【完結】害虫生存戦略   作:エルゴ

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前回予約投稿失敗した分遅く更新したのにね


第28話「羽化・終了」

 

「『やっと出てこれた。第二形態移行(セカンド・シフト)も手間がかかるもんだな」』

 

 形態移行(フォームシフト)が完了。先ほどまで自分を包んでいた、今は玉子の薄皮のようにペラペラとなった膜を押しのけて身体を起こす。

 

「『敵はーひぃふぅみぃ、一体減ってる……のは俺が取り込んだんだったっけ。二人は……ああ、生きてるな」』

 

 少し離れてこちらを窺う無人機を数えて、ついでに二人の無事……おそらく無事を確認。

 

「『んん? なんか声おかしくないか? ……まあいいか」』

「と、透くん? 大丈夫なの?」

「『あー……まあ()()大丈夫ってことで。そんなことより、先輩は簪と下がっててください」』

「え、いやちょっ」

「『後は俺が……片付け(殺し)ます」』

 

 先輩が止めようとしているがこれは無視。俺も今は動けているが、都合よく全快したわけじゃあないんでな。

 羽を伸ばすように、蛹の中では押し縮められていた装甲(身体)を広げながらデータを取得。これが【Bug(俺たち)】の第二形態(セカンド・フォーム)──

 

 ──【Bug-VenoMillion(バグ・ヴェノミリオン)】。

 

「『ほぉほぉふーん、なるほどね。大体理解した……」』

 

 片っ端から吸収した武装は統合され、第一形態より遙かに巨大化した装甲に変化。両腕に《Ant》、左手に《Longicorn》と《Hornet》、右手に《Bonbardier》、尾は《Centipede》と《Scorpion》、さらにさらに……多いな。もう使うときに確認しよう。

 

「───」

「……──」

「『ああ! 待たせて悪い。何時でも来いよ、もう確認は済んだからな」』

「──、………」

「『来ないのか? 随分消極的になったな。なら……」』

 

 ごきっ…ごきり。

 

「『こっちから、だっ!!」』

 

 思い切り踏み込んでの突進、両脚の《Grasshopper》と増設されたブースターによって得た《白式・雪羅》にも匹敵する加速度。

 もう追いつけない、追いつかせない。まだ俺が動ける内に、全て破壊()してやる。

 《Longicorn》の大顎で挟み込み、万力のごとく締め上げる。このままへし折ってやってもいいが、どうせならもっといいことしよう。

 

「ギッ……ギ……」

「『機械のくせに苦しそうな声出すじゃないか。潰しがいがあるよ」』

「ガガッ」

「『燃えちまえ」』

 

 瞬間、右腕の砲口から放たれた爆炎がゴーレムⅢを包む。予想以上の威力、対人では要調整だな。

 

「……ギ、」

「『まだ動け(生きて)るな? ちゃんと()してやるからっ!?」』

「……」

 

 脇腹に衝撃。まだ塞がってない傷口に響く。横に控えてる奴が撃ってきたか。

 

「『……邪魔するな、お前らがしていいのは順番待ちだよ」』

 

 どうせそう時間はかけられないんだ。一体あたり一分で。

 

「『死ね」』

「──ガッ!?」

 

 尾を伸ばして薙ぎ払い、追って背中から追尾爆弾(ゴキブリ)を飛ばして起爆。

 切れ味、スピード、火力。その全てが以前とは比較にならないほど強化されている。絶対防御無しで熱線を受け切れたことから防御力も同様。まだ試していない部分もそうだろう。

 

「『ッハハ、ハハハハハ! いい、いいぞこれは! 多彩さはそのままに、全ての性能がグレードアップ、理想以上の進化だ!」』

 

 楽しい。思う存分力を振るえるのが楽しくてたまらない。身体が万全ならずっと続けていたいぐらいだ。

 

「『ぶっ、潰れ、ろっ!!」』

「──!!?!?」

 

 ぐしゃっ。

 

 地表に落下した敵に垂直落下。飛蝗の脚と落下の加速の合わせ技。致命的な破損を与えたことが感触で伝わる。

 

「『次はお前だ」』

「!? ガッ!?」

 

 標的を変えて無傷のゴーレムへ、こいつはタコ殴りの刑だ。

 

「『ははははははは!!」』

「……ッ、……! ……」

 

 耳障りな破壊音が響く。拳が当たる度に装甲が歪み、砕け、破壊されていく。それでも攻撃は止めない。息の根止めるまで──

 

「『これで、死ねっ!」』

「──ッ!?」

 

 頭──厳密には頭だったひしゃげたものを掴んで叩きつけ、ついでに一蹴り。これで三体目、全部潰した。

 その証拠にアリーナの封鎖は解除され、内部障壁も収納されている。……ほとんど俺が取り込んじまったが、これ悪くないよな?

