大体2週間に一回更新が今の生活に合うのかなぁと思い始めました
「さっさと諦めさいよこのっ……おらっ!」
「こっちの台詞っ……だ!」
もうどれだけ戦っただろうか。作戦通り屋外まで逃げることは成功し、そこで戦い始めたはいいものの……
新しい武装の火力に押されつつも二人で反撃を重ね、どうにかここまで耐えている。
「クソ……粘りやがって……!」
「あらぁ? お疲れのようですわね? ……ふぅー」
「無理しない方がいいわよー? ……ひぃー」
「テメエらもだろうが……! ……はぁー」
結果、三人揃って疲労困憊。もはや交互に攻撃・煽りを繰り返し続けるぐだぐだな戦いになっている。
二人がかりでこの始末と言うべきか、それともよくもたせている方と言うべきか。とにかく今度からはもっと体力つけようと思ったわ。
「今度はこっちの……あ?」
「はい?」
「何?」
突然動きを止めるオータム。誰かと通信? こんな時に?
隙だらけではあるが、正直こっちから仕掛けられるだけのエネルギーは残ってない。セシリアも同じみたいだ。
「もう帰れ!? いくら何でも横暴だぞ……ハァ!? ISに爆弾!? おいちょっと待てわかった帰るから!! やめろ!!!」
「なんか揉めてますわね……」
「上司かしら?」
声を聞くに帰還命令が出ているらしい、爆弾は……無視したら爆破されるのだろうか。一回逆らおうとしているのはどんな関係性なのか。
「おいガキ共! 勝負はお預けだ! 今度こそぶっ潰してやるから覚悟しとけ!」
「あらあら聞きました鈴さん?」
「小物丸出しね!」
「何だとこのっ……~~っ覚えてやがれ!!」
追えない代わりに煽りをかまして、逃げ去るオータムを見送る。最後まで小物っぽさが消えないやつだったなぁ。
「さて、他の所に……って感じだけど」
「ええ、でも……」
「「疲れたぁ……!」」
あたしもセシリアも疲れ切ってる。シールドエネルギーももうほとんどない。これじゃあどこへ行っても足手まといだ。
通信のまだ復旧してないし、今はアリーナの整備室まで戻って千冬さんと合流しよう。
「「みんな/みなさん大丈夫かしら……」」
「……残念。どうやらここまでみたいだわ」
「そう、私たちはもっと続けてもよかったのに」
「無理ね。このままま続けても、あなたたちが勝つことはないわ」
あちこち崩れ、焦げ後のついた控え室。黒煙が燻る中で、スコールは突然の離脱宣伝をした。
前回より遥かに上がった熱量と攻撃の苛烈さに私たちは押されていた。まだ続けられるのは本当だけど、それはあくまで戦闘を継続できるということであって、勝てる見込みがあるわけではない。
「全く持って不本意だけど、上司……みたいなものからの命令なの」
「みたいなもの……?」
「中間管理職なのおば……あなた」
「ちょっと気にしてるから言わないで……おばさんの方じゃないわよ?」
「……ごめん」
悪の組織でも中間管理職は存在するのか。そんなことを考えている暇じゃないけれど、ほんの少し同情する。
「はぁ……じゃあね、生徒会長とその妹さん。次会う時は決着をつけましょうか」
「ええ。今度こそ水浸しにしてやるわ」
「四八回爆破してやる」
「簪ちゃん!?」
「行くわよ簪ちゃん、まずは──」
「──透のとこでしょ? わかってるから」
「うん。間違いなくピンチだから助けてあげなくちゃ」
透くん、もっと言えば一夏くんも含めた男性操縦者はこれまで何度も狙われてきた。今回もそうなっている可能性は非常に高い。そして透くんは絶対に無茶してる、いくら一夏くんと箒ちゃんがいてもどうなってるか……。
早く行かないと!
「なっ!?」
「何っ!?」
僕とラウラとの連携で戦いは有利に進み、とどめに繰り出した《
こんなことができるのはこの場にただ一人。
「何のつもりですか? フォルテ先輩」
「…………」
「フォルテ……」
いつの間にかダリル先輩の傍らにいたフォルテ先輩が、彼女の専用機を展開している。この氷壁は機体の能力か。
けど、大事なのはそこじゃない。
「わかっているのか? その行為は私たち、いや、この学園への裏切りだぞ」
敵に寝返った──正確には元より敵だったダリル先輩を守るということは、僕たちの敵になること。冗談やうっかりでは済まされない。
「……いいのかよ。誘っといて何だが、こっちはろくなことがねーぞ」
「……わかんないっスよ。裏切りとか、運命とか。でも、でも……」
「ウチは先輩が好きで、愛していて、だからっ……貴女といたいっ!」
さっきまでまともに動くこともできないほど動揺していた彼女から、空間そのものが凍りつくような意思が溢れ出す。いや、これは!?
