ご注文は記憶ですか?   作:榎田 健也

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 桃弾頭さん、時間遡行者さん、すふぃあさん、感想ありがとうございます! 土曜日に間に合わなくてごめんなさい!


誤字等あったら遠慮なくご指摘ください(急いで書いたため確認不足です)


第四羽「ご注文は富士山ですか?」

 

謎の男「さて、今回も始まりました『はじめてのおしごと』!」

 

謎の女「今回の主人公は喫茶店『ラビットハウス』で働く『うめとくん(年齢不詳)』です!」

 

謎の男「うめとくんは記憶喪失で自分のことを覚えていないそうで。いや~大変そうだね」

 

謎の女「そうですね~。さて、しっかりアルバイトできるのか気になりますね、ジョ○ジさん」

 

謎の男「……ねえ、なんで伏せてたのに言っちゃうの? バカなの? 死ぬの?」

 

謎の女「それでは、VTR、どうぞ~!」

 

謎の男「大体、忙しいのに土曜日出すなんて言っちゃって元ネタ見た事ないし無計画にも程が――」

 

 

 ◇

 

 

「いらっヂャ――」

 

 

 …………終わった。

 

「おっ、おい! ウメト! 」

 

 ……終わった。終わったよ、もう。

 

「――――」

 

もう、何も聞こえ『諦めんなよ!』な、え……? 誰?

 

『諦めんなよお前! どうしてそこでやめるんだそこで!』

 

 だって……俺、すぐ失敗しちゃって……

 

『頑張れ頑張れできるできるやれる気持ちの問題だって』

 

 俺……自分の記憶が無いからさ。だからもう『今日からお前は――』

 

 

『富士山だッ!!!』

 

 

 

 意識が何処かから戻ってくると、俺の左に立っていたリゼ先輩が頭を下げようとしていた。

 

「失礼しました。こちらの席にどうぞ」

 

「……ウメト?」

 

 

 俺はリゼ先輩の前に手をかざして動きを制すと、自分で頭を下げた。そして手で近くの席を指してお客さんに微笑みかける。

 

「ココア先輩、メニューをお願いします」

 

 案内した席に無かったようなので、右側に居たココア先輩の方をちらりと見て小声で頼む。

 

「あっ、うん。待ってて」

 

 その間に俺は席に座ったお客さんの方に向かい、話しかけた。

 

「ただいまメニューをお持ちします。冷たいお冷もお持ちしましょうか?」

 

 喫茶店を訪れた記憶、そもそも俺の記憶は昨日目覚めてからだからあるはず無いので、お冷がいるかどうかもわからない。じゃあどうするか……訊くしかないよネ!

 

「あっ、お願い。……新しいバイトさん?」

 

 ……おお、綺麗なお姉さんが話を広げてきた。新人って立場は素晴らしいですね。

 

「はい、先程はとちってしまいすみません。お綺麗なお客さんだったので緊張してしまいまして。リゼ先輩、お冷をお願いします」

 

「まあ、お上手なのね♡」

 

 よし、食いついてきた。可愛いココア先輩やリゼ先輩には可愛いなんて言わないが、お客さんなら話は別だ。自分の尻は自分で拭う。お客さんをそのまま返すわけにはいかない。……先輩方を使い走りにしているわけだが、それはそれ。

 

「事実ですから。はい、こちらメニューになります」

 

 ココア先輩が持ってきたメニュー表を受け取り、お客さんに手渡す。

 

「えっえぇ……? やだ照れるじゃない。……お勧めはなぁに?」

 

 お勧めかぁ……

 

「ココア先輩、お勧めは――」「えっとねぇ」「ココアちゃんのお勧めは特製パンでしょ? アナタのお勧めが知りたいなあ」「だって? 梅斗くん」

 

 う~ん、記憶喪失って正直に言うのも不安にさせるだけだしな。

 

「お冷がおすすめです」

 

