僕のヒーローシンフォギア   作:露海ろみ

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四話目となります。

お疲れ様です。
時間は出久と切歌が再会した後へ戻ります。
相澤先生に連行された四人はどうなったのでしょうか?


4.君の成長は私の喜び

連行された出久と三人の装者は雄英高校の一つの部屋に連れて行かれた。未だ拘束されたままの四人とその手綱を握る相澤、そして知らせを聞き合流したオールマイトは校長室の前まで来ると控えめにノックをする。

 

「どうぞ」

「失礼します。さぁお嬢さん方、中へどうぞ」

 

返答を得て、オールマイトはドアを開けると紳士的に装者達に中に入る様に促した。相澤に見張られてはいるが出久の取りなしもあり、三人は校長室に足を踏み入れる。

 

「やぁやぁ初めまして、異世界からの方々。ようこそ、雄英高校へ」

 

出迎えた根津はにこやかな表情と共に前に進み出た。握手をする為に右手を出した所で縛られている事に気がつく。

 

「相澤君。拘束を解いてあげてくれるかな」

「・・・しかし」

「大丈夫だよ」

「わかりました」

 

若干渋る相澤の一振りで捕縛布が緩められる。出久と装者達は先程ぶりの自由を手にした。だがマリア、調、切歌は何にも言葉を発さない。三人の視線は目の前の校長に集まっていた。

 

「ネズミさんが喋ってるのデス!」

 

大袈裟に驚く切歌。

 

「・・・可愛い」

 

根津と視線の高さを合わせ、呟く調。

 

「どういう事なの・・・⁉︎」

 

呆然とするマリア。

そんな三者三様の反応を楽しんだ根津は一番前にいた調と握手と自己紹介を交わす。彼のふにふにした肉球に思わず顔の緩む調。その顔を見て満足そうに笑うと次いでマリア、切歌とも握手をした。

 

「校長の根津と申します。立ち話もなんですから、どうぞお掛けになってください」

 

困惑の中、促されるままにソファに腰掛ける三人。オールマイトはその後ろに立つと所在なさげにしている出久に声をかけた。

 

「緑谷少年。君も横についてあげてはどうかな?」

「え・・・」

「君は当事者でもある。そして」

 

オールマイトは少しだけ声を落とすと骸骨の様な顔にいつもの笑顔で継承者にアドバイスを送る。

 

「この世界で彼女達の味方は君だけだ。仲間を支えてあげなさい」

「・・・はい!」

 

力強く頷いた出久はソファの横に膝をつく形で座った。横には切歌。よくよく見ると緊張しているのか目が泳いでいた。そんな彼女の姿に、出久は行き先を無くした彼女の左手を握る。

繋がれる二つの手。

彼女は驚いた様に小さく飛び上がるが、出久はこちらを向いた目に目を合わせ、語りかける。『大丈夫だよ』と。愛する人の説得に切歌の様子は落ち着いた。

 

「さて。ではまずは」

 

対面に座る根津は小さな身体でソファに腰掛ける。いつの間にか相澤がその後ろに控えていた。その視線はいつでも個性を発動する為に三人から外されることはない。

 

「貴女方の来訪の目的からお伺いしようと思うのですが・・・」

「はい」

 

年長者のマリアが凛と背を正すと返答する。

 

「それについてなのですが、詳しくは私の上司の方からお話しさせて頂きます」

 

そう言うと手荷物の中から大きめの端末を取り出すと起動。暫しの間の後、画面には赤シャツの大男が現れた。

 

『・・・もう繋がっているのか?』

『はい、リンク成功。通信状態安定しました』

「司令。出久の学校の根津校長先生とお話する機会を設けました。お願いします」

『わかった。マリア君、端末をそちらに向けてくれるか』

 

言われるがままに端末を根津の側に向けるマリア。だが彼女は一つ、説明を忘れた。向け終わった後に気がついたが、既に遅かった。

 

『初めまして。私は国連直属の超常災害対策機動部タスクフォース、S.O.N.Gの司令、風鳴 弦十郎と申します。この度は突然の・・・』

 

