またあらすじ変わってますが(そもそもあらすじまで読んでる人がどれだけいるのか知りませんが)、前までのがなんとなく気に入らなかっただけなので意味はないです。
100%。不完全から完全へ。【Bug-VenoMillion】が出せる最大出力にして、この機体を制御しきったという証。
「『──お、おォ……ア」』
「おい! 何が起きてる!?」
「『大、丈夫ダ……うグ、ふゔヴ……」』
「え、どこが?」
痛みは無い。全身がドロドロに溶けて、機体の隅々まで行き渡っていくような感覚。装甲が自らの肉となり、神経まで通ったかと錯覚する。
『……そうだ。そして
「『全部、一ツに……」』
なるほど。これは確かに数値などでは測れないものだ。
「ぅギ……ふぅ……』
「と、透? 本当に大丈夫なのか?」
「平気、だ。もう終わったから』
「終わったって……それにその声は……」
「ん、また変になってんな。まあいいか』
声なんてどうだっていい。久々に、本当に気分がいいんだ。
今の俺はそう、(1)+(2)だから
「ア゛ァァァァ……」
「待たせたな。じゃあ再開といこうか』
「……よくわかんねぇけど、調子がいいなら頼らせてもらうぞ」
「あぁ任せろ。それよりほら、来るぞ』
「切るルルるルル、ウヴァアア゛!!」
払われた両手の大鎌から大小様々な斬撃が飛び出す。俺を目標にした刃は狂ったように回転しながら襲いかかる。
前はこんな攻撃はしなかった。使わなかったのか、使えなかったのか。そんなことはどうでもいい。とにかく、間違いなく当たるわけにはいかない攻撃だ。
「だけど……うん、
出鱈目な速さ、出鱈目な軌道。角度、回転方向。これからどう動くか、当たればどうなるか。どうすれば躱せて、どうすれば弾けるか。
俺はほんの一瞬目にしただけ。その一瞬で全てを解析し、最適の手を導き出す。まるで頭がスパコンになったよう。極力廃すべきであった思考も、ここまで加速すればプラスに働くのか。
そしてその手を寸分の狂いもなく、反射以上のスピードで実行する。
「処理完了。ダメージ0……』
「何ダとッ!?」
「すっげぇ……」
機体の完全制御。以前ならある程度の被弾は覚悟しなければならなかったというのに……防御一つ取ってもこうも変わるとは。
これはいい。是非とも、攻撃で試したい。
「さて反撃──追いついてくれよ?』
「!」
小手調べなんてするつもりはない。最初から最高の速さで、力で、軌道で突っ込むだけ。
機動の衝撃で階層を破壊しながら接近して、敵を殴る。
「ァッ……ガ、ハァッ……」
「へぇ、こんな感じだったのか。ISがISを殴る時って』
脇腹にめり込んだ右腕によって硬い装甲が砕け、柔らかな体が悲鳴をあげる感触が、今までとは比べ物にならないほどよく伝わる。
人を殴る時の感触は不快だという話をよく聞くが、今はその逆。実に清々しいものだ。
「ギキッ貴様ァァぁぁァ!!」
「そうこなくっちゃ。なぁ一夏?』
「同意求められてもなぁ……」
とはいえこれで一撃入れただけ。メキメキと音を鳴らしながら装甲が組み直され、余計にやる気を出しているように見える。
だがまだまだやる気があるのはこちらも同じ。今まで不完全燃焼だった分と、直接関係ない八つ当たりを含めて存分に憂さ晴らしの相手になってもらおう。
「すまない! 遅くなっ……またこいつか」
「ん、来たか』
確認を終えた妹様も合流し、戦力は出揃った。正直過剰な気がしないでもないが、エネルギーの心配が要らなくなったのはプラスか。
「悪いけど説明する暇も作戦もない。各自好きに動いて上手いこと合わせるぞ』
「ちょっ」
「何を──」
「
もう一度。今度は床を踏み抜くようにして急接近。さっきと同じ右腕を、さっきと全く同じ位置を狙って叩きつける。
「二度モ食らウモノかッ!」
「いいや食らわせるね』
