今月は16日に絶唱ステージ12が開催でございますね。
私も一般参加ではありますが、行くつもりであります。
適合者の皆様と逢えるこの日を楽しみに一日一日を過ごすのが最近の楽しみ。
ちなみにこの日は調ちゃんの誕生日。
祝いましょう。この素晴らしき日を。
けたたましく鳴る緊急警報。
その音に出久は飛び起きる。時計を見ると深夜の1時過ぎだった。
「ノイズ!?」
手早くヒーロースーツに着替えながら端末とリンクさせたヘッドセットを耳に装着し、司令部に繋ぐ。
すぐさま繋がったそれから藤尭の声が響く。
『出久君か!』
「デクです! 何があったんですか!」
『市街地C-67地区にてノイズの反応と大規模な火災が発生中。現在対応班が要救助者の救援をしながら、ノイズを食い止めている』
端末に表示されたマップにピンが打たれる。そこを中心に赤い範囲が広がっていた。
『緑谷君、無理をしないでね。すぐに響ちゃん達も合流するわ!』
「了解しました、すぐに現場に向かいます!」
続く友里の声に力強く答え、部屋を後にする出久は廊下を駆け出した。
表示された情報がリアルタイムに更新を続ける。ノイズの反応はそこまで多くは無いが、火災範囲が更に広がる。
『緑谷君、聞こえるか?』
「はい!」
いつもの快活さとはまるっきり違う司令の声に出久の顔も引き締まる。
『この火災だが、火災の動きから何者かの関与が疑われる。もしかしたら爆豪君かもしれない。充分に注意するんだ!』
「わかりました!」
出久の目の前の扉が次々に開かれていく。最後の扉抜けて、ワン・フォー・オールを纏った出久は空に飛び出した。
ビルからビルへ跳び、現場を目指す出久に通信が入る。
『出久君!』
「響さんですか!」
聞こえてきた響の声に耳に手を当てて答える。
『こっちは先に到着したよ! ノイズの対処を始めてる・・・とりゃぁぁ!』
「僕ももう着きます!」
気合の言葉と共に聞こえてくる言葉を聞きながら最後のビルから跳び降り、目の前に蠢くノイズを蹴り飛ばす。
辺りには炎が撒き散らされていた。
幸にしてノイズの数は少ない。目の前の一体ずつを屠り、数を減らしていく。
そんな中、道の先で巨大な炎があがる。
「くそッ!」
つい悪態を吐きながら、脚に力を入れて跳ぶ。真っ正面に飛び込みながら残ったノイズをまとめて消し去る。障害の消えた彼は炎のあがった方向に走った。
あの炎の下には救けを求める人がいる。それならば自分がしなくてはいけないことはなんだ?
それは、救ける事である。
それがヒーローたる自分がやらなくてはならない事だった。
矢継ぎ早に入ってくる報告を頭の中で整理して、行動方針を立てる。
ノイズの反応はもう数少ない。響をはじめとした装者達で余裕を持って対処できるだろう。であればと自分がやるべき事を決めた。
「皆さん、あとのノイズはお任せしても大丈夫ですか! 僕はこのまま要救助者の救援に向かいます!」
その進言にいち早く答えるのは翼だった。
『緑谷。立花と月読を連れて行け。こちらは、四人もいれば事足りる』
「ですが!」
『おいおい。あたし達は百戦錬磨の対ノイズ戦エキスパートだぜ!』
『えぇ。こっちは任せて、ヒーローさん?』
出久の声に口々に了解のインカムが入る。それを聞いた出久は笑みを浮かべた。仲間がいるというのは心強いものだ、と。
『調ちゃんとそっちに向かうね!』
『響さん! あの扉の先、閉じ込められてます!』
『こんな扉、ぶち破るッ!!』
頼もしい仲間達の声が出久を奮起させる。
そこに彼女の声が聞こえた。
『デク君、無理しちゃ駄目デスよ』
「ありがとう、切歌ちゃん!」
『こんな奴ら、さっさと細切れにしてすぐにそっちに行くデース!』
「・・・待ってる。切歌ちゃんも気をつけて!」
通信を切ると出久は端末を見て、一番近い救助者のいるビルに飛び込んだ。
残された人々は絶望していた。周りには火が回り、どこにも出口がないからだ。漂ってくる煙は徐々に部屋を満たしてくる。間も無くこの部屋を覆い尽くすだろう。
逃げようにも逃げる道がない。このまま死ぬのだろうと人々が諦めかけた時、声が聞こえた。
「誰かいますか!」
その声は聞こえてきた。
最初は幻聴かと思う。
「誰かいませんか!」
だが確かに聞こえてくる声に一人の男性が声をあげる。それは藁をも掴もうとする救けを求める声。
「ここだ! ここにいるぞ!」
その叫びをヒーローは聞き逃さない。