「くぅっ……!」
「どうした!?」
「これが、ウチの【コールド・ブラッド】の、『分子活動の凍結』っスよ……!」
身動きが取れない。ほとんど損傷は無いはずなのに、文字通り凍りついたかのように動かせない。
分子活動の凍結……氷壁を出したのはその力のほんの一端だったのか。
「今っスよ!」
「よしきたぁ!」
慣れた様子の合図を受けたダリル先輩が、ダメージなんて無いかのように元気な動きで飛び出す。その両手には巨大な炎。
「この、動いてっ……」
「シャルロットッ!!」
「ラウラッ、うわあああーーっ!!」
身動きの取れない状態ではもがく事も出来ず、ギリギリで間に入ったラウラもろとも炎に飲み込まれ、炎に隠された刃に切り刻まれる。
「う、うぅ……」
「くそっ……」
「悪ぃな一年。オレたちの勝ちだ」
「…………」
攻撃による衝撃で解除されたのか、なんとか身動きは取れるようになった。しかしISは強制解除寸前。今更抵抗なんてできない。
コアを奪うため、ダリル先輩の右手が伸びる。
だめだ、このままじゃ奪われ──
「──ぁ? もう帰れ? いや今丁度コア奪るとこだったんだけど……」
「ん?」
「えっ?」
「はい?」
不意の通信に応じる先輩。こんな時に何の連絡だろう。帰れとか何とか……え、帰るの?
「いいから早く帰れ? コアはいい? 何だよそれ……わかったわかったわかったよおばさん!!」
「せ、先輩? 何を……」
「……悪り! 今日は終わりだ! ボコって悪かったな!」
「はぁ??」
まるでちょっとした喧嘩で謝るかのようにあっけらかんとした態度。さっきまでの真剣な雰囲気はどこへやら。
一応フォルテ先輩が割って入らなければ負けてたって事忘れてないだろうか。
「皆によろしくな。次は誰と戦るか知らねーけどさ」
「ちょ、ちょっと!?」
「おい待てっ!?」
「待たねーよ! 行くぞフォルテ!!」
「ハイッス!!」
氷と炎から作られた蒸気を撒き散らしながら飛んでいる二人。何故か助かってしまったが、多くの謎を残していった。
二人の裏切り、目的、突然の離脱……考えてもキリがない。
「ラウラ、動ける?」
「無理だな……このまま待つしか無いだろう」
「そっかぁ……」
ほんの一瞬、二人が連携しただけでこちらの優位が崩された。僅かな隙でこうも追い詰められたとは。
僕たちの連携にだって自信があったのに。それでももっと上がいる。
「ラウラぁー……」
「今度はどうした?」
「もっとがんばろーね……」
「……あぁ」
「そこだっ!!」
「ギァッ……!」
予想外のアクシデントからどれだけ経ったか。アンバランスな機体となった二人はその見た目とは裏腹に鋭く正確な起動を見せていた。
「織斑、イチかぁっ!!」
「私を忘れてもらっては困るぞっ!!」
「ぐガッ、おのれェ!!」
見事なヒットアンドアウェイの連打。逆に敵にはさっきまでの勢いはなく、見事に戦局は逆転している。
「すげぇっ。変なことになったと思ったら、とんでもなく動きやすい!」
「形の変わった半身だけではない。もう半分も明らかに性能が変わっている!」
「『何だそりゃ……?」』
機体は不調どころか絶好調らしい。実際動きを見てもそれは明らかで、変化する前より遥かに素早い動きをしている。一体どういう理屈なんだろう。
「クソ、くソ、クそクソ糞クソクソくそクソっ! 巫山戯るナぁぁ!!!」
「『っあれはヤバ──』」
「大丈夫だ!!」
「ナにっ!?」
怒りを込めて振るわれる高速かつ高密度の斬撃。俺であれば確実に切り刻まれていたはずの、至近距離で放たれたそれら全てを一夏は躱しきっていた。
「全部見えるっ! なぁ箒!」
「当然……だっ!」
「ガァァッ!」
さらに妹様がごく僅かな斬撃の隙間を通して射撃を決める。
本当どうなっているんだ。性能が上がったのはまだ納得できる。しかし二人にはここまでの技量は無かったはずだ。もちろん二人が雑魚だとは思ってないが…いくら機体から補正がかけられてるといってもついていけるレベルだとは思えない。
ならばその原因は……あの目か。
「『強化のよくばりセットかよ、羨ましいなぁ」』
こっちは未だにボロボロになってるってのに……と、分析してる場合じゃなかった。俺は……いるかこれ? 今俺が動いても邪魔にしかならなそうだ。
