【完結】害虫生存戦略   作:エルゴ

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 連載一周年なので初投稿です。


第55話「どこに・薬」

 

 箒が攫われて、透がいなくなって、一週間が過ぎた。

 

「……それでは、帰りのHRを終わります。みなさんさようなら」

「「「さようならー!」」」

「…………」

 

 授業が始まったのは五日前。一般生徒には箒は日本政府からの聴取に、透は海外で研究に協力しに行ったことになっている。最初は俺以外の専用機持ちのISが全部修理に出ていることを疑われたり、二人はいつ帰って来るのかと聞かれたが、三日もすればそれも無くなった。

 二人がいないことを除けば、クラスに大きな変化は無い。

 

 

「一夏、一緒に帰ろ?」

「私も同行するぞ」

「……そうだな。シャル、ラウラ」

「うん」

「ああ」

 

 シャルとラウラは表面上、いつもと同じ調子で過ごしている。何も知らないやつから見たら薄情に思えるだろうが、きっとクラスメイトに悟られないように無理をしているのだと俺には思えた。

 

「セシリアは?」

「すぐ射撃場に向かったぞ。鈴も一人で帰るそうだ」

「そうか……」

 

 セシリアと鈴は逆に、一人で行動するようになった。毎日授業が終われば一人で練習し、夜になれば帰る。オーバーワークとまではいかないが、明らかに根を詰めている。

 まるで苛立ちをぶつけているかのように。何に苛立っているのかは……言うまでもない。

 

「……生徒会は今日も無し、か」

「心配だね、楯無さん」

「あの人が一番ショックを受けていたからな」

 

 生徒会はずっと休んだまま。正確には楯無さんだけが生徒会室に行き、一人で仕事をしている。一度手伝おうとしたら、扉も開けずに帰されてしまった。

 簪さんと虚さん、のほほんさんだけは出入りできているが、やはり何も手伝わされることなく帰されているそうだ。

 それでも虚さん曰く『仕事に支障は出ていない』らしいが……その顔にはいつもの事務的な表情はなかった。

 

「……じゃあ、僕たちはここで」

「また明日」

「ああ、また」

 

 それっきり大した会話もなく、部屋の前にて二人と別れる。1025室の扉を開け、暗い部屋に電気を点けた。

 

「……はぁ」

 

 雑に荷物を置き、制服にしわが付くのも構わずベッドへ寝転がる。小さくついたはずのため息がやけに大きく響いた。

 先週なら今頃何をしていただろうか。生徒会で仕事? みんなと特訓? 教室に残ったり、普通に帰って雑談。少なくとも、一人ではなかっただろう。

 

「あー……」

 

 シャルとラウラは表面上いつも通り。セシリアと鈴は特訓。楯無さんは仕事。簪さんたちはその様子見。千冬姉や山田先生もあんなことがあった分忙しそうだった。

 なら、俺は?

 

「何やってんだろ」

 

 みんなは俺を見ても何も言わない。世間話は振られても、心配されたことはない。ならばいつも通りに見えているのか。それとも。

 

「……どこにいるんだ」

 

 箒の居場所はどれだけ探しても見つからなかった。学園から少し離れた海上までは反応があったそうだが、ある地点から忽然と消えてしまった。

 千冬姉の考察によれば──正直よるまでもないが──、箒は束さんのところにいるらしい。世界中が探しても見つからないあの人のところなら、俺たちがいくら探しても無駄だろうとも。

 

「……無事かなぁ」

 

 心配だ。あれだけ妹を溺愛する素振りを見せていたあの人なら、そう酷いことはしない……と思ったが、すぐにそんな考えは捨てた。だって妹を攫う時点で酷すぎる。きっと普段のあれは、きっと道具の愛着と同じだったのだろう。

 

「あいつは……」

 

 透はどうしているんだろう。亡国のコアを奪って、箒を攫って、俺たちの前から消えて……きっと束さんのところへ行ったあいつは。

 

「…………」

 

 怒ってないわけじゃない。あいつのしたことは、俺たちへの裏切りだし、出した被害を考えれば同じ裏切りでもダリル先輩とフォルテ先輩とは比べ物にならない。そして何より、箒を攫ったのはあいつだ。

 けれど、それだけのことをされても何故か『許せない』という感情だけは湧かなかった。

 

