僕のヒーローシンフォギア   作:露海ろみ

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お疲れ様です。

そしてお久しぶりです。露海ろみでございます。
思えばいつぶりの投稿と相成りましょうか。
先日のシンフォギアライブでフォニックゲインが高められましたので、書き上げました。

対戦、よろしくお願いいたします。
あとご感想などありましたら、是非お待ちしております。


13.期末テスト、はじめました

「では始めましょう」

「えーと、本当にこの通りにいくんですか?」

「会議で流れは詰めただろう?」

「そうなんですけど・・・」

「大丈夫よ。君のお友達には必要以上の怪我とかはさせないから♪」

「あの、そうではなくてですね」

「心配無用よ、緑谷 出久。私達はすべき事を理解しているわ」

「ですから」

「少しは信用してほしいワケダ」

「そうではなくって!」

 

緑谷 出久と襲撃者の三人の会話は平行線を描く。異世界を救ったヒーローの少年は台本を読みながら、困った顔で彼女達に向かい合った。

だがそのリーダーは僅かに口元をあげると、ヒーローの少年を見つめた。

 

「心配いらないわ。私たちは、成すべきことをするだけよ」

「サンジェルマンさーん。こちらは準備完了です!」

 

少しばかり距離の離れたところから声を張り上げる響は仲間達と共に手を振っている。彼女をはじめとしたシンフォギア装者六名は何故か不思議な事に満身創痍といった体で座り込んでいた。だが誰一人として痛がる素振りは、ない。

 

「いつでも行けます!」

「わかった。では皆、手順通りに」

「「「「「「「「「よろしくおねがいします(デス)!」」」」」」」」」

「本当に上手くいくのかなぁ・・・」

 

なぜか盛り上がる女性陣の中でただ一人の彼は折り畳まれた台本を見ながら不安感を露わにしていた。

 

 

その日。

異変はすぐにA組の面々に伝わりつつあった。

緑谷 出久がいない。

間も無く朝のホームルームだというのに、いつもなら席に着いている彼が遅刻しているのだ。

 

「・・・緑谷、来ないな」

「どうしたんだろうね?」

「朝ごはんの時はいたよね」

「誰か彼を見ていないか⁉︎」

「『先に出る』って寮を出て行ったのは見たぞ」

「え? ・・・おかしくない?」

「それならなんでいないの?」

 

クラスメイト達が騒めく。朝礼を知らせる鐘の十分前には席についているくらい、彼は真面目であった。

だがそんな彼がいない。

 

「おい・・・」

「マジでどこ行った?」

「いやいや。”また”とかありえねぇよな」

 

これではまるで彼が消えた日のようだ。

 

クラスメイト達は席を立ち上がる。その顔には焦りがあった。

彼は確かに還ってきたはず。

だからこそ。この一月、繰り返されたルーティーンが乱されていることに焦りを覚える。前回は『保健室にでも行っているのではないか』という甘い考えから、彼が還ってくるまでかなりかかった。

その思いはクラスメイト達を焦らせる。

 

「探さなきゃ!」

「緑谷!」

「・・・クソが」

 

ホームルームが始まる寸前に起こった異常事態にA組の面々は教室を飛び出した。クラスメイト達はHR開始の鐘が鳴り響く中、学校中を駆け巡る。連絡アプリを使い、情報を密にするが誰にも彼の姿は見つけられなかった。

校舎、校庭、寮。思い当たる所を探しに探し回った彼らは見つからないがためにやがて徐々に一点に集まり出す。

そこはA組にとって因縁の場所。

ヴィラン連合との戦いが始まった曰く付きの場所。

 

USJ。正式名「ウソの災害や事故ルーム」

 

場合によっては何処かから怒られそうな名称のそこにA組は自然と集まっていた。

集まった彼らの一人が扉に手をやると、息を飲みながら開く。こんなに探しても見つからないとすれば、最後はここしかない。そんな確信めいた願いが一年A組の面々の顔に現れる。

ゆっくりと開いていく扉に中の光景が広がる。

 

そこには倒れ伏せるシンフォギア装者達と囚われたクラスメイト、緑谷 出久の姿があった。

 

「くっ・・・ま、待て!」

「シンフォギアといってもやはりこの程度か! 片腹大激痛なワケダ」

「デク君!!」

 

聞こえてくるのは数人の声。

 

「あらぁ? 手も足もでないの? お姉さん、肩透かし食らっちゃった」

 

見えてきたのは無様に囚われたクラスメイトの姿。その首には腕を回され、身動きが取れずにそれでも抗う。だが彼の足掻きなど通じていないのか銀髪の女性は平然と告げた。

 

