若干描写に違和感があったので修正しました。
第三アリーナAピット。一夏と妹様含む俺たち三人は決闘の準備のため待機していた。
「──なあ、箒」
「なんだ、一夏」
「ISについて教えてくれる話はどうなったんだ?」
「……正直すまないと思っている」
「おい!?」
何やら二人が揉めている。ISの特訓してこなかったのか。この一週間何してたんだ?
「まさかとは思うが、もしかしてずっと剣道やっていたのか?」
「仕方ないだろう、一夏のISが届かなかったのだから」
「そうだけどさぁ、知識とか基本的なこととかあっただろ?」
「…………」
「目を逸らすなっ」
あー、妹様ISに詳しくなさそうだからなぁ。授業中も一夏ほどじゃないがついていくのに難儀してたし。これなら少しぐらい俺から教えてやればよかったか? いや面倒くさいな。
「にしても、いつになったら届くんだろうなぁ、俺のIS」
「そうだなぁ……」
「今日までに届くとか言ってたのになぁ……」
そう、さっきも言っていたが一夏のISはまだ来ていない。どうやらゴタゴタがあったらしく──大方束様のせいだろうが──この時間ギリギリの状況でも名前すら知らされていない状況にある。まあ俺はデータもらったから全部知っているが。
「織斑くーん、九十九くーん!」
俺たちの名を呼びながら危なっかしい足取りで駆け寄る山田先生。あ、こけた。
「いたた……」
「山田先生、もう少し落ち着いてください」
「す、すみません。あはは……」
織斑先生もいた。ということは、専用機に関することだろうか。
「まず織斑くん、専用機ですが」
「届いたんですか!?」
「いえ、もう少し遅れるそうです」
「「「えぇ……」」」
三人そろって落胆の声を漏らす。まだかかるのかよ。
「それでだ、先に九十九とオルコットの試合を行うことになった」
なるほどね、一度試合をすれば十分届くだろうしな。どうせこっちの準備はできていることだし、いいだろう。
「俺はいいですけど、あっちの準備はできてるんですか?」
「とっくにできているそうだ。もうアリーナに入っているから準備でき次第入ってくれ」
「あ、そうですか」
ならばこれ以上待たせるのも失礼だろう。怒らせる前に行ってくるか。
「え!? 透の専用機はもうあるのか?」
「ああ、言ってなかったっけ?
上着を脱ぎ捨てながら待機形態のアンクレットを見せる。普段見えない位置にあるから知らないのも無理はない。
「へぇ~、これが透のISか……」
「お前のもこんな感じになるぞ。展開するから離れてろ」
そんなにサイズはないけど、巻き込んだら危ないしな。
「おう。どんな姿なんだ?」
「見てなって、いくぞ──【Bag-Human】」
黒い光が全身を包む。一瞬の内に光は消え、我が身を包む装甲へと変わる。久しぶりの感覚だな。
「おお、何というか……」
「ああ、何というか……」
「「虫みたいだな」」
予想通りの反応をする二人。織斑先生は二度目だが、山田先生が見るのは初めてな様で、一般的なそれとは大きく異なる見た目をした俺のISに興味を示している。
「もう行っちゃってもいいんですよね?」
「ああ、ピット・ゲートは向こうだ。すぐ開くから待っていろ」
「はーい」
念のためもう一度確認をして進む。これでISでの対人戦は二度目になる。しかも今度の相手は入試で教員を下した国家代表候補生。態度には表さないが少し緊張する。
「透!」
「ん、どうした?」
突然呼び止められ、ハイパーセンサー越しに一夏を見る。何か用だろうか。
「頑張れよ!」
「……ああ、勝ってくる」
ゲートが開く。その先に、ISを纏った
さあ、あの喧しい高慢英国ドリル女にお灸を据えてやろう。
ごきりと首を鳴らして、アリーナへ飛び立った。
「首鳴らすのは神経痛めるからやめた方がいいぞ」
「今それ言う必要ある?」
アリーナ上空。先に準備を終え、入っていたオルコットに見下ろされる形で対峙する。
観客席は決闘の噂を聞きつけた生徒達でほぼ満員。こちらに向けられる視線は二つの期待。男がISを動かす姿と、その男の無様な敗北。
「あら、逃げずに来ましたのね」
腰に手を当て、初対面と同じ調子で余裕を見せつけるオルコット。
しかしその目は真っ直ぐに俺を見据え、いつでも打ち落としてやるという意志を感じる。
彼女が纏うは鮮やかな青色──【ブルー・ティアーズ】。イギリスの第三世代機。BTビットとエネルギーライフルを主力武装とした中距離射撃型ISだ。データで何度もこのISについて分析を重ねたが、実際に目の当たりにするとどこか騎士のような気高さが感じられる。
「まあ、な。奴隷は嫌だし」
「そうでしたわね───では、最後のチャンスをあげますわ」
「チャンス?」
静かにライフル──《スターライトmkⅢ》を展開、左手で保持。腰に当てていた右手をこちらに向ける。
しかしチャンスとは。今更ハンデでもくれるというのか、対策が無駄になるからやめてほしいんだが。
「わたくしが一方的な勝利を得るのは必然。しかし、相手をボロボロに痛めつける趣味はございません。ですから今ここでを実力差を認めるであれば、なるべく綺麗な姿でピットに返してあげましょう」
こちらを小馬鹿にする様な笑みを浮かべ、「チャンス」を提示するオルコット。左手ではライフルのグリップを握り直し、セーフティのロックを解除している。
これはチャンスではない。ノブレス・オブリージュの意味を履き違えた、ただ自身のプライドを満たすだけの言葉だ。くだらない。しかしこのまま調子に乗らせておくのも腹が立つ、ならば。
「……代表候補生といってもこんなもんか、期待して損したな」
「……どういう意味ですの?」
「だってそうだろう?