「どうしてあんなことをしたんだ?」

 

 冷静なった頭で思い出すと、あの時透は『決めたこと』と言っていた。つまりは決める前段階、俺たちを裏切るか裏切らないかを選択していたわけで。その選択肢がいつ出たのか……そうだ。

 

「ハッキングの時だ……!」

 

 俺が倉持技研に呼ばれて、その間にIS学園がハッキングされて……戻ってきたときに少し様子がおかしくなってた。しばらくしたら戻ってたから触れないようにしていたが、あの時にあいつは。

 決める前か、それとも決めた後だったのか? 今となっては本人にしかわからない。けれど、何かしら悩んでいたことは間違いない。

 ならば、悩んでいたのは何故だ?

 

「……ああもう!」

 

 寝転がってちゃ考えが纏まらない。一旦何か行動を──と起き上がったところで、

 

 きぃん。

 

「……?」

 

 右手の【白式】が、僅かに光った気がした。

 

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

 ただひたすらに、黙々と目の前の紙にペンを走らせ、印を押していく。目の前に積まれた書類は作業を始めた時の三分の一程度だろうか。背後から感じる日の光で、始めてそう時間が経っていないことを察する。

 

「休憩しようかな。虚ちゃ……はもう帰したんだった」

 

 『一人で集中したいから』と従者を既に帰してしまったことを忘れて名前を呼びかける。今ここにいるのは私だけ。従者はおろか、一応部下である一夏くんも、心配して顔を出してくれた簪ちゃんもここにはいない。

 

「…………」

 

 無言でティーポットとカップを取り出し、適当に選んだ茶葉と適当な温度の湯で紅茶を淹れる。きっと大した香りも味もないものが出来上がるだろうが、どうせ飲むのは私一人だ。

 

「まずい」

 

 虚ちゃんに見られたら小言をもらいそうな紅茶を一口。最低評価を下して再び書類仕事に戻る。

 かりかり、ぺたん、ぺらり、かりかり。ひたすら同じ音が繰り返されるだけの空間。

 

「……おわり」

 

 程なくして全ての書類が片付き、少しだけ疲れた目を押さえて背もたれに体を預ける。空はまだ暗くない。

 こんなに集中して仕事をし続けたのは初めてだ。ここで働くときはいつも他に誰かがいて、何でもない話をしながらだらだらと進めていた。いつも終わる頃には日が暮れていたけれど、それを苦痛だとは思わなかったし、むしろ楽しかった。

 でも今は一人。仕事は早く終わっても、何の喜びもない。

 

「……はぁ」

 

 まだ書類の受け渡しと片付けが残っているというのに、やるべきことから目を逸らして、彼がいたはずの場所を眺める。

 九十九透。コアを奪って、箒ちゃんを攫ったお尋ね者。そして……私たちの仲間だった人。

 

「ほんの一週間前まで……あそこに」

 

 私の目の前、虚ちゃんの隣、本音ちゃんの前が指定席だった透くん。文句を言いながらも呼んだらすぐに来てくれて、また文句を言いながらも仕事は早かった透くん。早く帰りたいと言いながらも虚ちゃんのお茶を飲むまでは帰らなかった透くん。仕事をしてない本音ちゃんと一緒に私を煽ってきた透くん……後半は思い出さなくてよかった。

 同じ空間にいられることが嬉しくて、いつも何でもない話を振っていたっけ。

 でも、彼はもういない。私たちを裏切ったから。

 

「……ぅ、うぅ……」

 

 嘘だと思いたい。あのドアの向こうには悪趣味な看板を持った透くんが立っているんじゃないかとか、朝起きれば全部夢になるんじゃないかとか、そんなありえない妄想ばかりしている。

 

 どうして私たちを裏切ったのか。それは共に過ごしてきた半年間を捨てるほどのものだったのか。考えても考えてもわからない。

 じわりと視界が歪んで、机に滴が落ちた。

 集中したいなんて嘘。本当は、不意に出る涙を隠したかっただけ。

 

「会いたい……」

 

 居場所さえわかれば、ISさえ使えれば、今すぐここを飛び出して探しに行くのに。ロシア国家代表なんて肩書きがあっても、こうなってはそこらの学生と変わらない。

 

「…………」

 