「──グ、ッッア゛ア゛ッ!?」
今度は防御を割り込ませたが、所詮この程度95%でもぶち破れていたものだ。いくら束様の調整込みでも、反応すらギリギリとなった100%の一撃を防げるわけがない。
組み直されたばかりの装甲が砕けて、あとはさっきと同じだ。
「ここまで変わるなんてなぁ。こんなことならもっと早く──いや、それはないか』
「? 何言って「ガアァァッ!!」どわぁっ!?」
「気をつけろよ。俺が押してるからって別にこいつが弱いわけじゃないんだからな』
「す、すまん……」
危うく被弾しそうになった一夏に注意しつつ、100%に到達する前の戦い方を思い出す。
もうあんな痛い思いをせずとも性能を引き出せるのは嬉しいが、これも束様の思い通りなのだと考えるとせっかくのいい気分が台無しになりそうだ。
「フゥッ、フゥぅぅウ゛、九十九透ゥ……」
「そのうわ言も聞き飽きたよ。今日で終わりだけど』
「黙レェェ!!」
「一夏』
「おうッ!」
いくら調子がよかろうと俺だけで相手する意味はない。折角過剰なくらいの戦力がそろったのだから、二人にもしっかり働いてもらわないとな。
もう下で働いてきた? 知らんもっと働け。そりゃーもうたっぷりと。
「ついでにこれも──《
「グッ……」
「よし当たった……けど怯ませるのが限界か。これは出力関係ないからな……ってか変な感じ』
害虫型爆弾もかなり自在に動かせるようになった。標的を感知して飛ぶだけだった、追尾はできても単純だったものが本物さながらの動きになっている。
ただ何というか、指先のように動かせる分、指先が爆発した感じがするのはちょっとアレだ。痛くはないんだけど。
「……《穿千》セット完了、頭を下げろっ!」
「了解っ!」
「いっけぇぇっ!」
「──ギャァアアッ!」
【紅椿】のブラスター・ライフルから放たれた熱線が敵のウイングを撃ち抜く。
ズタボロになって飛行能力を失った羽根が、直ぐに機能を取り戻すため再構築を図る。
しかし、
「そうは──」
「──させるかっ!』
「! クソォッ!」
直りかけた羽根を一夏が切り飛ばし、俺が根元を破壊する。これでまず自動修復で直すのは無理だし、できても相当の時間がかかる。
つまりこいつの機動力は半分失われた、というわけだ。
「つってまだ何かあるんだったら話は別なんだが……そんなことはないか』
「クソッ、コンナ、コンなァぁぁぁ……」
攻撃は効かず、ろくに飛ぶこともできず、打つ手のなくなった敵は這いつくばるのみ。詰みだな。
「……透、最後は俺が」
「ああ。トドメは『零落白夜』で確実に……外すなよ』
「外さねーよ、これじゃあ」
こんな状態の敵に攻撃するのは気が引けるのか、少し暗い表情でブレードを構える一夏。本当にお人好しだな。それでも確実に倒すため自分からこの役を買って出るあたりは割り切っているようだが。
「ぃ、ヒィあ、嫌、あぁぁ……」
「殺しはしない。だから、もう諦めてくれ」
振り上げられた《雪片弐型》の刀身が展開し、白く光るブレードが現れる。もう何度も見た『零落白夜』の発動。シールドバリア無効化攻撃。
この戦いを終わらせる一撃が振り下ろされる瞬間、敵が取った行動は。
「嫌だぁぁぁぁぁーーー!!!!!」
「なっ!?」
「逃げたぁ!?」
「っこいつぅ!』
逃走であった。
どこにそんな余力が残っていたのかもわからないほどの速さ。一夏の攻撃範囲から逃げるように、一直線にこの階層の中心へ進む。
「すまん! まさかあんな逃げ方とは」
「こっちも予想外だ! なんだって急に……』
まさかここまで往生際が悪いとは──俺が言えた話ではないが──思わなかった。
咄嗟の行動か、余力を隠していたのか……どちらにせよこれはまずい。あまりに驚いて反応が遅れた。もし逃げ切られたら作戦がパーになる!
