僕のヒーローシンフォギア   作:露海ろみ

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十話目となります。

お疲れ様です。
皆様、元気にお過ごしでしょうか。
都内でも雪が降る程の寒波が来ておりますが、私は呑気にミートソースを作っておりました。

続きをお納めくださいませ。


10.茶番への作戦会議

宴も酣。

ハイツアライアンスにも消灯の時刻がやってくる。

 

「よし、みんな! 片付けをして、部屋に戻ろう」

 

委員長らしく手を叩く飯田に追随する生徒達は散らかったロビーを片付け始めた。装者達もそれに倣い、手伝う。

 

 

「梅雨ちゃん。はい、これ!」

「ありがとうございます」

「もう! 敬語なんて使わないでよ?」

「でも先輩ですから」

「梅雨ちゃんと私の仲でしょ? そんなのいらないよ。『響』でいいから!」

「・・・ありがとう、響ちゃん」

「うんっ!」

 

仲良くゴミを袋に詰める二人。

蛙吹 梅雨と立花 響はまるで同一人物の如く息があっていた。

当人達曰く『お互いが他人とは思えない』そうだ。

何故だかは当人同士も分からない。

 

 

「おい爆豪。何こっそり逃げようとしてやがる。机の端持てよ。運ぶぞ」

「何で俺がそんなことを」

「はぁ⁉︎ お前は先輩の命令が聞こえねぇのか?」

「・・・いちいち煩ぇよ牛乳女」

「ッ! お前どこ見て言ったぁ⁉︎」

 

吼える爆豪と言動からその身を抱くクリスは顔を合わせてから言い合いを続けていた。それはまるで姉弟の様な遣り取り。気の強い者同士、どこか感じ合えるものがあるのかもしれない。

 

 

「手伝います」

「む。尾白、すまない」

「い、いえ」

「ではそっちのグラスをまとめてくれるか?」

「・・・はい!」

 

指示をされた通りに机の上のグラスをまとめ、流しに持っていく尾白 猿夫の視線は

翼に釘付けだった。

 

「どうした?」

「え⁉︎」

「顔が赤いようだが・・・」

「な、何でもないよ!」

 

洗い物をしながら心配する障子の言葉に慌てた様子の彼は、それでも異世界からやってきた女性(ひと)から目を離せない。

その視線に気が付かない防人は障子の横に並んだ。

 

「私も手伝おう」

「すみません。お願いします」

 

そう言い、洗い場のスペースを空けた彼だったが数瞬後には後悔した。翼が洗った食器類は謎のバランスを保ちながら積み上げられる。

 

『何故その角度で安定するのだ⁉︎』

 

不可思議な力場を形成する箸と皿。

もはや芸術だった。

 

 

「百、これはこっちに片付ければいいのかしら」

「はい!」

「このお鍋はこっちでいい、三奈?」

「大丈夫です!」

「さぁ、みんな。迅速に片付けましょう!」

「「「「はーい!!」」」」

 

いつの間にやら女子達の中心に立つマリアは流石は年長者。彼女達をまとめあげると指揮を執る。その中で僅かに表情の暗い一人の少女を気にかけていた。

 

「大丈夫?」

「え・・・?」

 

いきなり声をかけられたお茶子は手にした皿を落としそうになる。マリアは手を伸ばし、それを掴むと心底心配した顔で彼女を見る。

 

「体調でも悪いのかしら?」

「そうではなくて・・・その」

 

申し訳なさそうに言うお茶子の視線がチラリと走った。彼女の目の先には楽しげに話しながら同じく片付けをするヒーローと自分の家族の姿。仲睦まじい彼らを見ながら更に顔を暗くする彼女を見たマリアは気が付いてしまった。

 

「すみません、これ持っていきますね!」

 

足早に手にした食器を持ち駆け出した彼女を見送ると、マリアは側にいた芦戸に話しかけた。

 

「ねぇ三奈、もしかしてなのだけれど」

「・・・わかっちゃいましたか?」

 

芦戸 三奈は知っていた。

麗日 お茶子が恋している相手を。

そして彼女が彼の為にその想いを押し留めていた事を。

 

「やっぱりそうなのね・・・」

 

