先に言っておきますが今回長いです。
爆ぜる。爆ぜる。先刻から現在に至るまで、数え切れないほどの爆発が辺りを包む。
「ちょっと火力が落ちてるんじゃないっ!? やっぱり歳かしら?」
「あなたこそ、喉が渇いて仕方がなさそうね? お化粧室はあっちよ!」
「なら一緒にいきましょうか? 厚化粧がボロボロ崩れてますよっ!」
「それはいいわね、焦げた髪を散髪してあげるわっ!」
爆発を巻き起こしているのは楯無とスコールの二人。この煽り合いもそれ同様延々と続いている。
「お姉ちゃん下がって! また『来る』よ!」
「おっけい! 任せるわ!」
「っ……しぶとい!」
楯無を支援するのは愛する妹である簪。オートクチュール『麗しきクリースナヤ』によって、赤く変色した高出力水流操作を行う楯無がスコールが展開する炎のベールを突破。さらにその隙をカバーするために簪は防御に特化させている。
そしてこの通り、攻撃を仕掛けてくるタイミングで簪が前に出ることで、見事ここまで耐え切っている。
「山田先生、そっちはどうですか!?」
「あと一機です! すぐ終わらせますから!」
「お願いします! さぁもういっちょ行くわよ!」
「うん!」
またスコールが呼び出した無人機は真耶によってほとんど倒されており、残る一機も時間の問題。四対一というかなり厳しい差を見事に打ち破った技量はさすが元日本代表候補にして、現IS学園の教員である。
「《
「『
「またこの連鎖起爆……相当練習したようね」
「ええ! 貴女を吹き飛ばすためにね!」
簪が高性能誘導ミサイル《山嵐》を発射し、着弾と同時にアクア・ナノマシンを巻き込むことによる連鎖起爆。それぞれの威力を掛け合わせたような激しさで炸裂する一撃は、着弾したミサイルの数だけ連鎖する。
「これ以上は、食らわないっ!」
「弾いた!?」
「そんな!」
しかし炎のベールを展開して強引にミサイルを弾き出したスコール。こちらはかなりのダメージが蓄積しているが、まだ『切り札』を切るだけの余力はある。
「見せてあげるわ。本当の最大火力を……!」
「これは……」
「まだ底を見せてなかったってわけね……!」
スコールのISが閃光を放ち、機体を包むように守る二つの巨大なリングを展開する。
「 これが私の切り札、【
「貴女もパッケージを……!」
「何も国家の支援を受けているものだけが使えると決まったわけじゃないわ。非正規品だけどね」
「違法に強奪したISに違法製造したパッケージ……さすが国際テロリスト……」
「でも性能は違法だからこそのとびきりよ。さぁ……焼かれなさい」
リングがチカチカと光った次の瞬間、全方位に向けて超高温の
熱線はその射線上全てを焼き払い、焦土に変える。
「さっきまでとは火力が違う……!」
「拡散するはずの熱量をあのリングで収束させてるのね……厄介だわ」
「あれは受け切れない……回避するか、致命傷は避けて逸らすか……」
「分析は終わったかしら? 次行くわよ」
リングが高速回転を始め、熱線に代わり幾つもの炎弾が乱射される。
高火力だが線で捉えることのできた熱線とは違い、一発の火力は落ちているが不規則にばら撒かれた炎弾は回避が難しい。特に──防御に重きを置いて機体の重みを増している者には。
「──あうっ!」
「簪ちゃん! あっつ!」
まず機動力に劣る簪が被弾。その防御力でダメージは抑えているが、この弾幕で動きを止めればまた次の一発が直撃する。
そして妹が傷つく姿を見た楯無も、その愛情ゆえに一瞬動きが鈍ってしまう。
「回避が甘くなった。やっぱりその子が大事なのね……ならもっと狙ってあげましょうか」
「くっ……!」
追い討ちをかけるように、今度は片方のリングから熱線を、もう片方からは炎弾を発射する。当然狙いは簪だ。
「これで終わりよ、
「──は?」
