久方ぶりでございます。前話投稿から十日も経ってしまいました。
相変わらず気分屋の私でございます。
Twitterの方を見てくださっている方からしたら丸わかりですがAPEXしたり、漫画読んだり、APEXしたり、APEXしたり、APEXしたりしておりました。
遅筆で申し訳ありません。
続きをお納め下さいませ。
いくら敵であったとはいえ、目の前で一人の人間が消滅するのを見て冷静でいられるはずもないマリアは短剣を収納した左腕を砲身に形状変化させると狙いをつける。
【HORIZON†CANNON】
エネルギーを収束させた砲撃をオール・フォー・ワン目掛けて撃ちだした。真白き光波は狙い違わずオール・フォー・ワンに飛んでいく。
「そんな事も出来るなんて、汎用性の高い個性だね」
焦らず騒がずヴィランは慌てない。光線は彼の身体に当たるとその身を避け、四散していく。霧散していく攻撃にマリアが叫ぶ。
「そんなッ⁉︎」
「甘い」
気がつくと目の前にはオール・フォー・ワンが拳を構えて立っていた。振りかぶった右腕は人間の腕とは思えない程に肥大して所々に凶悪な鋲が形作られている。咄嗟にアガートラームを引き抜き、防御体制を取るが間に合わない。思わず目を瞑るマリア。しかしその衝撃はやってこなかった。代わりに自分を浮かせる衝撃と金属を叩く音が鳴り響く。
「これは・・・盾かな?」
「・・・剣だ!」
縦にも横にも巨大化し、地面に突き刺さる天羽々斬がオール・フォー・ワンの拳からマリアを守っている。その柄頭に立ち、地表を見下ろす翼が答えを返した。
「貴様の様な者を許すわけにはいかん」
「ミス剣豪・・・些か諦めが悪いんじゃないかな?」
「抜かせ!」
二振りの天羽々斬を携えた翼はその名の様に刃を広げると、高所を生かしてオール・フォー・ワンに斬撃を振り下ろした。
「『身体速度倍加』『腕部大剣化』『超視力』」
しかし剣は大剣に受け止めれる。火花を散らせながら拮抗する刃たちは互いの身を斬り裂くために一進一退の鬩ぎ合いを演じた。翼はまさか止められるとは思っておらず力を込め続ける。そんな彼女の憤りを一笑したオール・フォー・ワンは続けて個性を追加した。
「『膂力増加』」
拮抗していた鍔迫り合いは彼の一言で捲られる。天羽々斬の刃は砕かれ、次いで出力を増したオール・フォー・ワンの蹴りが翼の腹を直撃した。
それを受け止めながらも翼は違和感を感じる。痛む腹を庇いつつ飛ぶ彼女は血を吐きながら考えた。
なにかが、おかしい。
確かに自分の攻撃は届いているはず。それなのにダメージを入れられるイメージが一切湧かないのは何故だ。
先程のマリアの攻撃もそうだ。明らかに直撃したエネルギーが奴を捉えることはなかった。それどころか仲間達の攻撃さえ有効打を与える兆しがまるで無い。
自分達の攻撃に意味が無いかのように、オール・フォー・ワンはいとも容易く我々の攻撃をいなしていく。
彼女と入れ替わりに飛び込む姿がある。
響だ。
その手に確かな力を乗せた彼女は拳を、脚を使ってオール・フォー・ワンに攻めかかる。仲間をやられたのを見た彼女は鋭い目でヴィランを睨むと四肢を振るった。
真っ直ぐなその攻撃を援護する調とクリスはヴィランの回避方向を予測、その先に鋸と銃弾を撃ちつけて逃げ場を無くす二人。逃げ場の無いガングニールの一撃はオール・フォー・ワンを捉えるかに見えた。
「『屈折』」
言葉一つで突如彼女の拳が曲がる。向かうべき方向を間違え、あらぬ方向へと動かされる響の攻撃。
それを味わう響自身が驚いていた。確かに相手は自分の攻撃を喰らっているはずだ。だがそれ以上に拒絶されているみたくこの拳が、この脚が奴に届く事が無い。
いや・・・違う。
『攻撃が届くイメージさえ湧いてこない』のだ。
数多の敵と戦ってきた彼女はこの違和感に、自分を縛る不可思議な違和感を噛み砕かんばかりに歯を食いしばる。
これまで戦ってきた敵は確かに強かった。それでも『倒せない』と思ったことはない。シンフォギアの力を、この想いを力にすれば必ず攻撃は届いていたはずだ。
だが身体は言う事を聞かずに力を流された。
決定打とも言える響の一撃が流されたのを見た装者達は各々の得物を握り直すと攻撃を再開する。
ここで終わるシンフォギアでは無い。
各員のアームドギアが決意と共にオール・フォー・ワンに振るわれた。
「煩わしいね」
ふわりと振られる右腕は大した力を込められてはいなかった。側から見れば何気なく動かされただけ。
しかし効果は抜群だ。
五人は空中で一瞬動きを止めると、そのまま全く逆の方向にその身を飛ばされる。
「言っただろう? 『君達では相手にならない』と」
優雅にさえ見える笑みを浮かべるオール・フォー・ワン。彼を中心に装者は散り散りに散っていく。
「オール・フォー・ワンッ‼︎‼︎」
「デェェェェェスッ‼︎‼︎」