その言葉に頷きだけを返す。普段なら明るい彼女も今日一日の麗日の有様を見続ければ思う所があった。

そんな芦戸の様子に年長の装者は肩を竦める。

 

「出久も罪な男なんだから・・・」

「全くです」

 

そう言うと二人は顔を見合わせて噴き出した。そうしてくすくすと笑い合うと、芦戸は言った。

 

「アタシ、ちょっとだけ緑谷の事許せないんです」

「良いと思うわよ? 女の子を泣かせる男は引っ叩かれても仕方ないもの」

「ですよね!」

 

恋を見守るもの同士、笑い合いながら作業を続けた。

 

 

「調ちゃん。これ運んでおくね」

「うん。口田君、ありがとう」

 

テキパキと手際よく動く彼女のサポートに回る口田はにっこりと笑うとまとめ終えたゴミ袋を運ぶ。

 

「お。力仕事なら俺にも任せろ!」

「私もやる〜」

 

砂藤が力瘤を見せつけて袋を担ぐと、葉隠も見えざる手でもう一つのそれを掴んだ。宙に浮くゴミ袋を見て、調も残ったそれを持ち上げる。

 

「よいしょっと」

「なんか様になってるね。なんだかお母さんみたい」

「そ、そう?」

 

照れた顔で答える調は仲良くなったA組の生徒達と会話を続けながら、ゴミ捨て場を目指す。あたらしい世界で出会った同じ学年の同級生達と共に。

 

 

全てが片付き、生徒達はそれぞれ部屋に戻っていく。明日もまた授業があるのだ。

物静かに楽しんでいた轟も欠伸を一つしながら出久の前を通り過ぎる。

 

「じゃあ、また明日な」

「うん! おやすみ!」

「僕もこれで失礼するよ」

 

青山はいつの間にか寝間着に着替えていた。ナイトキャップを揺らしながらその名の通り優雅に部屋に戻っていく。

手を振り見送った出久は装者達と残されたロビーでふと気がつく。

 

「そういえば・・・皆さんは一度帰るんですか?」

 

一体彼女達はどうするのだろう。一応ここには空き部屋もあるので泊まることも出来る。だが残った彼女達にその雰囲気は無かった。

 

「よし・・・全員いなくなったな」

 

そうクリスの口が開かれる。

言葉に出久以外が首肯すると全員の視線が彼に集まった。

 

「え?」

 

突然の事に動揺する彼はビクリと身を震わせ、一歩後ずさる。だが僅かに逃げ出そうとした出久は一瞬のうちに背後に回った響に捕らえられた。

 

「ごめんね〜」

 

謝りながらもしっかりと退路を塞いだ彼女は申し訳なさそうに笑う。

 

「さぁて、デク・・・」

 

獲物に睨まれた草食動物。

獲物を射程範囲に捕らえた肉食動物。

両者の距離が縮まっていく。口元をニヤリと上げるとクリスは言い放った。

 

「ちょっと深夜の散歩に付き合ってもらうぜ?」

 

そこで彼女達の表情から出久は悟った。

何かに巻き込まれつつあることを・・・。

 

 

 

出久の連れて行かれた先は人気のない校舎。暗い道を七人は進む。よく知った場所ではあったが夜となると感じ方が全然違った。

やがて辿り着いたのは雄英高校の会議室。促され扉を開いた彼の目に映るのは室内の様子。

 

「やぁ緑谷君。夜分に申し訳ないね」

「・・・」

「夜遅くにごめんな」

 

出迎えたのは校長、相澤そしてオールマイトの三人。雄英の教師三人が揃い踏みの状況に訝しげな顔を浮かべてしまう出久であったが、それ以上に不可解な人達がその場にはいた。

見知らぬ三人の女性がそこにはいる。

目を向けてくる三人はそれぞれに凛とした、値踏みする様な、微笑ましいものを見る様なそれぞれの目で自分を見てきた。

 

「サンジェルマンさん!」

 

真っ先に声をあげたのは立花 響。どこか男性じみた服装だが、派手な巻毛を擁した女性に彼女は嬉しさを全身から滲ませて駆け寄る。

 

