僕のヒーローシンフォギア   作:露海ろみ

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三十六話目となります。

また一つ続きをストックできましたので投稿させていただきます。

絶体絶命の出久に駆けつけるのは・・・。


36.援軍

眼前に迫る爆炎。

だがそれは出久に届かない。

 

二発の銃声。

 

彼に届く前に炎はその方向を横にずらされた。

 

「ッ!・・・なんだァァ!?」

 

晴れた爆煙の先で爆豪が叫んでいる。

痛みに両腕を震わせ、怒り狂う彼は一つの方向を睨みつけていた。出久も視線を送る。

 

そこには紅いシンフォギアを纏った少女がいた。

 

「おい。あたしの後輩達に手を出すってことは、覚悟できてんだろうな」

 

右手のリボルバーを構えて、こちらに歩いてくるその姿。見間違うわけがなかった。

出久が初めて出会った装者の一人。

北欧神話にて狩猟神の使う弓『イチイバル』のシンフォギア装者。

 

「クリス先輩!」

 

雪音 クリスがやって来た。

 

 

銃の狙いをつけたまま出久に歩み寄るクリスはその瞳に怒りを燃やしていた。

 

「デク、大丈夫か?」

 

だがそばまで来ると優しい言葉をかけてくれる。頼もしいその言葉に出久は答えた。

 

「な、なんとか・・・」

「心配すんな」

 

横目でこちらを見るクリスは口を歪める。

初めて見る彼女のその顔は、この間自分に悪戯をしかけた同一人物とは思えないほど凄惨な笑みだった。

 

「ここはあたしに任せな」

 

銃口はピタリと爆豪を捉えて離さない。向けられたそれから放たれる殺気に爆豪も臨戦態勢を解けなかった。

続く膠着状態。

突如下げられていたクリスの左手が翻り、いつの間にか二丁目の銃が握られていた。手にした二つの銃から連続して放たれる銃弾はただの一発も違わず爆豪に襲いかかる。

爆速ターボを使い射線から抜け出る爆豪は立体的な機動で追撃を躱そうとするのだが、そこは歴戦の猛者であるクリス、動きを先読みし見事な偏差撃ちで爆豪に攻撃を当て続ける。

 

「なんなんだ、てめぇ! 横からしゃしゃり出て来やがって!」

「あ? 先輩に対する口の聞き方がなってねぇな!」

「誰が先輩だってぇ!? 死ねや!」

 

爆豪は急激に軌道を変え、地を這う様な低空飛行に切り替える。多少の銃弾を喰らいながらも徐々にクリスに接近してきた。

クリスの得物は銃。ならばと接近戦に持ち込む腹であった。

手を限界まで開き、クリスの顔面を掴もうとする。

 

「お前、舐めてんのか?」

 

その一言と共に爆豪の頬にめり込む脚。

クリスの一撃が大振りの手を難なく掻い潜り、爆豪の動きを止めた。

 

「誰が銃だけだって言ったよ? こちとら全身凶器だ!」

 

そのまま四肢に四連射し、銃のグリップで背中を痛打する。地に落ちた爆豪の背中を踏みつけ、後頭部に銃口を突きつけるクリス。

 

「プチョヘンザだ! わかるかクソガキ?」

 

「あたし様の後輩に手を出したんだ、落とし前つけてもらうぜ」

 

絵面的に最早どちらが悪役か分からない。

あまりにも一方的な制圧に出久も呆然とする。

彼女の足の下でもがく爆豪だったが、両手両足に受けた銃弾によりその動きは鈍い。

捕らえられた獣は吠える。

 

「このオレを足蹴にしてんじゃねぇぇ!」

「ぎゃあぎゃあ喚いてんじゃねぇぞ。お前の生殺与奪は握られてんだ」

 

底冷えする声で銃口を更に押し付ける。

だがその感触に違和感を覚えたクリスは爆豪を注視する。彼の身体が光の粒子となり少しずつ消えていくのが見えた。

 

「くそッ! 『時間切れ』か・・・」

 

悪態をつきながらもその身を光に変える爆豪は倒れたまま叫びだす。

 

「覚えとけ、今度は油断しねぇぞ!」

 