「あっ」
「『不動岩山』、部分解除」
「なっ──」
瞬間。簪は【打鉄弐式】から切り捨てたパッケージの一部で炎弾を受け止め、
そして脱出した勢いのまま驚愕の表情を浮かべるスコールに接近し──
「確かそう、透ならこんな感じ──」
「ちょっ──」
「『ぶち抜く』っ!」
左右に備えた荷電粒子砲《春雷》の、最大火力を撃ち込んだ。
「っ……!」
「『もう一発』」
「がはっ!」
さらにもう一発撃ち込み、その衝撃でスコールが後退する。
さすがに最大火力の連発は負担がかかったのか、《春雷》の砲身から放熱されている。
「……これでもまだ、足手まといって言える?」
「はぁーっ、はぁーっ……これは、見縊ってたようね……」
「凄いわ簪ちゃん……色々と……」
妹の成長への喜び半分、誰かさんに変な影響受けているのではないかという気持ち半分で複雑な感情になる楯無。
しかし今はそんなことを考えている場合ではない。かなりいいダメージが入ったとはいえスコールはまだ戦えるし、簪はパッケージを部分解除したせいで防御が落ちていることを考えると早急な決着が望ましい。
「こっちも切りましょうか、『切り札』ってやつを」
「! やるの? お姉ちゃん」
「ええ、でも──」
その『切り札』のためにはもう一つ必要なものがある。ものというか人で、その人は絶賛無人機と格闘しているところなのだが──
「お待たせしましたっ! 無人機の全破壊完了ですっ!」
「──ちょうどよかった」
全ての無人機を倒した真耶が合流し、これで三対一。『切り札』に必要な全てが揃った。
「早速ですが山田先生! 一気に決めますよっ!」
「お任せくださいっ!
先ずは真耶が独特な掛け声とともに、自身の専用機【ラファール・リヴァイヴ・スペシャル 『
それはまるで卵のように、しかしその殻は中身を守るためではなく閉じ込めるために配置されていた。
「こんなものっ……!」
「『すぐに抜け出せる』って感じですか? でも許しません!」
「!?」
「ここからがですっ!」
僅かな隙間から二丁のサブマシンガンをねじ込み、中のスコールへ向け思い切りトリガーを引く。
銃弾は内部で乱反射を繰り返し、徐々に装甲を破壊してゆく。
『
「ぐっ、ああっ……」
「さぁ、次ですよ!」
「はいっ!」
続いて楯無。しかし先ほどまで大量に纏っていた赤いヴェールは、槍に纏わせていたものを除いて消えている。
いや消えたのではない。アクア・ナノマシンを含んだ水流が水蒸気となり、大気と混じり合って空間に溶け込んでいる。
そしてこのアクア・ナノマシンを溶け込ませた空間そのものが、楯無の
「動きがっ、鈍い……いや違う、動けない!? これは……!?」
「『
超広範囲指定型空間拘束結界。それが楯無の単一仕様能力。大量に拡散させたアクア・ナノマシンが敵の動きを封じ込め、文字通り空間に沈ませる。
時間はかかるが、発動さえしてしまえば脱出も回避も不可能。後は楯無の思うがままに、溺れさせるだけ。
「こんなもの、焼き尽くせば──」
「でもそれって何分かかるのかしら、一分? 十分? それとも一時間? いずれにせよもう終わりよ。ね、二人とも?」
「《山嵐》──そうだね、お姉ちゃん」
「ええ、お仕置きの時間です!」
間髪入れず四十八基の《山嵐》を発射する簪と、おまけのグレネードを発射する真耶。
しかしその全てがちょうどスコールに触れるか触れないかというギリギリで、『沈む床』によって絡め取られて停止する。そう、まるで機雷のように。
「これはっ!?」
「そう。さっきと同じ、連鎖起爆よ、ただし規模は数十倍……」
「あっ──」
そして、残しておいた全てのアクア・ナノマシンを纏わせた《
投げる『ミストルティンの槍』。楯無第三の必殺技、その名も──
「『
着弾、起爆。辺りを揺るがす爆風が駆け抜け──その後には、ISを強制解除されたスコールが残された。
