僕のヒーローシンフォギア   作:露海ろみ

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六話目となります。

お疲れ様です。
今話はA組の授業に合流する出久達のお話となります。


6.共鳴

雄英高校の体育館γは『トレーニングの台所ランド』という名がついている。その頭文字をとっての通称は『TDL』と呼ばれる。・・・決して何処かのテーマパークではない。

 

「遅くなりました!」

「緑谷か、話は聞いているよ。君も着替えて訓練に入りたまえ。オールマイトもお疲れ様です。そして・・・そちらはもしかして?」

 

授業に遅れてきた出久とオールマイトを迎えたセメントスは彼らの後ろについてきた少女達を見て、微笑んだ。

 

「初めましてデス! わたしは暁 切歌デス!」

「月読 調です」

「此方こそ初めまして。ここで教師をしていますヒーロー『セメントス』こと、石山と言います」

 

互いに頭を下げ合い、挨拶を交わし合う。

 

「聞いたところによると別の世界から来られたとか。びっくりしましたよ」

「もう伝わっているんですか?」

「ええ。貴女方の事は行方不明だった彼から聞いていましたが・・・まさか来られるとは思っておりませんでしたからね。相澤先生から報告を受けた職員室は騒然となりました」

「ご、ごめんなさいデス・・・」

「いえ怒っているのではないのです。寧ろようこそ、『こちらの世界』へと言ったところですね」

 

優しく語りかけるセメントスは来訪者達に笑顔をプレゼントする。

 

「折角ですので、お二人も授業に参加してみませんか? 聞いたところによると歌って戦うという面白い個性を使えるとか」

「えっと、個性ではないんですけど・・・」

 

調が疑惑の視線を送ると出久は冷や汗をかきながら弁明を始めた。

 

「ごめん。シンフォギアについて上手く説明が出来なかったから、そっちの方がわかりやすいかなって。いや、ちゃんと詳しく話したんだけど・・・」

 

そんな彼の言葉に二人は首を傾げた。何を言っているのだろうか。話すよりもっとわかりやすい方法があるはずだ。

その力が、『詠』が彼にはある。

 

「ギアを見せちゃえばよかったのに」

「そうデス! デク君のワン・フォー・オールギアを纏ってみせれば一発デスよ!」

「・・・その」

 

無邪気な彼女達の提案に出久の顔が曇る。僅かな時間俯くと、どこか悲しそうで申し訳なさそうな顔を上げた。

そうして、その顔に同調した声音で小さく切なく言う。

 

「胸の歌が・・・聖詠が聞こえなくて・・・。僕はもうシンフォギアを纏えないんだ」

 

出久は「着替えてきます」と言い残すと更衣室に向かい走っていく。

残された二人の装者は言葉を失っていた。彼のあんな顔を初めて見たかもしれない。直接口にしていないのに謝罪をされた様にも感じられた。

走り去った弟子の背を目で追いながらオールマイトが口を開く。

 

「緑谷少年は何度もその『シンフォギア』っていうのを見せてくれようとしたのさ。でも、何度やっても出来なかった」

 

『聖詠が・・・聞こえない・・・?』

 

「何度も胸に手を置いて歌おうとしていた。でも・・・」

 

『みんなに貰った大切な歌が聞こえないんです、オールマイト・・・』

 

「彼は、本当に悲しそうにしていたよ」

「そう、だったんだ・・・」

「デク君・・・」

 

気付くと二人はギアペンダントを手にしていた。自分達にはこれがある。形となったギアを手に出来ている。

だが彼には無かった。

彼はその身に宿る目に見えない力、『個性』を『シンフォギア』という形にしていた。

やがて小さくなり、角に消えた彼の背中はまるで泣いているみたいだった。

 

 

「さて全員揃った所で、今日は見学者がいる。まぁ、みんな知っているよね」

 

生徒達から同意の声があがるのを一頻り聞くとセメントスは二人に前に出る様に促した。

先程の件で少し暗い顔をした二人の視線の先には出久がいる。彼も、同じ顔を作っていた。

 

「暁さんと月読さんも君達と同じく個性が使えるそうだ。そこで、授業の後半は彼女達に協力してもらって模擬戦を行おうと思う。我こそはという者はいるかい?」

 