五人の代わりに飛び込むのは二人の姿。出久と切歌の蹴りと鎌が二方向からオール・フォー・ワンを攻め立てる。先に届いたのは切歌。
「なんデスと⁉︎」
だがまたもやその軌道は歪み、力ごと身体が流されていく。
「切歌ちゃん⁉︎ ・・・ンの野郎‼︎」
吹き飛んでいく彼女を傍目に、口汚く罵りながら出久はヴィランに蹴撃を喰らわせた。彼の蹴りは確かな勢いでオール・フォー・ワンにぶち当たった。それは左腕一本で受け止めれられる。
しかし当のオール・フォー・ワンは僅かな困惑と共に首を傾げた。
「おかしいね。確かにズラしたはずなんだけれど」
「う、る、せぇぇぇぇぇぇ‼︎」
空中で出久の身体に雷が奔る。ワン・フォー・オールは彼の怒りに乗せられて出力を増す。瞬間的に許容上限を50%から70%に引き上げられた一撃がオール・フォー・ワンのガードを貫いた。
そのまま声にならない叫びを上げながら、軋む身体に鞭打ちながら出久は攻撃を続ける。普通の人間が見たら知覚できないスピードによる連撃を加え、トドメとばかりにヴィランを遥か後方に蹴り飛ばした。
「うぅッ・・・」
それと同時に崩れ落ちる出久。シンフォギアの加護があるとはいえ、限界を超えたバックファイアはその身を蝕む。痛むどころでは無い。身を引き裂かれんばかりの苦痛が彼を襲ってきていた。
「出久君!」
「デク!」
所々シンフォギアを砕かれた調とクリスが彼に駆け寄る。直接攻撃系では無かった二人は距離をとっていたため比較的ダメージが少なかった様子である。
「おい! 休んでろって言っただろ!」
「出久君。しっかりして!」
出久の全身を包むギアはひび割れている。それどころか殆どの部位が砕け散って、ほぼギアインナー姿である。荒く息を吐き、血を滲ませるヒーローはそれでも立ち上がろうと足掻いた。
「止めろ、緑谷。これ以上戦うと命に関わるぞ」
「そうよ! もうやめなさい、出久」
翼をはじめとした直接攻撃組もそこにやって来た。誰もが自分達以上にその身を砕いている彼を一目見ると顔を顰める。
「デク君、デク君!」
先程共に戦う、彼を護ると言った切歌は彼の姿を見て、己の言葉に重さが篭っていなかった事を悟る。彼を支える二人から出久を奪い取る様に抱き抱えると涙を流しながら、その身にすがった。涙が彼の髪を濡らしていく。
そんな切歌の背中にゆっくりと手を当てる出久は言った。
「・・・切歌ちゃん、皆さん。油断しないで。こんなもんで終わるあいつじゃ無いんです」
「オール・フォー・ワンは、倒せてません」
ヒーローのその言葉に周りの全員、加えては司令室詰める者達でさえ息を飲んだ。
あれだけの攻撃を加えても、倒せていない?
切歌の腕から身体を起こしながら出久は叫ぶ。
自分の知っているあいつはまだ力を温存しているはず、と。
「まだです。まだ終わってない!」
その声に応えた様に瓦礫が崩れる。
スーツに付いた土埃を払いながらゆらりと立ち上がるヴィランの姿。
少しだけダメージを負っている。
だが、少しだけだ。
『無傷、だと・・・』
『そんな・・・』
各員の無線に流れるのは弦十郎の驚愕の一言とエルフナインの絶望的な声。
「一張羅が台無しになってしまったよ。僕はこう見えても服には気を使っているんだけれどね」
あれ程の攻撃を受けた後にも関わらず、親しい友人と喫茶店で話しているかのごとく口を開いたヴィラン。
「流石の僕も気分を害してしまいそうだ」
悠々と歩き出したオール・フォー・ワンは彼らの前に再度立ち塞がる。
「それで、まだやるのかい? 僕は構わないけど結末は決まっているよ」
優雅な一礼をしながらヴィランは告げる。
「君達の負けだ」
その一言はその場の全員の心から戦意というものを刈り取る。あの響でさえも僅かにその歯を震わせた。
勝てない。
装者達に初めての感覚が訪れる。
これまで超先史文明の巫女や自立稼働する聖遺物、奇跡を殺さんとする錬金術師や完全へと至ろうとした錬金術師と相対した時でさえこんなことはなかった。
それでも。
目の前の敵には『勝ちのイメージ』を抱く事が出来なかった。
誰もが目の前に立つその男に何故か畏怖を覚える。
ただ一人を除いては。
「ふざけるな」
その少年は。
「お前の好きにはさせないぞ」
男よりずっと傷だらけで。
「お前なんかに」
しかしながらその瞳に『決意』を滾らせていた。
「好き勝手させてたまるもんか!」
彼女の腕を離れて前に立ち、装者達にその背中を魅せつける。
「オール・フォー・ワン!」
宿敵の名を叫ぶ少年は何度でも拳を握る。
『ヒーロー』とは『ヴィラン』と戦う者。
極めて言えば『ヴィラン』を倒すのは『ヒーロー』でなくてはならない。
故に『シンフォギア』では『ヴィラン』には勝てない。
何故なら。
「お前を、倒すッ!」
いつだって『ヴィラン』を倒すのは『ヒーロー』なのだから。
『シンフォギア』の攻撃は『ヴィラン』には決定打にはならない。
なら『ヒーロー』の力を使えばいいのです。