僕のヒーローシンフォギア   作:露海ろみ

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九話目となります。

お疲れ様です。
ご挨拶が遅くなり、申し訳ありません。
昨年はお世話になりました。本年も宜しくお願い致します。

後日談を更新させて頂きます。


9.開くよ歓迎会、やって来るよ三人組

「それでは別世界からの三人に・・・」

「「「「ようこそー!!」」」」

 

打ち合わされるグラスの音はハイツアライアンスのロビーに鳴り響く。その音を聞きながら切歌達もA組の生徒達と次々にグラスを合わせた。

 

「わざわざごめんなさいね」

 

一番年長者のマリアは横に座る八百万に少しだけ申し訳なさそうに話しかけた。

 

「そんな事はありませんわ! 緑谷さんがお世話になった方々なら、私達にとっても恩人同然です」

 

どこか張り切った様子の彼女は嬉しそうに返した。隣に座る耳郎も続く。

 

「ウチら、いきなり緑谷がいなくなって本当に大騒ぎでしたから」

 

実際の所。緑谷 出久の失踪はかなりの大事件であった。

警備の一際厳しい雄英高校内で人が消える。

あり得ないはずの事態に当時の校内は蜂の巣を突いた大騒ぎに陥った。

箝口令が敷かれる程の事態にクラスメイト達は若干一名を除いて彼の安否を願っていた。

なおその一名は端の席で面白くなさそうにコーラの入ったグラスを呷っている。

 

「そうだったの・・・。いえ、それが当然よね」

 

マリアは静かに笑うとゆっくりと頷いた。語るべきは自分達の世界にいた時の出久の話なのだろう。大事な仲間の事を知りたいというのは当たり前の感情だ。

 

「あの子はね。いきなり現れたの。本当にいきなりよ?」

 

マリアは年下の少年、少女達にクラスメイトの冒険譚を話し始めた。

 

 

「月読君! 何か取ろうか?」

 

クラス委員を務める飯田はトング片手に今こそが自分の輝く時と、昼間追いかけ回した少女に紙皿を向ける。

昼間の恐怖からか、またはその圧からか彼女はビクリと肩を震わせた。しかし何にも言わぬ訳にもいかず、調は震える口を開く。

 

「あの・・・じゃあその春巻を・・・」

「まかせたまえ!」

 

手早く依頼の品を皿に盛ると調の前に置く飯田。

用意した料理は出来合いだが、雄英の生徒達に人気のある店の逸品。

歓迎会を開こう。

誰が言ったかその一言でA組の生徒達は動き出した。

ある者は食べ物を。

またある者は飲み物を。

そうして気がつけばそれぞれが目的の為に動き、今この場は形成されていた。

 

「召し上がれ!」

「ど、どうも」

 

硬い様子で紙皿と箸を取る調。おずおずと春巻を口に運ぶ彼女を飯田は見つめ続ける。その視線に口にする物の味を感じられずにいた調だったのだが、飯田は”THE 真面目”というを顔で口を開いた。

 

「すまなかった」

「え・・・?」

 

突然の謝罪。青年は頭を下げると繋げた。

 

「あの後、試合中の俺の行動が君に不快な感情を与えてしまったと緑谷君から聞いた。言い訳になってしまうが、あの時の俺は勝利を焦るばかりに君の感情を置き去りにしてしまった」

 

どこかぎこちなく角ばった動きで飯田はもう一度調に頭を下げた。

 

「本当に申し訳なかった」

「その・・・大丈夫、です」

 

あまりに真っ直ぐ過ぎる謝罪をする彼は返された言葉に顔を上げる。かけられた眼鏡の奥には申し訳なさが湛えられていた。

そんな生真面目な飯田に調は微笑みかける。

 

「びっくりしたけど・・・気にしていないから」

「・・・ありがとう、月読君」

 

笑顔には笑顔を。

笑い返す彼の顔に調の緊張も解ける。二人は互いの力について話を始めた。そこに瀬呂も加わり、会話は転がりだす。

 

「私の禁月輪は逃げる時に基本地面を走っているから上からの攻撃に特に注意してて・・・。飯田君はただ走るだけじゃなくて、壁とか使ってたよね」

「うむ。俺の個性は脚を強化するのものだからな。やろうと思えば壁も走る事が出来る」

「その点、俺はテープで空を飛べるぜ。空中戦ならお手のもんだ」

 

それぞれの持つ力についての考察を繰り広げていると、珍しい事に常闇も加わってきた。

 

「空中戦なら俺の黒影(ダークシャドウ)も負けんぞ」

「でもお前の個性、光に弱いじゃん」

「・・・くっ!」

 

リディアン音楽院は女子校であるので同年代の男子と話す機会が少ない調には新鮮な体験であった。加えて言うなら自分の持つ力、シンフォギアの話を隠さなくていいのは楽でいい。