模擬戦、と言う言葉に目を輝かせる数名が挙手をする。男子からは飯田、爆豪、切島、上鳴をはじめとしてほぼ全員。女子からも芦戸や八百万が手を挙げていた。

 

「多いね・・・」

 

意外な数に驚くセメントス。

 

「お前ら、譲れや!」

 

大声で辺りを威圧をする爆豪。

 

「ここは委員長たる俺が先陣をきらせてもらおう!」

 

責任感と共に誰よりも手を高く伸ばした飯田。よく見ると爪先立ちだった。

 

「お待ちください。相手は女性なのですよ? 私がいきますわ」

 

そこは好奇心旺盛な八百万も譲らない。

 

「てかさ、二人の個性ってどんなの?」

 

ここにきてやっと芦戸から質問が飛び出した。その一言に全員の視線が切歌達に集まる。

 

「緑谷から少しは聞いてるよ。確か『シンフォギア』って言うんでしょ?」

「えっとデスね・・・」

 

切歌はチラリと一番後ろでオールマイトと一緒に立つ出久に視線を送った。彼は・・・やはり悲しそうな顔をしている。

でも小さく頷くと拳を握ってみせると声にださず、口だけを動かした。

 

『見せてあげて・・・切歌ちゃん達の力を!』

 

そして、ぎこちなく、にっこりとする。

いじらしい出久の反応を見た切歌が横を向くと調も此方を向いていた。その顔をきっと自分もしているのだろう。同時に頷くザババの二人は胸元からギアペンダントを取り出した。

そして、シンフォギアを起動させる聖詠をそれぞれ口にする。

 

「Zeios igalima raizen tron…」

「Various shul shagana tron…」

 

何処からか音楽が流れ出す。

それはシンフォギアを支える音楽の、歌の力。

聖遺物イガリマとシュルシャガナの欠片は彼女達の詠にその力を開放する。

その姿をシンフォギアに包んだ切歌と調は各々の得物を構え、A組の前に立ち塞がった。

 

「「これがわたし(私)達のシンフォギアデス(です)!!」」

 

 

出久は彼女達の詠を聞き、肩を並べて共に戦った仲間達の姿に胸を震わせていた。

それは一月程の短い時間だった。でも生きてきた人生の中でも濃密な時間だった。そして見知らぬ地で自分を救けてくれた彼女達が今そこにいた。

二度と見る事の出来ないと思っていたその勇姿に自分自身も気がつかないうちに胸に手を置いて詠っていた。

 

「Symbolize One for All tron...」

 

戻ってきてから何度も何度も口にした詠を。

あの世界で得た彼女達との絆の詠を。

少年は、真っ直ぐに同じ聖詠を詠うを少女達を見つめ続けていた。

 

 

その変化に初めに気がついたのは隣にいたオールマイトだった。彼は別世界のヒーローに気を取られていたが、すぐに横から聞こえてくる『詠』に弟子の方を向くと目を見開く。

 

「緑谷少年⁉︎」

 

その声さえ聞こえない程集中しているのか、彼は自分の変化に気がついていなかった。

その身体には少女達の様な鎧が纏われていく。彼の名を冠する深緑色をしたそれは次々と彼を覆い、型を成していった。

その身を包むボディスーツ。

その腕を形成されるガントレット。

その脚に装着されるグリーブ。

その頭に現れたヘッドセットが構築される一瞬、表示される文字列。

 

【ONE FOR ALL GEAR】

【SYSTEM ALL GREEN】

【NORMAL OPERATION】

 

唖然とするオールマイトを横目に出久はシンフォギアを纏いきった。




余談となりますが。
シンフォギアには形式番号というものがあります。
ガングニール(響)が『SG-r03' Gungnir』
イガリマが『SG-i02 Igalima』
アガートラームが『SG-x00 Airget-lamh』となります。
数字の前のrはレギュラー、iはイレギュラー。
アガートラームだけは出自の関係から特別でxとなっています。
もし出自不明、順不明のワン・フォー・オールギアにつけるとするなら。
『SG-xxx One for All』となるのでしょうね。
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