【完結】害虫生存戦略   作:エルゴ

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キリがよくなったので初投稿です。
一夏と透くんはズッ友だヨ


第7話「代表決定・✕✕✕✕」

 

「……」

「……」

 

 試合が終わり、俺たちはアナウンスで呼ばれるままにAピットへ戻っていた。紆余曲折あったが最終的には双方全力でぶつかり、こうして並んで立っている。しかし、その間に会話はない。それもそのはず、試合結果は──

 

「あれだけ大きなことを言って引き分けとはな、大馬鹿者共」

「「う゛っ!」」

 

 やめてくれその言葉は俺に効く。隣を見れば一夏も悶えている。もっとこう……お褒めの言葉とかないのか? ないですか。

 

「まず織斑、お前は自分の武器の特性を理解していないからこうなった。明日から暇さえあればISを起動し、訓練に励め」

「……はい」

「次に九十九、お前は調子に乗りすぎだ。しばらく反省しておけ」

「言われなくとも」

 

 この戦い、お互い十分に勝ち目はあった。一夏はもう少し自分のISに理解があれば、俺はもう少し冷静になっていれば、僅かな違いで結果は大きく異なっていただろう。

 ただ一つ気になることが最後の一撃だ。俺はまだそこそこのシールドエネルギーが残っていたはず。少なくとも、たった一度切られただけで戦闘不能になるとは思えない程度には。では何故か?

 

(やっぱり、()()だよなぁ)

 

 あの時《雪片弐型》が展開して放出したエネルギー。恐らくあれこそが俺の残エネルギーを刈り取ったものの正体だ。しかしどうしてそんな物が備わって──いや、やめよう。深く考えても仕方がない。結果は引き分け。これが事実。今は、この反省を次に生かせる様にしなければならない。

 

「次は少し時間を置いて、織斑とオルコットの試合を行う。山田先生」

「では織斑くんっ、一度エネルギーの補給と整備を行うので待機形態を預かりますね」

「あ、はい。どうぞ」

 

 そして一夏は右腕に着けられていたガントレット──どう見てもブレスレットだが【Bag-Human】はそう認識している──を差し出す。あれが白式の待機形態か。

 

「完了するまで少しかかる。今の内に体を休めておけ」

「はぁ」

 

 そう告げて奥に引っ込んでいく織斑先生。きっと報告とか色々あるのだろう。お忙しい人だ。

 残された俺たちはというと、再び沈黙していた。

 

「「………」」

「……なぁ、ちょっといいか?」

「? どうした箒?」

 

 沈黙に耐えかねたか、妹様が話を振る。

 

「いや、この試合の結果は引き分けだろう? 賭けの話はどうなるんだ?」

「「あっ」」

 

 忘れてた。何というか、思い切りぶつかった挙句の引き分けで全て吹き飛んでしまった。まさかこんなことになるとは夢にも思わなかったし…どうしたものか。

 

「無かったことにするか?」

「それはダメだ。男が決めたことを覆すわけにはいかない」

「じゃあ別の方法で決めるか?」

「決闘までして他の方法かぁ」

 

 ああだこうだ話し合うがなかなか決まらない。あまり時間をかけるわけにもいかないし、両方納得のいく方法があるだろうか。

 

「……両方勝ち」

「「ん?」」

「あっいや、いっそ両方勝ちというのはどうだろうか? 実力が同等なのはわかったし、謝罪と口出ししないことは矛盾するわけじゃないだろう?」

 

 まあここらが落としどころだろうか。さっきはムキになっていたが、謝罪の一つぐらい軽いものだ。大したことはない。

 

「うーん、それもアリ……か?」

「じゃあ……そうするか」

 

 一夏も問題ない様だ。引き分けのせいでお互い頭が冷静になれたらしい。

 

「よし、ではさっそくセシリアの所に──」

「その必要はありませんわ」

 

 突如背後からかけられる透き通った声。この声は……。

 

「「セシリア!」」

「オルコット?」

「ええ……お二人の試合、しっかりと見させていただきました」

 

