僕のヒーローシンフォギア   作:露海ろみ

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四話目となります。

とりあえずはここまで。


4.ようこそ、新世界へ

「彼の容態は?」

「目立った外傷はありません。倒れたのは恐らく精神的な疲労によるものかと。腕の傷跡は過去の怪我が原因のようです」

 

誰かが側で話す声が聞こえた。

薄っすらと目を開ける。

どうやら自分は横になっているようだ。

 

「しかし何者なのでしょう? 素手でノイズを倒すなんて前代未聞です」

「あぁ。それにあの時の反応は恐らくこの子だ。あの反応は特異ではあったが確かに・・・ん?」

 

自分はどうなったんだっけ?

起きかけの頭を回し始める。

確か街中でヴィランと戦って、その後女の子と話している最中に・・・。

 

「目が覚めたか?」

 

声をかけられる。

そこで完全に覚醒し、慌てて飛び起きた。

辺りを見回すと二人の男性がすぐそばに立っていた。

一人は鍛えているのであろう屈強な印象を受ける赤髪の男性。

もう一人はタブレットを持った、細身ではあるが隙を感じられない茶髪の男性。

 

「君が寝ている間に持ち物を改めさせてもらったよ。勝手をしてすまないな」

 

そう言うと赤髪の男性は出久のバッグを持ち上げた。

手近な椅子に座り、出久と目を合わせる赤髪の男。

 

「俺は風鳴 弦十郎という。こっちは緒川 慎次だ。君は緑谷出久君で間違いないかな?」

「はじめまして、緑谷出久、です」

 

出久は恐る恐る返事をする。

 

「どこか痛むところはないか?」

「大丈夫です・・・。あの、ここは一体?」

「ここは国連直轄のSquad of Nexus Guardians、通称S.O.N.G.の基地だ。君が倒れた後運ばせてもらった」

 

聞いたことの無い組織だ。

倒れた時の事を思い出し、表情が暗くなる出久。

まさかとは思ったが“やはり”そうゆう事らしい。

 

「あの、僕・・・」

「緑谷君」

 

青い顔で言いかけた言葉は微笑んだ弦十郎に遮られた。

 

「倒れた直後で混乱もあると思う。もう夜も遅い。詳しい話は明日にしよう。今日は寝るといい」

 

そういうと立ち上がり、緒川を促し共に出口に向かう。

そして部屋を出る間際。

 

「うちの装者を助けてくれてありがとう。俺からも礼を言うよ。君はすごいな」

 

ニヤリと告げ、部屋をあとにする。

部屋のドアが閉まり出久は一人になった。

 

 

出久は頭の回転が早い方だ。

ここまで情報が揃えばある程度の推測は容易に出来る。

 

『個性』が周知されていない。

『ノイズ』と呼ばれる出久の知らない敵。

あの『オールマイト』を知らない少女。

『S.O.N.G.』と呼ばれる聞いたことの無い組織。

そして少女の言った一言。

 

「シンフォギア・・・」

 

聞いたことの無い力。

 

そこから導き出せる答え。

 

ここは自分の知っている世界とは違うのではないか。

 

ここには母もクラスメイトもヒーロー達もいないのではないだろうか。

 

自らの師、オールマイトでさえも。

 

自然と目に涙が浮かぶ。

口からは嗚咽が漏れる。

 

あり得ない筈なのにそうでもしないと辻褄が合わない。

信じたくない話が出久の現状を表していた。

 

「僕はどうしたらいいんだ・・・」

 

その夜。

出久は眠れなかった。

 


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