「今から壁を破ります。そこから離れてください!」
壁沿いにいた人々がそこを離れる。
次の瞬間。閉じ込めていた分厚い壁が崩壊した。
煙舞う中、立っていたのは身体に稲妻を纏う一人の年若い少年。
自分達を見て、笑顔を見せる彼は言った。
「もう大丈夫です。僕が、来た!」
出久は破った壁の先にいた人々に叫んだ。
「救助に来ました! 怪我をしてる人はいませんか?」
「この人、落ちてきた瓦礫で怪我をして・・・」
「見せてください!」
見ると側頭部に裂傷はあるが深くはない。ポーチから包帯を取り出して手早く巻く。あくまでも応急処置である。更にやって来る男性も脚に怪我をしている。もしかしたら折れているかもしれない。
まずは彼等をここから救け出さなくてはいけなかった。
「今から皆さんを安全な場所に連れて行きます。全員必ず助けますので、安心して下さい!」
仮免試験を思い出す。
ヒーローはまず自分が冷静に、そして救ける人々に不安を与えない様にしなくてはならない。出久はそこにいる人達に力強い笑顔で語りかけた。
「怪我をしている人からになりますが、皆さんを安全な場所に連れて行きます。ですので落ち着いて行動してください」
その声を聞いた人々から安堵の息が漏れる。
「デクから司令部へ。要救助者発見しました。数は十名ほどです。これより救助を始めます」
『了解しました。下に救急班を回してあります』
報告を入れると、彼は重傷を負う二人を担ぐ。不安げに彼を見てくる男性がいる。そんな彼に笑いかける。
「心配しないでください、もう大丈夫ですよ! ・・・では飛びますのでしっかり掴まってください!」
言うと窓ガラスごと壁を蹴破る。下を確認して出久は躊躇無く宙に飛んだ。両サイドから悲鳴がステレオの様に聞こえてくるが、既に空中である。下には展開した救助班がクッションを開いていた。姿勢を制御して、そこに脚から降りる。
担いだ二人を託し、出久は再び空を舞った。
救けを求める人はまだまだ多い。火の勢いは衰えていない。一刻も早く全員を救ける為に急がなくてはならなかった。
最後の救助者を救け、次の現場に向かう出久に通信が入る。
『出久君、こっちは終わったよ。今は響さんと一緒にそっちに向かってる』
「僕も次がもう目の前だ」
『そこが最後みたい。合流するね』
「了解!」
消防隊の働きによって火災は収まりつつある。残ったポイントに向かう彼は走りながら違和感を感じる。
辺りは燃えているはずなのに何故か肌寒い。どこからか冷気が流れてきている様だ。はじめは振り撒かれた水によるものかと思ったが、それにしては寒すぎる。
パキ、と音がした。
「・・・え?」
音のした方向を見ると、自分の脚は薄氷を割っている。
「なんで、こんな所に・・・」
火災現場に氷があるなんて事はあり得ない。高温の炎の支配する空間に存在する筈のないそれは場違いだが、確かにそこにあった。
その時、通信が開かれる。
『出久君!』
インカムから聞こえるのは響の叫び声。いつもと違う彼女の声音の変化に驚く出久。
『おかしいよ! ここ、燃えてるのに凍ってる!』
「響さん!?」
声を返す出久だが、響の言葉の意味が掴めない。いや、理解できなかった。
『響さん、気をつけて!』
『うわわわわッ!』
『氷が、迫って来・・・』
それきり通信が切れた。二人の身に何かが起こっている。それは確かだ。
「響さん! 調ちゃん!」
ワン・フォー・オールを駆使して二人のいる場所に駆け出す出久。足元の氷に脚をとられる。何度か体勢を崩しそうになるが、その度に踏ん張って強引に持ち直す。
ポイントに近づくにつれて周りは炎と氷に包まれていく。走り抜ける出久はその二つの現象に覚えがあった。
それはよく知る『個性』の力。
自分のクラスメイトの『彼』の力。
半ば確信を持った出久は歯を食いしばりながら、そこに辿り着く。
そしてその中央に立つ彼の姿を視認した。
「・・・やっぱり、君なんだね」
辿り着いたのはオフィス街にある小さな公園。植えられた木々は燃えているのに、中央にある噴水は凍りついていた。
アンバランスなその中に『彼』の姿がある。
特徴的な白と赤の髪。
右腕から流れ出る氷と左腕から溢れ出る炎。
そして目を引く、左の眼を覆う火傷の跡。
唯一開かれた右眼をギラつかせながら、こちらを見据える瞳。
「デク・・・」
轟焦凍が、そこにいた。
44.炎と氷
新たなるヒロアカキャラが参戦デス。