僕のヒーローシンフォギア   作:露海ろみ

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十一話となります。

説明回の続きです。
私なりの解釈で書いてありますので、読んでくださる皆様に上手く伝わるとよいのですが・・・。
書いていてそこがとても不安な回でした。


11. ノイズの謎 その2

目を赤くして恥ずかしそうにしながら、出久は涙を拭き終えていた。

 

「お恥ずかしいところを・・・」

「大丈夫よ、出久」

「なかなかに熱い涙だったな」

「翼さん、それは少し違うのでは?」

 

それぞれの反応を返す面々。

 

「さて。ノイズの件に話を戻そう」

 

そんな中、弦十郎が話の舵を切り直す。

 

「ノイズの出現にある程度のパターンがあるのはさっき話した通りだ。それを踏まえて自由な意見を言って欲しい」

 

現状分かっているのはこうだ。

・大体五日程のスパンで出現する。

・発生する時間に偏りがある。

・場所に規則性はない。

・以上三つにより人為的な思惑が感じられる。

 

「出現場所だけを見ると人が集まっている所を狙っている、って訳では無いようですね」

 

友里は出現場所を手元で指差しながら数えている。

むしろ人が集まらない河川敷や町外れなどにポイントはあった。

 

「あと気になるのは出現の間隔ですね。何故これだけの日にちが定期的に空くのが謎です。仮に人為的なものなら畳み掛ける様に連日出現させれば被害の拡大が見込めます」

 

顎に手を当てながら藤尭は眉を顰める。

その言葉に翼はふと思った事を口に出した。

 

「・・・『被害を出すのが目的ではない』のではないでしょうか」

「どうゆう事?」

 

その疑問に質問を投げかけたのはマリア。

そちらを向いた翼は続ける。

 

「そうだな・・・。エルフナイン、各ノイズ出現時の被害はどうなっている?」

「実際の被害者は総勢六名です。三回目に一名。そして五回目に三名、六回目に二名となります」

 

確かにノイズが出現したとしたら明らかに被害者の数が少なかった。一度出現したら自らの消滅と共に人間を殺していくのがノイズである。

毎回三十体程は出現しているのにこの数は明らかに少なすぎた。

 

「確かにこの数には違和感があるな。もし自然発生したのなら被害はもっと拡大しているはずだ」

 

弦十郎も頷く。

翼は続けた。

 

「私にはまるで『試している』様に思えます」

 

確かに翼の意見は的を得ていた。

実際に一、二回目は無人の地域。三回目以降の出現場所は人のいる地域である。

まるで手に入れた力が通用するかを確認する様に場所を選んでいる。

 

「犯人は愉快犯、ということか?」

 

弦十郎は冷静を装いつつ翼に質問をする。それを見て厳しい顔になる翼。

 

「あくまで私の私見ですが、可能性は高いかと」

「なるほどな・・・」

 

そんな翼の推理が繰り広げられる中、スクリーンをガン見しながらブツブツと思考モードに突入している人物がいた。

もちろん出久である。

 

「場所に規則性はない、本当にそうか? 点を結ぶと何かの図形になったりはしないだろうか。・・・いや違う。という事は場所に意味はないのだろうか。翼さんの推理が正しいとすると確かに人がいる地域に近づいている・・・。なんで三回目にして被害者が出た? そして何故四回目には誰も被害が出ていないんだ。もし『五回目からは被害を出す様にした』とすると愉快犯という考えは通ってくる。五日という活動の幅は何を意味するんだろうか。五日でなければいけない意味はなんだ? ・・・五日に一回しか行動できない。とすると使う力には制限がある・・・。僕みたいに過度に力を使うと何らかの制限を受けるってことか。それに時間にも変な偏りがある。どうして日中の出現が無いんだろう。日中は動けない理由がある・・・。日中動けない人間が犯人? とするとサラリーマンの人とか昼間働いてる人は除外される。・・・いや待てよ。それこそが犯人のミスリードの可能性もある。あえて時間をずらす事によって追急を逃れようとしてる可能性を考慮しないと。でもあからさまに時間が決まってると深読みしすぎているかもしれないし・・・」