「私は、私はァあぁァッ!!」
「こいつまだこんな力をっ……」
「だが効かん!」
反撃のつもりかそれとも悪あがきか、残された大鎌をめちゃくちゃに振り回す。
しかしその最後の抵抗も、強化された二人には通じない。
「《絢爛舞踏》……行ってこい一夏!」
「決めてやるっ……《零落白夜》ぁ!!」
その隙に回復を完了させた一夏が、エネルギー無効化の刃を剥き出しにした《雪片弐型》を突き立てる。
「ガ、ぁぁ……」
「俺たちの勝ちだ……エムッ!」
そして、
『そうだねぇ。でも、今日はそこまで』
「なっ!?」
「『この声はっ!?」』
どこからか響く声。この人を小馬鹿にしたような何度も聞いた、正直今一番聞きたくなかった声は。
「姉さん!?」
『はろはろー、箒ちゃん元気ぃーー?』
此度の、というか大体の元凶。束様だった。
「そこまでってどういうことですか!? 俺たちはこいつを捕まえないと……」
『そのまんまの意味さ。
「やっぱり貴女の差し金だったのか……」
『うん。馬鹿でもわかるよね』
まるで悪びれる様子もなく肯定する束様。今更隠す気も無いってわけか。
『さあまどっち、帰っておいで。
「まダ…まだ私ハ……」
『帰っておいで』
「ッ……わ、わカッタ」
『うんうん。素直でよろしい』
さっきまでの暴走振りは嘘のように消え、大人しく声に従うエム。いつの間に従えていたんだろう。
「まだ話は終わって──」
「『やめとけ一夏!」』
「透まで!?」
納得がいかない様子でエムを引き留めようとする一夏。気持ちはわかる。俺だってこいつは捕まえたいし、逃がすなんてもってのほかだ。
でも今は止めなきゃ行けない。
「『
「上? ……あ」
「あ、あれは……」
真上に空いた大穴。最初にエムが突入したまま閉じていない所から、幾つもの
その目は全て無人機のもの。何機いるかも数えたくないほどの無人機がこちらを見ていた。
「『わかったな? アレが迎えだ」』
「……仕方あるまい。いくら何でも、あの数は」
「くそっ!」
一夏と妹様は絶好調。俺がまともに動けないことを考えても、無人機の一体や二体なら十分勝てるはずだ。
しかしあれは無理。前に戦った奴と同じ強さだとして、俺が万全の状態でやっとの数だ。
今の俺たちじゃ、指を咥えて見ていることしかできない。
『賢い選択だね。今日の査定はギリギリプラマイ0にしてあげる』
「『そりゃどーも。早く帰ってください」』
『ふふふっ。じゃーね、
「『……はい」』
「『……はぁ」』
無人機に連れられたエムが見えなくなったところで警戒を解く。不用心にも感じるだろうが、さすがに連続で来るほどあの人も暇じゃないだろう。もし来たってどうにもできないし。
「おわぁっ!? えっちょっ」
「あわわわ……」
「『何だよ今度は……ん?」』
「「戻った」」
「『えぇ……」』
半分だけ変形していた装甲が形を変え、もとの【白式】と【紅椿】に戻る。やはり形態変化ではなかったのか。だったら何なのだろう。
「……とりあえず一旦解除して、戻るか?」
「あ、ああ……九十九は大丈夫なのか?」
「『んーー、正直微妙。右腕の感覚が変」』
「おいそれって!?」
「透くーーーーーーん!!!」
一夏の声を遮るように響く声。来ちゃったよ楯無先輩。
傷だらけの、ところどころ煤のついた装甲を纏う姿、ついさっきまで本気で戦ってましたって感じだ。
相当急いできたのか、遅れて簪も飛んできた。
「『どーも先輩。お怪我はないですか?」』
「それはこっちの台詞……やっぱりめちゃくちゃしてる!?」
「お姉ちゃん、落ち着いて……」
すごい剣幕で迫ってくる先輩。勢いのあまり簪に抑えられている。
というかやっぱりって、信用無いのか俺は……うん、今までの事考えたら信用されないわ。
「『……すみません。またやっちゃいました」』
「やっちゃいましたじゃない! 早く医務室!!」
「『いやぁそれがIS解けかかってて……あっやばいやば……え」
エネルギー切れと同時にISが解け、負傷した手足が曝される。
驚いたのはその状態。ぐちゃぐちゃになったはずの手足の傷はほとんど塞がり、汚れを落とせばもう歩けそうなほど痛みは薄れている。
