〜あのミットめがけて〜聖ジャスミン高校野球部奮闘記   作:なだかぜ

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 この物語はフィクションであり、登場する人物や建物、学校は実在の個人、企業、団体などと一切関係はありません。
 また、初投稿のため駄文だとは思いますが、温かく見守って頂けると嬉しいです。
 それでは、どうぞ!


序章:はじめの一歩
プロローグ1:すれ違う二人


 ”プロローグのプロローグ”

 

 ~あかつきシニア。それは野球に携わったものだけでなく、いまや野球を知らない人にまで知れ渡るジャイアンツカップをを3年で2度制し、他にも日本選手権など名だたる大会で常に勝利を積み重ねてきた名門中の名門。

 そして今年高1となる世代を、人々はあかつきシニアのエースの名前をとって「猪狩世代」と期待を抱きながら呼んでいた~

 

 

「なんでお前が聖ジャスミンなんかに......頼む、この通りだ!あかつきに残ってくれ」

 ここは今にも日が沈もうとしているあかつきシニアの練習場、そして一人の少年がもう一人の少年に向かって夕日を背に必死に頭を下げていた。

 

 

 「...ガラにも合わないことをするなよ、猪狩(いかり)」

 猪狩と呼ばれた少年は顔を上げるが、なおも視線を離さない。

 

 

 そして、

 「なんで僕が認めるほどの才能を持ったお前がそんな元女子校に行かないと行けないんだよ、俊太(しゅんた)。あれだけの大会を制してきたんだ。それに僕とお前のダブルエースで甲子園に行こう、ってリトルのときからずっと言ってきただろう?」と続ける。

 

 

 「知ってるだろう?猪狩。俺は上からの推薦が取れなかったんだ。上でやるだけの才能がないってことだよ。だから俺はもうあかつきで野球はできない。」

 「答えになっていないだろう、それにあかつきは実力主義だ。監督だってお前ほどの選手を手放したくないはず...」

 

 

 そんな猪狩の言葉を遮り結城は呟く。

 「そんなこと言って、結果は変わらないさ。監督やコーチとも話しはした。どうせ推薦のない俺があかつきに行ったところで俺は何もできない。マウンドに立てないどころか、レギュラーさえ取れないだろうよ、猪狩。そんな高校生活なんてまっぴらゴメンだ。だから、俺は聖ジャスミンに行く」 

 「くっ......でもっ!......」

 

 

 何も言い返せない猪狩を尻目に、結城はこう言い残してグラウンドを去っていった。

 「そうゆうことだ、じゃあな猪狩」

 こうして、猪狩の目の前で最大のライバル、あかつき・結城は消えた......

 

 

 プロローグのプロローグ 完

 

 

   ☆

 

 

 

 〜猪狩Side〜

 おい、俊太......なんで、なんでいなくなっちゃうんだよ......

 

 

 お前がいたから外野まで飛ばしてもいいと割り切って安心して投げられたのに、後ろに優秀なピッチャーがいるから全力で投げられたのに、そして四番にお前がいたからピンチでも勝負をしに行けたのに、お前がいたからあれだけの大会での優勝を成し遂げられたのに...

 

 

 あいつの名前は「結城 俊太(ゆうき しゅんた)」。僕に劣らない、いやもしかしたら僕より上の実力を持つ数少ない一人。

 

 

 球速こそMAX130km/hで僕に劣るが、コントロールは僕よりもよく、なおかつドロップカーブ、スライダーそしてチェンジアップという多彩かつどれも一級品の変化球を操る。これでしかも打者としてチームトップの打率、打点。そして本塁打もチーム二位かと思えば、守備も安定していて更に走れる。

 

 

 野球は0点に抑えても1点も取れなかったら勝てないし、逆に何点差であっても勝ちは勝ち、負けは負けなのだから一人で野球なんてものはできない。その点で僕は何回あいつの打撃に何回救われたかわからない。

 

 

 そんな奴をあかつきから手放すだなんて......ましてや名前も知らないような学校に行かせてあの才能を腐らせてしまうだなんて......

 そして、実力を認めているライバルがそのようなことをされているのにもかかわらず、何もできない自分がただただもどかしかった。

 

 

 「監督たちは何をしているんだ......結城を手放すだなんて......」

 僕は俊太がひょっこり出てくることを期待しながら誰ともなしに呟いた。しかし案の定あいつが出てくることはなかった。

 

 

 「あかつき高でも僕はお前と一緒に試合をしたかったよ、俊太......」

 届くことのない呟きをした僕は現実の厳しさを噛みしめながら、暗いグラウンドで一人唇をかんだ。

 〜猪狩Sideout〜

 

 

 

 〜俊太Side〜

 帰り道、俺はさっきあいつに俺があかつきに推薦をもらえなかった、いや推薦を断った理由を教えた方が良かったのか考えていた。

 

 

 まあ、でもあいつに教えたら一瞬で広まってしまいそうなのでやめておいて正解だったのかもしれない。

 

 

 しかし、あのプライドの高い猪狩が俺ごときにここまでしてくれるなんて。

 そのことに正直俺は驚くとともに戸惑っていた。

 そして、そんな猪狩に答えたくても答えられない自分がいるということが悔しかった。

 

 

 ......でも俺はこれでよかったんだよな。これであの事を隠せた。そう、これで良かったんだ。たぶん。

 

 

 話を戻して俺がさっき問い詰められた奴の名前は「猪狩 守(いかり まもる)」。

 猪狩コンツェルンの御曹司にしてあかつき中のエース。しかもイケメンというおまけ付きだ。

 

 

 投げては最速139km/hのノビのあるストレートとキレのあるカーブ、そしてスライダーを操り、野手としても規格外のパワーを持っていて中学通算本塁打数一位と、まるで才能が野球をしているような男。

 

 

 あれがなければ俺はきっと高校でも、あかつきであいつと一緒に俺は野球をやるはずだったんだろう。

 

 

 だがこうなってしまった以上、どうあがいたところでその差は埋まらないばかりか広がっていく。何故なら俺はもう一試合投げきることができない腕なのだから......

 

 

 ただ、あいつとだけはもう一試合一緒に戦いたかった。それぐらい後ろで守っていても信頼できるような奴だったから......

 

 

 そんな叶うことのない夢想をしながら、俺は一人で家路をたどっていった......

 〜俊太Sideout〜

 

 

 

 

 




 投稿ペースは遅いと思いますが一週間に一話くらいは投稿したいと思っています。

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