「来てくれたんですね!」

「えぇ。これが仕事だから」

 

あくまで冷静に言葉を返すサンジェルマンと呼ばれた女性はふいと目線を逸らしながら、ぶっきらぼうな態度で丁寧に答えた。

そんな様子にも動じずに笑顔になる響は彼女の手を取るとぶんぶんと握手を続ける。

振られる手を見たサンジェルマンは見ながらも更に視線を彼方に持っていく。そんなつれない態度でも響には理解っていた。

 

「すまないな」

「全く。迷惑をかけないで欲しいワケダ」

 

ニヒルに目線鋭く返す童女に笑いかけながら翼は同じく視線を送る。別世界とはいえ、かつて戦った者同士の共有感だろうか。通じ合う彼女達は見えぬ拳をぶつけると互いに競う目で語り合う。

 

「お手柔らかに頼む」

「はッ! 約束は出来ないがな」

 

どこか挑戦的に応え一笑するプレラーティに翼はどこか信頼の感情が浮かべている。

 

「カリオストロ・・・ありがとう」

「いいのよ。たまには統制局長の戯言に付き合ってみるものね♪」

 

マリアの言葉に返答する彼女は豊満な胸を揺らしながらも笑顔で返した。零れ出んばかりのそこに一瞬目を取られた彼を見逃さず、出久の尻を切歌は抓る。

 

「いっ!」

「・・・どこ見てるデス?」

「み、見てないよ⁉︎」

 

慌てて弁解するが頬を膨らませた彼女はますます頬を膨らませるとプイッと横を向く。そんな会話をする二人を見たカリオストロは新しい玩具を手にした子供のように介入する。

 

「あら。お姉さんの魅力に気がついちゃった? あとで一緒にタノシイコト、する?」

「け、結構です‼︎」

 

動揺し寄せられた身体から距離を置く出久は切歌の後ろに隠れる様に身を隠した。そんな可愛い少年の反応を残念そうに見つめるカリオストロ。

 

「つれないわね〜」

「・・・それ以上やると怒るデスよ?」

 

真剣な視線を送りながらギアペンダントを握る切歌に苦笑した彼女は両手を挙げると、初心な反応をする彼から退散した。

 

「おい。話を進めるぞ」

 

業を煮やした相澤の一言で作戦会議は始まる。その内容は出久を混乱の渦に放り込むものであった。

目の前で進められる謎の会合。あまりの事に頭が回らない中、クラスメイトの名前が出てくる所で出久は反応したが、理解ができなかった。

 

「それならばチーム分けはこの様に・・・」

「切歌と調のカメラから見た分だと良い塩梅かと」

「私達としても生徒が大きな怪我をするのは本意ではありません」

「でしたら・・・」

 

根津、マリア、相澤を中心に展開される会話。その他の面子はほぼその場にいるだけだ。時折、意見を求められる事はあった。疑問符で頭をいっぱいにしながらも律儀に出久は答えていく。

 

「あ、それならかっちゃんで大丈夫だと思います」

「はい。尾白君ならいけるかな、と」

「え? あす・・・っ梅雨ちゃんなら・・・」

 

自分の知るクラスメイトの事を話しながら、出久は不思議に思った。

なぜこんな事を聞くのだろう。

 

それから小一時間経ち、会議は終息を迎える。

 

「ではこの編成で取り行おうと思います」

 

根津の一言で会議は締め括られた。出久以外の全員が頷く中、残された彼だけが未だによく分からずにいる。

思考のまとまらぬ中、辛うじて声を上げる少年。

 

「待ってください! これ、どういう事ですか⁉︎」

 

完璧に蚊帳の外に置かれた彼からしたら当然の疑問。見知った教師達と装者達。でもそこには新たな顔が含まれている。

謎の三人組。

彼女達は一体全体何者なのか。

そして、この会合とはなんなのか。

 

「誰か説明してください!」

 

遂には立ち上がり全員を見回した彼を見つめ返す視線達。そんな出久の表情を見た翼が隣に座るクリスに声をかけた。

 

「説明したのではなかったのか?」

「すまん、先輩・・・。すっかり忘れてた」

 