 リゼ先輩がトレーに氷がたっぷりのお冷とウサギ柄のコースターを乗せて持ってきてくれた。小声で礼を言って二つを受け取ってお客さんの目の前に置く。

 

「他ので」

 

ですよね。

 

「ちょっと失礼します」

 

 仕方ないのでメニューを覗き込む。ふむふむ、なるほど。

 

「……パンケーキなんてどうでしょう? 甘いシロップがアツアツのふわふわ生地にたっぷりかかっていて、アツアツなコーヒーとの相性が抜群ですよ」

 

 食ったことないのに適当だ適当。ただ、「アツアツ」という言葉で何故か俺の心が昂った。二回言っちゃった。

 

「へぇ……じゃあパンケーキとオリジナルブレンドで」

 

「かしこまりました。パンケーキとオリジナルブレンドお願いします!」

 

「は~い!」「わかった」

 

「少々お待ちください。今先輩方が準備しているので」

 

 俺は今日からバイト、そのため調理に全く参加できない。しかたないので、お客さんの要望に対応できるように、なおかつ一人の時間を邪魔しないように、お客さんから少し離れて待機することにした。調理は時間が開いたら教えて貰って賄いにしよう。

 

「ちょっといいかしら」

 

 と思ったらすぐに要望が掛かった。ちょっぴりの苛立ちを押し殺して近づく。

 

「何でしょう?」

 

「アナタ、これまで接客のバイトした事あるの?」

 

 どうやら、お話好きなお姉さんらしい。まあ、調理は手伝えないし、綺麗なお姉さんなら嫌な気もしないから付き合うとしよう。新人って立場は素晴らしいですね(二回目)。

 

「ないですね」

 

 記憶には。

 

「じゃあ、ここのバイトは?」

 

 どう答えよう。新人とは言ったものの今日からとか不安にならないだろうか。とはいえ常連さんだったら嘘を吐いてもばれてしまうかもしれない。ふむ。

 

「実は、今日からなんです。貴女が初めてですよ」

 

 何か「初めて」という言葉に胸が高鳴ったが、すぐに収まった。動悸ってやつか?

 

「……すごいわね、接客の才能があるんじゃないかしら?」

 

「は、はぁ。どうも……」

 

 何か照れるなぁ。綺麗なお姉さんに褒められるなんて、新人って立場は素晴らしいですね(三回目)。

 

「もし良かったら――」「お待たせしました。パンケーキとオリジナルブレンドです」

 

 邪魔だっただろうか、軽く……いや、割と強く脛を蹴られてどかされた。痛い。

 

「ごゆっくりどうぞ」

 

 

「リゼちゃん、嫉妬?」「違いますよ」「じゃあ――」「冷めますよ」

 

 何の話をしてるんだろう。

 

「ウメト、ちょっと来い。ココア、ちょっと倉庫に行ってくる」

 

「う、うん。わかった」

 

 倉庫? 何か取りに行くんだろうか。大人しく付いて行き、言われるがまま倉庫に入った。

 

「ウメト、お前接客初めてなんだよな? なんであんなに手馴れているんだ?」

 

 手馴れている、ねえ。確かに俺も不思議に思っていた。ジョークや褒めなどを交えながら上手く接客が出来ていたと確かに思う。初めての筈なのに。何か心当たりはあっただろうか。確か、挨拶で噛んで頭が真っ白になって……

 

「あっ」

 

「どうしたウメト」

 

 一つ心当たりがある。

 

「俺、自分の名前が分かったかもしれません。頭の中で誰かが教えてくれて」

 

 けど誰だかわからない。海の声? 前前前世からの声? それとも未来からの声?

 

「おおっやったな! その名前は?」

 

 一緒に喜んでくれている。何て良い先輩なんだ。

 

「俺の名前は――」

 

 ……え~と、確か。

 

 

 

「富士山です」「うん、たぶん違うぞ」

 

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