ひねくれ提督の鎮守府建て直し計画   作:鹿倉 零

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手を繋ごう

「…」

「…」

「…」

「どうしてこうなった。」

俺の呟きに反応して、響が顔を上げた。

「どうしたんだい?」

「…手を繋ぐ必要はなくないか?」

自分でも分かるブスッとした顔を浮かべ、

顔をあげた響を睨み付ける。

駆逐艦寮に送るだけとはいえ、誰かに見られ、

誤解でもされたら大変だ。

そりゃあコイツには姉妹艦が居る。

孤立する危険性はないんだろうが…

だとしても、見られて都合が良いことなどない。

「…手を繋ぐ必要はないだろ」

強く繰り返す。

島風とは違い、きちんということを聞く響は、

そっと手を離した。

…とても、とても悲しげな瞳で。

「…嫌だったかな。…ごめんなさい」

そして、気まずい静寂が続く。

「…」

「…」

「…だぁぁぁっ!!!!!」

頭を掻きむしりながら叫び、

ぐいっと手を引っ張った。

「…!!」

驚いたように目を見開く少女。

「…その顔やめろ…反則だろ…」

上を見上げる彼は、彼女が計算通り。

という笑みを浮かべていることに気付かない。

「…♪」

少女は気付かれないように、

その、大きな手を強く握り返した。

 

廊下で、後ろからドドドドと凄い音がして、

一瞬だけ、嫌な予感がよぎる。

「てーとくぅぅぅぅ!!!!」

「ゴフッ…」

島風のタックルがもろに鳩尾に入り、呻いた。

「島風テメェこの野郎…」

「おっそーい!!!!」

「おーい島風…ってん、提督?何してんだ?」

後から走ってきた長波が、チラリ、

と響を見て首を傾げた。

「…俺だって知りてぇよ…」

「部屋まで送って貰っている所さ」

「じゃあ私はこっちー!」

響と反対の手にしがみつく島風。

「あっ…」

「イッツ…」

響が声をあげる。

同時に俺の腕に激痛が走り、顔をしかめた。

俺の声で異変を感じ取ったのか、

彼女はスッと離れ、恐る恐る顔を覗き込む。

「…てーとく…?」

「…悪いな、左腕は勘弁してくれ…」

腕に巻いた包帯を見せると、響は顔を曇らせた

彼女を抱きしめたときに、刃が軽く刺さったのだ

別に痛むわけでもないが、あまり動かしたり、

衝撃を与えると少しだけ痛い。

「…それ、どうしたんだよ。」

長波が、少しだけ鋭い目で俺を睨み付けた。

「ちょっとな。転んだだけだ。」

「ほーん…んで?一体何をどう転んだら包帯に血が滲む程の怪我をするんだい?」

「持ってた塩の瓶が割れたんだよ…」

「あぁなるほど…」

納得したように、呆れたように呟く長波。

何でそれには納得するんだよお前…。

一方、島風はじゃあお腹に抱きつくね?

と、俺の返事も聞かず、左から手を回してきた

「歩きにくい…やめろ…」

「えへへー!」

「………」

ほんと話聞かねぇなコイツ。

「…あ、う…」

「お前も来るか?長波。」

羨ましげに此方を見る長波に笑いかけ、

顔を輝かせた彼女も引き連れ廊下を進む。

…三人の内、誰も気が付かなかった。

島風が、明るい声を上げながら、一切の表情が抜け落ちた顔で、響を見つめていることに。

 

「提督、それは酷いんじゃないかな」

「時雨…」

更に暫く歩いていると、

満面の笑みを浮かべる時雨が居た。

何故だろう。清々しいほどの笑顔の筈なのに、

とてつもなく怖い。

なんだこの威圧感は。将来有望だな。

感心していると、後ろから凄まじい衝撃が加わる

「…何だ何だ…」

「ぽい」

「お前か…」

「…どういうことか説明してもらえるかな提督」

「時雨、待って。提督…どうしたの?」

夕立が時雨を止め、

俺の近くで鼻をすんすんさせる。

やめろやめろなんだ怖い怖い…

「…怪我してるの?」

「何者だよお前は…ッ!!!」

諦め、左腕を見せると、

時雨が驚いたように駆け寄ってきた。

「ちょっ…どうしたんだい?!」

「血の臭いがしたっぽい。…大丈夫?」

「転んだだけだ。気にするな。」

「もう…!もしかしたら君を直接攻撃してくる艦娘だっているかもしれないんだから、心配かけないでね…?」

「ふーん…」

胸を撫で下ろす時雨と、不満げに呟く夕立。

「…何で全身から響の臭いがするのか…あとで説明してくれるわよね?」

夕立が俺におぶさったまま、耳元で囁いた。

「…夕立、私が悪いんだ」

咄嗟に響が小声で弁解するが、彼女は全く聞く耳を持たず…暫く臭いを嗅ぎ、眉を潜める。

「………?…これ…鉄の臭い…?…ん…何となく想像ができたっぽい。…まぁ、提督さんが許したなら夕立はなにも言わないっぽい。」

「…ありがとう」

「さっきから夕立は何を話してるんだい?」

「時雨には関係ないっぽい!大丈夫!!」

コイツは何者なんだよ本当に。

「…というか降りろ。臭いを嗅ぐな。」

「………」

返事はない。

先程とはうって変わって静かになった。

「おっコイツだんまりか…!!」

「ていとくーおっそーい!」

「…何だよ…ドンドン囲まれやがって…」

「提督、よく分からないけど僕も同行するよ。響は僕の手を握ればどうかな、僕が提督の手を握るから」

「…私はこのままで良いよ。」

「いやいや遠慮しないで良い。退いて?」

「断る、と返さざるを得ないね。」

島風は早く早くとせがみ、長波は一歩離れたところで何やらぼやいている。夕立は背中から降りる気配などないし、時雨と響は何故か睨みあっている。

「………はぁぁぁぁ」

大きなため息をつき、やけくそ気味に、

上を見上げて叫んだ。

「もう全員で手を繋ぐぞ!!」

 

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「にんきものはたいへんですねぇ~」

ワイワイと、廊下を歩く彼らを見て、

タマはそう呟き、眩しそうに目を細める。

「…でも、そうですねぇ。

…けがまでさせるのは…やりすぎです~

これは"おきゅうをすえる"ひつようが

ありますよねぇ~…。」

彼女の瞳は沼より暗く、

見たものがまるで引き込まれるような、

様々な色が混ざったような黒。

「すこし"いたいめ"をみないとわからないようなので…しかたがないですねぇ…」

男の右手を握りしめる、白髪の少女を見つめながら、妖精は一人、そう呟いた。




今回もご覧いただきありがとうございます…っ!!
はい!提督の周りにも段々艦娘(しかし駆逐艦のみ)が集まって参りました!はい!!
このままの勢いで全員と仲良くなるのか!はたまた…?
響はちょっと計算高いイメージなのです!!
自分がどう動けば、相手がどう動いてくれるかを熟知している、だからこそ、提督はこれから何かにつけては涙目になられ、渋々言うこと聞かされそうですねぇ…ヘタレ提督めっ!←
そして島風に異変が、同時に妖精も何かを企んでいるようですし…彼はどうするのでしょう。
これからもどうかどうか!彼等の事を暖かい目で見守っていっていただけると幸いです…っ!!!

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