ひねくれ提督の鎮守府建て直し計画   作:鹿倉 零

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新しい風とそれぞれの想い(前編)

目のやり所に困り、兎に角凄い格好をした少女から視線を反らすと、いまだに胸を張る妖精を睨み付ける。

「このやろぉ…ほっぺた団子ぉ…!!」

「ほめろ!あがめろ!!たてまつれー!!!」

「確かに俺は真面目は…あぁもうっ!!」

頬っぺたを鷲掴みにしてプニプニとする。

「てめこのッ!こいつかッ!!こいつかッ!!」

当の本人は褒められてると思っているのかとても満足そうな表情を浮かべ、心なしかキラキラし始めた。

「ねーねーていとくぅー!」

そしてそんなこともお構いなしに俺の服の裾を引っ張る少女。

「うるさい!お前は服を着ろ!!!」

「着てるよ?!」

クワッ!と顔を向けるがこいつ全然怯まない。

ねーねーと何度も服を引っ張る少女と、

妖精の頬をプニプニしまくる俺と、

嬉しそうに悲鳴をあげる妖精と。

そんな混沌とした時間が続いた後、妖精が唐突に、糸が切れたように倒れ込んだ。

「…どうした?おい?大丈夫か?」

よく見ると痙攣しているので、息はある様だ。

「…ぜんしんきんにくつうです」

手のひらで仰向けに倒れたままそう言う妖精。

「全身筋肉痛だ…?」

「ほんとはみんなでやるんだけど、みんないないからー…ひとりでつくるのはじめてなのー!」

「…」

妖精の身体を軽く触ってみた。

「あばばばばばば」

少しだけ目を閉じる。

こいつはこいつなりに俺のためを思っての行動だったのだろう。

それも、本来大人数でやる作業を、たった一人で…無茶をしてでも俺のために頑張ってくれた。

「…んなこと言われたら怒るに怒れねーよ!!

なんだお前!!!!…あーもー!!お前ッ!!」

何とも言えない気分になり、足を踏み鳴らすとゆっくりと少女の方を向く。

「…島風とか言ったな………歓迎するぞ」

俺は苦虫を噛み潰したような顔をしながら呟いた

 

「ねーねー!何処いくのー?」

「…掃除だ掃除。」

「かけっこしようよー」

「却下。」

「…ねーねー!!」

「なんで付いてくるのお前?!」

痺れている妖精を運びながら、さっきから俺の周りをぐるぐる回る少女に言う。

…目のやり所に困るから視界に入らないでくれ。

こんなのを連れ回していたら通報される。

歩くスピードを上げたにも関わらず少女はまだついてきて俺の周りを回った。

「だってー!来たばっかりだもーん!」

「知らねーよ…大淀とか言う眼鏡が居るからそいつに案内を頼め」

「大淀って人は何処にいるの?」

「…何処だろうな」

「かけっこしよー?」

「だぁぁぁぁ!!!!!」

最早若干小走りになりながら廊下を歩く。

「おぅ?おぅ?かけっこー?」

「頼むから離れろ!!!」

「やだー!!!!」

「テメェガチで面倒臭い奴呼びやがってェッ!」

手のひらの上の頬っぺた団子を睨み付ける。

「めいれいきかないでしょー?」

「俺が求めてたのはそうじゃなくてな?!」

そんな言い合いを続けていると、島風がスッと足を止めた。

「…島風…要らない子?」

目には少しだけ涙が溜まっている。

「なかせたー」

「お前ほんと筋肉痛治ったら覚えてろ?

絶対その頬っぺた握りつぶすからな?」

言いながら手のひらの上で転がしてやる。

「きんにくつうです。ころがさないで。いたいからころがさnあばばばばばば…」

確かに島風にはあんまりな態度を取りすぎているのは事実。

彼女の服装があまりにも目のやり所に困る格好なのも事実。

「…はぁぁ…。悪かったよ。」

「ぉぅっ?!」

白い軍服を被せる。

「ただな、その格好で男の周りをうろつくのは些か問題なんだ。だからこれでも着てろ」

「…でもコレが制服だよ?」

「え?」

「え?」

当然のような反応をする島風。

…ん?待てよ?