 

「あの無人機を、たった一人で……」

「『先輩、怪我はありませんか?」』

「う、うん……。ってそっちの怪我は!?」

「『これが終わったらちゃんと医務室行きますよ。簪は……大丈夫そうかな」』

 

 ──ザザッ

 

『九十九! 聞こえるか!? 何が起こっている!?』

「『……ああ先生。お疲れ様です」』

 

 通信も復旧。これ以上敵は来ないと言うことか。とりあえず安心だな。

 

「『ちょっとアクシデントで、襲撃がありました。全部倒しましたが怪我人が俺含め三人、用意お願いします。では」』

『あ、ああ……』

 

 なんか困惑しているな。スラスラ説明しすぎたか? 吃るよりはマシだろうしいいか。

 

「『連絡はしときました。少し待てば救護……が……あたた」』

「大丈夫!?」

「『ちょっとアバラが。本当は今すぐ寝たいんですけどね……まだやり残しがあるんで」』

「やり残し?」

 

 先輩の問には応えず、倒れた無人機へと歩き出す。

 

「『狸寝入りのつもりか? この程度で騙せると思ったなら心外だな」』

「……」

「───」

「……──」

「『ほら、制作者の性格が滲み出てるぞ」』

 

 これも聞かれているだろうが、この際だし好きに言わせてもらおうか。

 どうせまだ生きていようと関係ない。もうこいつらは、指一本触れずに殺せる。

 

「……ギ?」

「ガッ!? ──ギ─」

「……!? ─ガ──」

「『ははっ。殺虫剤かけたゴキブリみたいだ」』

 

 見透かされた途端動き出した無人機は飛び立つこともできず、ただ地べたで這いずるのみ。なぜ思うように動けないのかわかっていないようだ。

 束様の研究所でよく見た。退治役押しつけられてきたからなぁ。今度は逆に素手でやらせようか。

 

「『説明が欲しいか? 欲しそうだなぁ、教えてやるよ」』

 

 聞かれちゃいないが、勝手に話す。完全に死ぬまで時間もあるしな。

 

「『俺が全員に攻撃した時、尻尾で吹き飛ばしたやつな。あの瞬間、攻撃と一緒にナノマシンを植え付けておいた」』

 

 このナノマシンは【ミステリアス・レイディ】のアクア・ナノマシンを解析して得たもの。性能は全くの別物になったがな。

 

「『こいつが対象のエネルギーを少しずつ奪って、ハイパーセンサーやらその他の感知システムやらにジャミングをかけてる。生身のないお前ら無人機はそれがなきゃ何もできない」』

「…………」

「──」

「……──……─」

 

 有人機ならば、ハイパーセンサーが遮断されても生身の感覚である程度は補える。しかしこいつらは無人機。電子制御が効かなければ盲目失聴状態に等しい。まともに動くこともできないだろう。

 それでも生きているとはさすがのしぶとさ。二度と見たくないな。

 いい加減傷の痛みも我慢ならなくなってきたし、そろそろ終わらせよう。

 

「……ギガッ!? グ……」

「──キ、ヵ……」

「ガ……──」

「『そしてこれが単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)。名前はそう……

 『Venomic The End(暴毒命終)』てとこかな」』

 

 ジャミングを機動制御まで拡張、ついでに奪うエネルギー量を引き上げ、一気に削りきる。つまりはナノマシンの暴走。これで完全に動けない、目も触覚も手足も羽も捥がれた蝶と同じだ。

 

「『あとは──って、ん?」』

「────」

「──」

「─」

「『ああ、もう死んだか」』

 

 完全に沈黙したことを確認。ワンオフも解除。意外とあっけなかったな。

 

「九十九! 大丈夫か!」

「『助かった……か……」』

 

 やっと救援が来た。力が抜ける。ISも解除され、もう立つ気力も残っていない。

 

「あ、がふっ…」

「透くん!」

 

 気が抜けた瞬間、勢いよく吐血。手も足も内臓も千切れそうなほど──足は本当に千切れてるけど──痛い。どうやらこいつの力は、今の俺には大き過ぎたらしい。

 先輩の声、元気そうだ。身体張った甲斐があったな。

 これで安心して、寝られ……る……。

 

『じゃ、また後で』

 

 

 

 

