僕のヒーローシンフォギア   作:露海ろみ

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三十二話目となります。

いつもお読み頂きありがとうございます。
31話への皆様のご感想読ませていただきました。
私の自分勝手をお許し頂ける皆様に感謝を。

さて話は変わりますが。
前話にて、何故か翼が調のもとにやってきたのか。
そして「話しておく」と言っていたマリアが何故連絡していなかったのか。
今回の幕間はそちらを補完するものとなっております。
短いですが、お楽しみ頂ければ嬉しいです。

活動報告欄には書かせていただきましたが、非ログインの方でもご感想を書いていただける様に設定を切り替えました。
というよりそうなっているのにようやく気がついた次第であります。
本当に申し訳ありません。
気軽なご感想、お待ちしております。


32.幕間4

Before

 

「えぇぇぇ!?」

「どうしたマリア?」

 

突然声を上げた仲間に問いかける翼。

スマホを見ながら震える彼女はゆっくりと翼を見るとその目を見開きながら答える。

 

「い、出久が本屋でいかがわしい本を買っていたんですって!」

 

わなわなと拳を握りながら振り向く彼女。

その姿に、そしてその言葉に衝撃を受けた翼は驚きながらも問い返す。

 

「緑谷がか?」

「えぇ! 調と切歌がその場に出会したそうよ」

「そんな馬鹿な・・・」

 

だが翼のその言葉が聞こえなかった様にマリアはスマホを直視しながら言う。

 

「い・・・」

「・・・マリア?」

「出久ぅぅぅぅぅ!!!!」

 

叫びながら走り出す彼女。

知る限り出久がそんな本を買うなど考えられない。

きっと裏があるとその背を追う剣であった。

 

 

After

 

「私だって薄々わかっていたわよ、出久がそんな子じゃないと!」

「そうだな」

「出久はいつだって嘘がつける子じゃないわ!?」

「そうだな」

「でも! 調からの連絡を見る限り、そうとしか思えないじゃない!」

「そうだ・・・な?」

「つまり、出久はえっちな子!」

「いや、その理屈はおかしい」

 

某青い狸型ロボットの様な返答をしながら翼は横で強い酒を呷る彼女を嗜めた。

そんな自分の前に置かれるのはノンアルコールドリンク。

それを置いた忍者はアルカイックスマイルを浮かべながら二人のやり取りを眺めている。

 

「待て待て、マリア。仮に緑谷がそうだったとして、なんでそんなに取り乱すのだ」

「なんでですって!? 翼、貴女はあの二人にもしもの事があったらどうするのよ!」

 

あの二人とは調と切歌のことであろう。

マリアが心配しているのは二人が出久の手によって『手籠』にされる未来だ。

言われた翼は想像してみた。

二人を側に侍らせている笑っている出久を。

 

「いや、無いな」

 

即答する位に似合わない。失礼ではあるが出久にそんな度胸はないだろう。

 

「あの緑谷だぞ? そんな不埒な事をする様な奴ではないだろう」

「出久だって草食系に見えるけど、中身は肉食かもしれない。ロールキャベツよ、ロールキャベツ! 緑色だし!」

「・・・」

 

目線を緒川に向ける。それを受けた彼は意図を察して、一瞬の間にマリアのグラスをすり替えた。中身は麦茶である。

それを飲みながら今度は目の前の忍者に絡みはじめるマリア。

なお、中身が入れ替わっている事には全く気がついていないあたり、だいぶ酔いが回っているようだ。

 

「緒川さんだって男なんだからわかるでしょ?」

「僕ですか?」

「この場にいる唯一の男なんだから、意見を言いなさい!」

 

話に巻き込まれる緒川は「そうですねぇ・・・」と語り始める。

 

「僕から見た緑谷君はそんな子ではないと思いますよ。相手に真摯に応対する事が出来る素晴らしい少年かと」

「ほら、マリア。緒川さんもこう言っているぞ?」

「それでも心配なのよ・・・私が二人の親代わりみたいなものなんだから・・・」

「あぁ、そういうことか」

 

彼女の根底にあるものは二人への愛情。

三人の家族だから、自分がそこで一番の年長だからこその責任感なのだろう。

だとしても心配し過ぎのようである。

 

「こうなったら出久の部屋に突撃して問いただすわよ!」

 

立ち上がりながら宣言する彼女は右腕を高々と掲げた。

 

「二人のことをどう思っているのか! 責任をとるつもりはあるのか! 直接話してもらいましょう!」

「責任って、緑谷は何にもしてないだろう・・・」

「これからそうなるかもしれないじゃない!」

 

これには緒川も苦笑いするしかなかった。

 

「まぁ待て。今日はもう遅い。その話をするとしても明日以降でいいだろう」

「何を悠長な事を!」

「今突撃したら緑谷に幻滅されるぞ? 酒臭い息を振り撒いて深夜に絡んでくる奴の事をどう思うか、すこし考えればわかるだろうに」

 

正論で諭されるマリア。

だが腕をブンブンと振りながら抵抗する。

 

「う〜、でも〜・・・」

「それにさっきの今で緑谷に合わせる顔があるのか?」

「そ、それは・・・」

「あれは美しい土下座だったな」

「」

 

言葉を失い勢いを失い、椅子に座る彼女はカウンターに突っ伏す。

危うく醜態を晒す所であった。

 

「とりあえず今日の所はやめておけ」

「そうするわ・・・」

 

30分後。

マリアは完全に寝ていた。

無論。調と切歌への連絡をせずに。

それに気がついた翼は「明日の朝にでも伝えに行くか」と思い、マリアを背負い彼女の部屋に向かうのだった。




マリアさん・・・。
ロールキャベツは無いと思いますよ。

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