久しぶりに自転車で走ったら自身の体力の衰えを感じた私であります。
やはり継続的な鍛錬は必要ですね。
君は今、僕と戦っている。
ヴィランとヒーローとして。
拳を振るう度に思い出す。
君との思い出を。
君はクールだけれど、その内に熱い想いを持っている人だ。
そして共に同じ方向を見て歩く友達だったはずだ。
そしてお父さんの事をただ憎んでいた君はいつしか認めようとしていた。
でも、目の前の君はその人を殺したという。
僕は君じゃないから、君がどうしてそうしたのかはわからない。
でもそんなわからない僕でも出来る事はある。
これ以上修羅道に堕ちないように救ける事は出来るはずだ。
ギアの力を手にした出久はポテンシャルの上がったワン・フォー・オールでショートを追い詰めていく。
だがそれでもやられてくれる相手では無い。
少しずつだがギアを纏いギアの上がった自分に対して、対応し始めてきている。
雄叫びと共に振られる両碗から撃ち出される氷炎。螺旋を形作る放射を受け止めるが踏ん張った脚が押され、地面に痕を付けていく。
その出来た痕が二人の距離であるかのようだった。
決して交わろうとしない彼の深層は出久を引き離すが如く押してくる。
それを受け止め続けた。
とても重く、とても悲しく、とても痛い。
それでもヒーローは一歩、また一歩と脚を進める。
氷を砕き続け炎をいなし続けていく。
それだけが彼に出来るただ一つの手段。
硬く握り締めて振るわれる両拳は徐々にその速度を増していった。
—許容上限を更に15%から20%へ。
シンフォギアを纏って許された可能性を越えていく。
ギシギシと身体が悲鳴をあげている。
口の中には鉄の味が広がる。
目の前が赤く染まっていく。
—20%から更に30%へ。
だから何だ?
それがどうした!!
僕より、ずっと辛い思いをして戦う彼を今、誰が助けられる?
・・・僕だ。
ヒーローとは得てしてお節介な者。
今ここにいるヒーローは・・・僕だ!
出久を包むギアが呼応し緑燐光が増していく。
その光は二つの拳に。
願い振るう、右と左の拳に集まっていく。
迫る氷に一撃を。迫る炎に一撃を。
また一歩、前へ進む。
絶え間なく襲いかかる氷炎を左手で受け止める。
『やっぱり重い・・・』
空いた右手を空高く突き出す。
『それでも!』
彼を救うのがヒーローたる、僕の役割だ。
全ての力を右腕に集める。
「ワン・フォー・オール・・・」
眩いばかりの緑の光が天を貫いた。
「ギア!」
出久と焦凍の瞳が合わさる。
真っ直ぐな互いの『正義』がぶつかり合う刹那。
「スマァァァァッシュ!!」
【ONE FOR ALL GEAR SMASH !!】
放たれる決着の拳は個性を貫き、ショートの左顎を正確に打ち抜いた。
地面に倒れるのは二人の青年。
一人は轟 焦凍。
顎を打ち抜かれ脳を揺らされた彼は身体の制御が効かず、倒れている。
もう一人は緑谷 出久。
身体の限界を越えたギアは強制解除され、全身の痛みから、倒れ伏す。
「轟君、大丈夫?」
全身に走る痛みに顔を歪めながらも、なんとか首だけ動かしてすぐ側に倒れるクラスメイトに声をかける。目は毛細血管が破れ充血。口からは血を垂らしながらも彼は痛む右腕を友達に伸ばした。
そして彼の手を確かに握る。
「・・・相変わらず無茶ばっかしやがる」
息を切らせながらなんとか絞り出された声。握った手から伝わる力。それを感じて出久は微笑んだ。
「ごめん。君は強くて、加減が出来なかった」
「だからなんで勝った方が謝ってんだよ」
「・・・ごめん」
先程まで炎を操っていたその左手は温かい。感じる体温が堪らなく嬉しかった。
「緑谷、相変わらず無茶苦茶だな」
「・・・そうかな?」
「そうだろ」
繋がった手に力が込められる。
空を見上げたまま轟は呟いた。
「なぁ、俺は間違っていたのか?」
「・・・」
「俺はあいつが許せなかった。『No.1にならなくてはならない』というあいつのエゴが受け入れられなかった。それで母さんを傷つけるあいつが許せなかった。だから、殺した。それを強いたヒーローという存在を憎んだ。・・・これは間違いだったのか?」
「・・・それは、僕にもわからない。でも」
ゆっくりと答えた出久は繋がる手に力を込める。
「僕がこうした様に、君の世界の僕も同じ事をしてたんだと思う。『大切な仲間を救けたい』 ただこれだけで君の前に立ってたんだと思うんだ。君は確かに許されない事をした。それでも『僕』は君の味方になりたかったんだと思うよ。だから『僕』を信じてほしい」
「・・・そうか」
「うん。『僕』ならそうするはずだ」
その一言で轟が笑い出した。一頻り笑うとヴィランは、いや、出久の『クラスメイト』は呟く。
「甘ちゃんだな、お前は」
「いいよ。それで君を救えるなら」
「そうか・・・」
その言葉を合図に轟の身体が光の粒子に変換されていく。出久の握る手がどんどんと実体を失い、存在が消えていくのを感じる。
これまでとは違う。
この『轟 焦凍』の完全な消滅が何故か理解できた。
「轟君⁉︎」
「緑谷・・・」
顔だけをこちらに向ける焦凍。
出久のよく知る顔がそこにはあった。
「悪かった。『またな』」
その言葉を最後に別世界の轟 焦凍は消え去った。
最後に、出久の手に確かな体温を残して。
「デク君、大丈夫デスか!」
「出久君!」
切歌と調が現着すると、そこにいたのは出久一人だった。
全身傷だらけで倒れる彼は伸ばした右拳を握りしめたまま、声を上げて泣いている。
まるでその手から大切なものを離さないかの様に。
その右手はしっかりと握り込まれていた。
これにてvs轟君戦は終了デス。
暗い世の中ですが、この話が読んでくださった方へ少しでも前を向く力になります様、祈っております。
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