僕のヒーローシンフォギア   作:露海ろみ

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七十三話目となります。

お疲れ様です。
前回の投稿から一週間ほど開いてしまいました。
昨年のヒロアカ映画のDVD、Blu-rayが間も無く発売となりますね。
折角なのでサブタイトルはそこから拝借させていただきました。
出久と爆豪が戦うのはナインではなくオール・フォー・ワンではありますが、あの熱さを思い出していただければと思います。


73.HEROES RISING

競い合う二人の攻撃は壮絶を極めた。

互いの隙を突くかのような猛攻。だが側から見ると互いの隙を補う様に動いている。

 

「だから邪魔なんだよ、クソデク!」

「・・・こっちの台詞だよ!」

 

小さい頃から共にいるからこそ、相手がどう動くか解っている。

爆豪 勝己はセンスの塊だ。シンフォギアの力を得てしても、自分の知る彼より強くなっている彼の動きに合わせるのは大変だった。

右に行くと思うと左。左に行くかと思えば上。彼の動きに合わせてその身体を強制的に挙動させる。

 

『離されるな! 今はオール・フォー・ワンを倒す事だけ考えろ!』

 

奇跡的に得た味方。それが自身を敵視している彼であったとしても、今は協調するしかない。

 

『どうすればこいつを倒せる⁉︎ 考えろ考えろ考えろ、緑谷 出久!』

 

必死に思考を回す。ワン・フォー・オールもかなりの所まで引き出している。シンフォギアのサポートが無ければとうに自壊しているだろう。

一度100%を体感した経験から察するにおそらく今は40%ほど。轟君と戦った時でさえここまでは来なかった。

まだ、いけるだろうか?

 

『いや!いくんだ!』

 

出久は勝利の為に追加のチップを上乗せする。

全身常時身体許容上限、50%

これが今出せる最大上限。この10%に賭けるしかなかった。

レイズと共にワン・フォー・オールギアが輝きを増す。

 

『ごめんなさい』

 

心の中で詫びる。

無茶はしないと母に言った。

無理はしないと師に誓った。

それでも、ヒーローにはやらなくてはいけない時がある。

激痛に歯を食いしばり、拳を握り締めなおした出久の脚は地面を割り砕いた。

 

 

隣で戦っていた爆豪は急に動きの変わった出久に気がついた。ついさっきまで自分をサポートする様にしていた彼がいつの間にか自分より前に立っている。

今度は自分が彼のサポートに回らされていた。

 

『ふざけんなよ、デク』

 

その言葉は口からは出ない。出す暇が無かった。それより速くデクはオール・フォー・ワンに攻撃し続ける。もはや一つの光線となる程の動きをした彼は自分の憎むべきヴィランを追い詰めていく。

四方から次々に殴り、蹴りぬけていく出久はオール・フォー・ワンを徐々に上空へと浮かび上がらせる。

ついていくのが精一杯な現状に爆豪は歯軋りした。

 

『なんでお前なんだよ!』

 

そんな思いが彼の心を蝕む。

どうしてオレじゃねぇんだ!

どうしてオレはそこに至れねぇ!

オールマイトは・・・どうして。

 

『どうしてお前を選んだ!』

 

今にも泣きそうな彼の顔はどうしようもなく歪んでいた。

もし自分が彼の力を引き継いでいたのなら、あんな奴はすぐに倒せたはずだ。それなのに、その力を継いだのは何の個性を持たないあいつだ。

そいつは無個性でヒーローオタクのクソナードなんだよ!

なんであんたの後を引き継がせたのが、そいつなんだよ!

 

どうして、そこにいるのがオレじゃねぇんだよ!

 

爆豪 勝己は緑谷 出久の継いだ力を羨望した。

憧れのヒーローに声をかけてもらったことはある。認めてもらったこともある。

でも、それ以上のものを受け取った『あいつ』が・・・。

 

『畜生、畜生畜生畜生!』

 

そうだとしても負けられない。

引き継げなかったのなら示すまでだ。

オレは、勝って救けるヒーローなのだから!

空高く浮かんだヴィラン目掛けて、爆豪は個性を使って一直線に飛び上がっていった。

勝つのは、オレだ。

 

 

『君ならすぐに来てくれると思っていた』

 

眼下より飛来する彼の姿を見た出久は攻撃の手を緩めない。アッパーカットを顎に叩き込むと、吹き飛ぶオール・フォー・ワンを更に追い越して上空へと飛んだ。

下からは爆豪が迫る。それを確認した出久は叫んだ。

 

「いくよッ!!」

 

彼にならきっと自分の考えている事が伝わるはずと宙で身を返し、一気に急降下する。

出久は重力により加速する身体を姿勢制御して右脚を振り上げた。スプールが巨大な槌の形状に変化する。

オール・フォー・ワン越しに彼の行動に気がついた爆豪は口角を吊り上げて答えを返した。

 

「命令してんじゃねぇ!!」

 

両手に爆破の個性を限界まで充填して、構えをとる。

 

「バーモントォォォォ・・・」

「負ける・・・かよッッ!!」

「スマァァァッシュ!!」

 

【VERMONT SMASH !!!!】

 

出久の踵は舞うオール・フォー・ワンの胸に突き刺さった。それと同時に背中には爆豪による爆撃がその威力に負けまいと押し返す。上下からの逃げ場の無い全力のぶつかり合い。着撃の衝撃波が空気を震わせ、地上からも観測出来る程だ。

二人のスマッシュはオール・フォー・ワンに確かに届いていた。

 

 

その均衡は突如崩れる。

許容上限50%はいくらシンフォギアを使用しているとはいえ出久の身体に並々ならぬダメージを与えていた。

出久の力が失われ、上を目指す爆豪の力が押し勝つ。そのエネルギーに負けた出久が吹き飛びながらも幼馴染に声を張った。

自分の信じる彼に残りを託す。

 

「かっちゃん・・・『頼む』!」

 

それを聞いた爆豪は答えない。

ただ目の前のヴィランにとどめの一撃を加えるために上を獲った。

その手を天に向け、落ちる敵に向かい残る最後の力を出し切る。

 

「オォォラァァァァ!!」

 

【榴弾砲 流星(ハウザーメテオ) !!!!】

 

加速した爆豪はその脚でオール・フォー・ワンを地面に叩きつけた。




VERMONT SMASHはオリジナルの技となります。
平たく言えば『踵落とし』です。
バーモント州の由来はフランス語で「緑の山」を指す言葉からだそうで、彼のイメージカラーと合っていたのでチョイス致しました。

榴弾砲 流星も同じく。
平たく言えば『飛び蹴り』です。
ちなみに命名は某彼の友人が「流れ星みてぇだな!」と言ったところからですかね。

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