書く前のぼく「今回は6500字くらいやな」
8000字書いたぼく「二度と文字数予想するなボケカス」
「うおおおおぉぉ……!」
「はあああぁぁぁ……!」
「馬鹿なっ、本気でやるつもりか!?』
【暮桜】【白騎士】【赤月】という繋がることのないISの接続。そして更なる形態移行。俺は本来あり得ないはずの変化を目の当たりにしていた。
「完成された存在だからこそ『神』と称されるんだ! これ以上の変化なんて起こるはずがない!』
「『神』だの何だの、そんな理屈は知らねぇな! そんなに嫌なら止めてみろ!」
「くそっ、再構築が間に合わない……』
勿論今すぐにでも妨害したい。が、合成コアが強制的に分離された影響で一時的にシステムがダウンし、急いで復旧させようにも時間が必要だ。
丁度目の前で行われている形態移行が完遂されてしまうくらいには。
「きたきたきた……これが俺たちの!」
「私たちの!」
「「進化だぁーーーっっ!!」」
「ぐっ、眩しい……!』
雷のような激しい閃光が叫びとともに辺りを包み込む。
一体どうなった? 成功したのか、失敗したのか、それを確かめるために眩しさを堪えて目を開く。
「ほらな、できたぞ」
「やってみるものだな」
「マジかよ……』
そこには、紅と白がいた。
今までの全てを洗練し、凝縮して詰め込まれたようなその姿は正に真の完全。
これ以上を表現する言葉を、俺は持ち合わせていない。
「チッ、仕方ない。こちらの理屈が間違っていたことを認めよう』
「そりゃよかった、ついでに負けも認めないか?」
「いいや無理だな。たかが二人の姿が変わったくらいで俺の優位は覆らない。しかし……』
たった今合成コアの再構築とシステムの復旧が完了し、若干処理能力は落ちたが黒片の操作は可能になった。
敵数は形態移行した二人と、満身創痍の六人で計八人。前の二人の強さは未知数となったが、後の六人はもはや戦力に数える必要もないほどのダメージを与えている。先程のように無理やり立ち上がるだけで限界のはず。
だが、それは今の話だ。
「確かに
「
「やはり【赤月】──今は【紅椿】か』
「進化した私の力をお見せしよう──それっ!」
篠ノ之さんを中心に黄金の粒子が拡散され、専用機持ちたちに触れていく。これは『絢爛舞踏』か? ……違うな。いくらシールドエネルギーの回復が強力だろうと、物理的なダメージの蓄積したISを戦えるようにすることはできない。廃車にガソリンを入れても動かないのと同じだ。
しかし彼女は『進化した』と言った。つまり俺の予想が正しければ、この粒子はエネルギー回復だけでなく……
「すごい、傷が塞がっていく……」
「しかもこれ、出力が上がってる……全快時と同等、いやそれ以上?」
「そこまでやるか……!』
粒子は黄金からそれぞれのISに合わせた色へと変わり、砕けた装甲に折れた武器、歪んだ内部に至るまでを埋め尽くして修復させた。出力上昇のおまけ付きで。
最悪の予想が当たってしまった。
「見たか、これが私の──【紅椿・繚乱】の新しい力。
『
「っ……!』
回復と修復。さらには強化。たった一つの能力がここまでの効果を発揮するのか。
「ふふん。これで私は、サゲマンからアゲマンになったわけだな!」
「ちょっと感謝するのやめるわ」
「お前だけ対象外にするぞ」
何やらごちゃごちゃと語っているがそんなことはどうでもいい。今気にしなければならないのは復活した敵戦力の再分析だ。
「お前にも『有る』のか、一夏』
「……ああ。それもとびきり凄いやつをな」
今度は一夏を中心に虹色の光が揺らめく。そのオーロラの様な輝きこそ【白式】の発展仕様能力。未だ全貌の読めない脅威。
『百花繚乱』と比べ光の拡散する範囲は狭く、他機に触れさせるような素振りもなく、わざと一夏の周辺に止めているのだろう。これならまず
「どの道使う前に潰すまでだっ!』
「!」
もしもまた予想が当たっているのなら、下手に攻撃を受けるわけにはいかない。一刻も早く片付けるべきだ。