 モニターに照らされた薄暗い部屋の中。機械部品で埋まった空間の真ん中で一人笑い転げる。

 笑う理由はもちろん、目の前のモニターに映し出された戦闘模様。

 

「あっははははははは!!! すごい、すごいよとーくん! 期待以上で最高だ!」

 

 可笑しくて可笑しくて堪らない。なんとなく拾ったちっぽけな失敗作が、これほど魅せてくれるとは。全く気まぐれも馬鹿にできない。

 

「ひーーーっ、ひーー……、ふぅー……。いやぁ。まさかの結果だねぇ。第二形態移行(セカンド・シフト)は予想通りだったけど、吸収とはねぇ」

 

 学習したデータを形態移行(フォーム・シフト)に反映させて新たな武装を構築するのは珍しい話ではない。いっくんの【白式・雪羅】もおフランスの武装を借りた経験から荷電粒子砲を生み出しているし、紅椿の無段階移行(シームレス・シフト)も同じ原理だ。

 しかし【Bug-Hu……今は【Bug-VenoMillion】は、データだけでなく取り込んだパーツと機体からも構築している。ナノマシンはあの水色、ジャミング機能はゴーレムⅢ。さらに本来の機能から大幅に変更して使いこなしている。

 この原因は何か、思い当たるのは……コアごとゴーレムを取り込んでいたこと? しかし送られてきた情報ではコアは一つのまま……。

 

「それよりも、もーっと気になるのはーー?」

 

 簡単な考察は置いといて、もう一つの疑問へ思考を向ける。

 

()()()()()()かぁ、何時生まれたのかなぁ、どんな子かなぁ。どこまで一緒なのかなぁ、覗いてみたいなぁ」

 

 搭乗者とコアの人格が同一なんて今まで起こりえなかった。空っぽのコアに人が触れたことなんて無かったのだから。

 好奇心が止めどなく溢れてくる。今すぐにでもコアに接続したい。隅から隅まで調べ尽くしたい。

「でも我慢我慢。一時の楽しみで計画をおじゃんにしてられない。やるなら然るべき時に、ね」

 

 だから私は動かない。いつかのその日を待って。

 

「束様、クロワッサンが焼けました。なぜか真っ黒ですが」

「わ、わーい……」

 

 どうしよう、今すぐ出発しようかな。

 

 

 

 

『はい』

「はいじゃないが」

 

 倒れてから体感で数秒後、再び黒一色の空間に俺はいた。

 目の前には俺(2)。どこかやりきったような表情でこちらを見ている。

 

「さっきぶりだな、俺」

『さっき? ……ああ。お前はそう思ってるのか』

「違うのか?」

『いや、何でもない』

 

 変なことを言うなぁ。何がおかしかったのだろう。

 

『とりあえず。第二形態移行おめでとう、俺』

「移行したのお前だろ? 俺──いや、【Bug-VenoMillion】」

『違和感あるなぁ。俺のことなのに』

「……否定しないんだな」

『隠してないからな』

 

 目の前の俺(2)。バレちゃったかとふざけた笑いを貼り付けた野郎は、俺でいて俺じゃない。

 たった今答え合わせしたこいつの正体は【Bug】のコア人格。コアの深層にはそれぞれ独立した意識があり、それが個性として機体の適正に反映されると聞くが……それがこいつか。

 確か一夏も第二形態移行の時にそれらしき存在と会ったと話していた。どこまで本当かは知らないが。

 

『じゃあ改めて自己紹介。俺は【Bug-Human】改め【Bug-VenoMillion】のコア人格。元々すっからかんだった深層意識に、お前の人格をコピーして生まれた』

「は? コピー?」

 

 俺のコピー? すっからかんの深層意識? 何を言っているんだこいつは。全てのISコアには意識があって、それで個性が……あ。

 

「また束様(あの人)か!」

『そういうこと。母さ、あの人の仕業だよ』

「待て今母さんって言いかけなかったか?」

『……仕方ないだろ。あれでもIS(俺たち)の生みの親なんだから』

「なるほど……いや、それでもやめてくれ。俺の顔でそう言われると寒気がする」

 

 現実でもないのに鳥肌が立ったぞ。あの人が聞いたら泣きそうだけど。

 

『わかってるよ。今だって言い直したろ』

「ああ、これからも絶対に言うなよ」

『はぁ……まぁいいさ。俺もそこまで好感持ってないからな』

 

 こいつも同じかぁ。そりゃこんな目に遭わされればな。いい加減愛想も尽きかけている。

 

「にしてもコア人格か……。もしかして、さっき俺の声が変だったのもお前のせいか?」

『ああ。丁度表に出られそうだったんでな。声が被っちまうのは仕様だ』

 