……ただ一カ所を除いて。
「ひっ」
「嘘……」
「その手は……」
「何だこれ……?」
ただ一つ。右腕だけが、歪な腕の形をした肉塊と化していた。
「いやぁ、今日は予想外の連続だったねぇ。まどっち?」
「ぅ……あ……」
「あらら、お疲れかな?」
IS学園から引き揚げて、今は亡国機業の所有するアジトの一つにいる。高級ホテルやマンションに比べるとだいぶぼろっちいけど、IS学園から一番近いのがここだったから仕方ない。
「がふっ、うぅ……」
「やっぱり君も耐え切れないかぁ」
運んできた彼女は満身創痍、今も血塗れで呻いている。
「全身打撲と一部骨折、内臓が少し傷ついたってとのかな? あの時のとーくんぐらいだね、五体満足だけど」
原因は当然、【Insecta Rex】の負荷に耐え切れていないこと。正直予想はしていたけど、やはりこの体には過ぎた性能になっていたらしい。
まあ半分出来損ないとはいえ、この子だって「織斑」なわけだしすぐ死ぬなんてことはないが。
「また、また私は──」
「ああ、負けがどうのってやつ? まあ、今回は予想外が過ぎたね。まさか両方とも
【白式】と【紅椿】。二つのISの覚醒し、真の姿を現す覚醒段階。精々どちらかが少し進めば良いと思ってたけど、一時的とはいえまさか両方とも半覚醒とは期待以上の成果だ。
これなら完全覚醒もそう遠くないだろう。
……逆にとーくんは、ちょーっと期待外れかな。
「
性能を見て、技術を見て、特訓を見て、それを完全に上回れるように【Insecta Rex】はデザインした。いっくんと箒ちゃんと三人で戦う相手として。結果としてはご覧の通り撃退まで追い込まれたし、途中からはよくなったけど、最初の無様な動きはいただけない。
まあ、
「君もだよ、まどっち。あれほどの覚悟を見せておきながらこの程度とはね。 君の憎しみはこんなもの?」
「! 違うっ……私は、必ず奴らをっ」
「なら今度こそ結果で示して。次はないよ」
「ううっ……」
今はこれ以上話すことはない。まどっちに背を向けて、古びた部屋にドアを開ける。
「あっ……」
「くーちゃん何してるの?」
「いえその……」
そこにいたのは娘のくーちゃん。ドア前にいたのは知ってたけど、聞き耳でも立てていたのだろうか。
「スコール様からご連絡です。今日の事について聞きたい事があると」
「あーうん、わかった。あとで聞いとく」
どうせいきなり呼び戻したことの理由とかだろう。ぶっちゃけ十分なデータがとれたからで、まどっちの回収のついででしかない。武装の提供もうまく従わせるためだ。
でもまあ、あんまり調子に乗られても邪魔だ。頃合いを見て
「あの、束様」
「おっとごめん。まだ何かあるの?」
「その……結局、『選別』はどうなされたのですか?」
「あぁ、そのことね……ふぅーむ」
当初の予定では今日の作戦でどっちかを切り捨てるつもりだった。残った一人で役目は十分だから。
しかし今日の結果は途中で引き揚げ。そこまでの結果を考えてみても、今決めるのは早計だろう。
場合によっては、計画の変更も考えなくては。
「うん、選別は保留だね。どっちもまだ
いっくんと箒ちゃんの半覚醒もあったし、しばらく二人をキープしていた方がいい結果をもたらしてくれそうだ。使える物は使っておかないとね。
「そうですか……」
「安心した? とーくんが捨てられなくて」
「えっと……はい」
「んーくーちゃんはかわいいなぁ! お兄ちゃんが心配だったんだね!」
「いえ、透様はそういうのではないので」
「あっうん」
最近くーちゃんから私への当たりがおかしい気がする。反抗期かな?
「ああそうだ。くーちゃん! 今度束さんと一緒にお出かけしよっか!」
「? 何か用事があるのですか?」
「いやぁ。ちょっとお届けものとか、色々あってね」
「『画』も進んできた。今の内に片付けられる用事はさっさと済ませておこう。
くーちゃんにも、そろそろ伝達以外のお仕事させたいしね。
「かしこまりました、場所はどこでしょうか?」
「うんうん。それはね──
──IS学園、地下特別区画。だよ」
第43話「引き揚げ・保留」
オータムさんはじめマドカ以外の戦闘描写がカットされまくってるのは原作リスペクトです(大嘘)