僕のヒーローシンフォギア   作:露海ろみ

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六十一話目となります。

お疲れ様でございます。
今回はタイトルの通りクリスと翼のデュエット曲『BAYONET CHARGE』を流しながら読んで頂くと雰囲気が出ると思われます。
実は私も書きながらエンドレスでリピートしておりました。
やはりシンフォギア楽曲を聴きながらだとテンションがあがりますね。


61.銃・剣・突・撃

「しゃらくせぇ!」

 

広げられた掌から噴き出る爆炎が飛びかかる銃弾を撃ち落とす。防がれた事に小さく舌打ちしたクリスは左手の武装を換装、ガトリングを呼び出した。

甲高い音を立てながら高速回転する銃身から、毎分三千発を越えるレートで新たな弾がばら撒かれる。

リボルバーのレートが防がれるなら、更に高レートを叩き込めばいい。

しかし爆豪は換装の僅かな隙を見逃さない。掌を下に向け、爆速ターボを全開に宙に飛び上がった。彼女の遥か上空からA・P・ショット・オートカノンを浴びせかかる。

 

「ッ!」

 

左手をガトリングにしたのは失敗だった。クリスのイチイバルは数あるシンフォギアの中でも機動性に欠ける。

左手の重い武装を投げ捨て、牽制射を放ちながら転がる様に範囲外へ抜け出した。牽制の銃弾とはいえ計算して狙ったものだったのだが、当たらない。確かに見切って避けられたのを感じる。

ここまでの戦闘も不用意に近づいてこず、その挙動もフェイントを交えながらの高速機動。

 

『こいつ、前と別モンだ!』

 

受け身を取りながら『ただのイキッた餓鬼』だと侮りがあったと自省する。ビルの影に身を隠したクリスは銃を一振りし、リロードするとこちらに狙いをつけているであろう爆豪を睨む。

 

「女ァ! この間の威勢はどうした!」

「うっせぇ!」

 

このまま上を取られ続けるのは明らかな不利であった。せめて相手と同程度の高度を維持しなくては一方的にやられてしまう。

意を決したクリスは駆け出すとビルの側面を蹴り上げて、屋上を目指した。

 

「そう来るのはわかってんだよ!」

 

爆豪の声と共に落ちて来る物が一つ。

その形状から瞬間で理解した。

 

『手榴弾だと⁉︎』

 

慌てずにクリスは直撃は喰らうまいと蹴り飛ばす。シンフォギアの脚力なら射程外へ弾き飛ばすのは容易だ。

だが手榴弾は爆発しなかった。

 

【閃光弾(スタングレネード)】

 

代わりに眩しい光が辺りを包む。咄嗟に目を庇い自ら視界を塞いでしまうクリス。

無防備なその姿を構えた指越しに射抜く目があった。

 

「死ィねェェェ!!」

 

【徹甲弾 狙撃(A・P・ショット・スナイプ)‼︎】

 

爆豪の、細く細く絞られた指から放たれた一射が体勢を崩し落ちるクリスに直撃する。

 

 

戦場に到着した防人が目にしたのは後輩が撃ち抜かれる姿だった。口から彼女の名が叫び出される。最大の速度でクリスの元へ。

力を失うその身体を受け止めると天羽々斬を振り、上空の爆豪へ斬撃を飛ばす。

その隙に彼女と共に地上へ降りるとその身を揺する。

 

「しっかりしろ、雪音!」

「・・・先・・・輩?」

 

閉じられた目が薄らと開かれる。苦痛からかその端正な顔が弱々しく笑みを作った。

 

「すまない、遅くなった!」

「へへ、ホント遅いぜ・・・」

 

その軽口を聞き翼は眉を下げた。あれだけの攻撃を喰らい平気なはずがない。それでも笑顔で返してくるクリスへ握る手の力を込めると、翼は倒すべき相手のいる空を見上げる。

 

「まだ行けるか?」

「誰に聞いてんだよ。当たり前だろ!」

 

弱々しいが翼の腕を離れ、確かに立ち上がったクリスは両の手にアームドギアを現出させる。

その手にはマシンピストル。削り穿つその決意を露わにした。

 

「あんたと組んで負けるはずがねぇ、そうだろ?『先輩』」

「ふっ・・・。全く持って、頼もしい奴だ」

 

決意を受け止めて天羽々斬を握り直す翼は彼女の前に立つ。

これ程までに前衛と後衛を分かりやすく示した装者はいただろうか。

 

「無理はするなよ」

「誰に言ってんだ?」

 

二人揃えば百人力。

それが互いに理解った。

頼もしい盟友を得た二人は太々しい顔で叫ぶ。

その顔は晴々とした喜びに満ちていた。

 

「「私(あたし)たちを・・・」」

「嘗めるでない!」

「なめんじゃねぇ!」

 

揃う声と共に二人の装者は我先にと獲物に向かい喰らいついていく。

 

 

一方の爆豪は乱入者の一撃に面食らいながらも宙を舞い、自身にとって有利なポジションを取るために飛んでいた。

そんな彼に迫るものがあった。

小型ミサイル群と数多の銃弾。

クリスから放たれたそれは彼に追いつけ追い越せと四方八方から迫り来る。

 

「クソがぁ!!」

 

機動を複雑に飛ぶ爆豪は直撃弾を喰らわないように避け続ける。

その行く先が誘い込まれているとは知らなかった。

 

「はあぁぁぁ!」

 

爆煙の抜けた先。そこに居たのは剣を構えた蒼き戦姫。目にも留まらぬ斬撃が彼を迎える。

僅かに歪む顔。両手のブーストを使い唯一空いている上へと逃げ出す。

 

「甘ぇぜ、爆豪ォォ!」

 

