XDUの次イベントの情報を皆様はご覧になりましたか?
並行世界の翼とクリスが発表となりましたね。
活発な翼とお淑やかなクリスというまさかまさかの展開。
なんてことを・・・。
石を貯めておかなくてはなりません。
恋人らしい事とはなんだろうか。切歌と恋仲になった出久は最近よく考えていた。
今までそれとは無縁の人生だったし、クラスメイトにもそんな関係の二人はいなかった。
今日もロードワークをこなす出久は、気づけばリディアンの前まで来ていた。別にここに来るつもりはなかったが気がついたら自然とここにいる自分がいる。
閉められた校門を見、その先の校舎に切歌がいるのだろうな、と弾む息を整えながら思う。
時刻は昼過ぎ。恐らくは級友たちと昼食の時間だろう。今頃、笑顔でご飯を食べているのかもしれない。そう思うと出久は少し寂しさを感じた。
同時に自身の腹も音を鳴らす。
「お腹減ったなぁ」
何処かで昼食をとるのもいいかもしれない。そう思った出久は店を探しに再び走り出した。
この間歩いたアーケード。その中のとある店の前に出久はいた。
『ふらわー』
この間は入れなかったそこはお好み焼き屋だったはずだ。換気扇から流れてくる薫りに脚を止めたのを思い出す。
外に出た看板にはメニューが書かれていた。オーソドックスなものから、あまり見かけた事のない物まで様々。そろそろ空腹も限界に近づいていた出久はその扉を開いた。
カウンター席が並ぶ店内に入ると、店主であろう女性が声をかけてくる。
「いらっしゃい、一人?」
「はい」
「好きなところに座っておくれ」
店内には仕事途中のサラリーマンやOLの姿がちらほらと見える。その中で若干場違いなジャージ姿の出久は浮いた存在だった。
席についた出久はメニューを開く。色々と迷ったが、結局は無難な物を選ぶ出久。
「すみません、ネギ豚玉をいただけますか?」
「ネギ豚ね。ランチタイムだからドリンク付くけど、何がいい?」
「じゃあ・・・烏龍茶を」
注文を聞いた店主は出久の前に水を置きながら、にっこりと笑った。
「はいよ。ちょっと待ってね」
そう言った店主は手早く生地を混ぜ始める。もう何年もやってきた手順なのだろう。鮮やかとも言えるそれはあっという間に出久のお好み焼きを作り上げた。
目の前に置かれる更には湯気の立つネギ豚玉と烏龍茶。香ばしく焼き上げられた薫りに腹が反応した。口の中に唾液が出てくる。
「いただきます!」
手を合わせ、箸で一口目を頬張る。焼きたてのそれはとても熱い。はふはふと口の中を冷ましながら味わうと混ぜ込まれた具材の味が広がっていった。
新鮮なキャベツの甘味。豚肉の力強い旨味。時折感じるのは紅生姜だろうか。そして甘辛いソースとまろやかなマヨネーズが全てを包んでいく。
美味しい。
一口目を食べ終えた出久は言葉も無く、次々と残りを食べ進めた。時折烏龍茶で口をさっぱりさせるのも忘れない。するとまた次の一口が新鮮に味わえるのだ。
黙々と食べる出久を見て店主がクスリと笑う。
「美味しいだろ? なんたっておばちゃんの特製だからね!」
口にお好み焼きを頬張りながらコクコクと頷く出久を見て店主、おばちゃんは笑顔を深くする。
「いい食べっぷりじゃないか。男の子だし、もう一枚くらい焼こうか?」
「ッ・・・お願いします!」
咀嚼を終えた出久が頼む。
「じゃあうちの特別メニューを」とおばちゃんは新しい生地を焼き始めた。
次いで出てきた「ふらわースペシャル」も難なく平らげ、膨れた腹に手を置きながら息を吐く。
「とっても美味しかったです!」
「そう言ってもらえると嬉しいねぇ」