 今頃は、地下にて身柄を拘束している亡国のメンバーに尋問でもしている頃だろうか。

 彼女らには聞くことが沢山ある。ISや武装の流出経路、今までの事件との関わり、亡国機業本来の計画……そして、篠ノ之束との繋がり。その全てを聞き出すことは容易ではないが、誰か一つでも分かれば大きな進展となるだろう。

 本当は私も同席したかったのだが、織斑先生に止められてしまった。だから今私にできるのは、その結果を待つことだけ。そんな自分の無力さが、悔しくて堪らない。

 

「しっかりしなきゃ」

 

 それでも私はIS学園生徒会長。人の上に立つもの、長として、こんな情けない姿をみんなに晒すわけにはいかない。泣いていいのは一人の時だけ。そのはずなのに。

 

「はぁ……」

 

 だけど今は、ひたすらに彼と会いたかった。

 

 

 

 

 

「やあ、篠ノ之さん」

「……何の用だ」

「何って、ただの様子見だよ。見張り番がてらにな」

 

 窓一つない鉄の壁に鉄の床。1人用のベッドに、固定された机と椅子。正に独房といった部屋に向けて、鉄格子のはまった扉からまるで登下校中に出会ったような挨拶をする。

 返ってくるのは明らかな疑いの目。当然だろう。だって彼女は囚われの身で、攫ったのは俺なんだから。

 

「まーたちょっと食って残してるな。そんなんじゃ持たないぞ?」

「ふん、私はダイエット中なのだ。最低限食えばこんな食事はいらん」

「作ってんの俺なんだけどなぁ……」

「!?」

 

 差し入れ口に置かれたほとんど手をつけられていない食事を取り、とりあえず適当に床へ置いておく。俺が作ったのは本当だが、別に残されたって心が痛んだりはしない。そういうフリだ。

 

「こういうのも女の子の憧れらしいな、どんな気分だ? 『囚われのお姫様』?」

「ベッドが固い、薄暗い、風呂の時間が決められているのが気にくわん。あと床は畳にしろ」

「不満多いなぁこいつ」

「め、飯は不味くなかったぞ……?」

「今更フォロー入らんわ」

 

 今の例えは撤回しよう。ここまで強気なお姫様がいてたまるか。

 

「……教えろ。ここはどこだ? なぜ私を攫った? あのラウラに似ている女は誰だ? 姉さんとはどういう繋がりがある?」

「質問が多いなぁ。別に教えたって構わないけど」

 

 この独房に来たのは今日が初めて。それまでは束様かクロエか、あるいは自動のシステムが世話をしていたはずだ。来なかった理由は……何となく顔合わせるのが嫌だったから。

 そして質問が四つ。一度に聞くには多過ぎるが、別に口止めされているわけでもなし、話したっていいだろう。逆にこの一週間二人とも話さなかったのかよ。

 

「順番に答えようか。ここは束様の大型移動式研究所(ラボ)

 『坊ちゃん(親譲りの無鉄砲)』だ。」

「各方面から怒られればいいのに」

「同意だな。で、現在はステルスモードでとある海域を漂っている。正確な位置は俺も知らない」

 

 ここの広さはどれくらいだったか。俺でも隅々まで知っているわけじゃないからな……少なくとも百や二百平方メートルなんて広さじゃじゃ効かないだろう。

 

「次、攫った理由……は知らん。やれと言われたからやった。やらないと俺が困るんでな」

「実行担当にすら秘密か。あの人らしいな」

「どうせ最悪な理由だ。なんせ篠ノ之さんを攫う前から準備してるらしいからな」

「ふん……」

「……」

 

 強がって入るが、やはり不安感はあるのだろう。手は固く握って視線も落としている。ま、年頃の女がこんな環境に置かれていたらこうもなるか。無駄に暴れて抵抗されるよりはいい。

 

「ボーデヴィッヒに似てる女だが、あいつはクロエ・クロニクル。一応束様の娘扱いで、俺の妹を主張してる。でも実際はボーデヴィッヒの姉みたいなものだ」

「こんがらがってきたな……」

「あの人の娘ってことだけ覚えればいい。箒おばさん」

「……」

「扉を殴ろうとするのやめろ」

 

 こんな時に揶揄ったのは悪かった。だからこんな硬い鉄の扉を殴って怪我なんかされたら俺が罰される。

 

