【完結】害虫生存戦略   作:エルゴ

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 八月も終わりそうなので初投稿です。
 なんと(プロローグ除いて)50話目らしいですよ。つまり50人ぐらい評価してくれてもおかしくありませんね(天丼)


第50話「開始・決勝」

 

「ここがあの国際テロ組織のハウスね」

「ハウス……?」

「せめてアジトって言えよ」

 

 作戦決行当日の朝。指定されたポイントへ到着した俺たちは一旦隠れながら織斑先生の指示を待っていた。

 

「本当にここで合っているのか?」

「地図じゃ間違いないなぁ、どう見ても廃墟だけど」

 

 目の前にあるのはボロボロの廃墟。何年も放置されていたことを示すように汚れて蔦の張った壁、窓はほとんど割れてるから外れていて風通しは良さそうだ。

 おおよそまともな人間が住むような場所には見えないが、国際テロリストの隠れ家には丁度いいのだろうか。

 

「今こっそりスキャンしたが、一応生体反応はあるぞ。ISの反応も」

「つまりここは当たりということだな。腕が鳴るぞ」

「好戦的だなぁ……そんなキャラだっけか」

「ふふん、最近調子が良くてな」

「そうか、存分に頼らせてもらうよ」

 

 どうやら妹様は絶好調らしい。役に立ってくれるなら何より、変に不調になってるよりはずっといい。

 それなりにメンタルも強くなってるし、臨海学校の二の舞にはならないだろう。

 

「油断するなよ。レーダーの類いは無いが、見つかってないという保証もないからな」

「わかってる。それより反応はいくつあるんだ?」

「……人間っぽいのが一人、ISは起動中のものが一機。未起動のものは……数え切れん」

「未起動のISも気になるけども、人間は一人だけ? 少な過ぎないか?」

「ああそうだ、だからおかしいんだ」

 

 今気になるのはこの警備の薄さだ。確かにボロい拠点だが、中には少人数で目の前に来ても見張りの一人すら立っていない。それほど重要度が低いのか? いや、それでも未起動のISを配置するならもっと厳重にするべきだ。となると考えられるのは……無人機か?

 

「また無人機かよ、考えたくないな……」

「一夏、九十九。今連絡が入った。全員ポイントに到着したらしい」

「そうか、開始時刻まではあとどれくらいだ?」

「二分半だ」

 

 バラバラに散ったメンバーもそれぞれの目的地に到着し、これでいつでも襲撃をかけられる。特に変更がないところから察するに、全て当たりだったようだ。学園の情報収集力も馬鹿にできないな。

 

「最終確認だ。突入したらまず上から俺が一撃かまし、そこから逃げるなり向かってくるなりした敵を下からお前らが叩く……でいいな?」

「「オーケー」」

「一夏はエネルギー残量に注意して、篠ノ之さんもいざってときは『絢爛舞踏』を発動できるようにな」

「任せておけ」

 

 まずは《Bonbardier》でてっぺんから隠れた敵のいる階層まで吹き飛ばす。そして出てきた敵を二人が叩き、あとは他の敵がいればそこに俺が、いなければ二人に加勢と状況に応じて対応だ。かなり雑な作戦に見えるが、見えている敵が少なくこちらが使える手を考えたらこれが一番確実だ。

 

「時間か、心の準備はいいな?」

「当然」

「バッチリだ」

「よし、では──開始する」

 

 ばぎり。

 指を鳴らすと同時にISを展開。素早く屋上の真上まで飛び上がり、同時に右腕にチャージしたエネルギーを解き放つ。

 

「アハ」

「『──ッ!?」』

 

 爆炎の中から、黒い機体が飛び出すのが見えた。

 

 

 

 

「そう、また貴女が相手なのね」

「今日こそ水浸しにしてやるわ、スコール!」

「四八回、爆破……!」

 

 ついに始まった亡国機業掃討作戦。特定されたアジトの一つで待っていたのは実動部隊『モノクローム・アバター』のリーダー、スコール。二度も辛酸を舐めさせられた相手だ。

 その実力の高さは疑いようもなく、苦戦は必至。だが、私たちは前回までとは違う。

 

「山田先生!」

「任せてくださいっ!」

 

 背後から飛び出した山田先生が、彼女が代表候補生時代に使用していた専用機【ラファール・リヴァイヴ・スペシャル 『幕は上げられた(ショウ・マスト・ゴー・オン)』】を身に纏う。

 

