ひねくれ提督の鎮守府建て直し計画   作:鹿倉 零

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不死鳥との会遇

ドドドドド、と凄まじい足音が響いたかと思えば、夕立が懐へ飛び込んでくる。

「オッフ…」

鳩尾に入ったなぁ…と思いながら、俺は後頭部から床に激突した。

「まず一つ!!!!!あそこまでいって寸止めとか本当にあり得ないっぽい!!!!!!!」

夕立は、唖然とする俺の手を掴むと、意を決したように自分の頭の上に乗せた。

「ほら!出来るもん!!…大丈夫なんだからっ」

「…無理するなよ…震えてるぞ…」

心配になりそう言うと、再びガッと懐に飛び込まれた。

「オッフ…」

「ほら!抱きつくこともできるっぽい!」

「それはタックルだな。おう。タックルだな…」

物凄く苦しそうに唸りながら無理やり顔をすり付けてくる夕立の頭をポンと叩き、なるだけ優しく言い聞かせた。

「…今はそんなに無理しないでいい。」

「う゛か゛ぁ゛ぁ゛!!!」

なになになに。怖い怖い。

スタッと立ち上がると、今だ困惑している俺を半ば無理やり立ち上がらせ、睨み付けた

「大丈夫って言ったっぽい!!!!」

「いやだがなぁ…」

「うるさいうるさいっ!大丈夫だもん!!」

どう見ても無理をしているようにしか思えない

「…はぁ。」

だが、目を閉じてプルプル震えながら、完全に待ちの姿勢になっている夕立にそんなこと言えるはずもなく、ため息をつくとそっと手を伸ばした。

ゆっくりとその手が彼女の髪へと伸び、やがて、その少し艶のあるさらさらの前髪へとその指先が触れー…

「…ふぁっ」

速攻で手を離す。

「ちょっ…!なんで手を離すっぽい!」

「うるせぇ!!変な声出すな!!!」

しばらく怒鳴り合い、みつめあうと、笑った。

「痒いところに手が届いただけっぽい」

「お前俺を孫の手かなんかだと…?!」

もういい、知らんぞ、と、わしわしと髪を撫でると、彼女の柔らかな髪はボサボサになる。

「…ふふ」

「これで満足か」

「…うん。もう充分満足っぽい!!!

ね、大丈夫だっていったでしょ?」

立ち上がり、振り返ると笑う夕立。

足が震えていることを言うのは野暮だろう。

俺は廊下に尻をつくと、呆れたように笑った

「…そうだな。その通りだよ。」

 