「えーと最後が……束様との繋がりか。ぶっちゃけ主従関係だな」

「……それは予想してたよ。いきなり『様』までつけているからな」

「ああ。実はお前のことも裏では『妹様』って呼んでた」

「うわっ……二度とそれで呼ぶな。頭の中でもだ」

「めんどくせぇな……」

 

 そこまで拒否されるほど嫌なのか……? とにかく、以後は篠ノ之さんで固定しよう。統一した方が楽ではあるし。

 

「んで従う理由は……命の恩人だから、かな」

「恩人? あの人が? そんな慈善家だとは思えんな」

「実際慈善行為なんかじゃない。ただの気まぐれと、利益のためさ」

 

 俺の出自と余命に関しては言わないでおこう。今更知られて困ることじゃないが、話すと複雑になる。

 

「全部答えたな、これで質問タイムは終わりだ。俺も戻る」

「そうか。ではあの人に伝えておけ、『いつまでも思い通りにいくと思うなよ』とな」

「気丈だなぁ。ま、覚えてたら伝えておく」

 

 自分がどこにいるのかも、何をされるかも知らないくせに、口だけとはいえよくもまあここまで強気でいられるものだ。

 助けが来ることを信じているのか、それとも自力で脱出できるとでも思っているのか……さすがに後者に期待するほど馬鹿ではないか。

 

「さてと……様子見はこんなところで。くれぐれも妙な気は起こさないようにな」

「ふん。お前こそせいぜい用済みにならんようにな」

「……じゃ、また」

 

 話しすぎたか、どうにも調子が狂う。

 どうせ見張りなんて監視カメラで十分だというのに、全く──

 

「これで十分でしょう? 束様」

「うんうん。ごくろーさん」

 

 ──趣味が悪い。

 

「『様子見ついでのメンタルケア』……必要かどうかは置いといて、向いてないことするのは疲れますよ」

「でも私とくーちゃんじゃそういうのできないからさぁ。準備が整うまでは頼むよ」

「準備ねぇ、それっていつまでかかるんです?」

「もうすぐだよ。ペースは極めて順調、うきうきするね!」

「ふーん……」

 

 一週間も篭り続けて進めている『準備』。篠ノ之さんに関連するのか、次の『仕事』で使うのか……聞いても曖昧な答えしか返ってこず、まずろくでもないであろうことしかわからないモノ。

 だが今は、そんなものはどうでもいい。

 

「そろそろいいでしょう。束様」

「……なーにがいいのかなー? とーくん?」

「とぼけないでくださいよ」

 

 全て見透かしているくせに、わかっていないフリをして嗤う束様。そんなに俺の口から言わせたいのか、酷い上司だ。

 

「今回の……一週間前の報酬がまだです。そのために俺は誘いに乗ったんだ」

「報酬? 何かなー? お金かなー?」

「このっ……!」

「にゃははははっ、ごめんって。ついつい揶揄っちゃった」

「…………」

 

 今すぐぶん殴ってやりたいが、そんなことすれば俺の残り一ヶ月と少しの命が飛ぶ。そのなけなしの命を救ってもらうためにここにいるんだ。抑えろ、俺。

 

『チッ……』

 

 だから抑えろって。

 

「おおこわ。それじゃあえーっと……はいこれ」

「どこから出して……何ですかこれ」

 

 おもむろに──なぜか胸から──取り出した白い袋。差し出されるまま受け取り、そのまま開けると中にあったのは細く小さなアンプルがいくつか。さらにそのアンプルの中には透明な液体が入っている。

 

「とーくん用のお薬だよ。一日一回、一瓶ずつね」

「……これにどんな効果が?」

 

 俺が求めているのは延命だ。寿命が縮められているのはこの胸に埋め込まれた機械のせいで、直すにこれを取り外すなり機能停止させる必要があるはず。

 それがこんな風邪でも治すような薬でどうにかできるというのか?

