お久しぶりです。
今月末に絶唱ステージ14が開催されますね。
私と友人のサークル『キャッスルロック』も絶唱44のブースにて参加となりました。当日は諸事情により私だけではありますが、お待ちしておりますよ。ご都合が合えば是非、当ブースにお越し下さいませ。
当作品の二冊目のまとめ本とともに皆様をお待ちしております。
絶唱ステージ14
大田区産業プラザPiOにて12月27日に開催予定・・・デス。
http://www.puniket.com/sg/
出久達が部屋を後にした校長室に残されたのは根津、相澤、マリア、そして端末内の弦十郎であった。その中で一番に彼らの退出に関して気を払っていたのは風鳴 弦十郎である。彼は耳を澄まし、足音と扉の閉まる音をしっかりと聞いていた。
『・・・彼らは出ていきましたね』
「はい」
応えた言葉を聞いた弦十郎は目を閉じる。これから伝える話を理解してもらうために言葉を選びながらも話し始めた。
『根津校長。端的に申します。これからそちらの世界に異端者が現れるでしょう』
「・・・それはどういう事ですか?」
根津は動じない。あくまで冷静に彼は返した。これくらいの事で動揺していては雄英のトップにはいられないのだ。その対応に同じ組織の頭である弦十郎は顔を変えずに続けた。
『緑谷君の世界・・・貴方がたの世界と我々の世界を繋げたのには訳があります』
その言葉に返答はなかった。
『今、そちらの世界には危機が迫っています』
「詳しい説明を、お願いできますでしょうか」
頷いたモニターの中の弦十郎は至極真面目な顔で口を開いた。
『我々の知る並行世界から逃げ出した錬金術師がそちらの世界に渡ったのを確認致しました』
その言葉に僅かに顔を歪めるのはイレイザーヘッド。わかりやすく脅威が迫っていると伝えられたのだから、無理もなかった。だが根津は背後に控える彼の変化に気がつきながらも表情を崩さない。
そこからは弦十郎による世界に関する説明が行われた。並行世界、そこに生きるシンフォギア装者達の話と錬金術師と呼ばれる異端の者達。並びに彼らの操るアルカ・ノイズという人に害なすモノ。
黙々と語られる、にわかには信じてもらえそうもない可能性世界の話を終えたS.O.N.G.総司令はそこで息をついた。
「・・・ですので我々は今回、無理を押して世界を繋げさせて頂いたのです」
「なるほど」
口元に手を当てて、すべてを聞き終えた根津は小さく頷く。
話の内容は深刻だ。この世界は個性という超常を起点としてはいるが、それに劣らない程の事象が起ころうとしている。
それを目の前の男は伝えて来ていた。
根津が話された事柄を吟味し、次の言葉を選んでいると彼より先に口を開いたのはA組の担任たる相澤だった。
「ふざけるな」
短いが怒気を含んだ一言はそれ程広くはない校長室に響き渡った。その瞳はモニターの中にいる男に向けられている。
「そんな話を聞かされて『はい、そうですか』と言えると思っているのか?」
「相澤君」
校長の制止を無視したヒーローは前に進み出た。その目はしっかりと弦十郎を睨みつけている。そこに込められた怒りは隠しようもなかった。
「貴方達の世界の都合を我々に押し付けないで頂きたい」
『・・・至極、真っ当な御意見です』
向けられた目を受け止める総司令はゆっくりと返した。もはや敵意と言ってもいい感情を浮かべる顔を見た弦十郎はそれ以上口を開かずに見つめ返す。その反応は相澤に更なる反感を抱かせる。
睨み合いが、続いた。
「風鳴司令」
緊迫した空気の中、溜め息と共に口を開いたのはここまで無言に徹していたアガートラームの装者、マリアだった。
「良い加減にしないと余計な心配をかけるだけではないの?」
『・・・』
その指摘に黙り込む弦十郎は僅かに視線を泳がせる。彼の視線の先にいるのはエルフナインをはじめとした仲間達。
その誰もが笑いかけていた。
その誰もが「そろそろいいのでは?」と語りかけていた。
それを感じた弦十郎は顔を伏せ、小刻みに肩を震わせる。そしてその口から堪えきれない笑いを解放した。
『ふ、ふふふ・・・あーっはっはっは!』
「どうしたのですか⁉︎」
突如笑い始めた相手に驚いた根津の言葉を掻き消す弦十郎の高笑い。困惑する雄英の教師達を尻目に続いた。
そうして一頻り笑い終えた弦十郎はふっ、と息を払うと先程までの真面目ぶった顔とは打って変わる満面の笑みを浮かべて言った。
『いやぁ、申し訳ありません。少し演技が過ぎました』
どこか砕けた態度になる相手にここまでの流れをぶった斬られる。
『本当に申し訳ない。我々としても一応の体裁は整えなくてはならないと思っておりまして、あの様な対応をしておりました』
言うと言葉通りの顔で頭を下げる総司令は、その下げた頭を起こし衝撃的な一言を言い放った。
『先程話した件ですが・・・あれは全くの嘘。いえ、言い方を変えれば方便なのです』
今回、出久の世界にギャラルホルンを繋げるにあたり弦十郎は各所に根回しをした。
曰く『並行世界に他の並行世界から侵略の危機が迫っている。その対処にノイズに対応出来る装者を派遣する』と。