「数を増やしたところでっ、この私と【金色の夜明け(ゴールデン・ドーン)】は……」

「それだけじゃないわよ! ね、簪ちゃん?」

「うん!」

 

 山田先生の参戦は違いの一つ。もう一つ、いや二つの違いはここからだ。

 

「【霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)・麗しきクリースナヤ】」

「【打鉄弐式・不動岩山(ふどうがんざん)】」

 

 ISの上から更に装着される専用ユニット、オートクチュール。今日という日のために用意した新兵器。

 それぞれが敵の防御をぶち破る高出力と、敵の攻撃を防ぎ切る耐久力を目的に調整されている。

 

「……なるほど、ハッタリではないようね」

「ええ。白旗振るなら今のうちよ」

「舐めないで頂戴。これぐらいで怖気付くような人間に、部隊のリーダーは務まらないの」

「……そう言うと思ったわ」

 

 一応投降を促してみたけれど、やっぱりそう簡単にはいかないか。

 これほどの戦力を前にしても尚戦意を失わないということは彼女にも相応の用意があるのだろう。

 

「でもピンチなのは間違いないんだけど……こうすればどうかしら?」

「何を──っ!?」

「これはっ……」

「無人機!?」

 

 ぱちん。と指を鳴らすと同時に、周囲から爆発と共に無人機が現れる。

 一、二、三……全部で四機。見た目はクラス対抗戦で乱入してきた黒くてデカイのと、夏休みで襲撃してきた細いのの中間といったところか。

 

「その余裕はこれね……」

「無人機はこちらで引き受けます! 二人はスコールを!」

「お願いします、山田先生! いくわよ簪ちゃん!」

「了解!」

 

 スコールを倒すには私たちの火力と防御が必要不可欠。複数の無人機は山田先生が引き受けてくれる。

 思わぬ伏兵がいたが、まだ不利になったわけじゃない。他の場所で戦うみんなと、守るべき学園のために、負けるわけにはいかないの。

 

「最初っから全開で行くわよ! 『ミストルテインの槍・ライト版』!」

「『ソリッド・フレア』!」

 

 水流と火炎がぶつかり合い、大きく爆ぜる。それが開戦の合図となった。

 

 

 

 

「そっち行ったよ!!」

「逃すな! 捕まえろ!!」

「逃げ場なんてありませんわよ!!」

「待ぁてぇぇぇぇ!!!」

「「「うおおおおお!?」」」

 

 嵐のように飛び交う銃弾、レーザー、衝撃砲。その先にいるのは亡国機業が一人【王蜘蛛(アラクネ)】のオータムと、亡国機業に寝返ったダリル・ケイシーもといレイン・ミューゼルとフォルテ・サファイア。

 

「どうすんだよオータム! めちゃくちゃやられてんぞ!!」

「さんをつけろクソガキ! いいから撃ち返せ!!」

「ちょっと何揉めないで……わぁぁ!」

 

 全霊を持って敵を撃破せんとするIS学園チームの四人と迎え撃つ亡国の三人。計七人の集団戦は仕掛けた側かつ人数的有利によってIS学園優勢に傾いている。

 

「調子乗ってんじゃねーぞクソガキ共が! こっちだってテメェらが来ることはわかってたんだよ!!」

「何ですって!?」

「スパイがいたんですの!?」

「またIS学園が裏切られてるのか……」

「それウチらが言えることじゃないッスよ」

 

 しかし亡国とてやられっぱなしではない。()()()から今日の襲撃の情報は得ていたし、その対策だって講じていた。

 ただほんの少し舐めていたのは、ここに来るIS学園メンバーの実力だった。

 

「今までの恨み、よーく味わえっ!」

「お釣りはいらないよっ!」

「クッソがあぁ!」

 

 個々の実力ではまだこちらが優っているが、思わぬ攻撃の苛烈さに追い詰められてゆく。

 

「おいガキ共! 一瞬だけ稼いでやるからさっさと例のアレ使え!」

「オッケーオータムさん! やるぞフォルテ!」

「は、はい!」

 

 この猛攻を凌ぐための防御策、【ヘル・ハウンド】と【コールド・ブラッド】によるとっておきの合わせ技の発動にはごく僅かであるが──主にキスとかするせいで──隙がある。だからその分をオータムが稼ぐ。

 

「粘糸生成──狙いは、テメェだっ!」

「なっ!?」

「鈴さん!」

 

