ご注文は記憶ですか?   作:榎田 健也

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 桃弾頭さん、時間遡行者さん、すふぃあさん、未雷日機さん、感想ありがとうございます!

 ……だんだん壊れてきた。


第六羽「ご注文は抹茶カフェオレですか?」(レシピ付)

「私の経営しているレストランで働く気はない?」

 

 

 バイト先でこんな事を言われても困る。しかも、先輩の目の前で。……答えは一つだ。断るに決まってい「時給はいくらですか?」るぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!

 

「1980円でどうかしら? 保証もしっかりしてるわよ」

 

 保証ってことは、家賃諸々も負担してくれる可能性があるということだ。それに誘ってきたのはあちらさんだから、結構な待遇のはずだ。ラビットハウスで働いているのは示談の条件だから仕方ないが、「チノ」という名前……だった気がするマスターの娘さんの捻挫が感知して働けるようになれば俺はお役御免、追い出されることになる。折角だからその時にでも――

 

 

「すいません、丁重にお断りさせて頂きます」

 

「梅斗くんっ!」「ウメト!」

 

 まあ、その、なんだ……良い先輩にも恵まれているしな。折角の申し出を断るのも心苦しいが、諦めて貰おう。

 

「あ、アナタの接客が必要なのよ!」

 

「じゃあ、そうですね――」

 

 そんなに俺の事を評価してくれるのなら、お言葉に甘えて。

 

 

「俺がここをクビになったら、こっちから出向きますよ。……誘って頂いたのは嬉しいので」

 

 そのうちクビになるんだけどな。それは内緒で。

 

「……あなた、天然のタラシね」

 

 お姉さんは料金丁度をトレーの上に載せると、そそくさと出ていってしまった。

 

「あ、ありがとうございました~」

 

 取り敢えず誰にも聞こえないお礼を言った。一応最後までやりきったが……

 

いつの間にか俺の後ろを通ってレジカウンターから抜けていたココア先輩とリゼ先輩がジトっと睨んでいる。

 

「天然のタラシ」ボソッ

 

「天然のタラシ」ボソッ

 

 この空気は何だろう。目に見えないエネルギーの流れがぼくの胸を貫いて苦しい。この空気は何だろう。

 

 

「あの、そんな目で見ないで……」

 

「天然のタラシ」ボソッ

 

「天然のタラシ」ボソッ

 

「天然のタラシ」ボソッ

 

「だからそれ、やめ……ん?」

 

 一人増えてる?

 

「って千夜ちゃん!?」

 

「仕事中じゃないのか?」

 

 ココア先輩やリゼ先輩と同じように扉の方を見ると、そこには黒髪の美少女が立っていた。和風美人といった出で立ちで、着物がとても似合っている。……その上にエプロンって折角の着物が台無しじゃないか?

 

「遊びにきちゃった♡ ……あ、そちらの殿方は?」

 

 殿方……俺のことか? そんなに不審に見られているのだろうか、やけに視線が痛い。

 

「今日からバイトしている梅斗くんだよ!」

 

 ナイスフォローですココア先輩、こういうところも好き。

 

「どうも、新人バイトの梅斗です。よろしくお願いします」

 

 ペコリと頭を下げる。常連らしいとはいえ、素人をばらして警戒させてしまわないだろうか。

 

「私は二人の友達で、甘味処甘兎庵の看板娘宇治松千夜よ、よろしくね」

 

 俺の会釈よりもはるかに美しい会釈で返されてしまった。しっかりした子だなぁ。

 

「はい、よろしくお願いします宇治松さん」「千夜」「宇治松さん」「千夜」「……千夜さん」

 

どうやら、押しが強いのはココア先輩と一緒みたいだ。

 

「千夜ちゃん、ご注文は?」「いつものお願い、ココアちゃん、リゼちゃん」

 

 すごい常連って感じだなぁ。お互い名前呼びだし、同級生とかだろうか。

 

「ああ、ココア、サイド頼む」「りょーかいだよ、リゼちゃん」

 

 新人の俺は「いつもの」と言われても分からないが、先輩二人は分かるのだろう。

 

「何か手伝える事はありますか?」

 

 分からなくても、流石に先輩二人だけに任せる訳にはいかない。

 

「じゃあ私の話相手になってもらおうかしら」

 

「え、いや、仕事中なんで」

 

 仕事中にお客さんとお話ししているなんて新人失格だろ。(※第四羽参照)