『我々はどうしても緑谷君に再び逢いたかった』
その為に何十枚もの申請書類と報告書を書き上げた弦十郎はその全てに目を通すと一つの不備がないことを何回も何回も確認した。
全ては自分の、自分達の思惑のために。
『全ては、我々の世界を救ってくれたヒーローに一言伝えたい言葉があったのです』
ありがとう。
『その一言を伝える為に、彼の献身に礼を言う為にこの機会を設けさせて頂いたのです』
弦十郎は、S.O.N.G.の面々はそれだけのために上位組織全てを謀った。
存在し得ない敵を作り出す為、並行世界のパヴァリア光明結社に協力を要請。これまでの借りを全て放出し、アダム・ヴァイスハウプトに交渉を仕掛けた。その内容は、聞いた彼でさえも僅かに困惑するものである。
『並行世界の錬金術師にはそちらの世界に侵入後、” 一切の被害を出さぬまま即座に我々に捕縛、元の世界に強制送還される”・・・いえ、そういう”お芝居”を依頼しています』
あまりに壮大な茶番に二の句を繋げない雄英教師達を尻目に弦十郎は笑みを絶やさない。
『今回の件はシンフォギア装者達も承知の上です。勿論、そちらの世界にご迷惑をかける事は致しません。もしもの際には我々全員が介入する手筈となっておりますので御安心を』
次々と彼らの作戦が開かれていく。どう考えても組織のトップが決行していいものとは思えなかった。一手間違えれば彼の率いる組織が瓦解してもおかしくはない。
それでも。彼は、彼らはそれを押し通した。
全ては緑谷 出久に感謝の言葉を伝える為だけに。
『事後承諾の形になってしまい、すみません。ですが・・・』
「いえ、これ以上は結構です」
弦十郎の言葉を遮る根津は手を前に出すと言った。
「正直申しまして貴方が言う言葉が正しいのかと混乱しております。しかしながらその目は嘘は言っていない。それは私にもわかります」
手は下ろされ、目は見据えられる。
画面越しに視線を交わす組織のトップは見つめ合った。同じく組織の長として互いの理を伝え合う両者。
「・・・貴方の言葉を私は信じます」
「校長⁉︎」
異を唱える相澤を無視した根津はニヤリと笑った。
「ですが・・・折角ですので我々も”それ”を利用させてもらいますよ」
『・・・ほう』
同じ立場ゆえ、彼の言葉の意図を感じ取った弦十郎も同様の笑みを浮かべた。
「これはまたと無い機会ですからね」
『えぇ、我々も”それ”には協力させてもらいましょう』
「全く・・・貴方は食えないですねぇ」
『そちらこそ』
トップ同士にしかわからぬ会話を交わしながら根津と弦十郎は笑う。二人が話す意図をいまいち掴めぬ相澤。
「そうしたら細かい日程を詰めましょうか」
『勿論です』
悪巧みをする悪戯っ子の様な顔で話を進める二人に、一人は困惑し、一人は嘆息する。そうしながらも盛り上がる彼らとは別に蚊帳の外の二人は『お互い大変ですね』とその目で存分に語り合うのだった。
そうして・・・。
その計画を纏め終わった頃。
一人のOTONAは口を開いた。
『根津さん』
先程までとは違い、どこか声音を変えた彼の言葉に校長は僅かに背を正す。
「・・・なんでしょうか」
『ありがとうございました』
その口から出るのは感謝の意味。
言いながら頭を下げる弦十郎に根津は理解ってはいたが言葉を返した。
「・・・理由を聞いても?」
『無論。緑谷君の事です。彼がいなかったら、我々の世界はどうなっていたかわかりません』
『それどころか全てを侵略されていたかもしれない』
『だが。彼は、貴方達の育てた彼はそれを打ち砕いてくれた』
『その事に、感謝を申し上げます。・・・本当に素晴らしい生徒を育てているのですね』
さっきまで童の様な顔を浮かべていた人物とは同一と思えない顔で語る彼に根津は笑い返した。
「えぇ。我々は次世代のヒーローを育てています」
「ヒーローとして間違いない行動を。困っているならすぐに救ける、そんな正しい事を遂行出来る・・・そんなナチュラルボーンなヒーローを育成しております」
「彼が、緑谷君がそれを成し遂げられたというのなら嬉しいのですよ。我々にとっても誇らしい限りです」
「そして、こちらこそ彼を護って頂きましてありがとうございました。・・・貴方達のおかげ彼は戻って来てくれたのですから」
根津と弦十郎はそれぞれ感謝を伝える。そこには打算も何にも無い。
見守る者としての責任を得た、心情の吐露。
OTONAとして当然の言葉を二人は互いに送り合った。
その頃。並行世界の一つでその会話は繰り広げられていた。
「・・・で。どうしてわたし達が出向かなければいけないワケダ」
「仕方ないでしょ? これも全部、局長がやらかしたのがいけないんだし」
眼鏡をかけた少女が忌々しげに吐き捨てるのを青髪の女性が引き継ぐ。溢れんばかりの胸を揺らした彼女は肩を竦めると、銀髪の女性に向き直る。
その視線に銀髪の女性は溜め息ひとつ。手の中でラピス・フィロソフィカスを握り締めた。
「それが私達の役割なら、果たさなくてはいけないわね」
三人の錬金術師は己が役割を認識すると、異世界へと渡るゲートを潜っていった。