「やつは中心に向かってる……ん? 中心?』
「おい、それって……」
「まさか!』
この建物の中心には、俺が最初に砲撃でぶち空けた大穴がある。そこからなら簡単に下層まで降りていける。
下層まで降りることができれば、そのまま逃げ切れるという算段か?
「アぁぁアァァーー!!」
「待てっ──」
「一夏ストップ!!』
「どわぁ!? 何すん──」
敵を追って大穴に飛び込もうとする一夏を引き戻す。かなり雑に引っ張ったせいで少し痛そうにしているが、文句はアレを見て言ってもらおう。
と、大穴へ視線を戻した瞬間。
ズシャアァァ!!
「わかったか?』
「……うん」
自然落下しながらばら撒いたと思しき斬撃が下から飛び出す。もし引き戻さなかったら、あのまま飛び込んでいたら。一夏ではまず間違いなく八つ裂きにされていただろう。俺でもきっとただでは済まない。
「よし今度こそ行くぞ……手遅れかもしれんが』
「諦めるな! まだ反応は下にあるから追いつける!」
もし下層に行く理由が逃げるためだけなら、危険ではあるが追いつく方法はいくらでもある。
ならば逆に、逃げるためではないなら? 下層には何かがあって、その何かで新たな行動を起こすつもりなら? 例えば……
「全速力で降りるぞ!」
「ああ、気をつけろ!」
「……クソ、嫌な予感がする』
全員で穴へ飛び込み、加速しながら最下層目がけて落下していく。底にはもう敵の姿はないが、妹様の言う通り、反応ではまだこの建物から出ていない。
と、思考を巡らせたところで。
「やぁ」
「──は?』
中間地点を少し過ぎたあたり。穴の縁で、見慣れたエプロンにうさ耳をつけた
「最後のおまけつけといたから、頑張ってねー」
「ちょっ待っ……あぁクソがっ!』
慌てて止まろうとしても既に遅く。束様の姿は忽然と消えていて。
大人しく下まで降りていくしかなかった。
そして、最下層には。
「何だ……これ……?」
「えーと、なんというか……」
「……やっぱり』
黒く、大きく、それでいて歪な『繭』があった。
「あっはははは! いい、私をここまで昂らせてくれるのは千冬だけサ!」
「そうだな、私も久々に……血が沸くっ!」
「この速さ、それに精密さ。
「〜〜! 千冬こそ、思わせぶりなこと言っといて技の冴えは衰えてないのサッ!」
アリーシャは風を収束させた槍、千冬は【暮桜】の愛刀《雪片》で熱く火花を散らす。
しかしこれはまだ序の口。未だ二人にダメージは一切なく、こうして互いを褒め称える余裕すらある。
「そろそろギア上げようかっ! それとも下げる?」
「馬鹿言え、倍速で来いっ!!」
「よしきたぁ!」
まるで小学生のように軽々しくとんでもないことを言ってのけ、そしてやってのけるのがこの二人。要求通りアリーシャは倍速で動き出し、千冬はそれを捌き切っている。
「最っ高だよ! 第二回ならこれで全員倒してたのにっ!」
「ほほーう? やはり私が出ていれば優勝していたかもしれんなぁ?」
「ほざけっ……三倍速!!」
「いいぞ! もっと上げろ!!」
三倍速。常人なら──いや常人でなくとも、何がなんだかわからなくなってくるスピードへ。
しかしアリーシャは完璧に制御を続け、千冬は対応できている。
これが世界中のIS操縦者の中で頂点を争った者たち、怪物級と称された者たちの実力。
そして三倍速でしばし戦い続けたところ、ついに戦況が動いた。
「そこっ!」
「なんのっ……むっ」
「いただきっ!」
あらゆる角度から飛び交う風の槍を斬り払った直後、斬ったはずの風が再び収束し、新たな槍となって千冬を狙う。