「やはりこのタイミングで間違いはなかったようね。プレラーティ、カリオストロ! 特異点の回収完了。目的は達したわ。散開しつつ、帰還ポイントで合流よ!」

「ま、待て! そいつは関係ねぇ・・・関係ねぇんだ!」

「待て! パヴァリア光明結社!」

「了解なワケダ」

「りょーかい!」

 

その言葉を最後に地面に何かを叩きつけ姿を消す謎の三人組と囚われの出久。その間A組の面々は状況に圧倒され何にもできなかった。彼女らと出久の姿が消え失せた数瞬経た後に、ようやっとA組は意識が追いついた。

 

目の前で緑谷 出久が攫われた。

 

それは度重なるA組の不祥事だ。

前回は突然の事もあり感知できなかった。

だが今回はまんまと目の前で仲間が連れ去られたのだ。

そしてみすみすそれを逃してしまった。

呆然とするクラスメイトは眼前の出来事を受け入れられずにただ立ち尽くす。

その中で声を上げたのは剣の装者。

 

「緑谷! 緑谷ぁぁぁ!!」

 

空間に鳴り響く叫びに我を取り戻したA組はヒーローらしく負傷者の元へとそれぞれ走り寄った。異常時、災害時に負傷した人を救助するのもヒーローの役割の一つ。雄英高校一年A組は目の前の救助者に迅速に対応した。

倒れる彼女らは出久も纏っていたシンフォギアをボロボロに傷だらけ。装甲はひび割れ、所によっては血を滲ませている。立ち上がることさえ出来ずに息も荒い。マリアに駆け寄った八百万は彼女を抱きおこす。

 

「しっかりしてください。マリアさん!」

「その声・・・百?」

 

意識を失いそうな彼女はかろうじてといった体で目を開いた。笑顔で話してくれた顔が血に塗れている。その非現実さに八百万は涙が出そうだった。

 

「何が、一体何があったのですか⁉︎」

「・・・ごめんなさい。出久が・・・出久を連れて行かれてしまったわ・・・」

 

呼吸することさえ辛そうに話すマリアは手を伸ばす。震えるその手は隣にいた葉隠が掴んだ。握られる手に涙を流しながらマリアは叫ぶ。

 

「本当にごめんなさい。私達の油断で彼を、出久を護れなかった・・・‼︎」

 

その一言はA組に響き渡る。

 

「あいつらは、無意識に世界を渡った出久を『特異点』と捉えて狙っていた。異世界へ侵攻する為の実験材料として連れ去るつもりなのよ」

「それって⁉︎」

「あの子が狙われている事は事前の調査で理解っていたのよ。 だから私達全員がこの世界に渡ってきたの。出久を絶対に護るために!」

「私達の世界を救ってくれたあやつを・・・緑谷が護る世界を私達が護る為に来たのに・・・すまない」

 

天羽々斬を支えになんとか立ち上がった翼が続きを繋ぐ。

 

「不覚だった。まさかこんなに素早く攻めてくるとは・・・ッ」

「風鳴さん!」

 

力を失い崩れる彼女にA組の女子面子が駆け寄る。その中に唯一の男子、尾白はギアを砕かれ膝を突く翼の手を取った。

 

「しっかりしてください!」

「すまない」

 

昨夜とは違い弱々しい声をあげる防人は涙も溢すまいと歯を食いしばった。代わりに血を流しながらも声を上げる彼女。その戦闘が如何に激しかったかを物語る惨状に、今度は尾白 猿夫が怒りを露わにする。握る手に力が宿った。

 

「尾白。緑谷を・・・緑谷を救けてやってくれ」

「ッ・・・はい!」

 

弱く込められる手に、それを上書きする力を込める。奇しくもそれはA組の意思を表していた。

倒れるシンフォギア装者達。

それを救け起こす彼らは其々が顔を上げた。

ヒーローと成ろうとする彼らは一人、また一人と立ち上がる。

 

語り合ったのはたった一夜。

だがそんな事は関係ない。

共に飯を食べ、杯を交わした仲間を傷つけられて、黙ってはいられない。

例えそれが出会ったばかりの人達であろうとも。

 

「行こう」

 

委員長、飯田の言葉は続いた。

 

「緑谷君を助けるぞ」

 

それは鼓舞する言葉ではない。

 

「俺たちには、それを成すべき義務がある」

 

しかし静かながらに決意を込めた言霊を紡ぐ。

 

「緑谷君を・・・俺たちの仲間を連れて行かせてなるものか!!」

 