クリスの右手から放たれる連弾は爆豪の芯を捉えて放たれる。

それでもスピードを生かし逃げ続ける爆豪には命中しない。一度戦った相手から無様に喰らうわけがなかった。

 

「そこだ!」

 

だが。

前と違うのは『敵は一人ではない』という事。

下から上へと宙を跳ぶ翼の手は鞘に包まれた天羽々斬の柄へと添えられている。抜き放つために構えた一撃は身動きの取れない爆豪を切り裂こうと、今引き抜かれた。

 

「叩き斬る!」

 

【蒼ノ一閃 真打】

 

神速の抜刀術が彼に肉薄する。首と胴を引き離さんと迫る刃を目にした爆豪は目を見開いた。心の内で血を吐くように叫び出す。

 

『ふざけんな! 手前ぇら如きに苦戦するオレ様じゃねぇんだ! こんなもん『・・・・』なら避けてみせる!!』

 

強引に手を振りその爆破の勢いで自身の機動を変える。多少無理をしてでも。

 

だとしても。

 

それすらも読んでいた彼女がいた。

 

「あぁ・・・そう来ると思ってたぜ」

 

ビル上から独りごちるクリスの手にはスナイパーライフルタイプのアームドギアが握られていた。

 

「先輩があそこまで追い込んでくれたんだ。そうするしか・・・ねぇよなぁ!」

 

彼女の目に映るのは空を舞う爆豪の姿。その右目は暴れ舞う爆豪を確かに捉えている。

荒ぶる照準が定まり、狙うべき所へと。

 

【RED HOT BLAZE】

 

「ぶちのめす!」

 

視界に映る照準は爆豪をロックオン。

狙いは違えない。

彼を『再起不能』にする為に狙い澄ましたその弾丸は両腕の籠手を貫き砕き、彼の胸に吸い込まれていった。

 

 

クリスと翼の攻撃は殺す為に放たれなかった。

あくまでも後輩の友を救ける為にと。

翼の刃は峰に返され、クリスの銃弾は潰されていた。

しかしその二撃は確かに彼の戦闘継続力を削り取るため働く。

受けた攻撃により爆豪は身体の自由を奪われた。腕と胸への衝撃によりその身の行動を大幅に制限され、唯一動くのは脚くらいだったがそれだけ動いてもどうにもならない。

 

『畜生・・・畜生!!』

 

叫びは喉から出ない。

彼の身体は地上に激突し、土煙を撒き散らした。

 

 

二人の前には貫かれた腕を何とか動かして足掻こうとする爆豪がいた。

そこまでされてもまだ戦い足りないのだろうか。見下ろす四つの瞳に敵意を消さずに睨み返す。

そんな彼を見たクリスは呆れ顔で告げる。

 

「まだやんのか、爆豪。やめとけ。お前じゃあたし達には勝てねぇよ」

 

歯を砕かんとばかりに噛み締める彼はクリスの言葉に反論しようとする。しかしその口が開く前に翼の言葉が先だった。

 

「爆豪とやら」

 

顔を向けるとそこにいた防人は膝をつく。出来る限りこの思いが彼へ伝わる様にと。

 

「確かに貴様は強い。だが今のままでは間違っている事にいい加減、気がついているか?」

「んだと⁉︎」

「貴様の事情は聞いている。・・・しかし貴様自身も理解しているのではないか?」

「何を解れってんだ、ふざけんな!」

「巫山戯てなどいない」

 

あくまで冷静に話す翼。彼の目を見つめると再び問い質す。

 

「お前はどうしたい?」

「オレは・・・」

 

彼の言葉はそこから続かなかった。

それを聞いた翼はゆっくりと頷く。

 

「話を聞いて何処となく思っていた。貴様も、迷っていたのだな」

 

探られたくない心中を掻き乱された目が見開かれる。

 

「師を殺されたというその怒りを何処にぶつければいいか解らず、その激情をどう処理していいか解らず。緑谷の事を憎む事によって均衡を保っていたのではないか?」

「違う、違う! オレはそんな事思っていねぇ! あいつがいなけりゃオールマイトは死ななかった! デクさえいなけりゃ・・・」

「だからそれをデクにぶつけんのか」

 

翼の隣に座ったクリスは行儀悪く胡座をかくと少しだけ目を細める。

 

「爆豪」

 

一度言葉が区切られる。口元が上がり、楽しそうな顔になった。

 

「お前強いよ。あたしをあそこまで追い込むなんてな。だからこそもうちょっと素直になれよ」

「ハァ⁉︎」

「お前がただデクに勝ちたいってだけなら、あたしは手を出さねぇ。寧ろ御膳立てしてやる。でも・・・」

 

その手にアームドギアが握られる。

照準は彼の額にしっかりつけられた。

 

「その逆恨みの復讐をしたいってんなら・・・次は容赦しねぇぞ」

「私も峰を返さず相手をしよう」

「なぁ爆豪、お前はどうしたい?」

「オレは・・・オレはァ!」

 

動かぬ爆豪の身体が光に包まれていく。

 

「己が矜恃を貫きたいのなら良し。貴様も武士なら歪んだ思いではなく、その本心に忠実であれ」

「じゃあな、爆豪。今度来るときにでも答えを聞かせてくれ」

 

そして消え去る寸前に二人は確かに目撃した。

彼の目が光を取り戻すのを。

彼の瞳が、何かを決意するのを。

爆豪 勝己という光は空へ消えていった。

 

 

「時に雪音」

「なんすか?」

「お前、いつの間にか奴のことを名で呼んでいたな。・・・惚れたのか?」

「はい?」

 

頓珍漢な先輩の言に困惑したクリス。

頬を掻きながら言い返す。

 

「そんなわけねぇよ。ただ・・・」

 

「戦う相手として認めただけさ」




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