僕のヒーローシンフォギア   作:露海ろみ

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四十三話目となります。

今回は切歌を待っている中、買い物してる二人のお話を短いですが投稿させていただきます。

毎回ご感想を頂きまして、嬉しい限りです。
出来る限り返信させて頂きますので、いつでもお気軽にどうぞ。



43.半熟オムライス

出久は籠を持ってスーパーにいた。

その中には本日特売と書かれたシールが貼られた卵のパックが四つほど入っている。更に言えば同じ文句の書かれた鶏肉など一目でセール品とわかる品々が揃っていた。

 

「ケチャップはまだあるし。あ、グリーンピース買わなきゃ!」

 

横を歩く少女は買うべきものを思い出すと冷凍食品のコーナーに向かっていく。それに付いて行く出久は重さを増していく籠を握り直した。

籠の中身と彼女の独り言から作るものを推測する。卵、鶏肉、グリーンピース、ケチャップ。多分だがオムライスであろう。以前のパーティーで彼女の料理上手具合を知った出久はその完成図を思い浮かべて『美味しそうだなぁ』と思う。

調はミックスベジタブルとグリーンピースの冷凍食品を見比べて首を傾げていた。

 

「どっちにしよう」

「ミックスベジタブルの方がいいんじゃないかな?」

 

自分の母もよく使っていたそれを自然と勧める。それを聞いた彼女は選んだそれを籠に入れた。

真剣に食材を選ぶ調の姿に母の姿を重ねる。思えば幼い頃、母の買い出しによく同行した。籠を乗せたカートを押すのが楽しみで、母の救けになっていると誇らしげにしていたものだ。

 

「出久君、楽しそうだね」

「そうかな?」

「さっきからずっと笑ってる」

 

調は買い物を始めてから彼をよく見ていた。籠を持たされた出久はその中身が増えるにつれて楽しそうにしている。

 

「調ちゃんは料理上手でしょ? 切歌ちゃんはあんなに美味しいものを毎日食べてるんだな、って思って」

「そ、そう・・・」

 

急に褒められたものだから調は照れながら答えた。でもやはり彼が切歌の名を出すのがちょっと悔しい。反撃とばかりにジャブを繰り出す。

 

「出久君は料理とかしないの?」

「寮の食堂で簡単なものは作るけど、本格的なのはやらないかな」

「そっか・・・よし」

 

密かにガッツポーズをする調。まだこの面では彼には勝っている。切歌の胃袋を掴んでいるのは自分だと確信した。

 

「あ。林間合宿の時にカレーは作ったかな。結構美味しく出来たんだよ!」

 

だが思い出した彼の言葉に衝撃を受ける。

自分に対して姉気取りの切歌だがその舌はお子様で、カレーが大好きなのであった。

それを聞いてまたもや頬を膨らませる。

 

「出久君って、本当に攻めてくるね」

「え、なんで?」

「ピンポイントで攻めてくるよね」

「・・・そうなの?」

「むー!」

 

調は籠をもう一つ持たせると、その中に米の袋(10kg)を放り込んだ。いきなりの展開に取り落としそうになる籠を男の意地で支える出久。なんとか持ち上げる。

調はこの際だからと普段なら分けて買う重めの食材を全部持たしてやろうとスーパーを歩き出した。両手に籠を持たされた出久はどんどんと重量を増すそれらを手に彼女の後を付いていく。

 

「・・・カートを使えばいいんじゃないかな」

「出久君、力持ちだから大丈夫でしょ?」

「・・・最近、調ちゃん僕にキツくない?」

「気のせいだよ」

 

言いながら籠に醤油のボトルを入れてやる。ついでにサラダ油も入れてやろう。あ、味噌もそろそろなくなる頃だ。折角の特売日。買わない手はない。

荷物持ちがいるというのは助かるものだと考えながら、調の足は軽やかにスーパーを巡っていく。対して出久は両腕の重さから歩遅く彼女を追いかけた。

 

 

スーパーの扉をくぐる頃には日は大分傾いていた。西日は眩しく、二人の後ろに長い影を作っている。

 

「よし。これで当分は大丈夫」

「そっかぁ・・・それはよかった・・・」

 

両手に荷物を満載した出久はフラつきながらも彼女の隣を歩いていく。特に右手に持った袋には米袋が入っているのでバランスが悪い。その為、気がつくと右に向かって行ってしまう。

 

「おっとと・・・」

「・・・大丈夫?」

「うん! 任せてよ!」

 

流石にやりすぎたか、と反省しながら調は気遣うが、大輪のような笑顔で応える出久。

人を救けようとする彼はこんな日常でも誰かの手を取り、力になるのだろう。今まさにヒーローは活動中だった。事の大きさではない。そうある姿がヒーローなのだ。

それを見ながら横を歩く調は、感謝の言葉を伝える。

 

「出久君、ありがとう」

 

その言葉は今この瞬間だけではない。

身を挺して仲間を、大切な切歌を救けてくれたヒーローに対しての台詞。

その想いを乗せた一言だった。

 

「お節介はヒーローの性分だからね! まぁ、僕はまだ半人前なんだけど・・・」

 

弾ける笑顔の出久は込められた意味に気が付かず、ただ今この時の事だけと捉えていた。それでも彼女はそれを自然に出来る彼を好ましく思う。本人は半人前と言ったが、それがなんだというのだろうか。世の中にはそれが出来ない人間の方が大多数なのだ。

その様子についつい言ってしまった。

 

「・・・ご飯、食べてく?」

「いいの!?」

「うん。まかせて」

「やった! 調ちゃんのご飯食べられるの、嬉しいや!」

 

今日一番の顔で喜ぶ出久は手の中の重さも忘れて両手を上げた。

そんな彼に感謝と共に美味しいご飯を食べさせてあげよう。

いつもは二人の食卓に今日はもう一人。恋敵でありヒーローの彼が加わる事になった。

そんな調の顔は、明るい。

 

 

そして遠くから声が聞こえる。

道の先から二人の意中の彼女がやってくる。

その姿に二人は笑い、やがて歩く影は三つになった。




おまけ

「デク君、早速浮気デスか!」
「違うよ!?」

開口一番泣きそうな声で言う彼女に否定する出久だったが、彼の両手が塞がっている事をいいことに調は腕を絡める。
そしてピースして見せた。

「ぶい」
「調にデク君を盗られたデース!」
「調ちゃん、悪ノリしないで!?」


月読 調はやる時はやる子である。
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