 

出久は基本、思考して行動するタイプの人間である。考えに考え抜き、正解を導き出す。

それにはひたすらに自らの考えに没頭し、一つの答えに辿り着くため考えを巡らせる。

彼の場合考えた事がそのまま口に出る癖があった。

故にこの姿となる。

流石にこの状態の出久はクラスメイトからも若干気味悪がられているだけあり、装者をはじめとした発令所の面々もギョッとした。

唯一しなかったのは弦十郎くらいである。

 

「み、緑谷君、大丈夫?」

 

藤尭が出久に恐る恐る声をかける。

 

「・・・え? あぁ! すみません、考え始めると周り見えなくなっちゃって・・・」

 

ハッとした出久は慌てて目に光を戻す。

 

「僕も翼さんの言う通り、力を試しているという指摘は正しいと思います。そう仮定すると色々と辻褄が合うのかな、と」

「どうしてそう思うの?」

「四回目の出現時には被害者がいませんよね。これってもしかして三回目の時に『誤って』被害を出してしまったからじゃないでしょうか? それに驚いたからか四回目は人がいる所から少し離れています。でも五回目は違う。人が集まる市街に近い所で出現しています」

 

友里の質問に出久は持論を展開する。

 

「人を支配出来る力を手にした人間は力を使う事に快楽を覚えます。これは僕の世界でも同じです。恐らく四回目と五回目の間で犯人の中で何かが変わったんだと思うんです」

 

出久の拳が知らずのうちに固く握られていく。

 

「過ぎた力は人を堕落させる。緑谷君の指摘は尤もだな」

 

弦十郎が大きく頷いた。

出久も彼を見ながら続ける。

 

「そうなると次の出現は更に被害が広がるかもしれません。五日の間隔というと、予想通りなら明日です。次は被害が出ない様に全力を尽くします!」

「わかった。だが決して無理はするな? いざとなったら退くのを戦術のひとつだ」

 

S.O.N.G.総司令は新たな仲間に忠告をする。

この少年は信念に真っ直ぐすぎた。

いざとなったら自らを顧みず、他者に手を伸ばすだろう。

その結果、自分がどうなろうとも。

その言葉の真意に気づかず、出久は返事をする。

 

「はい!」

 

 

 

その後、明日以降の対策を立ててミーティングは終わり、解散となる。

出久はすべき事も無いので自室に戻り、筋トレでもしようかと考えていた。

その時。

 

「緑谷君」

 

風鳴 弦十郎から声をかけられる。

 

「これを渡しておく」

 

そう言って渡されたのは無骨なデザインの携帯端末だった。

 

「君の携帯はこちらの世界では使えないからな。これを使ってくれ。ちなみに電子マネーによる買い物なども出来るから必要なら遠慮なく使っても大丈夫だ。それと・・・」

 

今度は茶封筒が差し出された。

 

「ある程度の現金も必要だろう」

「そんな! 住む場所まで用意してもらっているのに頂けません!」

 

出久はこれを固辞した。

だが弦十郎は彼の手にそれを渡す。

 

「これはS.O.N.G.で働いてもらう上での手当の一部だ。遠慮はいらない」

 

そう言われてしまうと出久はうまく言い返す事が出来なかった。

 

「折角なら街に出て色々見てくると良い。学生の装者達も学校が終わる時間だ。連絡は入れておくから案内してもらえ」

「何から何まで、すみません・・・」

「若いうちは色々と見て回るのも勉強だ。さぁ、行ってこい!」

 

そう言うと弦十郎は出久の背中をバンッと叩き、外出を促した。

 




いつもご愛読ありがとうございます。

前回と今回でとりあえずの基本設定となっております。
ここから話を転がしていく予定でありますので、今後もお楽しみ頂ければ、と思います。

ご不明点、ご質問などあれば出来るだけお答えさせて頂きます。

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