今回は幕間回デス。
そろそろヴィランサイドの説明が必要かと思いまして、謎のオリジナルキャラクターの話を投稿させて頂きます。
ゆっくりと目を開く。開けた視界には見知らぬ部屋が広がっている。どこかのマンションの一室に見えるそこには自分だけが立っていた。
「あぁ⁉︎ ンだ、ここはァ!」
オレは『あいつ』をブッ殺す為に街中で暴れていたはずだ。それなのにいつの間にかこんな所にいる。どこかのヒーローの個性にやられたのかもしれない。
「やぁ、爆豪君」
後方からかかる声に振り向くと笑みを浮かべた青年が立っている。歳の頃は同じ位の彼は右手を差し出しながら挨拶をする。
「初めまして。急に喚んでしまって、ごめんね」
爆豪は反射的に攻撃しようとその掌を顔目掛けて振り上げるが、青年は差し出した手をくるりと翻して制止した。
「待った待った! 僕は敵じゃないよ。君の味方だ」
「そう言う奴が一番信用ならねぇんだよ!」
吠える爆豪は攻撃を再開する。
「緑谷 出久君」
だが、その名に掌は青年の顔の寸前で動きを止めた。
「君の標的は、彼だろう?」
「てめぇは何者だ・・・」
いつでも攻撃できるように構えは解かないまま、爆豪は見知らぬ青年に問う。その言葉に薄ら笑いを浮かべた彼は返した。
「僕はね、君と同じ様な”力”を持っているだけさ。そして、この世界が大嫌いでね。君に手伝ってほしいだけだよ」
「・・・オレがてめぇの言いなりになると思ってんなら大間違いだ」
「僕は君に命令したいわけじゃない。ただ君のしたい事をしてくれればいいんだ。僕は僕でやりたい様にやる。それだけさ」
構えた手の隙間から垣間見える青年の目が濁っていく。その変容は爆豪をもってさえも背筋を寒くさせるほど光を失っていた。
「君は緑谷君を倒す。僕は街に混沌をもたらす。僕は君の邪魔はしないと約束する」
「・・・オレが従う義理はねぇ」
「一つだけ言える事は君を喚び出したのは僕だ。僕がいなくなったら、君は存在出来ない」
「あ?」
「別に脅してる訳じゃないよ。僕はただ真実しか言っていない」
真っ黒な瞳は全てを吸い込む闇の様に爆豪を見つめ続ける。
「持ちつ持たれつ、ってやつさ。だから協力しないか?」
「・・・」
底知れない視線は嘲笑うかの様に爆豪に悪魔の問いかけを仕掛けてきた。青年の言葉に嘘はないだろう。根拠は無いが信じられた。何故なら彼は爆豪と同じ眼をしている。
青年は“何か”に絶望した眼をしている。
そこが二人の共通点だった。
それを感じ取った爆豪は構えを解く。
「・・・クソが」
「ありがとう、爆豪 勝己君! やはり持つべき物は同志だね!」
「一緒にするんじゃねぇ!」
「いや君は同志さ! だって・・・僕と同じで復讐がしたいんだから!」
絶望した笑顔の青年は嬉しそうに言った。
ゆっくりと目を開く。開けた視界には見知らぬ部屋が広がっている。どこかのマンションの一室に見えるそこには自分だけが立っていた。
「ここは・・・?」
轟 焦凍が辺りを見渡すと台所に一人の青年が立ち、コンロに向かっていた。
「あぁ、轟君だね! もう少し待ってくれないか、もう茹で終わるから」
見知らぬ青年は大きな鍋で何かを料理していた。いきなりの状況を怪訝に思いながらも青年から眼を離さず、轟はその背に質問する。
「お前、誰だ?」
「僕かい? 僕は君をこの世界に喚んだ者さ」
背を向けたまま菜箸で鍋をかき混ぜる青年はありえない事を当たり前の様に答える。丁度その時、キッチンタイマーが音を鳴らす。青年は鍋を流しに運び、茹でていた蕎麦をザルに流し込む。
そして蕎麦を冷水で締めながら会話を続けた。
「いきなり君を喚んでしまったからね。謝罪代わりと言ってはなんだけど、一緒に夕食でもどうかな? 君の好きなお蕎麦を用意させてもらったよ」
初めて会うこの青年は何故だか自分の好物を知っていた。轟の中で警戒レベルが上がっていく。
「何故お前がそれを知ってる」
「知ってるさ! そして、君の嫌いなものもね」