 見てた、か。ということは引き分けになったことも知っているだろう。賭けの内容は俺が教えたし、その事で用でもあるのだろうか。

 

「そうか、なら今話してた通り謝罪を──「必要ありません」え?」

「謝罪なんて必要ありません」

 

 必要ない? 確かに俺は負けたわけでは無いが勝ててもいない。かと言って無効なんて収まりがつかないぞ。

 

「いらないって、でもそれは」

「あの敗北はわたくしの慢心、心の弱さが招いた物、いわば自業自得ですわ。どんなやり方でも私は負けていたでしょう」

「えーいや……そうか?」

「そうなんです。ですから謝罪なんて必要ありません」

 

 強い拒絶の言葉を口にしたオルコット。その目にはさっきまでとは違う何かを感じる。俺たちの試合を見た影響だろうか。

 

「どうしても謝罪がしたいのであれば、アリーナの真ん中でジャパニーズ・ドゲザでも」

「わかった謝らないからそれは勘弁してくれ。……いいよな? 一夏、篠ノ之さん」

「あ、ああ」

「セシリアがそう言うなら……」

 

 となると俺のやり方に口を出さないというのはどうなる?このままだと一方的に罰ゲームを受ける形になる。

 

「それと、()()()()()()()()()のやり方に口出しはご自由に。どうなろうといずれ正面から打ち破るまでですので。あなたの様に」

「破られてねーよ、引き分けだ引き分け」

「そこ突っ込むなよ」

 

 いつの間にか呼び名が変わっているがそれは置いておこう。

 ……本当に変わったな。この短時間に、いや、これが本当のセシリア・オルコット、本物の誇り(プライド)か。

 

「……わかった。俺も好きに口出しさせてもらう。これでいいだろ?」

「となると……両方勝ちから両方負けということだな」

「ええ、それでこの話は終わりですわ」

 

 そして微笑むオルコット。憑き物が落ちた様な美しい笑顔だ。そこらの男なら惚れているだろう。俺? 好みじゃない。

 

「さて、後はわたくしと一夏さんの決闘ですわね」

「そうだな。本気で行くぞ?」

「はい。こちらも全力でお相手致します」

 

 そのまま話は次の試合へ、もう俺の出る幕はないな。バレないようにゆっくりと離れていく。

 

「あっおい透! どこ行くんだ?」

 

 気づかれたか。まあ理由を話せば納得してもらえるだろう。背を向けたまま説明をする。

 

「んー、もう機体整備して休もうと思ってな」

「試合は見ていかないのか?」

「どうせ記録取られてるだろ、それで見るさ。頑張れよ」

「ちょっと待ってくれ!」

 

 まだ何かあるのか?本当に休みたいのだが。

 

()は俺が勝つからな!」

「……いや、勝つのは俺だよ。じゃあな」

「ああ、また明日!」

 

 軽く右手を振って答え、振り返ること無くピットを出る。

 観客への愉悦、オルコットへの侮蔑、一夏への不満、自身への怒り、引き分けの悔しさ。その全てが消えたわけではない。この戦い方を変えるつもりはないし、それでどう思われたって構わない。けれどこれからはもう少し、ほんの少しだけ真剣に相手と向き合おう。そう決めさせる何かが一夏との戦いにはあった。

 初めての感情がこみ上げてくる。昨日までの俺ならば一笑に付したであろうその感情が、不思議と心地よかった。

 

 

 

 翌朝。SHRにて、約一名にとっては想定外の発表が行われていた。

 

「では、一年一組の代表は織斑一夏くんに決定です。一繋がりでいい感じですね!」

「は?」

 

 嬉々としてとして話す山田先生。盛り上がるクラス。事態を飲み込めない一夏。

 

「先生質問です!」

「はい、織斑くん」

()()()()()()()()のになんで俺が代表になってるんでしょうか?」

 

 そう、こいつはあの後オルコットに負けた。初めから本気を出したオルコットの射撃に苦しめられながらも()()あの光の刃を発動し、その一撃を決めようとして()()エネルギー切れを起こして負けた。どうやらあれはかなりのリスクを伴うらしい。こっそり観ていたらしい楯無先輩から記録を貰って観たが正直笑ってしまった。