そこで弦十郎の言葉が止まる。そのまま眉間に皺を寄せると目の前の現実に困る様子が映った。そんな彼の姿に平然と根津は返事をする。

 

「風鳴さん、でよろしいのですね。こちらこそ初めまして。校長の根津と申します」

『・・・ね、ネズミが喋った、だとぉぉぉ⁉︎』

 

スピーカーから轟く驚愕の声にマリアと出久が揃って頭を抱えた。

 

 

『大変失礼を致しました』

「お気になさらず。慣れておりますので」

 

真っ直ぐに頭を下げる弦十郎といつもの事ととりなす根津。そうして両組織のトップによる通信会談が始まる。

 

『この度は突然の訪問を致しまして・・・』

「こちらとしましても緑谷君が不在中の所在について・・・」

 

違う組織といえど最上長を担う二人は情報交換を続けていく。

そんな中、ただそこにいるだけとなったその他の面子はそれぞれ小声ではあるが会話をしていた。

 

「久しぶり」

「うん。調ちゃんも元気だった?」

「むしろ出久君がいない分、切ちゃんを独り占め出来たから」

「あ〜・・・」

 

言いつつも切歌の手を離さないどころか、手に力を込める。この一月、彼女の喪失に心を削られた出久は再会を喜んでいた。今や調の言葉は彼の珍しい独占欲を増長させるだけである。手を握られた切歌はと言えば、顔を赤くしているが決して手を振り解こうとはしない。

 

「緑谷少年。この子が話してくれた彼女さんなのかい?」

 

オールマイトは先日弟子が話してくれた少女に目を向けながら、どこか面白そうに会話に入ってくる。

 

「は、はい」

「可愛い子だね」

 

可愛い。その言葉に切歌の顔が更に赤くなると遂には顔を伏せてしまう。見れば出久も同じ位に真っ赤な顔になっている。初々しいその反応にオールマイトは微笑んだ。

彼にも大切な人が出来た。

これまでは話に聞くだけだったが、実際に目にすると嬉しいものである。この少年に守るべき女性が出来た。はにかむ少年はそれでも繋ぐ手を離さない。繋がれた少女も振り解くわけでもなく彼の愛を受け止めている。

弟子の成長を一番に感じ取るのは師匠の特権だ。自分の背を追っていた彼が、自らの意思で誰かを守ろうとしているのは、紛れもない成長なのだろう。自分も師からこんな目で見られていたのかもしれない。オールマイトはそう思った。

 

「お嬢さん」

 

突然呼ばれた切歌は姿勢を正し、自分を呼ぶ大人に向き直った。その先には彼の師匠の姿。オールマイトは切歌に握手を求める。

 

「緑谷少年を・・・彼を好きになってくれて、ありがとう」

「デス⁉︎」

 

突然の事に目を丸くした切歌が赤い顔を起こすと視線を合わせた元No.1ヒーローはにっこりと笑った。おずおずと差し出した手はまるで骸骨の様な見た目と裏腹に力強く握られる。

 

「彼を救けてくれて、本当にありがとう」

「ど、どういたしまして、デス・・・」

 

目を白黒させながら握手した切歌を横に、調は先程から思っていた疑問を口にした。

 

「ところで、貴方は一体誰なんですか?」

「おぉ! これは失礼した」

 

調の言葉に忘れていたよ、とばかりにアメリカンなアクションをするオールマイトはザババの二人に自らの名を明かした。

 

「私の名はオールマイト。緑谷少年に”個性”を渡した、元ヒーローさ」

「え・・・?」

「それって・・・」

 

オールマイトの名を二人は知っている。何故なら出久から聞かされていた。何度も何度も聞かされた出久の目指すトップヒーローの名前。

だが筋骨隆々で、まるで漫画の世界から飛び出てきた絵に描いたようなヒーローの姿を何度も見せられていた二人の目の前には、どう見ても別人がいる。頬はこけ、枯れ木の様な腕と脚をスーツに包んだ彼はヒーローには見えなかった。

