【完結】害虫生存戦略   作:エルゴ

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毎日寒すぎて嫌になるので初投稿です。


第25話「帰省・お好み焼き」

 

「うおりゃああっ!!」

「ぐあっ!」

 

 アリーナに響く金属音とかけ声、俺と一夏が戦う音。

 夏休みも半ば、暇を持て余した俺たちは第二形態移行した白式のテストも兼ねて試合をしていた。

 

「あーもう速すぎだろクソが!」

「だろ? やっと慣れた所だ!!」

 

 肩へ一撃、続けて足へもう一撃。胴への攻撃は何とか躱してカウンター……はあっさり回避。

 完全に速度負けしている。零落白夜はまだ発動されていないとはいえダメージも大きい。これが第二形態、凄まじい強化だ。

 だが……。

 

「いつまでその動きができるかなぁっ!?」

「!?」

 

 一瞬攻撃が止まった隙に《Cockroach》を展開、射出・起爆して距離を空ける。

 こいつの弱点は既に察しが付いている。後はそこを突いてやるだけ。

 

「大型化したスラスター! 新しい装備! どれも強力で素晴らしいなぁ! だがっ!!」

「ぐうっ!?」

「燃費は悪いままだっ!!」

 

 確かに性能は爆発的に強化されている。だがその性能を発揮するためのエネルギーは以前にも増して大量に必要。それに零落白夜が乗せられれば燃費は最悪。

 

「もう攻勢は終わりかぁ!? ならこっちの番だ!」

「ちぃっ!!」

 

 距離を保って《Centipede》の連撃。基本の対応は第一形態と変わらない、一つ違う点は──。

 

「食らえっ! 避けたぁ!?」

「狙いが甘いんだよオラ!」

 

 左腕の新武装《雪羅》から放たれる荷電粒子砲。威力が高く、当たれば紙装甲の俺はただじゃすまない。が、当たらなければどうということはない。

 

「《Bonbardier》、はい終わり」

「なっ……」

「どかーん」

 

 高温の火柱が一夏を襲う。ただでさえ減少していたシールドエネルギーは底を尽き、決着を告げるブザーが鳴る。

 

「俺の勝ち! 何で負けたか明日まで考えとけ!」

「この野郎……!!」

 

 

 

「ぐおおお……また負けたぁ!」

「まだまだ追いつかれてたまるかよ! ……と言いたいが、結構実力つけてきたな。そろそろやべぇかも」

「そうか? 確かに勝ちは増えてきたけど」

 

 ロッカールームで着替えながら今日の反省。俺たちの戦績は大体2:1で俺の勝ちってとこか。少し前までは3:1ぐらいだったので差は縮まってきている。

 

「やっぱ燃費だよなー。出力調整しても厳しいぜ」

「それもあるけど、まずは荷電粒子砲の扱いだろ。なんだあのクソエイム」

「それが白式にはセンサーリンクがないんだよ。完全に目測で撃ってる」

「……どこまで格闘特化なんだ」

 

 普通どんな機体でもセンサーリンク──ハイパーセンサーと同期して射撃をサポートする機能──は備わっている。それがないと言うことは完全に格闘戦しか考えられていないということ。

 射撃武装が増えてもそれは変わっていないらしい。やっぱり欠陥機だな?

 

「目測しかないならひたすら練習するしかないな。デュノアか、オルコットにでも教えてもらったらどうだ?」

「そうするかぁ……」

 

 強化は入っても問題は山積み。一夏が俺に勝ち越すのは何時になるやら。

 

「……なあ、一ついいか?」

「何だ?」

「あのさ……あの揚げパンみたいな装備の魅力は何時教えてくれるんだ?

「あっ」

 

 完全に忘れてた。《Lethocerus》の魅力、そんな話もしていたっけ。

 しかし……うーむ。

 

「あれだけ気に入ってたんだからきっと凄い装備なんだよな? 教えてくれよ」

「えっとぉ……それがぁ……」

「ん?」

 

 やめろそんな純粋な瞳で俺を見るな。言いづらくなるだろ!