「お前…島風…だよな?」

「今?!」

確か…海軍学校の頃に聞いたことがある。

駆逐艦の中でもトップクラスの性能を誇り、意思を持つ特殊な艤装を扱う兎の形を模した艦娘がいると。

確かその艦娘の名はー

「島風…」

「はーいっ!!」

元気のよい返事を聞き、俺は全力で叫んだ。

「島風ぇぇぇぇぇぇぇ?!?!?!」

「えっ?!駄目なの?!」

「は?!え?!いや確かに、凄まじい見た目だとは聞いたが…そっちの意味で?!」

「何がっ?!」

「…お前が島風…」

「…変な提督…」

「じょうちょふあんていというのです」

「また転がされたいのか?」

妖精とあれこれ言い合っていると、島風は寂しげな瞳で笑った。

「で、提督…私って、邪魔かな…?」

「…そんなことねーよ。」

頭の上に軽く手を置き、撫でる。

「さっきは悪かった。この鎮守府は少し特殊でな、お前が馴染めるか不安だったんだ。だが…来たならもうお前は俺の艦だ。邪魔なんかじゃないし、お前と会えて嬉しいぞ。これから宜しくな。島風。」

 

「…で、まだ着いてくるのか」

「だって暇だもーん!」

そりゃあ、あのままかっこよく歩き去らせてくれる奴じゃないというのは何となく分かっていた。

だが、あまり俺にくっついていてはそれこそこの鎮守府で孤立してしまうだろう。

「此処はそこそこ艦娘も揃ってる。お前の顔見知りだって居ると思うぞ。探してこい」

「島風、姉妹艦居ないから…」

…あぁ、そういや量産は出来なかったっけな。

「まぁ、そうだとしてもな…」

「…」

あぁ糞。そんな寂しげな目をするなよ。

「…良いか島風、よく聞け。」

肩を掴んで屈み込み、目を合わせる。

子供相手にはこの方法が一番だ。

「此処は俺の鎮守府だ。俺の城だ。そして、お前らは姉妹艦だのどうのこうのである前に、この城に住む家族みたいなもんだと…俺だけは思ってる。」

「提督だけは…?」

「言ったろ、此処は複雑なんだ。あぁ、俺はこう思うからお前らもこう思え、と言うつもりも無い。家族ってもんは両者がそう思ってようやく家族って訳でもないし。まぁいつか認めてもらえればな、と思わなくもないが…話が脱線したな。兎も角、俺はそう言うもんだと思ってる。だからな、姉妹艦やそういったものに拘る必要はないんだ。」

少しだけ少女の目が見開かれた。

少し照れ臭くなり、頬を掻く。

「あー…何て言うかな。俺の艦になった時点で、お前らは皆同等で、同胞だ。」

「…」

「…島風?」

返事がない。

少し心配になり顔を覗き込むと、真っ赤な顔をして固まっていた。

「…?大丈夫か?お前も全身筋肉痛か?」

肩を揺さぶると、ハッとしたように瞬きをして、唐突に走り始める。

「なんでもなーい!!!」

暫く行くと、くるっと振り向き笑った。

「…これから宜しくねっ!提督っ!!」

…良い顔できるじゃねぇか。

 