 

「細かい成分とかは省くね。それは一度の服用で約二十四時間、治癒力を大幅に低下させる」

「!」

「とーくんの場合は元の治癒力が高すぎるから、ちょうど常人並みになるって感じかな……この意味、わかる?」

「……『首輪』ですか」

「そういうこと」

 

 治癒力の低下……確かに俺の抱える問題への回答となり得るものだ。生憎薬学の知識が無いためどんな成分が入っているかは知らないが、これさえあれば少なくとも自分に殺されることはないだろう。

 だが今渡された分はせいぜい五日分で、全て用法通りに服用しても延命できるのはたった五日。成分もわからないのでは複製は無理。それ以上を望むならまた束様から貰うしかない。

 『従えば生かしてやる、従わないならそのまま死ね』……なるほど、悔しいが、俺を縛りつけておくには一番効果があるやり方だ。

 

「そんなに信用できませんかね。これでも結構尽くしてきたつもりなんですが」

「でもそれは自分の命惜しさでしょ? もしここで君を治しちゃったら、ハイサヨナラー……なんてことになるかもしれない」

「……なりませんよ」

「どうだかねー。……とにかく、私にはまだ君の力が必要なの。だから最後まで付き合ってもらえる保証が欲しい」

 

 本当に面倒な人だ。どうせ逃げる気なんてこれっぽっちもないし、逃げたところで無駄なのに。

 

「とりあえずほら、飲んでみなよ。余計なものは入れてないからさ」

「……わかりました」

 

 信用されていないのはともかく、この薬はありがたくいただいておこう。無色透明な液体の入ったアンプルを開け、一気に飲み干す……すると、わざとらしい果物の香りと、妙な甘ったるさが喉に残る。

 

「まっずい苺味だ……うぇ」

「全四種類だよ。お楽しみに」

「めちゃくちゃ余計なもの入ってるじゃないですか……」

 

 いつだったか一夏と一緒に買って後悔した、古臭い派手な色の駄菓子みたいな味だ。喉の奥がイガイガする。しばらくこれを飲み続けると思うと憂鬱だ。

 

「ところでまだ君の力が必要とは言ったけども。何をさせられるかもわからないままじゃ不安だよね。というわけで……んしょ、はい」

「だからどこから出してん……もういいや」

 

 また胸元から取り出された紙束を受け取る。これに喜ぶ男もいるのだろうが、俺からすると生暖かい紙の感触は正直気持ち悪い。

 

「それに書いてあるのは私の『計画』。といっても、君に理解できるように簡潔にまとめてあるけどね」

「……へぇ」

「さ、読んでごらん」

 

 ずっと気になっていた『計画』。その全貌がこの書類に書いてあるのか。

 まっさらな表紙をを恐る恐るめくり、本文へと目を通す。

 

「──は、はぁ?」

「ふふふ、驚いてる」

 

 そこに書かれていたのはあまりに荒唐無稽で、正気を疑うような計画。

 人一人が持つには大きすぎる願望があった。

 

「本気ですか?」

「もちろん。その願いのために、これまでずーっと準備してきたんだ」

「…………」

「さてと、私は準備に戻ろうかな。終わったらまた呼ぶから、待っててねー」

「……はい」

 

 自動ドアがぷしゅう、と開いて、束様が通ってまた閉じる。今すぐ追いかけたところでそこにはもう誰もいないだろう。

 とんでもない計画だ。今時少し痛い中学生でも本気でこんなことを考えたりはしないだろう。

 だが束様なら、『天災』篠ノ之束ならば。

 

「やってやるよ」

 

 従う以外の選択肢は捨てた。『世界の敵』として最後まで付き合って──そして、生き延びてやる。

 

 

 

 

 

第55話「どこに・薬」

 

 

 

 

 




 せっかくだしいい感じのこと言おうとしたら特に思いつきませんでした。なので囚われの箒ちゃんが何してたのかを以下にまとめます。

6:00 特に目覚ましはないが自力で起きる。精神統一の後エア剣道。
7:00 壁が開くので朝風呂へ。
7:30 朝食。最低限食べる。
8:00 しばらく暇。学園のみんなは何してるのか考える。
12:00 昼食。最低限食べる。
12:30 暇。たまに来るクロエに話しかけるがシカトされる。束は追い返す。
15:00 おやつ。食べない。
16:00 エア剣道。
18:00 夕食。最低限食べる。
19:00 壁が開くので風呂へ。
19:30 暇。透くんのことを考えて少しイラつく。
21:00 やることがないので寝る。

 なんだかんだほぼ週一更新してましたがらさすがにこれからは間が空きそうです。二週間以内を目標とするのは変わりません。
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