そのまま廊下を歩いていると、暁、雷、電、そして白銀の…不思議と大人びた少女と出会う。

「お、いつもの。ちゃんと飯は食ったか?」

「と、当然よ!」

「お腹いっぱいなのです」

「司令官こそちゃんと食べたの?塩じゃダメよ」

「…やぁ司令官。会うのは二度目だね。」

二度目、という言葉に一瞬耳を疑った。

「…いや、よく考えれば…」

暁の絵には、三人に加え、白いクレヨンを存分に使ったもう一人の少女が常に描かれていた。

それだけじゃない、確か…島風が暴れた際に、彼女を取り押さえていたのは雷と…

「…改めて自己紹介でもしようか。響だよ。

その活躍ぶりから不死鳥の通り名もあるよ。

いつも私の姉妹がお世話になっているようだね」

雰囲気は時雨に似ている。

他の三人とは違い、落ち着いた…悪く言えば、何を考えているかよく分からない少女だった。

「…世話なんてしてるつもりはないぞ。

コイツらにはずっと執務を手伝ってもらってる」

「暁が部屋に持ってきた物を見れば分かるさ」

呆れたように肩を竦めて見せる響。

「…お前…何というか…」

間違いなくこの四人のなかで一番最初にサンタの正体に気付くタイプだな。

もっとこう…コイツらの姉妹なら、ぽわぽわした奴をイメージしていたが…。

「こんな姉妹だからね、私だけでもしっかりしないとダメなのさ。特に"こんな所"では、ね」

まるで俺の心を見透かしたように呟く響は、

雷と暁にやんやんと文句を言われ、

やれやれ、といった様子で二人を宥めていた

…マジでお姉ちゃんだな。

感心しながら彼女らを眺めていると、響はてくてくと此方へ歩み寄り、そっと、手を差し出す

「…?」

受けとると、そこにはクッキーがあった。

「有り合わせの物で作ってみたんだ。日持ちしないから、明日には食べられないだろうけど。今日中に、夜食としてでも食べてもらえると嬉しい。いつも姉妹がお世話になっているお礼のようなものだよ。」

笑顔でそう言った響は、再び、いつの間に作ったのかと…今度は電にも責められている…大変だな、子守りってのは…

「…ありがとよ。」

ポケットに入れ、彼女たちに背を向けた。

ひとまず執務に戻らなければ。

 

ご飯の時間も過ぎ、食堂にはあまり人が居なくなっていた。好都合だ。

こっそり厨房に忍び込み、塩を一瓶拝借する。

「…はぁぁ…。」

ため息をついて後ろを見ると、満面の笑みを浮かべる島風の姿があった。

「うっわっびっくりした…島風…何を」

「とぅっ!!!」

素早い動きで俺の手から瓶を奪い取ると、窓から投げ捨てる島風。

「あ゛━━━━━━ ッ!!!!!」

叫ぶ俺の目の前で、パンパンと手を払うと、ニヒッと笑みを浮かべた。

「おっそーい!」

「島風テメェこの野郎…」

震える声で睨み付ける。

「おーい、しまかぜー?何して…って、提督!」

彼女の背後から、長波が顔を覗かせた。

…やはりなんだかんだ相性は良いらしく、

仲は良さげで安心だ。

「長波ぃ…」

「なんでそんなトコに座り込んでんだ?おーい」

しゃがみこんで顔を覗き込む長波。

「うるへぇ…でも、仲よさげで良かった」

俺の言葉で、長波は笑顔を浮かべる。

島風はそんな俺を左右から交互に覗き込み、構って構って、と、服を引っ張った。

仕方がないので撫でて大人しくさせる。

すると、不思議なことに長波が物欲しげな瞳でこちらを見て、呟いた。

「ア、アタシは撫でないのによ…」

…時雨も夕立も、そしてこの長波も。

なんだかんだ駆逐艦で、撫でられる、という行為はそれなりにお気に入りなのだろう。

ふっ、と短く笑うと、長波の頭に手を置いた

「あっ…へへ…んー…」

満足そうに笑い、目を閉じる長波。

と、島風が腹に飛び込み、その頭が見事に鳩尾にクリーンヒットした。

「ゴファ…」

倒れ伏しながら、凄い勢いでスリスリとしてくる島風を撫でる。

ん?おい、長波?なんだその覚悟を決めた顔は

「アタシだってできるんだからな…!」

「おいまておまえまさゴッフ…」

あぁ、俺の身体はこの鎮守府を建て直すまで持つだろうか…。




今回も御覧頂き本当に本当にありがとうございますっ!!
はい、短いよと、なんか短すぎないか今回と。
そうなんです、凄く短いんですよ…!
というのもですね、これから少し短めに、投稿頻度も少しだけ落としてみようかと思いまして…!
と、いうのも、沢山書いてクオリティが低いだけだと、読んでて疲れさせてしまうだけじゃないかと思ったわけでございまして…!
これからは、多少短く!(おそらくまた一部分は異様に長くなるんでしょうが)、出来るだけちゃんとした文で!(とはいえ作者は圧倒的スキル不足なので本当にちゃんとしたのができるかは別として…)
兎に角沢山の文を連日投稿しちゃえ!というスタイルはあまりにもあまりなので変更させていただこうと思います…!!
響との会話、
そして多少風通しがよくなった鎮守府
これから彼がどう建て直していくのか、
是非是非、これからも御覧いただけると幸いです…っ!!

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