会話に混ざった常闇に調は質問する。

 

「常闇君の個性って、どんなもの?」

「お、俺の個性は・・・」

 

調は新たな友の話に耳を傾ける。

出久の友人達は誰も彼も、優しい人だ。

そんな人達と一緒にいるからなのか。

それとも彼女自身思う所があるからなのか。

若しくは、両方なのか。

詳しくはわからないけれど調にはどれでも良かった。次々に話に加わるクラスメイト達に調も会話を弾ませる。

彼らは、出久の友人達は見知らぬはずの自分を早くも仲間として扱ってくれていた。

出会ったのは今日。でも、まるで旧知の友の様に語り掛けてくれる。

それは調にとって心地良かった。

 

 

一方。

出久は切歌との交際について質問攻めになっていた。

 

「で? 緑谷先生はいつから付き合ってんのよ?」

「そ、それは・・・」

 

グラスにジュースを注がれながら、赤い顔で縮こまる出久は意地悪い顔で笑う上鳴の様子を伺う。その隣には同じ顔をした切島や峰田の姿もあった。いや、言うならばどこか峰田の瞳には嫉妬の炎が宿っているのが見てとれる。その目は確かに笑って・・・もとい嗤っている。暗い火が灯っていた。

 

「ほらほら緑谷、ゲロっちまえよ。オイラに教えてくれ。どんな手を使ってそんな可愛い子を手篭めにしたのかをよぉ・・・」

 

嫉妬に狂う一言に反応したのは出久の隣に座る切歌だ。彼の隣に腰を降ろした彼女は側を離れるまいとしっかりと身を寄せていた。だが離れるどころか距離を縮めた切歌は彼の腕に自分のそれを絡める。その反応を見た峰田は炎を燃え上がらせた。出久に彼女の胸が、その豊かな胸が押しつけられている。それで嫉妬の理由としては十分だった。口元を釣り上げ、ヒーローとしてかなり不味い顔をした峰田はほぼ暗黒面に堕ちかけた顔で出久に迫る。

 

「みィどるぃやァァ⁉︎」

「うッ⁉︎」

 

あまりのダークサイドからの圧に危うく屈しかけた彼を救うのは・・・。

 

「デス!」

 

掌底が峰田の広いおでこを捉える。そのまま出久から引き離すと、自身も染めた頬で言い放った。

 

「てごめになんかされてないデス! デク君はもっと純粋にピンチのわたしを救けてくれて・・・それで、それで星空の下で『好き』って言ってくれたのデス!!」

 

彼女なりに出久を救けているつもりなのだろう。だがその言が新たな燃料を投下している事に気がつかない辺り、やはり切歌は切歌だった。

彼女は思わず言ってしまった口に手を当てて狼狽すると、ちょこんと出久の隣に座り直した。

 

「・・・おい聞いたか? 星空の下で告白したんだとよ」

 

これは良い事を聞いたと上鳴は僅かに声を張り上げる。それを聞き逃すA組ではない。周りの生徒達の注目が集まってくる。皆決まって微笑ましいものを見る目を向けていた。

そんな中、峰田だけが違う反応をする。

絶望、焦燥、羨望など様々な表情を百面相の如く繰り広げた彼は遂には涙を流すとその場から逃げていく。

 

「ちくしょう! みどりやのくせになまいきだぞ!」

 

もはや捨て台詞のそれを残し、彼は溢れる熱い涙を宙に舞わして会場から駆け出した。

ただひたすら、目の前の現実から逃避する為に。そうしなければ耐えられなかった。

背にかけられる声に振り返る事も無く、峰田 実は出口を目指す。

そんな彼は階段から降りて来た彼女達に気が付かない。

その一人に正面からぶつかってしまった。

 

「ッ! なんだぁ⁉︎」

 

弾力のある『何か』に弾かれた峰田は尻餅をつく。

 

「おいお前。大丈夫か?」

 

峰田が相手の声を聞いて顔をあげると、そこにはとんでもないものがあった。

伸ばされた手ではない。『それ』から峰田は丸くした目が離せなかった。

 

「すまねぇな。まさか飛び出してくるヤツがいるとは思ってなかったんだ」

 

銀髪と『それ』を揺らしながら語りかけてくる少女に目を奪われた彼は返事を返した。

 

「・・・あ、はい」

 

どこか不可解な反応をする葡萄の房の様な頭をした少年を救け起こした銀髪の少女は首を傾げる。だが少年は顔を変えずに淡々としていた。

そんな彼に少女は、雪音 クリスは質問をする。

 

「それでよ。いきなりですまねぇんだが緑谷 出久って奴に会いに来たんだ。お前知らねぇか?」

「はい。緑谷ならあっちにいます」

 