 

「あ、それは──」

「「俺/わたくしが辞退したからだ/ですわ!!」」

 

 示し合わせた様に立ち上がりポーズを決める。しかし何故俺達が辞退したか、それは昨晩まで遡る。

 

 

 あの夜。整備を終え、自室で先輩に散々揶揄われた後。俺は職員室を訪ねていた。目的はそう、クラス代表を押しつけるためだ。

 代表決定戦に嫌々ながらも参加したのは奴隷回避のため。結果的には一夏との決闘やら何やらがあったがそれはそれ、俺は代表なんかになりたくはない。色々台無しな気もするがこうして直談判に来たのだ。

 

「あら、透さん。こんばんは」

「よう、オルコットどうしてここに?」

 

 職員室に来てみればオルコットがいる。こいつも用があるのだろうか。今日の出来事を考えると──

 

「もしかして、()()()?」

「ということは、()()()()?」

「「…………」」

「「ヨシ!」」

 

 

「──と、いうわけだ」

「よくねーよ」

 

 一部端折りはしたが、大体この流れだ。二人で説得したら織斑先生も快く承諾してくれたよ。

 

「決闘で決めると言っても、誰も戦績で決めるとは言ってませんわ。それに、わたくしたちも反省しまして」

「お前にクラス代表を譲ろうってことになったのさ。ま、最下位に拒否権は無いってことで諦めてくれ、戦闘経験も積めるしさ」

「嘘だろ……」

 

 この世の終わりの様に暗い顔を浮かべる一夏。いやあ楽しい。

 

「そ、それでですね。わたくしが特別にコーチを──」

「座れ、馬鹿ども」

 

 急にモジモジし始めたオルコットへ織斑先生のインターセプト。やっぱこの人ブラコごめんなさい睨まないで。

 

「クラス代表は織斑一夏。これは決定事項だ。異存はないな」

 

 クラス全員(一夏除く)の元気な返事。これにて一件落着だな!

 見事撃沈した一夏を眺めながら、今日も授業が始まる。

 

 

 

 

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦の実演を見てもらう。織斑、九十九、オルコット。飛んでみせろ」

 

 四月下旬。学校生活にもだいぶ慣れてきたところ。俺はようやく座学ばかりの日々から解放され、実技授業を受けていた。

 

「遅いぞ、熟練したIS乗りならば一秒とかからん」

 

 俺とオルコットはすぐに展開できたが、一夏は一度集中するためか待機形態の白式に触れてから行っていた。懐かしい。俺も初めはそうしていたものだ。

 

「よし飛べ。上空で指示を出すまで適当に動いていろ」

 

 先んじてオルコット、続いて俺、遅れて一夏が上昇、空中で静止する。遅いな、決闘の時はもっと速かったはずだが。

 そのまましばらく上空を周り、軽く飛行技術について雑談をする。といっても一夏の質問にオルコットが答え、俺が補足といった形の授業の様な物だ。

 

「一夏さん、よろしければまた放課後に指導してさしあげますわ、今度は二人きりで──」

「三人とも降りてこい、急下降と完全停止の実演だ!」

 

 また織斑先生に妨害されてる。妹様は何かしようとしたのかアイアンクローを食らってもがいている。痛そう。

 

「目標は地表から十センチ、順番にやれ」

「ではお二人とも、お先に」

 

 すぐさま下降するオルコット。さすがは代表候補生といったところか、ピタリ成功らしい。

 

「じゃ次俺な」

 

 俺もさっさと下降、急停止。誤差は+二ミリ、まあこんなもんか。特別難しい動きでもないし、これならあいつも──

 

 ズドォォンッ!!!