復旧の済んだ合成コアから命令を下し、黒片をあらゆる角度から一斉に襲わせる。
「──しっ」
「何っ……?』
0.1秒にすら満たない一瞬。その僅かな間に確実に一夏を捉えていたはずの黒片群はその全てを叩き落とされた。
他の誰かが介入した形跡は無い。しかし単独でやったのならばそれも不自然だ。何故なら奴は、
「《
「当ててみろよ。解析はお前の得意分野だろ?」
「一々煽るな……いいだろう、お望み通り暴き尽くすか』
「そうこなくちゃ……たーだーし」
「私たちも忘れないで、ね?」
完全に修復された機体を身に纏った楯無先輩が武器を構える。他の全員も同様で、戦意は微塵も萎えていない。
さてどうしたものか。もう一度512本の装甲腕で押し潰してやりたいが、こちらの処理能力が低下し相手の性能が未知数となった今、それを同じレベルで実行できるかは怪しい。
「仕方ない……《CatastroFear:
「銃に剣か……」
数はそのまま、形をクローからニードルガンと蛇腹剣に再構築し、残りは防御へ。パワーアシストも無くなったが、大雑把にコントロールするならこちらの方が使いやすい。
「蜂の巣にしてから引き裂いてやるよ!』
高速の針とうねる刃。不規則な軌道で襲いかかる二種類の攻撃を回避することは困難を極めるが、決して防ぎ切れないような激しさではない。
しかしこれは仕留めるための攻撃ではなく、相手の手の内を明かすためのもの。被害を最小限に抑えるための迎撃、それを武器を持たずに行える絡繰を見つけるのだ。
「一発は軽くなったけど、射撃が混じってるせいで鬱陶しさが増してる!」
「だろ? そして防御が薄くなったところが狙いだ!』
「はっ!?」
さっきは目にも留まらぬ速さで攻撃を防がれた。しかしこれほどの密度で攻めれば、数発落としておしまいとはいかない。必ずどこかで武装の正体は見られるに違いない。
オルコットと簪に向けていた《Centipede》を二本分、追加で一夏に叩きつける。
「っ……はあぁっ!!」
「……見えた。それがお前の武器だな』
「あ、もうバレたか」
直撃コースだった蛇腹剣を弾いたのは光の剣。オーロラの代わって中に浮かぶ色鮮やかなそれが八本。ついでに白く他と比べて少し長いものを一夏が握っていた。
「
「なるほどな、無手で防いだように見えたのは一瞬で収束を解いていたからか』
【白騎士】の時点でエネルギー操作の技術はある程度身につけていた。そこから形を剣に絞り、また素材となる光を機体の内側から外側に放出させたのがこの能力。
そして『絢爛舞踏』から派生した『百花繚乱』と同様に、『極光至斂』の剣も『零落白夜』と同質のエネルギーから構成されていると見るのが妥当だ。下手に触れられることは敗北を意味する。
「厄介な能力が揃ったな、だが……それだけで俺を墜とせはしない』
「わかっているとも。私たちが復活して、進化して、お前が弱体化して……それでやっと釣り合うかどうか」
「「本当の勝負はここからだっ!!』」
俺たちの声を合図に戦闘再開。同時に針を射出し、蛇腹剣で薙ぎ払う。専用機持ちは一斉に散開して回避する。
「先ずはこの物量をどうにかしなくちゃね!」
「枝分かれしている部分を狙え! 一箇所潰せば八分の一減らせる!」
「了解っ……そこですわっ!」
オルコットの狙撃によって、《Arachne》の分岐点の一つが破壊される。どうせ
「今だっ!」
「速いな……《Scorpion》!』
黒片の隙間を縫って飛び込んできた一夏の光剣を、急いで手元に生成した《
「ふっ──ぜぇぁっ!」
「チッ……!』
辛うじて防御できているが、少しずつ押されている。そこらの相手ならいざ知らず、近接に特化し性能の上がった【白式】に剣で勝るのは無理があるな。
「今のうちに援護を……」
「《
「ちょっ!? ……ぶねー!」
「突っ込みすぎちゃダメよ一夏くん!」
援護射撃は再構築した《
全員の伸び幅が思った以上に大きい。でなければ一部が破壊されようが懐に飛び込まれることはなく、今の攻防は成立しなかったはずだ。