そして──その装甲に傷をつけた。
「ふっ、やられたな」
「やっと、やっと一発入れてやったのサ!」
「ああ、誇っていいぞ。何せ第一回も第二回も、私に傷をつけたものはいないからな」
「……へへっ。照れちゃうネ」
一回目は圧倒的実力でアリーシャ含む全員を無傷で斬り伏せた。二度目も、アリーシャを除く全ての対戦相手をやはり無傷で斬り伏せた。
それほどの実力差のあった王者に今、自分の手で先手を取ったという事実に喜びで打ち震える。
「……よし、覚えた。もう食らわん」
「……そうこなくっちゃ」
喜ぶのも束の間。この戦いはまだ始まったばかりで、一発で学習した千冬にアリーシャは新たな手で挑み続けなければならない。
しかしその挑戦も、アリーシャにとっては何よりも望んでいたことだ。
「一発くれたお返しをせねばならんな。つまり今度は──私の番だ」
「──ッッ!!」
斬り刻まれそうな威圧感に怯みかけた一瞬。ほんの僅か反応が遅れた隙で千冬の姿が消える。
「こっちだ」
「──ハァッ!」
「無駄だ」
「!? クゥッ!」
次に姿を現したのは目と鼻の先。迫る攻撃を防ごうと風の盾を展開するも、刃はまるで無風かのようにその盾を通り抜け、アリーシャの腹部に浅く傷をつけた。
「……ギリギリで退いたか。流石の反応だな」
「何をっ……?」
文字通り目にも留まらぬ、こちらを上回るスピード。そしてエネルギー無効化の『零落白夜』とは違う一撃に、アリーシャは驚きを隠せない。
「古武術というやつさ。確か零拍子とか言ったか……IS用に改良してあるがな」
「盾をすり抜けたのは?」
「それごと斬るつもりで振った。それだけだ」
「……やっぱりバケモンなのサ」
つもりになるのは容易くとも実行するのはとんでもない技量が必要になるものだ。しかしさも当然のように千冬はやってのけた。
それ以前に風の槍や盾なんてものを自在に操るアリーシャも大概おかしいのだが。
「……チマチマ上げていってもらちがあかんな。どうだ、そろそろ本気で戦るというのは」
「なんだ、もうお疲れかい?」
「勿体ぶるなよ。それとももう本気だったか?」
「……言ってくれるね」
あまり時間をかけ過ぎるのも、折角遠ざけた専用機持ちが戻って来てしまうのでよくない。この戦いには何人たりとも水を差すことは許されないのだから。
見え透いた挑発に乗るのはちょっびり癪だが、準備運動はここまで。真の本気を出す時が来た。
「──全力の嵐をお見せするのサ」
「……来たな、それがお前の
「『
アリーシャの両腕を広げた瞬間。千冬の目の前には六人のアリーシャが槍を構えていた。
内五体は風を集めた実体のある分身。しかしその全てが本物と遜色ないスピードと攻撃力を備えて、風故にどれだけ切り裂こうとも復活する。
「面白い。ならばこちらも……本気を見せねばなるまい」
「待ってました……!」
世界二位の本気を前にしては、こちらも出し惜しみはしていられない。戦況の話ではなく、挑戦される者として。
そして【暮桜】の愛刀《雪片》が光を放ち、一撃必殺の刃へと変わる。
「『零落白夜』──さぁ、全て切り捨てよう」
過去との決着の時は近い。
第51話「「』・嵐」
出力100%は、
破壊力:A / スピード:B / 射程距離:C / 持続力:B / 精密動作性:C / 成長性:B
から
破壊力:A / スピード:A / 射程距離:C / 持続力:B / 精密動作性:A / 成長性:D
になったようなものだと考えてください。
最近ジョジョ熱が再燃したせいでこんな例えになってしまいました。