 

 ……なんでだよ。

 

 

 

「次は武装の展開だ。織斑から順番に」

「は、はいっ」

 

 グラウンドに大穴開けた一夏と、勝手に言い争いを始めた妹様とオルコットが叱られた数分後。今度は武装の展開の実演だ。展開が遅い一夏と速くても構えが悪いオルコットが叱られている。

 

「近接武装も展開してみろ」

「えっ、あ、はいっ」

 

 銃を収納し、近接武装を展開……しようとして手の光はなかなか形にならない。そういえば、こいつ決闘の時も名前を呼んでいたな。

 

「ああっもう! 《インターセプター》!」

 

 お嬢様らしさの無いヤケクソじみた叫び。やっぱり苦手だったか。俺も名前を呼ぶことが多いが、別にそうしなくとも展開は余裕だ。呼ぶのは気分とかブラフのためだな。後者は一夏にしか使ったこと無いけど。

 

「次、九十九。適当に武装を切り替えてみろ」

「はーい」

 

 俺の番。実のところ切り替えは得意分野だったりする。腕の見せ所だな。

 

「ではでは──行きますよ」

 

 《Scorpion》、《Hornet》、《Longicorn》、《Centipede》、《Weevil》、《Spider》、《Bagworm》、エトセトラ。比較的軽めの武装を次々に展開、収納。束様の指導で何度もやらされたことだ。慣れたら意外と楽しくて時間を忘れてずっとやっていたこともある。

 

「もういい。十分だ、合格点をやろう」

「光栄でーす」

 

 他と比べたら結構上手いもんだと思ったんだが、厳しい評価だなぁ。鬼教官め。

 

「時間だな。今日の授業はここまで、織斑はグラウンドを片付けておくように」

「はい……」

 

 あの穴を埋めるのかー大変だなー。こっちに助けを求めんじゃねぇ自業自得だろ。結局、見かねた妹様の応援──手伝おうとしていたが罰だからと断ったらしい──を受けながらやり遂げていた。

 俺とオルコットは帰った。

 

 

 

 

「祝!! 織斑くんクラス代表決定記念パーティー!!!」

「「「いえ~い!!」」」

「い、いえーい……」

 

 パンパパパンパンパパパンパーン!! クラッカーがうるせぇ。その全てを向けられた一夏は紙テープで顔が見えなくなっている。

 ここは寮の食堂。夕食後の自由時間を利用し、一夏のクラス代表就任を祝っている、といっても各自好き勝手騒いでいるだけだが。

 俺? 一人でジュース飲んでる。いやあんな試合したら反感買うよな。一応このクラスの大半は嫌っているというよりどうせ接したらわからないといった感じだ。どの道避けられてることには変わらないけどな! 泣きそう。

 

「いやー。これでクラス対抗戦も盛り上がるね!」

「ねー」

「同じクラスになれて良かったよー」

「ほんとほんと!」

 

 盛り上がってるなぁ。他のクラスまで混じっているのが気になるが。

 

「ねーねー、つづらん」

「む?」

 

 この間延びしたのほほんとした声は。

 

「えーと、布仏さん。つづらんって俺?」

「そーそー。九十九(つづら)だからつづらん! いいでしょー」

「なるほど。まあ、いいんじゃないか」

 

 独特なネーミングだなぁ。しかしやっと声をかけられた。このまま誰とも会話せずにパーティーを終えるところだった。マジありがてぇ。

 

「それでーつづらんはお話しないのー?」

「いや、声かけにくくてな。あんな試合したし」

「あれはちょっとねー。本気で引いてる子いたし」

 

 やっぱりそうか。後悔は無いけどつらい。このまま一年過ごしたくはないし、どうにかしないとなぁ。

 

「でもーこれから仲良くなればいいんだよ、ね!」

「できる、といいなぁ……」

「だいじょーぶだって、私たちもともだちだし」

「えっマジ?」

 

 思わず大声が出てしまった。何人かが驚いた顔でこちらを見ている。

 

「まじまじ、ともだちー」

「そうかぁ、友達かぁ……」

 

 なんかこう……要らない思ってたけど嬉しいな。一人寂しくしていたものだから余計効く。

 

「おーい! 九十九くーん!」

「ん?」

「お?」

 

 向こうから俺を呼ぶ声。あれは……二年生かな?