思い切り挑発して、プライドで溺れさせてやる。
「つくづく日本の男子はジョークセンスがおありのようで、でしたら──」
──警告。敵IS射撃態勢に移行。……来るな。
「お別れですわね!」
耳をつんざくような独特の発砲音。同時に走る閃光を身をよじって回避する。
「!?」
「決闘開始、だな?」
不意打ち気味に放った初撃があっさりと躱され驚愕の表情を浮かべるオルコット。やはりこちらをただの素人と思い込んでいたか。そう振る舞っていたんだが。
「《No.4
「っ!? ぐうっ!」
振り抜かれる蛇腹剣。こちら同様回避を試みるも躱しきれず、左足の装甲にダメージが入る。
「ほらまだ行くぞ。《No.2
「きゃああ!?」
体勢が崩れたところ追撃。だがこれも長くは続かない、
「逃げるなよ、当たらないだろ?」
「態々撃たれ続けると思いまして?それよりあなた…本当に九十九透ですの?」
「さーな、生き別れの兄だったりして。で?さっさと本気出せよ」
ちょっと
「……いいでしょう。ここまで見せる気はありませんでしたが、特別に──お行きなさい、《ブルー・ティアーズ》」
肩部ユニットから飛び出したそれらは機体と同じ名称。否、
「さあ、踊りなさい、わたくしセシリア・オルコットと、【ブルー・ティアーズ】の奏でる
全ての銃口が狙いを定め、
「なっ!?」
「ざぁんねん」
そのレーザーが俺に当たることはなく、ビットの一つには深々とブレードが突き刺さり、黒煙を上げて撃墜されていた。
観客がどよめく、期待していたそれとは違う流れに困惑、怒り、激励の声が上がる。
「《No.1
「なんですって!?」
「あんな動きで墜とされないとでも? 的でも用意したのかと思ったぜ」
あのビットは自在に動かせるが、自動では動かない。一つ一つに意識を割きながら、機体制御と同時に行うのは至難の技だろう。ましてや煽られ、先に一撃を貰い頭に血が上ったこの状態では。
「……次は外しませんわ」
「次も当たらねぇよ」
囲う様なビットの配置を止め、自身と共に上空へ移動。直ぐさま射撃の雨を降らせる。しかし数が減り、制御の甘いこの状況で、一方向からの攻撃は悪手だ。
「小雨だな。やる気ある?」
「くっ……!」
もう攻撃を食らうことはない。冷静さを取り戻すことがあればまだわからないが、この様子では無理だろうな。
「無駄無駄。《
「気色の悪い!」
「そっちに気ぃ取られていいのか?俺はもう
ここまで近づけばライフルは使えない。エネルギービットも破壊した。詰みまで後もう少し。本体への一撃を振りかぶった瞬間。
「──かかりましたわ」
「ほーう?」
焦りの表情から一転。ニヤリと笑顔に変わる。
腰部からはスカート状のアーマーが展開。これは──
「《ブルー・ティアーズ》は「六機、あるんだろ?」え?」
笑顔から更に一転、呆けた表情へ。しかし
「ハァ、ハァ……さすがに、この距離では避けられないはず…!?」
「そうだな、避け切るのは無理だった。だから──防がせてもらった」
《No.9
「ほぅらまだ俺はここにいるぞ、っと!」
「このっ《インターセプ「《No.3──」!?」
ミサイルが通じず、ライフルも封じられたこの状況。やむなく近接武装を取り出そうとするオルコットだが、それを許す道理もなし。こちらも更に武装を展開して対応する。
「──
「これはっ!?」
《No.3 Longicorn》。左腕に接続された、カミキリムシの顎をモデルとしたそれ。機能は──
「武器破壊、だ」
出されたばかりのそれを顎で受け止め、閉じる。たったそれだけで、
「ああっ……」
「どうした? お別れするんじゃないのか? ──ああ、お前が負けてお別れか」
「馬鹿にしてっ!」
口ではまだ強がっているが、もうこいつに打つ手はない。残念だ。くだらないプライドなんて捨てて、始めから出し惜しみしなければもう少し違う試合運びになったというのに……。
いや、どうせ勝つ試合にたらればは無意味だな。
「はははっ、そろそろ終わらせようか──《No.5
