僕のヒーローシンフォギア   作:露海ろみ

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六十八話目となります。

お疲れ様です。
少し急ぎ足ではありますが、今作は最後の戦いを始めさせていただきます。
敵は夢原 探。
そしてオール・フォー・ワン。
あと、多数のノイズ。

二期のマリアさん的に言うのなら「振り返らない。全力疾走だ! ついて来れる奴だけついてこい!」でしょうか。


68.最終決戦、開幕

声が聞こえる。

呪いのような、怨嗟に塗れた、喉を張り裂く絶叫が。

僕の目の前で手で顔を覆い、泣き崩れる青年はその口から恨みに彩られた言葉を吐き出していた。

僕と彼の距離は遠くはない。手を伸ばせばすぐにその肩に手が届く。

だが僕がどんなに手を伸ばしても、その身体に触れることすらできなかった。

その目から血の涙を流しながら、その喉から聞くのも耐え難い声を絞り出しながら、青年は叫び続ける。

 

『こんな世界、無くなってしまえばいい。こんな世界、消えてしまえ。そして願わくば・・・僕の家族を返してくれ!』

 

そう泣き続ける彼を僕は見ている事しか出来なかった。

 

 

ゆっくり目を開くと定期的な電子音が聞こえてくる。

僅かに首を動かすと横になる自分の体から幾つかの配線が機械に繋がっていた。

身体を起こすと胸に張られていた電極が外れたのか機械からけたたましいアラーム音が独奏のように奏でられ鳴り響く。その音を聞きながら、出久は腕に刺されていた点滴と輸血の針を強引に引き抜いた。

周りを調べると自室の次に世話になっている医務室。どうやら寝かされていたようだ。

うるさく騒ぐ機械の音を切り、出久は立ち上がった。

うるさいのは繋がれていた機械の音だけではない。この世界に来て幾度も聞いた緊急サイレンの音が轟いている。その報に出久は呟いた。

 

「・・・行かなきゃ」

 

目覚めたヒーローは救けを待つ人の為に部屋のドアを通り抜けていく。その身に雷を纏いながら重い足取りを徐々に速度を上げて、一歩また一歩と確かに踏みしめていった。

 

 

司令室は各員から発せられる報告にて蜂の巣を突いた騒ぎとなっていた。街の各所にノイズの反応が現れ、避難警告が発せられている。

ノイズに対抗出来るのはシンフォギア装者のみ。その全員が二人一組で対処に当たっていた。

映るモニターには市街の一覧図。そこに赤く表示されるのはノイズ。青いのは装者達。戦力差は圧倒的であり、今にも赤い点は街を覆い尽くそうとしていた。

そんな中。装者達はその色合いを覆す為に拳を、剣を、銃を、短剣を、鎌を、回転刃を奮って奮闘する。これ以上の悲しみをなくしていく為にアームドギアを手に前へ進んでいく。

 

「各装者、少しずつ押されています!」

「このままでは!」

 

筆頭オペレーターの悲痛な声を聞きながら、苦い顔で歯を食いしばる弦十郎はどうにか現状を変えられないかと策を巡らせた。

絶望的な戦力差。

圧倒的な戦力差。

いくらシンフォギアが対ノイズ戦に特化していても、限度がある。こちらはたかが六人しかいないのだ。それで溢れる程のノイズに対抗するには無理がある。

更に切歌からもたらされた未確認の敵存在の件もある。今は姿を見せてはいないようだが、いつ参戦してくるかわからない。

せめてあと一手。

この現状を変えられるイレギュラーさえあれば・・・。

そう考えていた弦十郎の耳を震わせるのは、自身に一撃を喰らわせた少年の声だった。

 

『遅れました!』

「緑谷君! 何をしている!」

『ノイズが出たんですよね。僕も行きます』

 

答える出久の声の具合から彼が既に動き出しているのがわかる。

 

「ダメです! まだ安静にしていないと・・・頭を打っているんですよ!」

「大丈夫! こんな怪我慣れっこだから!」

 

エルフナインが心配した声をかける。だがそこに返ってくるのは彼の笑顔すら感じられる頼もしい声だった。そんな出久の声に弦十郎は顔を歪ませる。

緑谷 出久は『誰かを救う』という点で病的であるとも言っても良い。それはかつて立花 響に対して抱いたものと同様のものである。

いや、それ以上かもしれない。彼はどこか歪だ。だがそれこそが彼の彼たる所以なのかもしれなかった。

 

「・・・任せて、いいのか?」

『勿論です。皆さんが戦っているのに僕だけ寝ていることは出来ません』

「・・・わかった。友里、彼の端末へデータを送れ」

「司令⁉︎」

「早くしろ!」

 

友里が壇上に立つ彼に振り向き、抗議する。彼は分別のある尊敬すべし上長である。そんな風鳴 弦十郎が病み上がりの少年を戦地に向かわせるという判断をした事に文句の一つでも言わなくてはならないと怒気を込めた言葉を向けた。

しかし次の瞬間、彼女は振り向かなければ良かったと思った。いつでも後ろに立ち、いつでも的確な指示を出している上司は歯を砕かんばかりに噛み締め、見たことのない顔で目の前のモニターを睨み付けている。鬼気迫る顔の弦十郎はその怒りを身体中から滾らせ、何とかその場から動くまいと自身を押さえつけていた。

あまりの姿に言葉と動きを失う友里。そんな彼女を横目に見た藤尭はその仕事を引き継ぐ。

 

「端末に情報、送りました! 緑谷君! すまないけど、戦線を拓いていってほしい」

『了解です!』

「そんな奴らはサクッとやっつけて、またダーツでもしよう」

『今度は負けませんよ?』

「こっちこそ、負けてやらないからな」

 

軽口を叩きながらも激励を送った藤尭は自身の受け持つ情報の整理に戻る。そんな彼の姿を見て、友里は視線を戻した。

今この空間にいる全員が出来ることをしている。自分だけが放棄するわけにはいかなかった。

 

「司令。緑谷君、120秒後には会敵します」

「わかった! ・・・頼むぞ、ヒーロー」

 

自分以外の人間に聞こえない声量で弦十郎は呟いた。

 

 

出久が街に辿り着くと、そこは戦場と化していた。至る所から救けを求める声がする。多量のノイズが出現し、人々を蹂躙しているその街で奴等と戦えるのは自分を含めて『七人』

戦力差は七対大多数。

そして目の前で救けを求める人に襲い掛からんと飛び出すノイズを見つけ、出久は叫ぶ。

 

「Symbolize!」

 

右脚で跳び上がると、その身を回転させながら続きを唄う。

さぁ行こう。僕の使える新しい力を使って。

 

「One for All・・・tron!」

 

奮うその身が僕の武器だ!

 

「やら、せる、かぁぁぁぁぁぁ!」

 

出久は数体のノイズを一蹴のもとに消し去ると、倒れた少年の前に着地する。

土煙が辺りを汚す。それが風と共に払われる時、ヒーローは死に瀕していた少年に告げる。

 

「お待たせ。・・・僕が、来た!」

 

力強い声に勇気を貰える笑顔。

少年は目の前に現れたヒーローを見て、涙を流す。

今、緑谷 出久は最後の戦場に降り立った。




最終決戦を開始させていただきます。

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