その言葉を最後に彼の姿は完全に消え失せた。かき消えたその姿を見送り、クリスは手の中の銃をくるくると弄ぶ。

 

「はッ! 一昨日きやがれってんだ!」

 

周囲を見渡して他に敵がいない事を確認すると、クリスは出久に駆け寄ってきた。

膝をつき、手を差し伸べる。

 

「派手にやられたな」

「クリス先輩・・・」

 

クリスに引っ張り上げられてなんとか立ち上がる。まだ脚に力は入らず、よろけた所を彼女に支えられる。

 

「そうだ! 切歌ちゃん!」

 

自分が守っていた少女はどうなったのだろうか。爆豪を彼女から遠ざける様に努力はしたのだが、彼を抑えるのに手一杯だった。

その様子を見たクリス。

 

「心配すんな、デク。切歌ならバカ一号に任せてある」

「バカ一号?」

「あの大喰らいの事だよ」

 

 

「切歌ちゃん!」

 

立花 響が倒れている切歌を抱き起こす。

身体を揺すられ、その目は開かれた。薄らと開くそれを見て響の顔が笑顔になる。

 

「無事でよかった。怪我はない?」

「わたしは、大丈夫デス・・・。でもデク君が」

「そっちもオッケーだよ! クリスちゃんが向かってるから!」

 

その言葉聞いて安心したのか切歌は涙を零す。自分が至らなかったばかりに出久一人を戦わせてしまった。意識を失う寸前に聞こえてきた爆音。彼に何かあったらどうすればいいのだろうか。

彼が怪我をするなんて、考えたくなかった。

涙を流し始めた切歌を心配そうに響は見つめる。

 

「・・・切歌ちゃん?」

「デク君!」

 

切歌は腕を振り解き、走りだす。身体の節々が痛む。脚がいうことをきかず縺れた。

それでも彼の側に行きたい。

胸の中を締め付ける感覚を味わいながら、彼女は出久の元に走りだす。

いきなり駆け出した切歌に「ほえ?」と気の抜けた声を出した響はその場に置いてけぼりにされる。

 

林の中を走る少女が一人。

枝が彼女の腕や脚を掠め、小さな傷がいくつも出来るがそんなものは気にならない。

彼女の心を占めるのは一人の少年。

 

『無事でいて・・・』

 

心は焦り、急ぐ脚は周囲を疎かにする。

這い出た木の根に脚を取られて転んでしまう切歌。それでも、新しい傷を作りながらも彼女は立ち上がった。今はただひた走る。

やがて開ける視界。薙ぎ倒された木々とその中心に二人の人物がいた。

クリスに支えられて立つその姿を見た瞬間。

切歌は言葉も無く、飛び込んだ。

 

「お前!?」

 

いきなり現れた切歌に驚きの声をあげるクリスは肩を貸した少年を奪われる。

傷だらけの少年を抱きしめ、安堵から泣き叫ぶ切歌。出久はその少女を受け止めきれずに共に地に倒れた。

 

何故こんなにも心が苦しいのだろう。

何故こんなにも彼が心配なのだろう。

何故こんなにも、彼の事が『愛しい』のだろう。

 

「切歌ちゃん、無事だったんだね」

 

耳に響く優しい彼の声にその腕の力で答える。きっとその顔はいつもみたく笑顔なのだろう。

自分を抱き返してくれる彼を更に強く抱きしめる切歌は出久の名をいつまでも呼んでいた。

 

 

「クリスちゃ〜ん! ・・・え、なにこれどういう状況!?」

「あたしが知るか・・・」

 

追いついた響が流れを知るであろうクリスに質問するが、クリスには当然の如く答えられるわけがなかった。

だが目の前で抱き締め合う二人を見下ろしながら、装者の二人は思い当たる所があった。

 

「クリスちゃん、もしかしてさ・・・」

「あ〜・・・多分それだな」

「・・・やっぱり?」

「バカでもわかるんだな」

「またバカって言った!?」

 

いつもの問答を繰り広げながらも二人の目は出久と切歌から離されない。

涙を流す切歌と、彼女を大事そうに抱きしめる出久。

二人を見た響が言う。

 

「切歌ちゃんは出久君が『大好き』なんだね」




全身凶器(いろんな意味で)なクリスに「プチョヘンザ」って言わせたかったんです。
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