「まさか生体同期型ISだったなんて、帰ったら精密検査ね」
「色々とあったのよ。『裏』でね……」
黒焦げになった爆心地。僅かに残ったエネルギーで、満身創痍のスコールをスキャンする。すると驚くべきことに、【黄金の夜明け】のISコアはアクセサリではなく体内に仕込まれていた。つまり機体にあったそれらしきモノはダミーだったというわけだ。
彼女の過去に何があったのか、生体同期型ISなんてものを持っているのか、なぜ亡国にいるのか、目的は何だったのか……疑問は尽きない。
「ふ、ふふふ。負けちゃったわね」
「何よ。余裕そうな顔して」
ド派手に爆破されて全身ズタズタ、機械義肢もあちこちもぎ取れて、誰がどう見ても明確な敗北。しかしスコールは笑っていた。
「いえ、全力を出して負けたなんて、いつぶりかしらと思ってね」
「三十年ぶりぐらいですか?」
「簪ちゃんステイ」
やっぱりあの野郎は一度シメるべきではないかと思いながら、改めてスコールを拘束して話を続けさせる。
「私は持てる全ての力を尽くして抗った。その結果がこれならもう文句はないわ。他のメンバーもきっと同じ」
「……そう」
「ただし。これで全て終わると思わないことね。所詮私たちは手駒、大きな世界の流れのほんの一部に過ぎないのだから」
「……………」
意味ありげな笑みを浮かべるスコールと、無言で見つめる楯無。立場は違えど、同じ
「ま、詳しくは学園で聞くわ。山田先生、お願いします」
「お任せを──って今日の私、任されすぎじゃないですか?」
「気のせいですよ」
「頼れる先生だから……」
「た、頼れる? えへへ……照れちゃいますね」
適当にヨイショされて照れる真耶には、戦闘中のキリリとした雰囲気は消え失せている。しかしまぁ、頼れる先生というのは嘘でもないが。
「増援に行ける状態じゃないし、一旦帰りましょう」
「そうですね、通信も繋がりませんし……」
「心配だけど、しょうがない、か」
他の場所はどうなっているのか、学園は、『彼』は無事だろうか。勝利の余韻に浸る暇もないまま、スコールを連れて学園に戻るのであった。
「嘘だろ……」
「どうしたよオータムさんっ!?」
「ちょ、ボーッとしてないで応戦してくださいッス!」
「死ねぇ!!」
「観念しろ!!」
未だ乱戦が続くこの戦場で、オータム一人が動きを止める。目の前の敵を気にする余裕すらない様子で、たった今知らされた衝撃のメッセージに打ちのめされる。
内容は簡潔に、『ごめんなさい』の一言。差出人はスコール。これが意味することは……彼女が敗北したということ。
「スコールが、やられた……」
「はぁ!?」
「おばさんがぁ!? どうなってんだよ!?」
「……知らねーよ、そんなこと……」
「オータム……さん?」
てっきり逆上するとでも思いきや、魂でも抜けた様に棒立ちで、力の無い言葉を返すオータム。まさか愛する者が負けたショックで思考停止したのか、このギリギリの状態でそれはまずい。
「隙ありっ!」
「いただきますわっ!」
「っやべ、おい!」
ならば『とにかく動け、戦え』と、とりあえず正気に戻そうとレインが声をかけようとした瞬間、
「ゆるさねぇ」
「え」
「──は?」
まるですれ抜けたかの様に壁へ激突するセシリアの放ったレーザーと鈴。
その光景がオータムが高速で受け流したことによるものと気づくには、少し時間がかかった。
「あ……あの、オータムさん?」
「ああクソ、よくもスコールを……」
「な、なあ……どうしたんだよ……?」
「IS学園、IS学園……ぶっ潰してやるよ……」
ブツブツと怨嗟を垂れ流すオータム。あの静けさは魂が抜けたのではない、怒りが一周回って冷えてしまっただけ。その憎しみはこうして漏れ続けている。
「おい。レイン、フォルテ」
