六話のちょうど真ん中あたりの出来事です。
また感想を頂いてしまいました。
自分の作品を読んでもらうというのはこんなに嬉しいものなのですね。
「叔父様。私が言いたい事、分かっていますね?」
風鳴 翼は目の前で正座で座る叔父を見下ろす。
「司令。あの意図はわかっていますが、やり方はあったでしょう」
横に立つマリア・カデンツァヴナ・イヴも『やれやれ』と腕を組み、見下ろす。
「翼、マリア君。この状況は流石にどうかと思うんだが・・・」
ここはS.O.N.G.の発令所である。
トップである弦十郎が装者二人に正座を命じられ、その巨躯を縮こまらせていた。
無論、発令所の職員達は『いる』。
彼らは各々の仕事をしながらその光景をチラチラと見ていた。その視線に気がつかぬ弦十郎ではない。
いい大人の彼には堪えた。
状況打開の為、弦十郎は口を開く。
「・・・男同士、拳で語り合うのは浪漫だろう?」
「だからと言って病み上がりの少年にやっていい事ではありません」
「ぐっ・・・」
翼は尊敬する叔父に厳しい視線を送る。
「映画でもよくあるだろ? 殴り合ったもの同士の友情が・・・」
「司令が映画好きなのは知ってますが、どう見ても一方的な展開でしたよね。他の子達、ドン引いてましたよ」
「・・・」
マリアはジト目で睨め付ける。
「身体を動かす事は・・・」
「確かに、適度な運動は精神鍛錬にもなりますが殴り合う必要は無かったのではないですか?」
「・・・面目無い」
「あんな言い方で追い詰める事ないでしょう。調と切歌に至ってはかなり怯えてましたよ?」
「・・・申し訳ない」
「叔父様、何か言いたい事は?」
弦十郎は思った。翼もマリアも結構本気で怒っている。下手な嘘は余計に火に油を注ぐ行為だと。
正直に話す事に、した。
「その・・・結構”出来る”少年だったので手合わせしたくなってしまった」
それを聞いた二人は揃って大きな溜息をついた。
男というのはやはり根本が馬鹿なのだ。
それが風鳴 弦十郎であっても。
お説教は一時間に及んだ。
「おっさん、意外とガキみたいなとこあんだな」
扉の影から覗いていたクリスは呆れた顔で言う。
クリス以下、響・切歌・調もそこにはいた。
出久との戦闘時、弦十郎のいつもとは違う言動と容赦ない攻撃に驚いていた彼女達は大人組に連れていかれた彼の真意を知る為に盗み聞きしていた。
まさかあんなに残酷な事をする人だとは思ってもおらず、怖かったのも事実。
その真意を図る為でもあった。
四人の見ている先で弦十郎は小さくなりながらも必死に抗弁していた。
『彼はきっと今混乱の中にいる。どうしていいか自分でもわからないんだろう。だからこそ大人の俺は受け止めてやらねばならない。それが大人の役割だ』
『だからそのやり方に問題があると言っているのです!』
『大人なら大人らしく対話をするものではないの?』
『・・・すまない』
「あちゃ〜。翼さんとマリアさん、本気で怒ってるね」
「でも司令さんにちゃんと考えがあったのはわかったデス」
「うん。それでもあの時の司令は怖かった・・・」
「・・・施設にいた人達を思い出しちゃったデスからね」
二人とマリアはフィーネを降ろす人柱として集められ、虐待に近い扱いを受けてきた。その中で大人達の悪意とエゴに晒されてきたのだ。
元F.I.S.の二人は表情に暗い影を落とす。
「確かに私もびっくりしたけど、師匠はそんな事しないから大丈夫だよ」
響の手が二人の手を握る。その手に温もりを伝える。
「だってあんなに優しいんだよ!」
にこやかに笑いかける響の顔を見てザババコンビも笑顔を取り戻す。
「そう、だね」
「デスデース!」
そのやりとりを片目で見ていたクリスも
ニヤリと笑う。
「ま! あたしもおっさんらしくねぇとは思ってたよ」
「え〜? 私、青い顔して『マジかよ・・・』って呟いたの見てたよ?」
「はぁぁ!? お前、何言ってんの!?」
顔を赤くして反論するクリスにニヤニヤと響は茶化すように言う。
そのまま二人で追いかけっこが始まった。その様子を見た切歌と調はクスクス笑う。
今の自分達はなんて優しい所にいるのだろう。
信じていい人たちがいるというのは、人生においてとてもとても素晴らしい事だ。
「切ちゃん」
「なんデスか?」
「私、ここに来れてよかった」
「調・・・。その通りデース!」
相方の真剣な笑顔に同意の笑顔で返す。
なお、クリスと響の追いかけっこのせいで盗み聞きはバレた。
四人は司令の隣で正座の刑となった。
大人でもOTONAでもやりすぎてはいけません。