 

「私達に任せてっ」「お前は千夜の相手をしてやってくれ」

 

「……だって♡」

 

 思わずため息を吐きかけて慌てて止めた。

 

「俺、面白い話とか知らないですよ? 記憶喪失なもので」

 

 ココア先輩にばらされるよりは、自分から話す事にした。二人の友達ならば大丈夫だろう。

 

「あら…………記憶喪失? 何の記憶が?」

 

「自身に関するものは、何も。それ以外は結構わかりますんで、日常生活に支障は無いです。名前はタカヒロさんに付けて頂いて、今は下宿もさせてもらっています。」

 

 むしろ、俺についてわかる人が居るなら教えて頂きたいものだ。チノちゃん……だっけか、マスターの娘さんが働けるようになったら特に何も言われていないが多分クビだ。つまり、それまでに自分の家や家族について分かればオールクリアだ。完全勝利UCだ。

 

「私、知ってるわよあなたの事」「うそぉ!」「私の恋人」「うそぉ!」「嘘よ」

 

 嘘かい、びっくりしたなぁ、もう。

 

「うふふ、ごめんなさい♡」

 

「そういうのやめてくださいよ、思わず許しちゃうじゃないですか」

 

 ちょっとムカッとしていたのが吹っ飛んだ。何この子、小悪魔なの? 天然なの?

 

「……そういえば、さっきの天然のタラシってのは何だったの?」

 

 いや、俺もイマイチ意味わからんのだが。

 

「別に……バイトのスカウトを一時的に断ったらそう言われました」

 

「一時的にというと?」

 

「お客さんに言うのもアレなんですが……クビになったら俺から出向くと言ったら引き下がってくれました。何で俺なんかを欲しがるのか謎なんですがね……」

 

 本当に、世界何でやねんミステリーだ。本当にミステリータグつけちまおうぜ。(※第二羽参照)

 

「それほどあなたに魅力があるって事じゃないの?」

 

「そうですか? ……魅力的な人に言われると説得力がありますね」

 

 出会ってまだ少ししか話していないが、謎の魅力がある。

 

「……ほんと、天然のタラシね」

 

「だから、何ですかそれ」

 

 ただ、ちょっと怖いけどな。

 

「千夜ちゃ~ん、お待たせ!」

 

「抹茶カフェオレ出来たよ!」「わ~い」

 

「ま、抹茶にカフェオレ!? どういう事だ?」

 

 味はどうなんだろうか、合うのか?

 

「む、あれが世に聞く抹茶カフェオレだ。」

 

「し、知っているんですかリゼ先輩!?」

 

 いつの間にか隣に居たリゼ先輩に思わず訊いた。ところで、世に聞いた事が無いから驚いているんですがそれは。

 

「ラビットハウスのコーヒーと甘兎庵の抹茶、この二つが程よい甘さのミルクと共に混ざり合う事でお互いを高め合う……それが抹茶カフェオレだ!」

 

「チノちゃんは邪道だっていうんだけどね……」「あら、そういえばチノちゃんは?」

 

 うっ……! 疲れたら痛いところを的確に突いてきた。やっぱり小悪魔だ! たぶん武器はフォークみたいなやつ。あとココア先輩、遺族みたいにしみじみと懐かしまないで生きてるから。

 

「え~と、俺が怪我させちゃってその穴を埋めるために、このお店で働いているんです」

 

「へえ、そうなの。……じゃあ――」

 

 

「――チノちゃんが働けるようになったら、どうするの?」

 

「「えっ……?」」

 

 …………痛いところついてくるなぁ。




抹茶カフェオレのつくりかた(二杯分)

材料
・ラビットハウスのコーヒー 80ml
・甘兎庵の抹茶(濃い目)  80ml
・牛乳(明〇おい〇い牛乳) 20ml

1. 容器に材料を全部ぶち込みます。

2. 混ぜます。

3. 完成! 独り身は2杯分飲めるね!

梅斗「いや、雑が過ぎるだろ……」
千夜「コーヒーと上手く調和させるために、抹茶は濃い目でね!」
梅斗「何故か二人前か四人前っていうレシピあるあるやってるしそもそも普通の人は最後しか揃えらんねえよ……」
千夜「それでは、またらいしゅ~!」
梅斗「ちょっ、無責任なこと言わないでくださいよっ! ただでさえ更新が危ういのに!」
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