「──あ」
《Grasshopper》、つまりバッタ。両脚部に展開され、ギリギリと力を溜めるような構えを取る。これで次の攻撃がわからないやつはいないだろう。
そう。
「墜ちろ」
「待っ」
至近距離、がら空きの胴へ叩き込まれる蹴り。それも十分に力を溜めたその一撃は残ったシールドエネルギーを容易に削りきる威力で。
『試合終了。勝者──九十九透』
この決闘の終幕を告げるブザーが鳴り響く。
「惨めだなぁ? セシリア・オルコット」
「……っ!くうう……」
観客の嘆きと罵声が心地よい。
俺の勝ちだ。
「いやぁ勝った勝った。完全勝利だな」
「「…………」」
「うん? 二人ともどうした? もっと愛想のいい出迎えが欲しかったな」
意気揚々とピットへ戻り、ISを解除する。早速勝利の喜びを分かち合おうと思っていたというのに、二人の反応はどこか冷たい。織斑先生も山田先生も、なんだか微妙な顔でこちらを見ている。
これは……あれか、試合内容が気に入らなかったのかな?
「うーん、折角勝ったんだからさ、ちょっとぐらい盛り上がってくれてもいいんじゃないか?」
「いや、無理だろ」
「……不満げだな、何か文句でも?」
こちらを非難するような目つきでこちらを睨む一夏。試合前は爽やかに送り出してくれたというのに。
「あるね。どうして最後にあんなことを言った? 途中の煽りは作戦の内としても、勝った後にまで……」
「あー……そのことか。心身共に確実で効率的な勝利を得るため、かな。ああいう高飛車なのは正直目障りだったんでな、お灸を据えたってやつ?」
結構真面目そうだからな。不快に思われるのも無理はない、一般道徳的にも間違っているのは俺だ。改める気はないけど。
「だがルールは守ってる。あいつだってこちらを煽ってきたしお互い様だろ?」
「お互い様だとしても限度があるだろ。先週だって、そう言って俺を止めてくれたじゃないか」
「あんなの猫被ってただけさ。こっちが素。放っておいたらもっと面倒なことになりそうだったんでな」
よく覚えているものだ。あんなやりとりに大した意味もないだろうに。
「とにかく、俺はあんな相手を侮辱する様な戦い方は嫌だ。いくら確実で、効率的でも、認めたくない」
……非は認めるが、好き勝手言われるのは気に入らないな。つい先週までろくに知識もなかったド素人のくせに。
「で? 認めたくないから何だよ。まともに戦ってもいないくせに随分偉そうじゃないか」
「……そうだな、まだ俺は見ていただけ。これじゃ口だけの我が儘だ。だから───」
そう言いながら俺の右足を指さす一夏。そこには先ほど見せた待機形態。態々これに向かって言うってことは、まさかこいつ。
「
「正気か? まだ
「そうだ。俺が勝ったら、セシリアに謝ってもらう」
「……へぇ」
どうやら本気だ。間違いなく。まだ見てすらない機体で俺に勝つ気だ。
………面白い。乗ってやる。
「いいだろう。だがそちらだけ要求するんじゃ割に合わない、そうだろ?」
「ああ、お前の要求はなんだ?」
「そうだなぁ。じゃあ勝ったら、もう俺のやり方に口出ししないってことで」
「…わかった」
これなら平等だろう。人のやり方に難癖つけたんだ。これぐらいは許されるはず。
「オーケイ。つまりこれは俺とお前の決闘ということだな。いいでしょう? 織斑先生?」
「好きにしろ。こちらからは何も言わん」
「織斑先生!?」
山田先生は抗議しているが、直ぐ織斑先生に宥められている。ご迷惑をおかけします。
「じゃあ、俺は向こうに行ってるから、今更逃げるなよ?」
「お前こそ、手抜くなよ」
改めて戦意の確認をして別れる。しかし奴隷回避の為に戦ったらこんなことになるとはな。ますます事態は面倒になってきたが、いい機会だ。実力差を
「ぶっ潰す」
ごきっ、ばきり。節々を鳴らし、頭の中で対策を確認しながら、反対側のピットへと足を進めた。
第5話「決闘・宣戦布告②」
急にキャラ変わったと思う方もいらっしゃるでしょうが透くんはこういうやつです