「は、はい!」
「何だよ?」
「多少巻き込んでもいい、派手にやれ」
「それじゃあんたは……「行くぞ」っておい!」
返答も聞かずに飛び出していくオータム。確かに今までレインとフォルテの二人はオータムを巻き込まないよう防御寄りで、あまり積極的に攻める姿勢は取っていなかった。彼女もそれを理解していたはずで、だというのに『巻き込んでもいい』とはどういうことか。
「ああもう文句言うなよ! やるぞフォルテ!」
「いいんスかね……」
しかしそうしろと言われたなら仕方がない。直撃コースは避けつつも、多少巻き込むことは間違いないレベルの火力で攻撃を開始する。
「何を考えている!?」
「黙れ、ドイツのクソガキが」
「な──ぐぁっ!」
「ラウラッ!」
そして、その攻撃を避ける素振りすら見せずにラウラへ近づき、所々が焼けるのも構わずに首を絞め上げる。
「私はなぁ、さっさとお前らをぶっ潰して、スコールを助けなきゃいけねぇんだ。だからさっさと墜ちてくれよ。なぁ」
「う……ぐ、けほっ」
「ラウラを離せっ!」
「邪魔すんな。お前もすぐにこうしてやるんだから……よっ!」
「え──わぁっ!?」
助けようと近づいたシャルロットは、逆に投げ捨てられたラウラと激突して吹き飛ぶ。またラウラに付着させられていた糸が絡みつき、すぐには復帰できないだろう。
「いたた……急に動きが変わったわね……」
「速さもそうですが、明らかに技術が上がってますわ。一瞬で武術でも身につけたよう」
「オレたちを忘れんな!」
「忘れてないっての!」
「こっちも変わって鬱陶しい!」
攻撃性を増した炎と冷気が二人を襲う。余波がオータムに届きそうだがそんなものはお構いなし。やれと言われたらやるのだ。
「っ……セシリア、二人を!」
「わかってますわ……ティアーズ!」
「わっ……ありがとう!」
「げほっ、助かった!」
「……チッ」
ビットから放たれるレーザーによって糸が焼き切られ、二人が解放される。
まだラウラは少し苦しそうだが、これで何とか立て直すことができた。
「あのまま大人しくしてりゃ放っておくつもりだったが……気が変わった。テメェら全員達磨にして捨ててやるよ」
「やってみなさいよ。こっちこそその気色悪い腕もぎ取ってやるわ、ねぇラウラ?」
「ああ、きっちりお返ししてやろう」
愛する者の仇(八つ当たり)と、たった壁に突っ込まされ、首を絞められて転がされた恨み。やられた分は返さないと気がすまない。
セシリアのレーザーは弾かれる可能性が高いことを考え、糸のリスクを考慮しても複数の近接戦に向いた組み合わせに切り替える。
「じゃあ僕たちはこっちで。ね、セシリア?」
「ええ、パートナー交代ですわ」
「……にゃろう」
「即席コンビじゃ勝てないッスよ……!」
「勝つつもりはないよ、この二人ではね」
そしてシャルロットはセシリアとのタッグへ変更。
火力を上げた分防御力は落ちている……と言っても未だ『凍てつく炎』は健在で、射撃は効きにくい。そこで距離を保ちつつ、鈴とラウラがオータムを倒すまで凌ぐ作戦を取ることとした。
「時間稼ぎならお前ら二人で足りるってか……上等だ!」
「ぬるーく粘って差し上げますわ!」
火炎、氷塊、レーザー、実弾。四人の必死な形相に目を瞑ればいっそ綺麗にすら見えたであろう攻撃が飛び交う。
互いの攻撃はほとんど相殺され、僅かに抜けたものが装甲を傷つける。疲労は徐々に蓄積し、シールドエネルギーは危険域に近づいていった。
「まだ……まだラウラと鈴が戦ってる」
「それまでは……絶対に行かせませんわ!」
「……クソ、しぶといなこいつら」
「…………」
「フォルテ?」
フォルテの動きが止まる。シャルロットとセシリアも動きを止めているからいいものの、一体何があるというのか。