 

「用事あるみたいだから行くわ、ありがとな」

「どういたしまして、あと──()()()()()()()によろしくね」

「え? あー、わかった」

 

 ……()()()()()()()

 

「おーい!」

「今行きまーす!」

 

 あの人の差金だったことは残念だが、まあ初めての女友達には変わりないということで良しとしよう。いい人っぽいし。

 

 

「新聞部の部長さんね。で、何の用です?」

「うんうん。次の新聞のに記事に君たちのことを載せたくってね、一言お願いしまーす!」

「ふーん、何でもいいんですか?」

「いいよぉ! まずかったら捏造するし!」

 

 いいのかそれは? 俺は構わないけども。しかし何言おうか……よーし。

 

「では……」

「バッチこい!」

 

「いつか会長ぶっ飛ばします」

 

 一瞬騒がしかった食堂が一瞬にして静まる。

 

「……それ本気?」

「ええ、本気です」

 

 負けっ放しは癪なんでな。いつか絶対勝ってやる。

 

「……あっはっはっは!! いいねぇ! これは売れる!」

「お気に召したなら何よりで」

「うんうん、じゃあ三人で写真撮ろっか! ほら並んで!」

「はーい」

 

 そのまま写真撮影。中央に一夏。両サイドに俺達。何やらオルコットが要求していたが軽くスルーされていた。

 

「それじゃあ撮るよー。35×51÷24は~?」

「え? えっと……2?」

「74.375」

「正解!」

 

 ぱしゃり。……何故か全員入っているな。妹様なんて俺と一夏の間に入って腕まで組んでいる。縮地でも使ったの?

 またオルコットが文句を言っているがどことなく楽しそうだ。あいつもクラスに馴染めたのだろう。

 

「さて、俺はもう帰るわ。疲れたしな」

「そうか? じゃあ俺も……」

「お前は主役だろ? もう少し残っとけ」

 

 女子の目もそう訴えかけているしな。よっ人気者。

 

「おお……そうか。じゃあな」

「おう」

 

 

 食堂から出て、部屋へ続く道を歩く。さて後は予習でもして──

 

 てれててててーん、てれてててーん。てれててててーん、てれてててーん。

 

 電話だ。

 

「もしもし?」

『やっほーおはこんばんちはー!』

 

 切るか。着信拒否設定はどうするんだっけ。

 

『わーごめん! 切らないで! ね!』

「いきなり大声出すのやめてくださいよほんと、次はマジで切りますからね?」

『あはは、ごめんね』

 

 本当この人はいつもいつも……。で今日は何の用だろう。

 

『今日はねー、まず()()()()と、君の近況でも聞こうかなって』

()()()()?」

『うんうん! 近々そっちに()()()()()かけるからよろしくね!』

「……はい。了解です」

 

 ()()()()()。まるで遊びの様だが勿論この人の場合はそんな軽い意味では無い。しかしどんな面倒事でも拒否権はない。

 

『で、近況報告だけど。どう? 初めての学園生活は。一言で!』

「一言? うーん…………」

 

 どうと言われても。まだ一月も経っていない。大した出来事も……あったわ。盛りだくさんだった。

 しかし一言でか……何と言おうか……これだ。

 

「楽しいです。そこそこ」

 

 本当に。ちょっと退屈だが、研究所でも束様の所とは違う楽しさがある。何故かはわからないけど。来てよかった。

 

『……』

「あの、どうしました?」

『……うん! ならよかった! 涙を飲んで送り出した甲斐があったね!』

「いや滅茶苦茶笑ってましたよ」

『あれー?』

 

 あのときの恨みは忘れてないからな。寮生活のことも含めて。

 

『じゃーまたよろしくね!ばいばーい!』

「はーい」

 

 騒がしい人だ。どうせまた悪巧みでもしているのだろう。

 

「さて、帰るか」

 

 再び部屋に向かって歩く。明日もその先も、この退屈ながらも楽しい日々は続くのだろうか。それともいつか呆気なく終わってしまうのだろうか。

 ……だがどうなろうと関係ない。全ては生きるために、束様の手足として従うまで。

 

 それが俺の『生存戦略』だ。

 

 

 

第7話「代表決定・生存戦略」

 

 

 




しばらく書き溜めします。具体的には一巻の残り全部書き終わるぐらい。
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