 

「あの……さ」

「うん」

「臨海学校から帰ったらクッソダサいし性能もピンポイントにも程があるなって思った」

「おい!」

「いやだってさぁ! 何だよあの茶色いクソスーツ! 開発者の神経を疑うわ!」

「作ったの束さんじゃないのか?」

 

 うん。

 

 

 

 

「あとは……あれか」

「何してるの?」

 

 帰って自室。いつも通り不法侵入している楯無先輩に見られながら荷物をまとめる。

 

「ただの荷造りですよ。……あった。これで全部だな」

「随分大荷物だけどどこか行くの?」

「ええ、実家? に帰ろうかと」

「え?」

 

 夏休みだからな。ついこの間会ったばかりの束様はともかく、クロエはもう半年近く会っていないし。たまには顔を出しておきたい。

 

「日帰りですがね。でも常に移動している拠点を実家と呼んでいいのか……いいか」

「待って待ってそれ篠ノ之博士の所? 会えるの?」

「? はい。身内ですし……」

 

 別におかしいことはないだろう。世間では消息不明でも身内なら別。連絡しておけば普通に会える。

 

「あ、でも俺以外はほぼ無理だと思いますよ。織斑先生と篠ノ之さんとかはわかりませんが」

「……もう考えるのはやめたわ」

「はぁ……」

 

 そんなに驚くようなことだったのか……。これからは他人に言わないでおこう。

 

「それで? いつ行くの?」

「今からです。ちゃんと外出許可は取ってるので」

「えぇ……」

 

 手続きしないと気軽に外出もできないのは窮屈だよな。そう何度も利用しないから困ることはないが。

 

「それでは荷物もまとまったことだし俺はこれで、ではまた」

「う、うん……」

 

 疲れたように見送る先輩を背に部屋から出る。扉を閉じて振り返れば。

 

「やあとーくん! 待ってたよ!」

「はいどーも。元気してました?」

「もっちろん! じゃあ帰ろっか! くーちゃんも会いたがってたよ!」

 

 我が主人の束様がいた。この人どこにでもいるな。

 

 

 

 

「お帰りなさいませ、透さま」

「やあクロエ。料理は上手になったか?」

「はい。パン生地が膨らむようになりました」

「……うん、頑張れ!」

 

 拠点へ戻ってすぐにクロエの出迎え。これも久しぶりだな。これが実家に帰るという感覚だろうか。それよりまだ焼くとこまで行ってないのか?

 

「ふいー。改めてお帰りとーくん! 日帰りだけどまた会えて嬉しいよ!」

「はい。あとこれお土産です」

「わーい! どこにでもあるクッキー!!」

「こんなんでいいんですか……?」

 

 買ってきといて何だが喜びすぎでは? もっといいもの買ってきたらどうなるんだろう。

 

「クロエにもあるぞ、まんじゅうとキーホルダーとタオル」

「ありがとうございます」

「待ってくーちゃんの方が多くない?」

「何ででしょうねぇ。自分の胸に聞いてください」

 

 普段の行いでも考えて欲しい。

 

「まあいっか! 早速だけどやって欲しいことがたくさんあるんだ! 生体データに機体整備に……」

「わかってますって。順番に、ですよね?」

「うん!」

 

 先ずは生体データから。身体測定、体内スキャン、運動テスト……一つ一つこなしていく。

 

「ちょっと背伸びたねぇ。このまま2mになって?」

「まだ175cmもいってないんですが何年かかるんですかね」

 

 

「ん、異常なし。逆につまらないなー」

「健康なのが一番じゃないですか?」

「そうだけどさー、どうせなら角とか生やしてよ」

「無理に決まってんでしょ」

 

 

「うーんそこそこ! つまんない!」

「一応鍛えてるんですけど……もっと増やすか」

 

 

 数時間後。

 

「つまんない! もっと成長して!!」

「すみません……」

 

 検査結果は全て異常なし。何もなさ過ぎてつまらない始末。こちらとしては一安心だが。

 

「じゃあ次はIS見せてね。本命はこっちだし」

「はい、作業見ててもいいですか?」

「いいよ。でもなんで?」

「変なもん仕込まれないようにしたいので」

「そんなこと……しちゃおっかな」

「おい」

 

 油断も隙もありゃしない。しっかり監視させてもらおうか。

 

「んーやっぱりこちっちも不思議なフラグメントマップだねぇ。でも白式とは違う……同じ男子でもこんなに差が……」

「ほぉー」

 

