僕のヒーローシンフォギア   作:露海ろみ

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六十三話目となります。

XDの方は、なのはコラボが昨日より始まりましたね。
私の薄い運で上手い事引けるか不安になりながらもこれから進めるのが楽しみです。

さて。
今回は出久のギアとそれに対する切歌のお話です。
お楽しみいただければ幸いです。


63.今はこれが精一杯

勢揃う装者達と相対するのは一人の少年、緑谷 出久。

やや緊張した面持ちの彼は対峙する彼女らの前で構えていた。と言っても文字通りの意味ではなく心持ちの話だ。

 

『よし。では始めてくれ』

 

スピーカーから流れるのは弦十郎の声。深呼吸した出久は息を吐き終えると目を閉じ、開き言った。その身を変化させる一言を。

 

「Symbolize One for All tron...」

 

聖詠を唱える出久。そしてその身はギアに包まれる。

装者達から漏れるのは驚嘆の呼吸。まさか自分たち以外にシンフォギアを纏う者が現れるとは思っては居なかったのだ。

 

「・・・立花のガングニールに似ているな」

 

事実彼のシンフォギアは黄と深緑の色こそ違えども響のギアにそっくりだった。しかし唯一違うところが一つ。

 

「でも、私のと右腕のデザインが違うんですよね」

 

響の言う通り、彼の右手のガントレットは彼女のそれとは違っていた。白をメインにしたそこには七本のライン。そこには一本だけが輝いている。彼の髪色とそっくりな緑色の光だった。

 

「七本か」

「何か意味がありそうね」

 

大人組の考察をさておき。

四人の装者に囲まれた出久はその身をしげしげと眺められている。珍しい男の装者とあっては彼女達の興味も青天井だ。

 

「やっぱりよく似てるね!」

「このバカに似るなんて、不幸な奴だな」

「クリスちゃん⁉︎」

「・・・」

 

先輩二人の漫才にいつもなら入っていくはずの切歌だったが、珍しく黙る切歌。

そんな彼女に調は疑問を覚える。

 

「どうしたの?」

「・・・なんでもないデス」

 

ぷいっ、と横を向く切歌はそっぽを向きながら答えた。

彼女の変化を露知らず、女の子の視線に晒された出久は真っ赤な顔になっていた。彼の視線は何処を見ていいやらと宙に逃げていく。

照れに照れる出久。

彼を見つめる切歌は少しだけ頬を膨らませていた。そんな切歌のきもちを知らぬスピーカーの主が割り込んでいく。

 

『その姿になっていつもと違う所はあるか?』

 

S.O.N.G.司令として弦十郎の声。それを浴びた出久は顔を上げ、素直に答える。

 

「いつも使うよりも深くワン・フォー・オールを使えている気がします。今も15%位までは上げられていると思いますが・・・」

 

手を握り、そして開きながら答えた彼は身体に宿る力を確認している。実際モニタリングされている彼のエネルギー量はギアを纏った瞬間、跳ね上がるが如く伸びていた。

 

『その他に何か変化はありませんか? 例えば身体に負荷がかかっているとか、または気分の昂揚などの精神的なものでも構いません!』

 

分析顧問のエルフナインは若干興奮した様子で幾つもの画面を確認してデータを纏めていく。

彼女が父と、キャロルから引き継いだ「世界を識る」という命題。もたらされた新たな知識に彼女自身も驚きを隠せていなかった。

怒涛の様な質問に一つ一つ丁寧に答える出久は言われるがままに様々なポーズをとらされていくのであった。

 

 

諸々の検査のあと軽い組み手を終わらせた汗を流した出久はタオルを首にかけながら自室に向かっていた。

まさか組み手の相手が弦十郎だとは思ってもいなかった出久は動かすと痛む身体を摩る。

 

「やっぱり風鳴さんには敵わないや」

 

弦十郎との二度目の対峙。

以前翼から自分達がシンフォギアを纏っても勝てなかったと聞かされてはいたが、今なら少しは出来るのではないかと思っていた自分が甘かった事を思い知った出久。

導く様な彼の戦い方についワン・フォー・オールギアの出力を上げて挑んだのだが手も脚も出ず、終いにはギアを纏ったマリアと翼に止められるといった結末も迎えて、挙句に二人仲良く正座させられて説教を頂いてしまった。

 

『お前は無茶をし過ぎだ。もっと自分を大切にしろと私は言ったな?』

『何度も言わせないで下さいね、風鳴司令』

 

青筋を立てた大人組のあまりの迫力に先の戦いを越える恐怖を感じた出久はその後に続いた言葉に素直に頷くしかなかった。

 

『三日間、一切の鍛錬を禁ずる。少し休め』

『あと司令にはこの後お話があります』

 

そう言って抵抗する司令を引きずる様に部屋を出て行く二人を見送った。その光景を思い出し身震いする。

 

「ほんとに気をつけよう」

 

真顔で首を振り、ふと気が付けば既にそこは自室の近く。

部屋の前によく知った誰かがいる。

出久はその姿に暗くなりかけていた気持ちが晴れていくのを感じた。何故ならそこにいたのは愛しの彼女だからだ。

だが、どこか様子のおかしい彼女に声をかける。

 