「答えろ」
蕎麦を締める青年の首を後ろから絞める。おかしな動きをしたら瞬時に凍り殺すつもりだ。
それでも青年は手を止めない。
「痛た・・・。まぁ待ちなよ。僕は君の敵じゃないよ」
「信じると思ってるのか?」
「信じてくれるさ。だって君は・・・」
ぐるん、と首だけ振り向いた青年は暗い瞳で見つめ返す。
自分と同じ憎しみを知る瞳を向けられた轟は感じ取るものがあり、ゆっくりと手を離す。離すが、警戒は解かない。
「・・・」
「さぁ出来たよ。ほら、座って座って!」
青年は嬉しそうに席に促してくる。指されたテーブルには四つの席。そのうち二つが埋まっていた。
轟は空いた一席に腰を下ろす。隣には片腕の取れたロボットが置かれている。そして対面には空いた席ともう一方にボロボロになったぬいぐるみが置かれていた。
テキパキと動く青年はテーブルに蕎麦つゆや薬味、天ぷらを並べていく。それはぬいぐるみとロボットの前にもだ。
「みちる、すぐる、お待たせ。さぁ、食べようか」
エプロンを片付け席に着く青年は手を合わせ、食前の挨拶をする。目の前に奇行に眼を細めながらも轟も手を合わせる。
思えば久しぶりに蕎麦を食べる。ヴィランに堕ちてから食べるのは初めてだ。
「どうかな? 乾麺じゃなくて生蕎麦を茹でたんだけど、口に合うかい」
「・・・まぁまぁだ」
「良かった! ほらみちる、かき揚げも美味しいよ?」
答えながら彼は隣に座るぬいぐるみに話しかける。
「すぐるも沢山食べるんだよ!」
ロボットにも声をかけながら、自身も蕎麦を啜る青年。それを横目に見ながら轟は目の前の蕎麦を食べ進めた。
蕎麦はなかなかに美味かった。
「ご馳走様でした」
「ご馳走様」
手を合わせ、食後の挨拶をする二人。彼らの隣の席には手付かずの料理が残っていた。
その異常な空間の中で轟は本題を切りだした。
「それで、お前は何がしたいんだ? まさか飯を食べて『はいさよなら』とは言わないよな」
「もちろんさ」
空いた皿を片付けながら青年は人名を挙げる。
「緑谷 出久君。君の目的は彼だろう?」
「お前・・・」
「そんな怖い顔をしないでほしいな。君がヒーローを憎んでいるのは知ってるよ。僕はその手助けがしたいだけさ」
流しに洗い物を置きながら喋る青年は警戒などしないかの様に声の主に話しかける。
「僕は僕の目的を果たす。君は君の目的を果たす。その中で重なるところだけ協力してほしいだけだよ」
「俺がそれを承知すると?」
「するさ」
口元を歪めた笑顔で青年は嗤いだす。
「君は同志だもの」
自分と同じくらい世界を憎む笑顔を轟は見た。
「てめぇ、名前は?」
爆豪 勝己は問う。
「お前、名前は?」
轟 焦凍は問う。
問われた青年は答えを返す。
「「夢原 探。この世界で唯一、”個性”を持つ者さ」」
夢原 探
個性”並行現界(パラレルワールド)”
接触した人の記憶を読み取り、それを現実世界に実現化出来る。
『物』や『人』を選ばないが、対象の情報量によって現界出来る数には限りがある。
単純な物なら多数出せるが、人などは一、二人が精一杯。
現界を『一つ』に限れば本物クラスの存在として固定できる。
現界させたものは彼の意志の力によって存在を維持する為、夢原の限界を越えると消滅する。
あまりに情報量の多い存在を大量に現界させると制御しきれず暴走する。同時に自身の許容量を超える存在は制御できない。
喚びだせるのはあくまで並行世界の存在だけである。
そして、この世界に存在する(した)者は喚びだせない。
なお、夢原の声は宮野真守さんをイメージしています。
彼の個性については矛盾がない様に考えて書いてきましたが・・・。
うっかりミスの多い私の事です、やらかしている可能性がございます。
ご指摘、ご質問などありましたらご感想欄にて受け付けております。用意してある事についてはお答え出来ますし、そうでない場合は何とか
ロジックを組み上げていくつもりです。