 フラグメントマップとはISが発展していく道筋、人間で言えば遺伝子に近い。そもそも機体によって差が生じる物ではあるが、男の俺の機体ともなるとさらに違うのか。

 

「そもそも俺たちがISを動かせる理由ってのはわからないんですか?」

「それいっくんも聞いてたねー。まあわかんないんだけどね。正確には。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「? はぁ……」

 

 動かせる理由。それはきっと俺たちの出自、『織斑計画』が関わっていると見て良いだろう。それぐらいしか共通点がない。

 だからなんだという話でもあるが。

 

「一回バラバラにしたらわかるかもね、どう?」

「どうとは」

「やる?」

「やりません」

 

 絶対死ぬやつだろうそれは、それぐらいわかるぞ。

 

「にゃはは、まあやんないけどねー。わかんなくても構わないし。自己進化? ってことで」

「曖昧だぁ……」

 

 調べる気が無いから知らないってことか。この人らしい。どうせ俺が知ったところで何が変わるわけでもないがな。

 

 

 ……少し暇ができた。束様は検査結果をまとめるのに忙しそうだし。クロエも席を外している。

 何をしようか、どうせ手伝っても邪魔だし……ん?

 

「何だこれ、資料?」

 

 足下にはなにやら紙切れ。書いてある図面や殴り書きの文から察するに開発資料。

 書いてあるのは……【ゴーレムⅢ】? Ⅱはどうした。随分と物騒な性能だ。また何かちょっかいかける気だな? 最低でも予告はしてほしいものだ。

 

「とーくーん! ちょっと来てー!」

「はーい! 今行きまーす!」

 

 お呼びだ。軽く目を通した資料を放り投げて束様の元へ。

 ……にしても汚いなここ。いつか掃除するか。

 

 

「はいおっけー。これにて検査しゅうりょー!」

「お疲れ様でーす。後は何かあります?」

「ない! それよりお腹空いたからご飯行こ! くーちゃんもね!」

「はい。どこに行きましょうか?」

「そうだなぁ……束さんのお腹は──お好み焼き!!」

 

 

 

「いらっしゃいませー。何名様でしょうか?」

「三人です」

「「……」」

 

 そして数分後。束様のリクエストで俺たちはお好み焼き屋へと来ていた。おそらくチェーン店。夕食時とあってそこそこ混んでいる。

 

「注文決めますよ。何がいいですか? 束様はおしぼりで顔拭かないでください。クロエも真似しないように」

「私黒糖アイスと豚玉と明太チーズ玉とシーフードと塩焼きそばとじゃがバターとイカ焼き!!」

「えっと……この、海老玉で……」

「店員呼びますねー。すいませーん!!」

 

 呼べばすぐに来る。これが従業員教育が行き届いていると言うのだろうか。

 ちなみに俺たちは変装してここに来ている。全員色んな意味で目立つしな。束様の変装がスーツなの凄い違和感だが。

 

「ご注文をどうぞ!」

「はい、豚玉と明太チーズ玉、海老玉、シーフード玉全部一枚ずつ。それと塩焼きそば、じゃがバター、イカ焼きを一人前お願いします」

「かしこまりました!」

「黒糖アイス」

「え?」

「すいません以上で」

 

 デザートは後にしてくれ。人見知り高校生みたいな注文するな。

 

「クロエはともかく、束様はもういい大人なんですから自分で注文してくださいよ」

「……」

「黙らないでください。クロエも言ってやれ」

「……ごめんなさい」

「おい……」

 

 二人の人嫌いもいい加減直してもらわないといけないな。このままだと一生一人で飯食いに行けないぞ。

 

「お待たせしました!」

「おっ、来た来た」

 

 ……まあ、小言の続きは後にしてやろうか。食事中ぐらいは勘弁しないと、な。

 

 

 

「焼くよー! どんどん焼くよー!」

「全部一遍に載せないでください!」

「もう焼く場所がありません……」

 

 あーもう滅茶苦茶だよ。適当に焼いてるもんだからどれがどれかもわからない。不味くはならんだろうが……

 

「クロエ、混ぜすぎると美味くないらしいからその辺でやめとけ」

「そうなんですか? 束さまは腕が見えないぐらいのスピードで混ぜてましたが……」

「空気がどうとからしい。この人は頭いいけど馬鹿だから見本にするな」

「わかりました」

「おかしいな束さん尊敬されてない?」

 