「……どうして、お友達のためにそこまでできるッスか? 恋人でもないのに」
「……はい?」
「しかもそのお友達は、同じ人を好きになったライバルなんでしょう? 助けたって何の得にもならないじゃないッスか」
「フォルテ……お前……」
フォルテ・サファイアは、愛ゆえにIS学園を裏切った。家族、友人、立場……愛以外の全てを捨てて。
だからフォルテには理解できない。たかが友人のために頑張れる者の気持ちが。
「……愚問ですわね。友達を助けるのに、深い理由なんてありませんわ!」
「そのとーり! それに友達を見捨てたら、一夏に嫌われちゃうからね!」
「あと鈴さんには貸してるものが多すぎますの。全部返してもらわずにいなくなられたら困りますわ」
「そこそこ理由あるじゃねーか」
「しかも結構打算的ッスね」
真面目に聞いたつもりだったのだが変な空気になってしまった。しかし、これが二人の本心なのだろう……格好はつかないが。
「だったら比べてやろうぜ! オレたちの愛とこいつらの友情をなぁっ!」
「はいっ!」
「大感情バトルですわ!」
「怪獣みたいに言わないでっ!」
一方そのころ、三人は。
「さっさとくたばりやがれ! 私はっ…私はぁ!」
「ぐっ! 一発が重い!」
「ここまでの格闘技術を持っていたとは……!」
オータムの猛攻により、鈴とラウラはかなり圧されていた。
【甲龍】の両肩に備えた衝撃砲《龍砲》は一つが破壊されもう一つも半壊。《双天牙月》は刃こぼれを起こし、【シュヴァルツェア・レーゲン】のレールカノンは砲身が中程で叩き折られている。
「死ねぇ!」
「! そこっ!」
「がはっ! クソが、ついてきやがって……」
「あたしたちだって一応軍人よ! これぐらい慣れるわ!」
しかし二人はただやられるだけではない。少しずつオータムの動きに順応し、確実にダメージを与えていた。
【アラクネ】の装甲脚は三本が折れ、今日のために後付けした武装も約半数が使い物にならなくなっている。
「ラウラ、あとどれくらい残ってる? あたし三割」
「同じくだ。そろそろ決めないとまずい……」
「そうね……ここらで一発、賭けに出ますか……!」
「了解した……!」
細々と相談する暇はない。互いの動きと表情を見て、瞬時に自分がやるべきことを察する。直感に優れた鈴と、軍隊での経験が豊富なラウラならではの連携だ。
「まずは《
「させるかよっ!」
「あっ──」
連結させた《双天牙月》を構えて接近し、残った装甲脚を切り落とそうと振るう鈴。
しかしオータムはそれを糸で絡め取り、逆に鈴の脳天目掛けて振り下ろす。
──が。
「──なんちゃって」
「テメェッ──ぐわぁっ!」
もう一基の《龍砲》を頭と刃の間に滑り込ませて受け止める。
既に半壊だった衝撃砲に重量級の刃が食い込み、限界を超えて──残ったエネルギーとともに爆発した。
「ッ……こんな目眩しにっ……」
「ええ、ただの目眩しよ。でもよく効いたでしょう?」
「私に気づかんぐらいにはなぁっ!」
「しまっ──」
「もう遅いっ! 『AIC』ッ!!」
爆発の衝撃で一瞬乱されたセンサー。それはもう一人の存在を意識外へ飛ばすのには十分過ぎる隙で、ラウラは見事にその隙を突いて見せた。
腕部から放出される
「放せっ……!」
「ふふん、そう言われて放す馬鹿はいない」
もしも『AIC』と相性のいいエネルギー武装が残ったいれば、そうでなくともラウラの集中を乱せる何かがあれば抵抗はできただろう。
しかし今のオータムに残されたのは半壊した【アラクネ】のみ。ただがむしゃらに、動かない手足に力を込めることだけしかできない。
「では鈴。あとは頼んだぞ……全員分な」
「任しときなさい。《
「クッソ、が、あ……」
「──ぶちかますわ」
腕部衝撃砲《崩拳》を起動させた【甲龍】の拳と【アラクネ】の距離が近づき、そして零になる。