 最も前線にいた鈴へ向けて粘糸を発射。急いで生成して飛ばしため、大した粘着力はなく、直ぐに拘束は破られてしまうだろうがそれで十分。

 

「ぐぅぅ……おらぁっっ!!!」

「え、ちょっ……きゃああああ!?」

「わあああああ!?」

「シャルロットー!!」

「鈴さーん!!」

 

 マニピュレータがミシミシと不快な音を立てるのを感じながら、六本の腕をフルパワーで拘束した鈴を持ち上げ、次に近かったシャルロットへ叩きつけた。

 ISそのものを利用した不意の一撃は流石にそう軽いものではなく、二人揃って吹き飛ばされる。

 

「お二人とも大丈夫ですの!?」

「いたた……だ、大丈夫……」

「見た目ほどダメージはないよ……うん」

 

 派手に叩きつけはしたが、鈴はギリギリでPICによる制御を行っていたし、シャルロットも最低限受け身は取っていた。そもそもIS相手に打撃は──それに特化しているか通常の数倍以上の馬鹿げたパワーを持っているならともかく──シールドバリアに相殺されて効き目は薄い。

 しかしそれでも、全員一瞬だけ止めることはできた。

 

「今だ!」

「はいっス!」

「「せーのっ、『凍てつく炎(アイス・イン・ザ・ファイア)』!!」」

 

 炎を封じた氷の鎧が二人を包む。これは外側の氷が衝撃を吸収し、噴き出す内部の炎が威力を相殺する反発装甲(リアクティブ・アーマー)

 

「それが『イージス』の十八番ってワケね……」

「おい! 私にはねぇのかよ!」

「急いでんだからしょうがねーだろ! 下がってろオータム!!」

「さん外してんじゃねぇガキ!」

 

 悪態を吐きながら戦線交代。苛烈な弾幕に耐えうる用意ができたダリルとフォルテが立ち塞がる。

 

「あーもう短期決戦にしたかったのに!」

「悪いが泥沼決定だ! 今度はオレたちがたっぷりと仕返ししてやるぜ!」

「一年のターンはもう終わりッスよ!」

「上等ですわ、その鎧ごと蜂の巣にして差し上げます!!」

 

 お互い新しく恨みが積もったところで、この乱戦はまだまだ続く。

 

 

 

 

 

「──そして、亡国へ情報を流していたのはこの私……てわけサ」

「ああそうだろうな。知っていたとも」

「おや、意外」

 

 時を同じくして、IS学園作戦本部。いつでも外敵に対応できるように、それでいて生徒は巻き込まないようにと校舎から少し離れた屋外に設置されたこの場所で、千冬に鉄の右腕を向けるアリーシャ。

 

「お前のことだ、大方私との決着を目当てに亡国に入ったのだろう? これで念願が叶うというわけだ」

「当たり、よくわかってるネ。あの子たちは知らないみたいだけど」

「これは私たちの問題、あいつらには関係ないことだ。実際お前も、あいつらに危害を加えることはしなかっただろう?」

「……まぁ、ネ」

 

 全ては第二回モンド・グロッソ、不戦勝という何よりも不名誉で、納得のいかない称号を手に入れてしまったあの日のため。

 だから学園の生徒が邪魔にならないよう、あえて本当の情報を与えて遠ざけた。今日までこの目的がバレないように亡国との繋がりを隠しながら。

 

「千冬。貴女が決して私から逃げたわけじゃないことは知っている。亡国に弟を拐われて、助け出すためには不戦敗を選んだことも、そのせいでドイツに恩を返す羽目になったことも。そして……もっと重大な理由で、現役を退いたことも」

「…………」

「それでも、私の脳内にはあの時の……私一人だけの決勝戦が離れない。家族のために投げ捨てられた優勝が酷く醜いものに思えて堪らない」

 

 だから彼女が現役を退こうと、この身が事故でボロボロになろうと、今日決着をつけるために生きてきた。

 たとえその原因を作り出した亡国に肩入れすることになろうとも。

 

「さあ、早くて決めて。私と戦うか、それとも──」

「ふふ、はははっ」

「……何がおかしい」

「いやすまない、馬鹿にするつもりはないんだ。ただなんというか、お前にもこんな一面があったとはな」

「……千冬にだけサね」

 

 軽くあしらわれたような気がして、ほんの少しムッとする。こちらは覚悟を決めて行動に移したのだから、相手にも相応の覚悟を見せて欲しいのだ。

 