冷や汗をダラダラ流しながらクリスは蚊の鳴く声で答える。彼女は出久の同級生達と会話する事を楽しみ過ぎた故に、自身が言った台詞を完全に失念していた。

いや、伝えた気になってしまっていた。

 

「だ、だってよぉ!」

「雪音・・・」

 

後輩の肩に手を置くと先輩は社会に出てから大切な三つのことを伝える。

 

「報・連・相。わかるな?」

「う・・・」

 

完全に言い負けるクリスを見た響は腹を抱えて笑い声を上げる。声の元凶を真っ赤な顔で睨みつけるクリスだったが、非が自分にあるだけに何も言えなかった。

 

「覚えてやがれ・・・」

 

ぐぬぬ、と歯軋りと共に拳を握るクリス。

その会話に笑い声を被せるガングニールの装者と苦笑する周りの装者たち。

一人蚊帳の外に置かれたワン・フォー・オールの装者は混乱を深くしていた。

 

「緑谷少年。私から説明するよ」

 

いつの間にか側にいたのは自身の師。弟子の肩に手を置くとこけた頬で笑いかける。

 

今回出久の世界とパスを繋ぐ為に弦十郎が打ち出した手はこうだ。

 

『別世界に並行世界からの脅威が迫っていて、その対処のために装者の力が必要である』

 

言葉にすると単純ながらもそれを為せるのはS.O.N.G.だけという限定条件を課したミッションは様々な意見が上がる中、承認される。無理もない。何故なら世界を渡れるのは装者だけなのだから。

だがそれ自体は方便であるが、報告しなくてはならない結果が必要である。

つまりは『異世界へと侵攻する勢力がいた』という事実。

それに今回選ばれたのは並行世界のパヴァリア光明結社の面々であった。

 

「つまりあの人達はこちらの世界とあちらの世界を繋ぐために協力してくれているのさ」

 

二人の会話を聞いていた三人の女性は出久の向けた視線に応え、頷く。

しっかりと、渋々と、愉快そうにと。

三者三様の返答を受ける出久は僅かな瞬間硬直した後に三人の前に歩を進めると真っ直ぐに頭を下げる。それが理解らないほど緑谷 出久は愚かではない。その行動に、胸の内に、言葉に感謝を込める。

 

「ありがとう、ございます」

 

『悪者』を演じてくれる三人に素直に首を垂れる出久に錬金術師達が驚く。見れば彼の足元には雫が落ちていた。震える肩と次々に数を増やす涙の跡。それを確認した三人の錬金術師達はそれぞれ微笑むと言葉を返した。

 

「気にしなくていいわ」

「癪だけれども統制局長の命令なワケダ」

「もう! ホントにこの子可愛いわね♪」

 

堪えきれなくなったカリオストロが出久を抱きしめる。その胸に顔を埋められる彼を見て瞬間的に立ち上がる切歌であったが、次の瞬間には腰を降ろしていた。

 

だって彼は涙を流し続けていたのだ。

 

そこに邪な感情は一切無く。

ただ感謝の感情のみを溢れさせた彼は泣き続ける。それを受け止める錬金術師は彼の頭を撫でると笑いかける。

 

「また会えてよかったね」

 

彼だけに聞こえる声量で言いながらカリオストロはヒーローの頭を撫でてやる。

出久の心情を理解した切歌は彼の心を尊重して、その光景を見守った。

 

 

 

 

その後に細かい説明を受けた出久はその計画に了承し、会合は終わりを告げる。三々五々と離散していく中、自分の部屋に戻ろうとしていた出久に切歌が声をかける。

 

「どうしたの?」

 

泣き赤く腫らした目で応える出久は切歌に返した。

そんな同い年の彼。

そんな同い年のヒーロー。

無言で切歌は彼の手をとると、繋いだ。

言葉はいらない。

私と彼は、ちゃんとここにいるのだから。




最近は一話を書くのに多大な時間がかかるようになってしまいました。
それだけ一つ一つに考える事が多くなったせいなのかもしれません。

悩む事も増えました。
キャラクターのイメージは保てているのか。
矛盾はないか。
破綻していないか。
何度も何度も見直すようになりました。

あと。
設定警察に目をつけられるのが怖いです。
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