 そんなに軽く出て良いものなのか? 深層意識のくせに、その内何もなくても出てきそうだな。

 

『もう出てこれるぞ。経路(ルート)はもう確保してある。まあ基本は戦闘中ぐらいしか出るつもりはないし、出た分の仕事もするさ』

「出るのか……で、仕事とは?」

『そうだな、あまり干渉して周りにバレたくはないし……情報処理と、機体制御のサポートとか?』

「ほぉ……」

 

 悪くはない。というかかなりいい。正直形態移行したばかりで完全に機体をものにできてないし、ラーニングした情報だけでは限界がある。それをある程度補ってくれるのはありがたい。

 

「わかった。こちらからもお願いする」

『やったぜ。いやありがとう。俺も生まれたてでな、外の世界が見たいのさ』

「……そうか、じゃよろしく」

『任せとけ。それと……()()()

「ん? それって──」

 

 どういうことだ、と言いかけて瞬間、空間が歪み出す。立っていられない、いや寝ていられない? 自身の輪郭すらもあやふやになって──

 

「ん」

 

 ──目を覚ませば、自室のベッドに横たわっていた。

 

 

 

「……な、あ……?」

 

 相当な時間寝ていたのか、喉が渇いて声が出ない。その割には軽い身体を起こして辺りを見渡す。

 

「のみも、ん」

 

 すぐ側に用意してあった水のペットボトルを空け、一気に飲み干す。そこそこ冷えた水が喉を伝う。なんとか声は出せそうだ。

 

「──はぁ。……ん?」

 

 ボトルの合った場所に謎のボタンとメモ。どうやら書き置きらしい。

 

「『起きたら押して』……ナースコール的なあれか? はい」

 

 軽く押し込むが何も起きない。壊れてるのか? もう一度押してみるk

 

 ダダダダダダダッ!!! ピンポンピンポピンポピンピンポン!!!

 

「何だこれ怖い怖い怖い!」

『透くん!? 起きてるのね!?』

「起きてる起きてます! 怖い!」

 

 バァン!(大破)

 

「透くん!!!!!」

「わあああ!!?」

 

 ドアがべっこべこ! もう閉まらない!

 

「よかったぁ……、中々起きないから心配したのよ……?」

「あ、はい。すみません……」

 

 随分心配をかけたみたいだ……けど、目の前でドアぶっ壊された後だと少し怖い。

 

「全身ボロボロでっ! 何とか傷塞いでも起きないし! もうもう……わあぁぁぁん…」

「先輩わかったから落ち着いて……」

 

 そんなに酷い怪我だったのか。今は殆ど塞がってるし、あの全身を引き裂かれる様な痛みもない。ナノマシン様々だな。

 あれ? そういえば切り飛ばされた左足はどうなってる? シーツ越しで直接見えないが、()()()()()と言うことは繋がったのか?

 

「ひぐっ、それは……えっと、見た方が早いわね」

「はぁ……」

 

 そう言いながら布団を捲る。

 

「これは……義足?」

「うん。ISが解除されて、君が倒れたあと……これが残ってたの」

「ということは待機形態か。え、これが?」

「そう。一旦外して調べようにも、がっちり固定されてて、切られた足も繋げられなかった。今は冷凍保存してあるわ」

「えぇ……」

 

 どうしてこんなことに。いや欠損したまま形態移行したからか。なにも固定しなくたって……と考えるのは余計だろうか。

 

「でもこれで感覚があるのは変なんですよねぇ。生体同期型ってやつかな」

「……それ本当?」

「はい。気持ち悪いくらいに生身そのままです」

 

 こうして見ても全く違和感がない。ボディペイントしてると言われたら信じてしまいそうだ。

 

「うーん……それはいずれ調べるしかないわね。他におかしいところはない?」

「今のところは無い……ですけど、一つ質問いいですか?」

「? なぁに?」

「俺ってどれぐらい寝てました? 三日ぐらい?」

 

 まさか一日二日ってことは無いだろうし、三日ぐらいだろうか。もしかしたら四日五日、最悪一週間ぐらい経っているかもしれない。

 貴重な夏休みが減ったのは残念だが、少しでも残っていれば……。

 

「……二週間」

「え?」

「だから、二週間。新学期は始まってるわ」

「……は、は、はぁ?」

 

 俺の夏休み、終了。

 

 

 

第28話「羽化・終了」

 

 

 




ストックが無くなってしまったので、作者は初投稿をやめてしまいました
書き溜めが必要なせいです
あ〜あ
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