ニコニコと出久の食べっぷりを見ていたおばちゃんは胸を張りながら言った。
気づくと店には自分と店主しかいなかった。時計を見ると昼を過ぎ、二時ごろを指している。
出久は腹が膨れ満ち足りた気分だった。さっきまでモヤモヤと考えていた事が頭から無くなっている。今はこの気持ちを楽しむ余裕を持った自分がいた。
その顔を見ておばちゃんは言う。
「良い顔になったねぇ、あんた」
「え?」
「さっき店に入ってきた時は何かに悩んでるみたいだったからさ。どうだい。折角だし、相談に乗ろうか?」
「あの、でもご迷惑じゃ・・・」
「もう昼のピークは過ぎたから大丈夫。で、どうしたんだい? どーんとおばちゃんに話してごらん」
出久は躊躇した。今の自分の悩みは恋の悩みだ。それを直接話すのは少し気恥ずかしく、どう言ったもんかと考えた挙句に彼は口を開く。
「その、僕の『友達』の話なんですけど・・・」
ベタだが友達の悩みといった丁で話し始める。
恋人と普段何をしたら良いのかわからない事。お互い好きと言ったが、そこからどうすれば悩んでいる事を。
自分の事とバレないように、だが出来るだけ簡潔に質問をまとめる。
一通り聞いたおばちゃんはニコニコ笑いながら、答える。
「なるほど。若いってのはいいねぇ」
「・・・そうなんですか?」
「そうさ。若いうちからそんな悩みを持てるのはいい事だよ。人は一人じゃ生きられないからね。大切な人が出来るのは自分自身も成長するチャンスだ」
洗い終わった皿を拭きながらおばちゃんは続けた。
「恋人になったからって恋人らしい事をする必要なんてないんだよ。今まで通り接してあげればいい。一緒に笑って、一緒に遊んで、一緒に泣いて。ほんの少しだけ距離が近くなっただけなんだ。だから悩むくらいなら自分から『一緒に帰ろう』くらい言うだけで相手の子は喜ぶと思うね」
「それだけでいいんですか!?」
「女ってのは、好きな男といるだけで嬉しいもんさ」
拭いた皿を片付けるおばちゃんは優しく微笑む。
「だから今度はその子と一緒に食べにおいで」
「・・・はい」
嘘をついた事は見抜かれていた。出久は申し訳なさに頭を下げる。その様子に彼女は手を伸ばし、出久の頭を撫でた。
「気にしなくていいよ。あんたの年頃なら、そういうもんさ」
「ありがとうございます・・・」
「ほら、愛しの彼女のとこに行ってやんな!」
「・・・はい!」
肩をポンと叩き、檄を入れる。
顔を上げた出久は元気よく返事を返す。
「じゃお会計1580円だね」
言われた金額を支払い、店を後にする出久。
店の扉を出る瞬間、振り向く。
「ありがとうございました! 今度は切歌ちゃんと一緒に食べにきます!」
感謝のお辞儀をして店を出て行く出久をおばちゃんは笑みを絶やさず見送ったあと、ふと聞いたことのある名に首を傾げた。
「切歌ちゃん? 何処かで聞いた事がある気が・・・。あぁ、響ちゃんの知り合いの子だ!」
いつも元気な響に連れられてやってきたX印の髪飾りをした少女を思い出す。
「そうかい。あの子が彼女さんか・・・良い子とお付き合いしてるんだね」
店に一人残ったおばちゃんは元気を取り戻し去っていった出久に笑いかけるのだった。
店を出た出久はそのままリディアンに向かい歩く。その脚は次第に早歩きに、そして遂には駆け出した。
『そっか。別に特別じゃなくってもいいんだ。今までみたいに切歌ちゃんと一緒にいられれば、それでいいのかもしれない!』
買い物の時間には少し早いアーケード街に人は少ない。その中を走る出久は嬉しさが顔から滲み出ていた。
『切歌ちゃんに、会いたい!』
その想いを漲らせて、彼は街を駆け抜けて行く。
初めての恋人・・・素敵ですね。