僕のヒーローシンフォギア   作:露海ろみ

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五十八話目となります。

お疲れ様です。
出久のシンフォギアが起動しました。


投稿が遅れてしまう中、頂いたコメントを嬉しく思います。
遅筆な私ですが、これからも書き進めて参ります。

ご感想等、御気軽にお書きくださいませ。


58.それが僕のシンフォギア

目映い光に包まれる出久。その中で彼の身体は変化を遂げる。

深緑のインナースーツに包まれた全身。

その腕と脚にはその身を護る様な白のガントレットとグリーブ。右手のガントレットが左手より少しだけ大きい。七つのラインが刻まれたそこには今、濃緑のラインだけが光っている。

身体の各所には白と緑を基調としたアーマーパーツが創られる。

そしてヘッドセットが構築される瞬間表示される文字があった。

 

【ONE FOR ALL GEAR】

【SYSTEM ALL GREEN】

【NORMAL OPERATION】

 

その文字は瞬時に消え去りヘッドセットは完成する。

その視界を遮るバイザーは無く、透き通る彼の瞳はしかと見開かれた。

 

「これが僕の、シンフォギアだ!」

 

解かれた呪縛。

現れたヒーローは五体に流れるエネルギーを感じる。初めて身に纏ったにも関わらず出久はそれがなんであるのか、何が出来るのかを理解出来た。

今なら、どんな無理難題も蹴っ飛ばせる。

そう確信出来る何かが『シンフォギア』にはあった。

 

 

一方のショートは出久の変貌に驚きを隠せずにいた。てっきりこの間の様な漆黒に包まれた姿になるとばかり思っていたのだが、事実は違う。

あの自分と同じ憎悪による力ではない。

輝かんばかりの静なる意志の力。

 

「デク・・・お前は・・・」

 

出久は答えない。その顔に微笑みを浮かべたままだ。

そしてその笑みを消し、戦う漢の顔になる。

ショートはその顔をよく知っている。ヴィランである自分を止めに来る顔だ。

自分と対等に戦う、あいつの顔だ。

思わず身震いする。自然と笑う己がいた。

 

出久と轟の戦いは本当の意味で始まった。

 

 

『これが僕の、シンフォギアだ!』

 

耳に届く迷いを振り切った彼の声。それを聞いた切歌は彼のいる方向に顔を向けた。

 

「デク君、やったデスね!」

 

まるで自分の事の様に嬉しさが溢れてくる。手にするデスサイズを握る手に力が入った。

 

「ノイズがなんぼのもんデース!」

 

彼は今、戦っている。それならば自分もやるべき事をしよう。そして彼の側に行くと決意し、切歌は大鎌を構えた。

胸の歌が彼女の心を熱くする。今まで歌ってきたものと少し違う歌詞だ。シンフォギアから流れる歌は装者の心象風景を形にしたものらしい。

流れるのは想いの歌。大切な人を想う愛の歌だ。

 

「負けてられないんデスよ、わたし達も!」

「うん。行こう、切ちゃん!」

 

手の中のヨーヨーをノイズに放ちながら、調は跳び上がる。頭部から伸びる兎耳ユニットが開かれ、無数の丸鋸を降らせる。

 

【α式 百輪廻】

 

そんな調の歌にも変化が生じていた。

彼女が歌うのは友を想う友情の歌。共に並び立つ者を支え、共に並び立つ者に支えられる歌。

友を想う歌と恋人を想う歌はユニゾンとなり、調と切歌のフォニックゲインが高まっていった。

 

「「切り砕いてあげる(デス)!」」

 

ザババの刃は進化する。

まるでもう一人の力が流れ込んできているかの様に。

 

 

「ッ・・・らぁ!」

「ぐッ・・・」

 

姿が変わった出久の右拳が氷壁を容易く砕き、その先のクラスメイトへ飛び込んでいく。ショートも氷の密度を上げているのだが、まるで紙切れの如く意味を成していなかった。

間髪入れない上段の左蹴りがショートの右頬を歪ませる。

 

「轟君!」

 

その一撃を堪えたショートの左手が向けられる。超高炎レーザーが溢れ出て、出久の顔を焼こうとする。それを首を傾げる形で回避する出久。耳の端を僅かに焼かれた。

出久は前蹴りを使い、距離をとる。くるくると宙で回りながら後方に着地。

ショートはまだその場にいた。しかし入った攻撃が効いているのかフラついている。それでもこちらを睨む目からは力が失われる事はない。

 

こうして直接戦うのは体育祭以来だ。あの時は自分の力に振り回されて満足に戦うことが出来なかった。

あの時は負けてしまった。それでも伝えたい事を伝えられたと思っていた。

でも今、君がまた道を間違えているのならば僕のしたい事はたった一つだけ。

あの日の様に、君を救けるよ。

でも今度は負けない。

君を救けて、勝つ。

その為のシンフォギアだから。

 

出久はワン・フォー・オールの出力を上げた。

今の許容上限を越えていけ。

—更に、向こうへ

 

全身常時身体許容上限『15%』

それが今の僕に出来る『全力』

—Plus Ultra

 

限界とは、越えるためにある。

 

 

「『全力』でかかって来い!!」

 

 

そして、あの日と同じ言葉を彼に送ろう。




体育祭編の二人の戦いを何度も読み返しながら書いておりました。
この話における『二人の決着点』とは何処なのか。
未だに少しだけ迷っております。

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