僕のヒーローシンフォギア   作:露海ろみ

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いつもお読みいただきありがとうございます。

本日は感想欄にて頂いた質問の答えを番外編として書いて参りました。

頂いた質問は「麗日がシンフォギアの世界を一人で3日くらいさまよった状態でファミレスの外で出久が知らない女の子たちと仲良く食事してる姿をガラスの向こうから見たらどうゆう反応をするでしょうか?」

正直に申しまして最初はどうなるかな?と軽い気持ちで書き出したのですが、書いていて非常に辛くなってくる話でありました。
麗日ちゃんが好きな方にはオススメできません・・・。
というか麗日ちゃんファンの方々、本当にごめんなさい。

なおこの話は本編には繋がりません。
あくまで可能性世界の一つとしてお読み下さい。



番外編
1.麗日 お茶子は放浪する


麗日お茶子は見知らぬ街にいた。

 

「ここ・・・どこなん?」

 

気がついた所は街中にある公園のベンチ。

あたりには人の気配は無く、そこにいたのは自分だけだった。

 

とりあえず寮に、学校に戻らなくてはいけない。

 

そう思い、ポケットの携帯を取り出す。

マップ機能を使おうとするが、起動に失敗する。よく見ると『圏外』の表示。

 

仕方無く、街に出て地図を探す。

だが見つからない。

どこにいっても地図がない。

それどころか電信柱に書いてあるはずの地名さえ見つからない。

 

明らかにおかしい。

 

「どうなってるんやろ」

 

口から言葉が漏れる。

言いようのない不安感が背筋を駆け巡る。

その足は次第に速く動き出していた。

 

とりあえず人のいるところに。

街の中心地なら誰かいるはずだ。

そう考えて走り出す。

 

だが誰ともすれ違わない。

誰も見かけない。

 

街中にいるのに何の音も聞こえてこない。

 

明らかな異常事態。

 

「嘘・・・嘘!」

 

右へ左へ顔を動かし、人の気配を探す。

 

「嘘や!」

 

個性を使い、空に飛び上がる。

地上より遥かに高い場所から吐き気を堪えながら、街を俯瞰する。

 

しかしその目に誰か映ることは無かった。

 

 

 

あれから三日が経った。

この街の隅から隅まで歩いたが、やはりこの街には誰一人いない様だ。

 

「お母さん、お父さん・・・」

 

この数日で憔悴した彼女の顔からは表情が消えていた。

 

「みんな、どこにいるん・・・?」

 

泣き腫らした目は痛々しい位に赤くなっている。

その口からは縋る様な声が漏れていた。

 

「誰か・・・誰か答えてよ!」

 

少女の絶叫に応えるモノはいなかった。

 

 

だがその時。

音が聞こえた。

 

 

慌ててその方向に振り向く。

視線の先にあるのは昨日調べたファミレス。

縺れる脚を動かし、そこに向かう。

 

無音の街でたった一人。

彼女の精神は限界を迎えかけていた。

だがそこに一筋の希望が現れる。

 

誰かがいるかもしれない。

 

その希望が身体を動かす。

近づくにつれて窓から見える店内に人影が見えてくる。

人がいる。

それだけが麗日を動かす原動力だった。

 

徐々に露わになるその姿。

その姿は・・・。

 

「デクくん!」

 

姿を消した緑谷 出久であった。

 

 

ガラス窓に縋り、ガラス窓を叩く。

 

「デクくん、デクくん!」

 

だが彼は気がつかない。

そして彼女は気がつく。

出久が、一人ではないことに。

 

出久の正面には見知らぬ二人の少女がいた。

 

一人は髪にバッテンの髪留めをした金髪の少女。

出久との会話で楽しそうに笑っている。

 

一人は長い黒髪の大人しそうな少女。

こちらも会話をしながら微笑んでいる。

 

三人は麗日に気がつかないかの様に三人で仲良く歓談していた。

 

 

この薄いガラスは自分と彼等を隔てているかの様に残酷に世界を分けていた。

だが、麗日は窓を叩く手を止めない。

その喉から大好きな彼の名を叫ぶ事をやめない。

 

しかし、その想いは届かない。

 

それ程薄いガラスは厚く世界を隔てていた。

 

 

やがて膝から力を失い崩れ落ちる麗日。

真っ赤になった両拳。

叫びすぎて声が出なくなった喉。

だがその目だけは彼から離せない。

枯れたはずの涙が再び頬を流れている。

掠れた声を喉から搾り出す。

 

「デク・・・くん・・・」

 

そして世界は暗転する。

 

 

 

目覚めると見知った天井。

がばりと起き上がり見回すと見知った自室。

 

「夢・・・?」

 

自分の身体を抱きしめる。

ガタガタと震える身体を押さえ込む。

夢にしてはあまりにリアルだった。

震えが止まるまで、暫しかかった。

 

「デクくん・・・一体どこにいるの・・・」

 

寮から消えた緑谷 出久。

彼は一体何処にいるのだろうか。

もしかして今の夢は・・・現実なのだろうか。

 

その答えは、麗日お茶子には、わからなかった。




麗日ちゃんファンの方々、本当にごめんなさい(陳謝)
感想欄読んで即興で書き上げたのですが、まさかこんなに私自身ダメージ受けるとは思いもよりませんでした。

ちなみに麗日ちゃんが迷い込んだのは『ヒロアカ世界』と『シンフォギア世界』の隙間です。
その『シンフォギア世界』寄り、と言えばいいでしょうか。
不完全な世界ゆえに人が存在していません。
しかし時間が経つごとに出久との関係性からシンフォギア世界に近づき、彼の姿を観測しました。

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