僕のヒーローシンフォギア   作:露海ろみ

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十四話目となります。


私は所謂『設定厨』でして・・・。
今後の展開に向けて色々書いていたら、なんだか設定ノートがとんでもないことになってしまっていました・・・。
うまくお話に活かせる様に纏めなくてはなりませんね・・・。

今回は三つの短編となります。
その名の通り短いですが、お読み頂ければ幸いです。


14.幕間2

雪音 クリスは路地裏にいた。

先程新しく仲間になった年下の少年をからかっていたら、まさかの後輩からの攻撃を受けて逃げ出した直後である。

 

「ちきしょう・・・。調の奴、やりやがったな」

 

荒い息を整えながら膝に手をつく。

一通り息を整え、空を見上げる。

路地裏から見上げる狭く青い空は天気も良く、白い雲がゆっくりと流れていくのが見えた。

 

「ちょっとからかっただけじゃねぇか、まったく・・・」

 

そのまま背を壁に預ける。

それにしても出久の反応は傑作であった。

あの感じなら普段から耐性がないのであろう。

あたふたと大慌てで誤解を解こうとする姿を思い出し、口に手を当ててクスクスと思い出し笑いをする。

その時、気がついた。

 

その手は彼と繋いだ手だという事を。

 

普段繋ぎ慣れないその感触を思い出す。

思わず口に当てていた手を離した。

開いた掌をまじまじと見てしまう。

 

「男の手って、あんな感じなんだな・・・」

 

硬くて、ゴツゴツして、でも包んでくれる温かさがまだそこに残っているようであった。

 

「ま、悪くねぇ」

 

と呟くとクリスはその温もりを逃さないように掌をギュッと握りしめた。

 

ポケットの中の携帯が震える。

確認すると調からだった。

どうやら三人もあの場から逃げ出したらしい。この後街で合流しようと提案されていた。

クリスは少し後に合流する旨を書き、少し考えた後に追伸を書き加えた。

『緑谷、あとでぶっ飛ばす』と。

あんな恥ずかしい目に遭わされたのだ、あとで緑谷に責任をとって何か奢らせよう。

そう決めたクリスはニンマリと笑うと上機嫌で歩き出した。

その頬を少しだけ赤く染めたまま。

 

 

 

 

出久がS.O.N.G.基地を出た直後。

出口まで見送ったマリアは待機の為に発令所に戻ろうとしていた。

出口から数えて三つ目の扉が開くと、丁度目の前に翼がいた。

 

「む、マリアか」

「あら。その格好は何処かへ出かけるの?」

 

翼はライダースーツに身を包んでいた。

グローブをした指にはバイクのであろうキーが引っかかっている。

 

「あぁ。いつもの所に行ってくる。新しい仲間が出来たことを報告したくてな」

「・・・そう」

「すまないが、あとは任せた。夜には戻る」

「えぇ、『彼女』に宜しくね」

「・・・心得た」

 

会話の中で表情を少し暗くした翼はガレージに向かい姿を消した。

マリアはその背中を見送る。

 

彼女が向かったのはかつてのパートナーが眠る場所。

 

翼は新しい出来事があると『彼女』のもとに赴き、話をしてくる。

その言葉に返事は返ってこない。

だがそれでも。翼にとって話をする事が大事なのだそうだ。

それだけ今でも『彼女』の事を大切に想っている。

 

『彼女』の名は『天羽奏』

かつて翼とツヴァイウィングとして音楽活動を、そしてガングニールのシンフォギア装者として肩を並べて戦っていた。

 

今はもう、・・・いない。

 

 

 

 

立花 響は顔面から机に突っ伏していた。

その手にはシャープペンシルが握られているが、動く気配はない。

そしてその対面にはもう一人、少女が座っていた。

 

「ほら響。終わらせて切歌ちゃん達と遊びに行くんでしょ?」

「未来〜、このプリント難しすぎるよ!」

「そんな事ないよ。ほら、この問題はね?」

 

未来と呼ばれた少女。その名を小日向 未来。

響のクラスメイトであり、幼馴染みであり、ルームメイトであり、一番の親友である。

彼女はいつものようにヒントを出し、響の補習が終わるように手助けを続ける。

そのおかげでプリントは着実に終わりに近づいていた。

そんな中。響がとある話をしはじめる。

 

「そういえばね、この間S.O.N.G.に新しい仲間が増えたんだよ」

「それって、この間話してくれた?」

「そうそう! まさか師匠に一撃入れるなんて思いもしなかったよ〜! ちょっと憧れちゃうなぁ」

 

まるで自分の事のように嬉しそうに語る響。

その言葉を聞き、未来の目が少しだけ、ほんの少しだけ細くなる。

彼女はそれに気がつかない。

 

「響、それで最後の問題だよ、頑張って」

「いや〜未来がいなかったらどうなっていたことやら。え〜と・・・」

 

言うと最終問題に取りかかりはじめる響。

その様子を見つめる未来の瞳から光が消えかけているのに立花 響は気がつかない。

そう・・・決して気がつかない。

 

「ねぇ響」

「ん? な〜に、未来?」

「この後私も一緒に行ってもいい?」

「もちろんだよ〜。未来にも緑谷君を紹介したいし」

 

顔を上げず答える響。

 

「『緑谷君』って言うんだ?」

「うん。高校一年生なんだって」

「そうなんだ・・・」

「戦ってる時すっごくカッコいいんだよ!」

「そうなんだ・・・」

 

今の未来の目からは完全に光が失われている。

だが響は親友の変化に気がつかない。

何故なら問題しか見ていない。

目の前の新しい『問題』を見ていない。

 

「私も『緑谷君』と『お話』するのが、とっても『楽しみ』・・・」

 

未来の一言と同時にプリントは終わった。

そして二人は学校を出る。

 

噂の緑谷 出久と合流する為に・・・。




私事ではございますが、先日『調神社』にお参りに行ってまいりました。
作中にある通りに可愛い兎が出迎えてくれる静かで趣ある素晴らしいところでしたので、適合者の皆様も機会があれば是非訪れてみては如何でしょうか?

追伸
10月26日の絶唱ステージに一般参加予定ですので、適合者の方々とすれ違えるかもしれませんね。

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