

 

 折角の臨海学校を邪魔したんだ。少しくらい教えたっていいですよね、束様?

 

「──福音(あれ)を暴走させたのは篠ノ之束です」

 

「!? やはり──」

「では今度こそ、さよなら」

「……さよなら」

 

 バスへ乗り込み、ペットボトルを投げつけられた跡が残る一夏の隣へ。窓の外にはナターシャさんの織斑先生。きっとまた福音の話でもしているのだろう。

 忠告か、アドバイスか。何れにしろ穏やかな話題ではなさそうだ。怖い顔しちゃって。

 

「どうした透? 外に何かあるのか?」

「……いや、何も」

「?」

 

 思わぬアクシデントに見舞われたが、中々楽しい三日間だった。初めての海。いつかまた、誰かと行きたいものだ。

 今度プールじゃなくて、海に先輩を誘ってみようか。なんて()()()()を眺めながら考えてる。

 

「楽しかったなー」

「……ああ、そうだな」

 

 

 

 

「お帰りなさーい! 聞いたわよー大変だったみたいね?」

「本当ですよ。……で何でまた俺の部屋に? 別室になったでしょう?」

「いいじゃない。君と透くんの仲なんだから」

「どんな仲ですか、どんな」

 

 寮へ戻り、あー楽しい臨海学校終わっちゃったなーと言う間もなく楯無先輩のご登場だ。

 当然の様にこの人がいるのは何なんだろうか。合い鍵でも持ってんのか?

 

「えーと……この人は?」

「あ、一夏は知らないんだっけ、生徒会長だよ」

「えっ!? あ、初めまして!」

「はぁーい初めまして、生徒会長の更識楯無でーす」

 

 そういえば初対面だったな。紹介する必要も無かったから忘れてた。

 

「それで、目的は? 用もなく来ないでしょ?」

「……」

「無いんですか?」

「……臨海学校のお話とかキキタイナー」

 

 何も考えずに来たのかこの人。別にいいけどさ。

 

「大したことは無いですよ、簪か布仏さんにでも聞いたらいいんじゃないですか?」

「もちろん二人にも聞くわよ、でも今はあなたから聞きたいの」

「いいじゃん、話してやれよ」

「……はいはい」

「やったー!」

 

 とはいっても福音に関してはどうせ伝わっているだろうし、俺から話すことは無い。となると初日の話か……。

 

「ずっと叫んで泳いで狂ってましたね」

「なんで?」

「いや、マジで透はずっと叫んで泳いで狂ってました」

「えぇ……」

 

 今思うとどうしてあんなにテンション高かったのだろう。だんだん恥ずかしくなってきた。アレ見てたやつら全員始末しようかな。

 

「……まあ、楽しかったですよ。また行きたいくらいには」

「そう? ならよかったわ。やっぱり行事は楽しまないとね」

「今までの行事全部アクシデントありましたけどね」

「それは言っちゃダメよ」

 

 うん。大体束様が悪いんだけどさ。こうも潰されてばかりだと文句の一つも出る。

 ……どうせこれからも潰されるだろうけど。あの人は自粛という言葉を知らないからな。

 

「そうだ、お土産あるんだろ?」

「本当!?」

「おっと忘れるところだった。えーと……」

 

 確か鞄の中に……あった。

 

「はい、これがどこにでも売ってるご当地クッキー、これがサービスエリアに売ってるご当地キーホルダー、これが……」

「適当すぎないか?」

「お土産選びとかしたことないんだよ、あとこれが旅館で売ってた饅頭です」

 

 取り出したお土産をどさどさと渡す。どれもありがちな物だがまあいいだろう。少なくともはずれはないし。

 

「あ、ありがとう……随分買ったのね」

「本当は束さ、んにも渡すつもりだったんですけど……なんかむかつくので減らしました」

「そ、そう……」

 

 ちゃんとクロエに渡す分は残している、こんど会ったときにこっそり渡しておこう。

 ……これで全部かな?

 

()()は渡さないのか? ほら帰りに眺めてたあれ」

「あー……」

「何々? まだあるの?」

「えー、いやでもあれはあんまり喜ばれるような物じゃ……」

「いーじゃない。見せて?」

 

 うーん。拾ったときは良い物だと思ったけど……あれをお土産と称して渡すのは……。まあ一応見せてみるか。

 取り出した()()を渡して見せる。帰る前に拾った、種類も知らない、少し綺麗なだけの貝殻。

 

「はい。最終日に拾ったもんですけど……」

「これは……貝殻ね」

「実はウニとかサザエとかも捕まえてたんですけど、それは密漁になるってことで、そいつらを放してた時に見つけました。綺麗だったので、喜ぶかなって」

「……」

 

 うわーそんなに見ないでくれ恥ずかしい。貝殻をプレゼント! なんて小学生か。いっそ捨ててしまおうか。

 

「すいませんこんなガキっぽい拾いものを。嫌だったらこっちに……」

「ううん。これ欲しい。これじゃないと嫌!」

「え? でもそれは……」

「ダメ?」

「あ、えと、どうぞ」

 

 つい押しに負けて承諾してしまった。どこがいいんだろうか。

 

「だって、私のために選んでくれたんでしょ? だったらこれが一番嬉しいわ!」

「そう……ですかねぇ?」

「そうなの!」

 

 ううむ、ならこれでいい……のか? そういうことにしておくか。

 

「じゃあ、どうぞ。大事にしてくださいね?」

「うん!」

「……へー」

「なんだよ、ニヤニヤして」

 

 一夏が変な顔でこちらを見ている、何だこいつ。珍しい物を見る目しやがって。何故だかすごいブーメランを投げられている気がする。

 

「別に? にしてもあの透がなぁー?」

「?」

「うふふ……」

「??」

 

 何なんだ二人して? まあ喜んでるしいい……のか?

 

 

 帰るまでが臨海学校。色々あったが楽しい二泊三日も終わり、元の日常へ。

 そして八月。夏休みが始まる。

 

「……何時までいるんですか?」

「んー? ……えへへー」

「聞いてます? ……おーい」

「まあまあまあ、邪魔だったら出ようか?」

「何が邪魔なんだ、何が」

 

 

 

第23話「臨海学校三日目・土産」

 

 

 

 




例によって4巻の内容はまだ書いてないので2月になったら更新します。
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