「・・・どうしたの?」

 

声をかけられた彼女が顔をあげる。だが彼とは対照的に影のある表情の彼女は声の主を見つめ返した。

そこにあったのは不安と悲しみの視線。

 

「その・・・」

 

口を開く彼女。だが切歌はそれ以上何も口を開こうとしない。

言うべき事を飲み込む様な姿に出久も首を傾げた。それでも次の言葉を出さない切歌は彼を見つめたまま黙り込む。

色々と鈍い出久も流石に彼女の様子から違和感を感じ取った。

言いたい事を言えない彼女。そんな切歌に出久は部屋に入る事を促した。

 

 

「そこ、座って」

「ありがとデス・・・」

 

促されてベッドに腰かけた切歌は沈んだ表情のまま彼の言葉に従う。

しっかりとメイキングされたベッドは彼女の体重を受け止めてギシ、と音を立てる。対した出久は備え付けの椅子に腰掛けていた。

互いに何も言わない時間が過ぎる。

出久はなんとか口を開こうとしたが、切歌の表情からなんと言っていいやらと考えを巡らせる。そんな彼の思いを知ってか知らずか、先に口を開いたのは沈んだ顔の切歌だった。

 

「デク君は・・・やっぱり響さんみたいな人が好きデスか?」

 

突然の彼女からの質問に頭が真っ白になる。

いきなり過ぎたのだ。そして同時に何故?と疑問が芽生える。

そんな出久の迷いを知らない彼女は困惑する彼の心情を知らずにその心を続けた。

 

「なんで響さんなんデスか? 確かに響さんはスゴい人デス。でもあんな人を引き合いに出されたら勝てないデスよ・・・」

 

もよや泣きそうな位に顔を歪ませた切歌は正面に座る彼に問いかける。

 

「わたしは格好良くは無いデス。響さんみたいに自分の思いを真っ直ぐには貫けないデス」

 

彼女の目尻に涙が滲む。溢れるそれは重力に従い、床に流れていった。

 

「わたしは・・・わたしはただ・・・」

 

そう顔を俯かせて叫ぶ切歌。

彼女の心の中はぐしゃぐしゃになっていた。

 

『もやもやする』

 

言葉を選ぶとしたらその一言に尽きる。

自分は彼のギアが響のギアに似ているのがなんというか気に入らないのだ。

彼は自分の大切な人なのに!

それなのに!

彼のシンフォギアは響と同じ形をしている。

それが許せない!

そこに意味はないのかもしれない。それでもそれが許容できないのは・・・。

 

「デク君が、わたし以外の人を意識するのが嫌デス」

 

あぁ、きっとこれだ。

これは自分のエゴの塊だろう。

自意識過剰の考えだ。

でも。それでも。

彼はわたしの好きな人だから。

この想いはちゃんと伝えたい。

伝えないといけないとおもう。

 

「わたし以外の人を見ないで欲しい、デス」

 

愚かしい程に我儘な一言だった。

無論。自分自身もわかっている。

この一言が彼を縛ってしまうかもしれない。

だからといって言わない理由にはならなかった。

 

それくらいに暁 切歌という少女は緑谷 出久を愛していた。

 

そんな純粋で真っ直ぐで何処か独占欲の強い告白を受けた彼はいつでも明るい彼女が表した新しい姿に驚く。そしてそれと同じ位にその姿に嬉しさも覚えた。

ゆっくりと彼女の手を握り、握ったはいいが言葉を選ぶ様に出久は口を開く。

 

「あのね」

 

震える唇。

その口から彼の言葉がゆっくりと流れていく。自分の想いを彼女に伝える為に。

 

「僕が初めて会ったシンフォギア装者は響さんとクリス先輩だったんだ」

 

「よくわからない所で出会った人達。クリスさんは銃で戦ってたけど、響さんは僕みたいにその拳や脚でノイズを倒していた」

 

「それは僕の世界のヒーロー達みたいに、その身ひとつで戦っていた」

 

「それが堪らなく格好良い、って思ったんだ。僕の目指すヒーローの姿に重なったからだと思う」

 

「でも・・・『格好良い』のと『大好き』なのは違うよ」

 

「僕が好きになったのは切歌ちゃん。君なんだ」

 

手を握る力を込めて彼女のヒーローは告げる。

 

「こんな半端な僕を好きだと言ってくれた君が僕の大切な人だ。自分の想いを伝えてくれた時の事を僕は絶対に忘れない。僕に勇気をくれた君を忘れてないよ」

 

「僕は、君が好きだ」

 

想いを言葉という形で口にする。

想いを繋がる手から伝えていく。

 

「でも僕には君程の勇気は無いんだ。だから・・・」

 

そう言って出久は切歌を引き寄せると今伝えられる全力の愛情を込めて、頬にキスをした。

ゆっくりと触れた唇を離す。

本当は切歌の『そこ』に想いを伝えたかった。

でも、今はこれが精一杯。

キスをされた場所に手を置き、弾ける様に背筋を伸ばした切歌は泣きそうな顔を瞬時に照れた顔に変えて彼を見つめる。

出久も頬を染めて切歌を見返していた。

 

やがて二人は笑い出す。

握り合う手をしっかりと繋ぎ直しながら。




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