 さあどうだか。

 

「あれ、とーくんの注文って何だっけ?」

「してませんよ」

「なんで? お腹空いてない?」

「もちろん腹ぺこですが、理由は十分もすればわかります」

「?」

 

 焼き上がりまであと数分。食べ始めればわかる。

 そして十分後。

 

「ね、ねーとーくん……?」

「はいなんでしょう。今クロエの海老玉返すのに集中してるんですが」

「すみません……」

 

 珍しく申し訳なさそうな顔で声をかけてくる束様。織斑先生でも見たことなさそうだ。

 正直ものすごく無視したいが、どうせ予想していたことなので素直に応える。

 

「これ半分食べてくれない?」

「でしょうね」

 

 最初から大量注文、そして絶妙に不味くなる焼き方、アホみたいにかけたソースとマヨネーズ。結果、束様のギブアップだ。

 

「だってぇ! ここのお好み焼き不味いんだもん!!」

「店内でなんてこと言うんですか! あんたの腕が悪いんですよ腕がぁ! あっすみませんなんでもないです」

 

 子どもか! どう考えても自分が悪いだろ! 店員に謝るの俺だぞ!

 全くこういう時に普段の器用さが消滅するのは何なんだ。

 

「ぐぬぬ……で、食べてくれる?」

「はいはい食べますよ。その為に注文しなかったんでね」

「さっすがとーくん! 束さんの右手中指!」

「ちっさ」

 

 いや、残したお好み焼き食ったぐらいで右腕とか言われても嫌だけど。

 

「透さまこれおいしいです!」

「はいはい」

「とーくん顔にソースついてる。写真撮ろー」

「写真はいいですけどさっき顔拭いたおしぼり近づけないでください」

「ごめん」

 

 潔癖症ではないがそういうのはやめてくれ。周りが見てる。

 

「じゃあデザート頼もうかな! 黒糖アイスと抹茶アイスとチョコレートサンデーと……」

「学習してください」

 

 また押しつけられてたまるか。

 

 

 

 

「いやぁー食べた食べた! 束さんお腹いっぱい!」

「そうですか……ウッ……」

 

 このアマ……! 結局半分以上俺が食べたぞ。小食のクロエには食わせられないし、無駄ない優しさを見せたのは間違いだった。腹の中で失敗作のお好み焼きがぐるぐるしている。

 

「クロエはどうだった? 楽しめたか?」

「はい……とても、気に入りました。今度挑戦してみますね」

「おう。束様に食わしてやれ」

「!?」

 

 今回の罰だ。実験台になれ。

 

「ぐぐぐ……そうだ、そろそろ帰る時間かな? 門限は大丈夫?」

「ん? あー……今から帰ればなんとかってとこか。ここでお別れですね」

「そっかー、次は何時かなー?」

「もう決めてるんでしょう? どうせ面倒事を持って」

「にゃはは、バレてる」

 

 本当に困ってるんだけどなぁ。やめてくれ。

 

「よし、ちーちゃんに怒られるのもかわいそーだしここでバイバイしよっか! ね、くーちゃん?」

「はい。透さま、お元気で」

「ああ。クロエも元気で、束様は……ちょっと落ち着いて」

「ひどい!!」

 

 二人に見送られながら駅へと歩く。初めての帰省。ずっとバタバタしていた気もするが、悪くはなかった。今度は冬か、もっと後か。今度はどこへ行こうか。

 数歩進んで振り返れば、そこには誰もいない。相変わらず消えるのも早い。

 

「……帰るか」

 

 

 

 

「……うんうん、全ての数値が異常なし。全てが予想通り。さすがは束さんだね」

 

「見たいのはここから。この平凡でつまらないデータが、どれほど異常で愉快な変化を示すのか。束さんはそれが知りたいのだよ」

 

「そうだなぁ……まずは、意思(こころ)のないコアがどう進化するのか、試させてもらおうかな」

 

 

 

「束さま、明日のお好み焼きは何玉がよろしいですか?」

「え゛、明日? ……えーと、イカで……」

 

 

 

第25話「帰省・お好み焼き」

 

 

 




束さんが外食する時は中途半端に反抗期の高校生みたいになりそう
母親に全部注文言わせる
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