「よし、次──」
「させるかっ!』
「うわぁぁっ!?」
再び分岐点を狙われるのを牽制しつつ体勢を整える。
半永久的なエネルギーの供給に機体の修復、シールド無効化斬撃の複数展開と操作。確かに強力だ。全員が復活したのも響いてる。しかしどうしようも無いわけじゃない。
どれだけ強い力も、使うのは人間なのだから。
「機体が直ろうが時間は戻っていない! その気力と体力はいつまで持つかなぁっ!?』
「ぐあっ!」
直っているのは機体だけ。散々俺に殴られ、切られ、潰された身体そのものは治っちゃいない。そんなことができるのは、生体蘇生機能を持つ【白式】だけだ。
必要なのはより激しい消耗、中まで響く攻撃。傷を抉るような害意を形へ変えろ。
「《CatastroFear:Arachne×Ant×Centipede×
「何通り組み合わせあるの……?」
「無限だよっ!』
精度を高めるために本数を最小限に留めつつ、パワーアシストを復活。複雑な軌道の攻めは有効と判断して蛇腹剣は続投し、先端に大鎌を取り付けて攻撃力を高める。余りは隙間を通して襲わせる。
「しゃあっっ!!』
「さっきより速──うわっ!」
「! 気をつけろ! 目立つ大鎌だけじゃないぞ!」
「よく見えてるな……』
「いい目があるもんで!」
数さえ減らせばそう簡単に捉えられることはない。パワーアシストの乗った火力と加速度ならば受け止めることも難しいだろう。
しかし一夏にはもうこの攻撃の狙いが悟られている。先端が当たれば大ダメージ、そちらを注視すれば剣と黒片の餌食……って考えだったんだがな。
「だが全員同じ目を持っているわけじゃあるまい! 八つ裂きにしてやるよ!』
「くぅ、あああっ!」
「まだ、押し負ける……!」
まだ俺の攻撃は奴らに通る。攻め手を枯らさない限り連携と反撃はできない。つまり俺がやるべきことは何も変わらない、倒れるまで攻撃を続ける。
「どうした、進化したんだろう!? 強くなったんだろう!? さっきの威勢をもう一度見せてみろよ!」
「言われなくても……くそっ!」
「はは、はははははは!!』
一夏でさえもこの猛攻は受け切れない。少しずつ傷つき、直され、また傷つきの繰り返し。凄まじい勢いで疲労が溜まっていくのが手に取るようにわかる。
精神論は嫌いだが、ISの性能を引き出すには心の強さが必要だ。つまり身体につられて心まで弱るようなことがあれば、その力は最低になる。
「進化も再生も、何もかも俺には通じない! その無駄な抵抗はいつまで続ける気だ!?』
「そんなのっ……私たちが勝つまでに決まってるでしょうがーっ!!!」
「!?』
──ただし心さえ弱らなければ、引き出される性能は落ちない。裏を返せば、心を強く持つことで……。
「ふっ──はぁぁっ!!」
最初に動きが変わったのは楯無先輩。
武器を《
「お姉ちゃんがやったんだから、
続いて簪。
《
「見えた、そこだぁっ!」
「動きのパターン、読めてきましたわ!」
「目で追えないなら勘でやるまでよ!」
「僕たちだって!」
「負けていられんなっ!」
篠ノ之さんが、オルコットが、凰が、デュノアが、ボーデヴィッヒが。まるで競い合うように専用機持ちの動きが激しさを増す。
鋭い一閃で、正確な射撃で、衝撃砲と青龍刀の波状攻撃で、パイルバンカーの連打で、AICと砲撃の合わせ技で、有効な攻め手だった筈の蛇腹大鎌が破壊されていく。
「どこまで性能が上がるんだ! いくら発展仕様能力といえど、たった一機のISから受ける効果でこれほどの上昇率は異常だ!!』
「異常なんかじゃないさ。だってこの力は、発展仕様能力だけじゃないんだからっ!」
「がぁっ!?』
阻む物が無くなり、一夏の斬撃をもろに食らう。分析通りバリア無効化攻撃の影響で絶対防御が発動し、大幅にシールドエネルギーが削られてしまった。
一体何が起きている。『百花繚乱』の効果だけではない強化。それも皆一斉に、
「『
「大正解! 流石はテストほぼ満点だな!」