応える声は猛々しく響いた。

本来ならこの事態は彼らの手に余る。即座に教師陣に連絡を取り、事態の収拾に動いてもらうべきだ。

だが彼らはそうはしない。

仲間が、友達が、クラスメイトが。

 

今、すぐに、救けを求めている。

 

ならば動くには十分だ。

 

来たる戦いに拳を打ち鳴らす者。

目の前で消えていった者らを睨む者。

ヴィランとの戦いに口角を上げる者。

託された言葉を拳に込める者。

 

A組はそれぞれの想いを滾らせる。

彼らはバラバラだ。

性格も違うし、持ちうる個性も重なるものはない。

だが、たった二つだけ重なるものがある。

 

それは彼らがヒーローである、ということ。

そして彼らが緑谷 出久のクラスメイトである、ということ。

その二つだけあれば十分だ。

いや。そのどちらかさえあればいいのだろう。それだけあれば、彼らが一歩を踏み出すに値する。

 

それぞれの心を胸に雄英高校一年A組は立ち上がる。

緑谷 出久を攫った奴らを逃さぬ為に。

クラスメイトを、大切な仲間を助ける為に。

 

 

・・・とはいえ。

緑谷 出久を連れ去ったヴィラン達は何処へ行ったのだろうか。

その答えは思わぬところからやって来る。

 

『お前達、無事かッッ!!』

 

彼等に聞こえてきたのは野太い男性の声。

 

『すまない、予想以上の妨害を受けて通信を遮断されていた!』

「師匠!」

 

梅雨に助け起こされた響が叫ぶ。ひび割れたガングニールから破片が溢れた。自壊寸前のシンフォギアを維持はしようとする彼女は謝罪と共に出久が拐かされた事を迅速に伝える。

それを聞いた男の顔が歪む。想定出来なかったわけではない。だが、あまりに速すぎた結社の動きに彼は机を砕いた。

 

『なんという事だ・・・』

「デク君・・・」

 

切歌の泣きそうな声。

無理もない。愛する人を連れ去られたのだ。そんな彼女の手を握っていた『恋した』少女が言う。

 

「大丈夫!」

 

麗日お茶子は涙を零しながら、その手を握り締める。

 

「まだきっと間に合う! デク君は連れて行かせない‼︎」

「そう遠くへは逃げられない。雄英の敷地内からはそう簡単には逃げられないはずだ」

「探すぞ! 草の根分けてでも見つけ出してやる!」

「緑谷を、救けるぞ!」

 

少女の言葉にクラスメイト達が口を開いていく。誰一人として負の想いを口にするものはいない。

画面ごしにその眼を見た弦十郎は彼らにわからぬように小さく、本当に小さく笑った。

そうして試すかのように言った。

 

『奴らは君達の戦力を遥かに凌駕している。それでも・・・いくのか?』

 

その答えは当たり前の様に瞬時に返ってくる。

 

 

 

 

A組の面々が弦十郎の指示のもと、三方に分かれて飛び出した後、残された装者達は暫く動かずにいた。

やがて一人が立ち上がり、一人、また一人立ち上がると去っていったヒーロー達の背中を見つめ続ける。

装者は各々ギアを解く。するとさっきまでの負傷が嘘の様な無傷の彼女達がいた。

 

「若い。そして熱いな」

「そうね。でも頭に血が上っている感じじゃなかった」

 

青と白銀の装者が言う。

 

「どうなるかな?」

「まぁそこそこやれるんじゃねぇか?」

 

黄と赤の装者が続いた。

 

「頑張れ、みんな」

「応援してるデスよ!」

 

桃と緑の装者がエールを送ると新たな回線が開く。

 

『皆さん、お疲れ様でした。コントロールルームに合流して下さい』

 

エルフナインの声がインカムから聞こえてきた。

 

『うぅ・・・本当によかったのかなぁ』

 

加担したとは言え、罪悪感を感じた出久が小さく呟く。声しか聞こえずとも困り顔なのが彼女達にはよくわかった。

 

 

ここからは錬金術師対ヒーローの力比べの時間である。

決意を胸に走り出すヒーローの卵達。

迎え撃つは百戦錬磨の錬金術師。

そしてそれを審査する装者と教師陣。

 

少し早い期末テストが幕を開けた。




「おい緑谷。お前はまた別口でテストを受けてもらうからな」
「え?」
「とりあえずはそこの錬金術師達との多対一戦闘でどれだけやれるかみせてもらう」
「ハードル、高すぎませんか!?」

以上、極秘通信における担任と出久の会話より。
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