僕のヒーローシンフォギア   作:露海ろみ

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二十八話目となります。

昨日よりヒロアカの映画公開ですね!
私は仕事でまだ観に行けておりません・・・。
次の休みには是非とも行きたいな、と!


ご感想欄の皆様からの熱い爆豪への考察。
とても嬉しく思います。
というより皆様の色々な考察を読めるのが楽しくって、モチベーションにつながっております。
本当にありがとうございます。


28.ヒーローの”定義”

「しっかりしろ、緑谷君!」

 

平手が出久の頬に炸裂する。

バシン、という音と衝撃が未だ混乱の最中にある出久の頭に響く。

その痛みに思考が纏まっていく。

目の前には赤シャツの大男がいた。

 

「風鳴さん・・・」

「気が付いたか?」

「僕、どうして・・・」

 

見回すとそこは先程まで戦っていた墓地。

辺りにはマリア、そして弦十郎がいた。

心配そうにこちらを見るマリアと真剣な目でこちらを見る弦十郎。

出久の目を見ながら弦十郎が問いかける。

 

「爆豪君に会ったんだな?」

「・・・はい」

 

爆豪 勝己に、会った。

自分に尋常で無い殺意を向けた彼に。

そしてその彼が言った台詞が自分を混乱させたのだ。

 

「成り行きは君達の戦いをモニターしていたので知っている」

 

弦十郎は出久の手をとって立ち上がらせる。まだ膝に力が入らず、ふらついた。

 

「とりあえずは本部に戻るぞ。話はそれからだ」

 

力強いその声に出久は震える身体を動かしてヘリに向かった。

 

 

 

言葉通り弦十郎は道中、何も語らなかった。

出久の隣で腕を組み、目を瞑って座っている。

沈黙の支配するその場で口を開いたのはマリアだった。

 

「出久、落ち着いた?」

 

優しい言葉。自分を心配してくれる言葉。

それに出久は首を縦に振る。

口を開いたらまた叫んでしまいそうだった。

 

「それなら良かった」

 

いつかのようにニッコリと笑う彼女を見て、出久もなんとか笑みを作る。だいぶぎこちないそれは笑っていると言えるのか自分自身にもわからなかった。

 

「私が彼に攻撃された時、助けてくれたわね。ありがとう」

 

笑顔のままマリアは言った。

言葉は返せなかった。

それでも彼女は続ける。

 

「出久には助けられてばかり・・・。貴方のその優しさに今までも沢山の人が救われてきたのでしょうね。今度、私に貴方の話を聞かせてくれない? “ヒーロー・デク”のお話を」

「・・・僕の話を、ですか?」

 

叫び出したくなる心を押さえつけて、出久は言葉を返した。

 

「えぇ」

「僕はまだ正式なヒーローじゃないんです・・・」

「何言ってるのよ。貴方はもうヒーローじゃない!」

「まだ仮免ですし、学校も卒業してません」

「そこに拘るのね。それでも誰かを助ける事は勝手にやってはいけないこと?」

「そんな事はありませんが・・・」

「私にとって貴方はヒーローなの。だから、その話を聞きたい。それだけよ」

 

それだけ言うとマリアは何も言わなくなった。

再び沈黙が辺りを支配する。

そんな中、出久は言葉を噛み締めていた。

嬉しい言葉をもらった。きっと彼女なりに自分を元気付けてくれたのだろう。

 

『僕は”ヒーロー”・・・』

 

自分でそれを目指して走ってきた。だがそれは名乗ったからヒーローなのではない。

それなら世界中のみんながヒーローだ。

 

ヒーローとは。

きっと誰かに認められてこそなのだろう。

 

思えば自分もそうだった。

数多のヒーローを支持し、そしてオールマイトを自身の最高のヒーローと支持していた。

 

そんなヒーローに今僕は”成って”いる。

 

そう認めてくれた人が、また一人、増えた。

気がつくと、出久は自然な笑みを浮かべる。

なんだか心が落ち着いた出久はいつものように考える事ができるようになっていた。

 