「……だが、そこまで想われているのなら応えないわけにもいかんなぁ」

「っ!? ということは!」

「言っただろう? 知っていたと──その挑戦、受けて立つ」

「あぁ、あぁ……!」

 

 瞬間、全身に浴びせられる殺気。夢にまで見たこの感覚に歓喜で満ちる。

 

「奴の思惑に乗るのは癪だが、今の私が持てる全力で相手をしよう」

「……腕は、鈍っちゃいないよネ?」

「さぁどうだろうな。お前が直接確かめるといい」

「──【(テンペスタ)】ッ!!」

「【暮桜(くれざくら)】」

 

 互いの愛機を呼び出す声が開戦の合図。二人がぶつかり合った衝撃が周囲を揺らす。

 

「世界一なんてどうでもよかったがなっ、私もあの日のことはずっと心残りだったんだっ!」

「嬉しいネェッ! これこそ相思相愛ってやつなのサ!」

「そうだなぁ、果たし愛だっ!」

 

 二人の世界最強、あの日実現できなかった、今度こそ何者にも邪魔されない決勝戦が始まった。

 

 

 

 

 

 そして、場面は俺たちのところへ戻る。

 

「九十九ッ、九十九九十九九十九九十九透ゥゥゥゥ!!」

「『チッ、前より狂ってやがるなっ……と!」』

「グギッ、がァ、ああァアアア!!」

「『どうせ全部束様(あの人)に唆されてんだろうな……」』

 

 一階層丸ごと吹き飛ばすはずだった爆風をものともせずに飛び出してきたエム。前回同様狂ったように攻撃をしてくることは変わらないが、その口調はより狂ったものに感じる。

 

「殺スッ、死、死シシし、死ねぇっ!」

「『本当そればっかだなぁお前! 他にねーのかよ!」』

「グォォオアァ!!」

「『おっと慌てない、前がそれでダメだったんだから」』

 

 前回はシールド破壊能力とスピードに泡を食って、体勢整えるのに時間かかったからな。今日はその反省も込めて、冷静に対処していかないと。

 

「フヴゥゥゥッ!! 斬る、斬、ルるゥゥゥ」

「『勢いばっかで単純になってんだよっ……」』

 

 確かに強力な敵ではあるが、戦うのは二度目。ある程度動きは覚えているし、受け方さえ間違えなければシールド破壊能力も問題ない……はずなのに。

 

「『げ」』

「ギャギ、ギギギギギギギャアアア!!」

「『ぬぎっ……ぐああっ!」』

 

 受け止めた筈の刃は勢いを増し、危うく胴に届きかけたところで強引に押し返す。その勢いで俺は体ごと吹っ飛ばされた。

 

「『……あっぶねー、それだけじゃなかったな」』

「ア゛ははハはハハハ!」

「『よし。ちゃんと防げたし、受け身もできてる……けどダッセーな俺」』

 

 慌てるなと言ったそばからこれだ。危うく敵の戦力を見誤って死ぬところだったな。

 これもまた、束様が余計な調整でも施したのか……面倒なことを。

 

「透! 大丈夫か!?」

「『ああ平気……って、早くないか? 無人機はいなかったのか?」』

全部倒した! 念のため生き残りがいないか箒が調べて、すぐに上がってくる!」

「『わぁお」』

 

 本当に数えるのも嫌なぐらいいたんだが……まだ数分経ったぐらいだぞ? どんな早さで倒してきたんだ。

 これも特訓の成果、それとももっと別の変化か?

 

「おお織斑、一夏ァ! 九十九、透!!」

「またこいつか! 恨まれてるなぁ」

「『全くいい迷惑だな……気をつけろ、前より狂ってるが、前より強いぞ」』

「見りゃわかるよ。お前吹っ飛ばされてたもんな」

「『うるせ」』

 

 そんなことより、今の調子で戻ってもまた吹き飛ばされかねない。となると……そうだな、うん。

 出すか、100%(本気)

 

「『もう加減する必要も無いからな」』

「え……?」

 

 お待ちかね100%、あの人の言う通りならば、これで()()()は数値以上の力が手に入る──はず。

 息を吸って、すっかりこの身に染みついたスイッチを切り替える。

 ばきり。

 

 

 

 

第50話「開始・決勝」

 

 

 

 

 




 前回日間に載ることができました。高評価くれた皆様ありがとうございます。
 また載りてぇなぁ、明日とか(ホモはよくばり)
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