拘束されたオータムの目には、その動きがまるでスローモーションのように見えた。
「──どぉりぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
拳のインパクトに合わせて《崩拳》を放ち、その反動で腕を引く。そして力任せに拳を叩きつけて《崩拳》を放つ──という無茶苦茶な動作を限界までループさせる。
中途半端なところで止めれば抜けられて、もう二度とこんなチャンスは作れない。だから確実に、拳が砕けるか敵が倒れるまで続けるのだ。積もり積もった全員分の恨みを込めて。
「学園祭っ! キャノンボール・ファストッ!! タッグマッチトーナメント……は違って今日の分! そして一夏を誘拐した分っ!!!」
「がふっ! ぐあ、あ……」
「最後のこれがあたしたちのっ! 八つ当たりだぁぁーーーーーっっっっ!!!!!」
「!??!!? ……ぐぁぁぁぁーーーっ!!!!」
とどめの一撃。ありったけのエネルギーを注ぎ込んだ最大の一撃が拳ごと装甲を破壊する。
そしてその衝撃が、オータムの意識を刈り取った。
「ち、くしょ、う……」
「勝ったわ」
「ああ……やったな」
「あー、オータムさんもやられちまったかぁ……」
「どうします? かなりやばいッスけど」
「どうするってなぁ……」
「こちらもまだまだやれますわよ……、ふぅ……」
「降参するなら今のうち……。はぁー……」
オータムが倒れ、残るはレインとフォルテの二人。完全に持久戦の構えに切り替えても尚この二人の連携は強力であり、虚勢を張りつつもセシリアとシャルロットの体力は限界に近づいていた。
またそれはオータムを倒した鈴とラウラも同じ。すぐに駆けつけてはくれるだろうが、正直どうにかなるかは怪しいものがある。
もしもまだ戦うと言うのなら……かなりピンチだ。
「うーん……じゃあ降参で」
「「えっ」」
「あ、そスか。じゃあウチも降参で」
「「……え゛え゛え゛っ!?」」
突然の降参宣言。促してはいたが完全に予想外の行動に驚愕の叫びを上げる。
ここは倒れた仲間の分までとかそういう展開ではないのか、いやありがたいのだが、しかし何故急に……と戸惑いを隠せない。
「え? ちょ、ちょ……え?」
「いいの? 捕まえちゃうよ?」
「さっさとやれって……ほらISも渡すから」
「早くしないと逃げるッスよ」
「か、確保ー!!」
空き缶を捨てるように放り投げられたISの待機形態をキャッチし、そのまま両手を前に突き出した二人を確保。しっかりと拘束を済ませ、これで逃げられることはなくなった。
その間まるで抵抗する様子は見せず、この突然の降参は嘘ではないと信じられた。
「オレは……オレたちはな、組織への忠誠なんざこれっぽっちもなくて、ただ二人でいたいだけ。その場所として組織に身を置くことを選んだだけで……その組織がこうなった時はおさらばするつもりだったんだよ」
「ウチなんて先輩に誘われて入っただけッスからね」
「おばさんとオータムさんへの命令と義理で今日も戦ったけど……二人がやられたらなぁ?」
「やってらんないッスよねぇ……ははは……」
「「…………」」
散々手こずらせておいてこれかという怒りと、こんな理由で決着をつけられた呆れで声も出ない。
なんとも言えない勝利に喜ぶこともできず、帰ったらなんと報告するべきかに頭を悩ませる。
「帰りましょうか……」
「うん……ラウラと鈴も連れてね……」
とりあえず報告は四人で考えよう。そうしてセシリアとシャルロットは、鈴とラウラと合流しに行くのだった。
第52話「業火・王蜘蛛」
執筆開始ぼく「いや〜6500ぐらいかな?」
スコールパート書き終えたぼく「8000いかないぐらいかな……?」
執筆完了ぼく「きゅーせんろっぴゃく! あびゃびゃびゃびゃ!」