彼は自身が駆け出して来たポイントを指差すと出久の存在を匂わせる。指の先には驚いた顔の出久がいる。だが今そんなことは峰田にとってどうでもよかった。

 

「おう。ありがとな」

「とんでもございません」

 

礼を言われるが何かを意識しすぎた少年はどこか形式ばった返答をする。

ようやく見つけたヒーローの姿に口角を上げた少女がその名を呼びながら歩き出していく姿を見送り、峰田はその背中に視線を送り続けていた。その背の向こうにある二つの丘を見続けている。

 

 

双丘の彼女の後ろに続くは二人の装者。その其々が久しぶりに出会う出久に声をかけた。

 

「よう、デク!」

「久方ぶりだな」

「元気だった?」

「クリス先輩・・・翼さん、響さん!!」

 

感激のあまり涙を流す出久が三人に駆け寄る。別れたのはひと月程だったが世界を隔てていると思えば永遠ともいえる日々だ。異世界のヒーロー達は変わらぬ笑顔で出久を受け止める。

 

「来てくれたんですか!」

「あったり前だ!」

 

変わらぬ笑みで拳を掲げる彼女。

出久は自分のそれで打ち鳴らす。

硬い音は信頼の証。

それを聴き、笑いあった。

 

「変わりないか?」

「えぇ!」

 

差し伸べられた手を握る。

細く力強いその指を握り返した。

しなやかなそれは先達の証。

それを感じ、笑いあった。

 

「元気そうでよかった!」

「響さんもです!」

 

挙げられた掌。

出久は音を立てて離れる自分の手を見送った。

弾ける音は友情の証。

それを受け止め、笑いあった。

信号機トリオとの再会は出久の周囲に人だかりを作る。

だが口々に挨拶を交わす友人達を横目に出久はどこか不思議に思っていた。勿論装者達と再会出来て嬉しいのは確かなのだが、向こうの世界の安全を考えると全員が一度にやって来るのは少し変だ。

そんな彼の懸念の表情に気がついたクリスは目配せを一つ送る。

 

「デク」

 

短く名を呼ばれた出久は彼女を見つめ返した。かの世界でも頼もしく笑っていたクリスは、小さな手を複雑な顔をするヒーローの頭に乗せると耳元で小さく告げる。

 

「後で話す。大丈夫だ」

 

周りには聞こえない声量で伝えたクリスは辺りにいる彼のクラスメイト達に声を張った。それは自身と共にやって来た仲間の自己紹介。そして持参した手土産を掲げると笑いかけた。

 

「こいつには世話になった!」

 

そう宣言をすると音頭を取り、いつの間にやら手にしたグラスを挙げる。

 

「デクの仲間なら、あたしの仲間も同然だ!」

 

クリスが周囲を見回すと集まるA組の視線。その中には爆豪のものもあった。この彼は自分の戦った彼では無い。でも、その太々しい瞳はそっくりだ。変わらぬそれに目を返した。

当の彼はと言えば、向けられる意図的な視線に不愉快そうな顔をしている。だが『あの彼』よりどこか幼いその表情に雪音 クリスには不適な笑みを返してやった。やや面食らった面持ちの爆豪にニンマリと笑顔になる。

基本的にノリの良いA組の面子は杯を掲げる少女の勢いに乗っかる形で盛り上がり始めた。

彼女が高校三年生であるという事実が知れ渡ると現場には衝撃が走る。

 

「そんな・・・こんなに小さいのに!」

「おい」

「そんな・・・こんなに大きいのに!」

「・・・おい!」

 

至極素直な意見に反応するクリス。そんな彼女を見て爆笑した響はいつも通りのツッコミを喰らい、床にダイブする。そんな光景を小さく笑いながら見ている翼の姿。

遣り取りを見て、あの世界でよく見た光景だと出久は思う。騒がしくも温かな彼女らとの日々は決して幻想ではなかったのだ。

気づくとまた泣いていた。顔を伏せて溢れる涙を見送っていると、横に座る彼女が手を伸ばす。

その手は彼を抱き寄せる。出久には言葉は交わさずとも彼女の言いたい事がよく解った。

会えないと思っていた人々と再会した喜びを噛み締めながら緑谷 出久は彼女の胸に涙を流す。

 

 

 

 

A組と装者達が宴を繰り広げる中、峰田 実は一人蚊帳の外にいた。

彼は騒ぎを続ける集団を見つめながら、ただ一人佇む。

その顔は真剣そのもの。

その顔は真顔そのもの。

 

「柔らかかった・・・」

 

見開かれたその目は釘付けである。

 

「おっぱい」

 

峰田 実は一言だけ感想を述べた。




色々と思う所があり、筆が止まっておりました。
でも私のペースで書き進めていこうと思います。
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