 

ヘリは間もなく本部に到着した。

着陸したヘリに近づく姿があった。

 

「出久君!」

「マリア!」

 

響と調だ。二人は着陸により吹き荒れる風の中、駆け寄った。

 

「大丈夫だった!?」

「僕は怪我してません。でもマリアさんがかっちゃんの攻撃で・・・」

「問題ないわ」

 

マリアは左腕を振り答える。

 

「右で受けてたら少し危なかったけどね」

「出迎え、すまないな」

 

最後に降りた弦十郎は装者と出久を見渡すと、S.O.N.G.総司令の顔で告げる。

 

「さぁ。状況の整理を始めるぞ」

 

 

司令室に揃う面々。

今回の議題は勿論、現れた出久の友人についてだ。

 

「さて緑谷君。率直に聞こう」

 

まず弦十郎が出久に問うた。

 

「彼は君の知ってる彼か?」

 

その質問はとても難しかった。

出久は言葉を選びながら答える。

 

「最初僕には同じだと思いました。でも・・・言っていることが違う。違いすぎるんです」

 

戦場を離れ、考える時間を経ての答えを紡ぐ。

 

「かっちゃんは僕に『お前がオールマイトを殺した』と言いました。でも僕の知ってるオールマイトは生きています。戦えなくなった事への比喩として使った可能性はありますがかっちゃんの様子から考えると、そうじゃない」

 

出久の言葉に返答する者はいない。

まだ言葉は続く。

 

「あの言い方には明確な感情がありました。多分・・・強い憎しみ」

 

それを口に出した出久の顔が歪んだ。

 

「かっちゃんは僕を嫌っています。でもあんな顔を僕に向けたことはありません。そんな感情を受けた事は今まで無かった」

 

少しずつ言葉が形を成していく。

頭の中の断片的な物がパズルの様に全体像を、”爆豪 勝己”を完成させていく。

だがそれは自分の知る彼とはまったく同じでまったく異なるものであった。

 

「あくまで僕の主観ですが、あのかっちゃんは僕の知ってるかっちゃんではありません」

 

結論は出た。

彼は彼であって、彼ではない。

それが出久が感じ取った答えであった。

 

「やはりそうか・・・。最悪の想像とは形に成るものだな」

 

答えを出した出久に弦十郎は深く頷く。

自分が予測した通りとは言え、その中でも最悪の想定。

これはこちらからすると良いものではない。

今後、彼が現れた場合戦闘は避けられないという流れが生まれてしまう。

 

「マリア君」

 

彼の視線が移る。

 

「爆豪君と戦ってみてどうだった?」

「そうね・・・。『躊躇』がなかった。一つ一つの攻撃が必殺の構えでこちらを倒しにきていたわ」

 

手を口に当てながら戦闘を思い出すマリアの目が細くなる。

 

「人と戦っているというより、獣に近い様に感じました」

 

獣。

その言葉を聞き、悲しそうに出久は視線を床に送る。

やはり彼は『かっちゃん』ではないのだろう。

荒々しさはあれども内面に『ヒーローの心』がある彼は倒しはすれど、決して殺しはしない。

だがあの『彼』にはそれがない。

 

敵は殺すもの。

 

それが二人を分けるものなのだろうと思った。

 

「なるほどな。・・・今後の事を考えると早急な対策が必要だな」

 

弦十郎はマリアの評を聞くと揃った面々を見渡し、最後に出久を見る。

S.O.N.G.総司令は指令を下した。

 

「緑谷君。再度になるが、君の話が聞きたい。君の世界で起きた事。爆豪君の事。知っている限りの情報を教えてくれ。それがこれからの戦いに必須だ」

「はい・・・!」

 

その目に迷いと決意を共に携えて、力強く答える出久。

 

正直まだ彼と戦う事を迷っている。

だが彼が道を踏み外しているのなら、戦わなくてはならない。

 

それがこの世界で、自分がやるべき事なのかもしれないから。

 

 




人は誰でも誰かにとってのヒーローだったりするのです。


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