お疲れ様です。
対オール・フォー・ワン戦、少しだけ進みます。
「どうしてだ! 何故言うことを聞かない⁉︎」
爆豪を喚び出した夢原は思い描いていた状況通りにならず、困惑した。本来ならば既に出久は倒されていてもおかしくは無い筈だ。
しかし現状はどうだろうか。
爆豪はあろう事にもオール・フォー・ワンに敵対している。
「君の相手はそいつじゃない!」
悲鳴のような声も届かず、爆豪 勝己はヴィランに対して拳を振るい続ける。
「オラァッ!」
低空から地面を抉り、土礫を爆破で弾き飛ばす。迫る幾多もの土弾をオール・フォー・ワンは難なくやり過ごしていく。
「君まで現れるなんて、今日はなんて素晴らしい日なんだ」
玩具が増えた事に喜びを隠しきれないオール・フォー・ワンの声が上がっていく。先程は目の前の出久と楽しむあまり不意を突かれたが、あの程度の炎が自分に効くはずもない。わざと喰らうと同じ炎系の個性を使い、燃焼効果を相殺。受けたのは衝撃だけである。
少しくらい希望を持たせなくては、面白くはない。僅かな希望を手繰り寄せようと必死なヒーローが真に絶望の顔をした時ほど彼の心を満たすものはないからだ。
だから、オール・フォー・ワンは『遊ぶ』
彼にとってヒーローとは大切な遊び相手なのである。
「そこ・・・だぁぁ!」
作った隙にもう一人のヒーローが飛び蹴りを放って来る。必死に自分を倒そうと挑むその顔に余裕というものはない。
実に楽しい。楽しいね、本当に。
ヒーローというものは本当に度し難い程に愉快な存在だ!
二人の連続する攻撃を受けながら、ヴィランの笑みは増していく。
「すっこんでろ、こいつはオレの獲物だ!」
「かっちゃん、一緒に戦おう。こいつは力を合わせないと・・・」
「オレに指図すんじゃねぇ!」
宿敵を相手に奮闘しながら会話を交わす二人はそれぞれの個性を駆使すると攻撃を繰り返していく。
爆豪は宙を飛び回りながらオートカノンを地上目掛けて撃ち続け、片や出久は地を駆け回りながらエアフォースを乱射。
オール・フォー・ワンの視界を舞い散る土埃により一時的に封じると、地面に戻ってきた爆豪の元へ近づく出久。
「・・・かっちゃん」
「うるせぇ!」
伸ばされるその右手は瞬時に彼の首を掴む。ギアを纏って何とか反応できた彼の憤りを受け止めながらも出久は冷静だった。
「これ以上、その口でがなってみろ! 覚悟出来てんだろうな!」
「・・・」
「オレはあいつを倒す! 手助けは要らねぇ!」
自分に負けまいとするその憎しみの籠もった瞳。ただそれだけを伝えてくる視線に、少しだけ圧される。
だけれど。それに負けてやるほど、出久は日和ってはいられない。
だからこそ。出久は反逆した。
「・・・それなら!」
出久は彼の手が個性を使う前に強引に振り解く。空いた手が爆発するがそんなものを気にしない。
だが爆豪は彼の行動に驚き、少しだけ動きを止める。まさか拘束を緩められると思わなかった彼は目を丸くして目の前の出久を見つめる。
その目を受けた彼は目指すべき場所へ顔を向け、少しだけ細められた。
その口元を珍しく歪めながら。
「勝負だ!」
「あぁ⁉︎」
「どっちが早くオール・フォー・ワンを倒せるか! 君と僕で『勝負』だ!」
言うが早いが出久は爆豪の横を飛び去った。
出久は捨て台詞を残すのも忘れない。
「君より先に、僕が倒してみせる!!」
「・・・てん、めぇぇぇぇ!!!!」
その意図を、僅かな遅れを感じ取った爆豪も掌に勢いをつけて突撃する。舞い上がる土埃を吹き飛ばすのは二人のヒーローの起こす暴風。ヒーロー達は倒すべくヴィランに向かっていく。
我先にと。我こそはと。
一方はそれを狙い、一方はその挑発に乗る。
目指すはそのヴィランの首級。
先に倒すのは自分である、と。
地と空から出久と爆豪はヴィランに迫っていった。各々が最高のヒーローなのは『自分』であると意志を示していく。
「舐めんな!!」
「遅い!」
先に届いたのは出久だった。
オール・フォー・ワンの腹に突き刺さる拳は、ヴィランの身を曲げてダメージを与える。
「クソナードがぁ!」
続けて撃ち込まれる爆破。万人における急所である顔面を掴み、一切の躊躇を無くした個性の行使。相手が相手だからこそ出来る芸当。
「「君(お前)に負けてたまるかッ!!」」
互いの血を吐き出さんばかりの声を聞きながらヴィランは嗤い声をあげる。
「良い! 実に良い! さぁ来い、ヒーロー達!!」
まだまだ戦いは終わらない。
前哨戦は始まったばかりだ。
異世界のヒーロー達がヴィランに挑みかかる頃、この世界のヒーロー達はそれぞれがそれぞれの敵を倒し終えていた。
各所に現れたノイズは対処済。
残るは異世界から来たヒーローの戦うその場所。
六人のシンフォギア装者達は決戦の地に向かい、集まりだす。
繋ぐ拳を振るう者は叫ぶ。
「今、行くよ!」
その手を握り、真っ直ぐに飛び上がる。
斬り捨てる剣を携える者は呟く。
「無茶はするなよ・・・」
構え直した刃を新たに駆け出す。
撃ち放つ銃を握る者は笑う。
「待ってろよ、デク」
再装填する弾を舞わせながら、その身を踊らせる。
弱さを知る短剣を振る者は見据える。
「すぐ行くわ!」
その先にいる彼が見えるかの如く。
触れる物を切り裂く回転刃の音を立てる者は睨む。
「負けちゃ、だめだよ」
その音に負けない声音を上げる。
そして。
全てを切り滅する鎌を振るう少女は顔をあげた。
「・・・今行くデス!!」
その視線の先に彼はいる。
少女はその手のデスサイズを握り直すと、先へ進んだ。
全ての登場人物が集まりだす。
争乱の結末は、近い。
三月末に予定していた絶唱ステージ13も今月末へと四ヶ月の延期を経て、開催されそうな今日この頃。
会場は太田PiOではなく、東京流通センター(TRC)へと変更となりました。
私はこのご時世ですが、変わらず参加予定です。
皆様。可能なら当日(七月二十三日)会場にてお会いしましょう。
絶唱81のブースにてお待ちしております。
私は、そこにいます。
そしてご感想などありましたら、お気軽に。
いつでもお待ちしております。