ISとISとが激しく共鳴することで起こる現象。一説には、搭乗者の感情の高まりが引き金となるとされている──その影響は、未知数。
世界でも例は少なく、狙って起こせた者は存在しない。八人全員が同時に引き起こしたそれは、正に奇跡と呼べるだろう。
今の俺には、決して至れない領域。
「軽々しく奇跡なんか起こしやがって……ふざけるな!』
「いいやふざけるね! くだらない意地張って、一人で戦ってるお前には丁度いい!」
「黙れぇっ!!!』
苦し紛れに放った黒片群は苦もなく躱され、カウンターの形で振るわれた刃が突き刺さる。
もう何度目かもわからない形勢逆転。数で負け、単体性能でも押し負け、ここから俺が逆転する方法なんて……いいや、するんだよ。だって俺は勝たなくてはならない。
勝たなければ、
「……やはりお前を倒さなければ、俺が
「いいや勝つのは俺たちだ、そしてお前も死なせない! 九十九透っ!」
俺に残されたシールドエネルギーは残り少なく、持久戦は不可能。しかし奴らの『共鳴現象』も、回復も無限に続くわけじゃない。どちらかが切れたらこの戦いは終わり。
……けれど、そんな決着は望んじゃいない。絶対的な力の差を持って相手を叩き潰すことこそ、自分の正しさを証明する方法だ。それはお互いよく理解している。
「今ここでっ! 確実に、永遠に終わらせてやるっ!』
「……皆、力を貸してくれっ!」
「「「了解っ!!」」」
「よっし来た……終わるのは、お前の過ちだ!」
全ての黒片を集結させ、何の模倣でもない新たな形を組み上げていく。目指すは最低最悪の絶望と破滅。俺という生物の象徴。
対する一夏は専用機持ちから受け取った光を自身の
「斂めて至れ、不撓の一……!」
「恐れよ害為せ、九十九の災禍……!』
白く輝く一振りの刃。黒く醜い九十九の爪。双方合わせて百の想いが相対する。
「『絶刀《
「《CatastroFear:
瞬間。想像を絶する衝撃が駆け抜ける。ほんの僅かでも気を抜けば遥か彼方へ飛ばされてしまうだろう。
右の義手が悲鳴を上げている。身体がバラバラになりそうだ。
「……ぐぅぅぅぅおおおおお!!!』
「っっ、うううううううう…………!」
だが、これしきのことで力を緩めるわけがない。ここは絶対に引くわけにはいかない、負ければ全てが無に帰すのだから。
均衡は崩れ、徐々に俺が押していく。
「ぜあああああっっっ!!!」
「ぁぐぅっ!? ……があああああっっ!!!』
今度は一夏が出力を上げ、崩れた均衡を押し戻す。
さっきの衝撃でエネルギー供給バイパスは切れている。つまりはお互い、ここでぶつけ合う力が全てだ。
聞こえるのは俺たちの絶叫だけ。それもぴったり重なって、どちらが何を叫んだのかもわからない。
そして、何時間にも引き伸ばされたような一秒が過ぎ、
「おらああぁぁっ!!!」
「ぐっ……うぅっ!?』
《
「何故だ、どうしてこちらが先に砕けている! 互角だったはずなのにっ!!」
「それが一人の限界だっ!!」
「一人の限界……ああ、ああああぁっ!!』
理解してしまった。納得してしまった。目の前にできた差が、今まで俺が切り捨ててきたものによって作り出されたことを。自分がそれを後悔してしまったことを。
こうしている間にも、残された《Death》は次々失われていく。
一つ壊される度に後悔が脳裏に浮かぶ。それは過ちを肯定すること、そして信じた正しさを否定すること。
あっという間に、九十八本が失われた。
「そうか、俺は、俺は……』
「……いいんだ。もう、終わりにしよう」
「あぁ…………』
極大の刃が最後の一つを断ち切っていく。俺は救いを求める様に、両手を広げてそれを受け入れる。
「うおおおおぉぉぉっっっ!!!!!」
「……ごめん。ありがとう』
そして、白と黒とが爆ぜた。
第68話「真価・白黒」
やっぱり織斑一夏なんだよなぁ
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