 

「・・・」

「その・・・」

 

言葉に詰まった切歌と調は何度も何度もオールマイトを上から下へ眺めるがそこにはヒーローの姿は無く、そこには似つかわしくない男の姿がある。

そんな二人の視線を感じた彼は全身に力を送り込む。

 

「・・・ふんッ!」

 

気合とともに全身に力を込めるヒーロー。瞬時にその身体は全盛期を取り戻す。丸太を思わせる手足と逞しい身体に変貌するオールマイトはヘタれた髪の毛を逆立てるとタッチの変わった絵柄でサムズアップを示した。

 

「お嬢さん方! わ〜た〜し〜が〜・・・来た‼︎」

「「⁉︎」」

 

姿を変化させるオールマイトに驚く二人と久方ぶりに見る師の姿に笑う出久。

しかしマッスルフォームはすぐさま力を失う。すぐにトゥルーフォームになり口から血を吐くヒーローはそれを拭いながらも笑いかけた。

 

「とまぁ、今の私にはこれが精一杯なわけだが・・・少しは信じてもらえるかな?」

「ど、どういうことなの?」

 

なんとか言葉を絞り出した調はいきなり変化した目の前の現象に目を白黒させている。切歌に至っては驚きのあまり出久に抱きついていた。いきなり彼女に抱きつかれた出久はドキドキしながらもしっかりと切歌を受け止めている。でも背に回された手は、離そうとしない。

 

「オールマイト、騒ぐ様なら席を外して頂けますか?」

 

そんな彼らの遣り取りを眉間に皺を寄せながら見るイレイザー・ヘッドこと相澤消太は根津と弦十郎の会話を邪魔するまいと声を上げた。

 

「緑谷。お前もこれ以上邪魔するならさっさと戻れ。お前は一限の途中だろう」

「す、すみません!」

「ついでにその二人も連れて行け」

「・・・わかりました!」

 

厳しい言葉に直立不動の返事をした彼は目で合図をすると切歌と調を伴い立ち上がり、部屋を出ていった。その後をオールマイトも続く。だが彼は相澤の方を見遣ると僅かに微笑んだ。

 

「・・・なんですか?」

「いや、なんでもないさ」

 

彼の意図に気がついたオールマイトも一笑いすると部屋を後にした。

 

 

「怖い先生デスね」

「うん。ずっと怖い顔してた」

「デスデス!」

 

校長室を出た二人は出会った出久の担任への評価を話している。常に厳しい顔をして、自分達への警戒を露わにする男性。挙げ句の果てに部屋から出て行けとはあまりではないだろうか。若干の憤りを込めた会話を交わしていると出久が参入してくる。

 

「・・・相澤先生なりに気を遣ってくれたんだと思うよ」

「なんデスと⁉︎」

 

あれだけの事をした人物を庇う様な発言をする出久に切歌が驚き、目を向ける。そんな彼女に、出久は前を向いて歩きながらも、ゆっくりと言葉を返した。

 

「先生って厳しいけど、実は一番に僕達の事を考えてくれているんだ。きっと切歌ちゃん達に悪意が無いのを理解ってるんだと思う」

 

そう言うと立ち止まり、背後の校長室に見返る。

 

「それと・・・僕が皆より授業が遅れているのを懸念してくれていて、少しでも追いつける様に配慮してくれたんじゃないかな」

「え・・・?」

 

出久が見つめる通路の先に視線をやった調。

彼の目は真っ直ぐにその先を見つめていた。

 

「先生は厳しいけど、それは本当に僕達の事を考えてくれているのを解ってるから・・・」

 

信頼した顔で歩いてきた通路を見た出久は前を向き直ると、二人を促した。

 

「よし! 行こう、二人とも!」

「・・・うん」

「デク君の学校の授業はどんな事をするデスか?」

「えっとね・・・」

 

歩き出す少年と少女達。

その背を追うオールマイトは自分の跡を継いだ少年の成長を感じて微笑んだ。




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