「…いや結局付いてくるのかよ!?」

「家族なら良いですよねーっ!」

「わたしがつまですね」

「お前はペット枠じゃね?」

「つまりはみだれたかんけいですね」

「転がってろ」

「あばばばばばば」

そんな下らない話をしながら付いたのは艦娘寮

「此処は…?」

「ぼろぼろですね」

「見るも無惨だな。艦娘寮らしい。」

「島風此処で生活するのーっ?!」

「安心しろ島風。今から此処を生活できる程度には掃除する。俺と、お前と、妖精でな。」

「えー!かけっこしたいー!!」

「島風は一生汚い部屋で過ごしたいらしい」

「頑張りまーす…」

「わたしはぜんしんきんにくつうです」

「悪いが約束は守ってもらう。コイツらにこんな場所で寝かせるわけにもいかん。」

「ぉぅっ?!」

軽く頭を撫で、段ボールから掃除用具を取り出す

「…さて、島風、貴様にもこれを渡しておこう」

「雑巾だーっ!!」

「どこからおそうじするのー?」

「優先順位は決めてある。駆逐艦、若しくは海防艦達がいる寮が最優先だ」

戦艦などを軽んじる訳ではない。

ただ大人はやはり耐性もあるだろう。

駆逐艦は今まで入渠も許されなかった状態だ。

それで寮の修理も最後では報われない。

海防艦は大淀が一番幼いと言っていた。

こんな場所で生活するにはあまりに酷だろう。

…あと、こんなことを言ってしまえば提督としては失格なのだろうが…

「…駆逐艦には、ある奴らが居てな。」

苦笑しながら呟いた。

 

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「漣、何考えてるの?」

部屋で空を見上げながら、ぼうっとしていると、

朧が顔を覗き込んできた。

「はにゃー?」

「何か考えてる…ってよりはなにも考えてない顔じゃない?」

やれやれと肩を竦める曙と、

その後ろから心配そうに此方を見る潮。

「何も考えてない…というか…考えないようにしてる…?気がする…」

「そんな事無いよぅ…?!」

うーん、なんで君たちはそんなに私のことを心配するんだろうか…。

そんな風に私が考えているうちに、

いつの間に、三人はある話で盛り上がっていた。

無論ある話、とは、新しい提督の事である。

「…どうせ糞でしょ?期待するだけ無駄よ無駄」

ボーノ。お願いだから提督の前で言わないでね。

流石に言えないと思うけど。

「変な人だったなー。いきなり笑ってたし。」

ボーロに変な人呼ばわりされるのは相当だよ…

とはいえ確かに良くわからない人だけども。

「…凄く目が、怖かったなぁ…」

潮は思い出したのか少し震えている。

わかる。睨み付けられたときの恐怖は凄い。

「…で?アンタはどう見る訳?」

「…へ?」

「そこは漣の流れだよー?!」

「やっぱり心此処にあらずって感じだよね…」

口々に呟く三人をよそに、少しだけ考えてみた。

…私はどう見るのか。

興味がないと私たちを一蹴したあの人を。

頭を乱暴に優しく撫でてくれたあの人を。

酷く冷たい、蔑んだ目で見てきたあの人を。

良い仲間だ、と歩き去っていったあの人を。

「…私は…」

コンコン。

その瞬間、ノックの音が響く。

「…誰?」

曙が呟き、部屋を開けに行った。

どの部屋もボロボロで家具一つ無く、どの部屋に集まろうが関係がない。

まして連日の出撃で帰れば疲れきっており、寝るしかやることが、できることがなく、他の艦娘の部屋に来る物好きなどいる訳が…

「ひっ…」

曙の悲鳴を聞くと同時に即座に扉へ駆け寄る。

そこには、先の話題の中心人物

…提督が立っていた。

 

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「ひっ…」

扉をノックすると、鈴の付いた少女が扉を開け、俺の姿をみて小さく悲鳴を漏らした。

ガタッ!と凄い音を出しながら出てきたのはピンク頭と茶髪。

黒髪はいつの間にやら鈴の付いた少女を庇うように後ろへ引き込んでいた。

「…なっ提督!?」

「…えっ?!へっ!?」

「よぉ、ピンク頭。さっきぶりだな。」

驚愕の声をあげる二人を無視し、ピンク頭に片手をあげて挨拶をする。

「…どうも」

またこいつかと言わんばかりの不服そうな顔。

だから、俺は後ろに隠れてる奴に声をかけた。

「…何隠れてるんだ島風。」

「隠れてないもん!」

「なら出てこい」

「島風はすっごく早いんだよ!!」

「知らんわ!出てこい!!」

「おっそーい!!」

話にならん。

少し待っててくれと頼むと廊下の角で頭だけだしている阿呆の襟首を掴んで連れて行く。

おぉ、相手も目が真ん丸だな。

「離してよー!!!」

「コミュ症かお前は!!」

襟を離すと俺の脚にひしとしがみつき、ピンク頭を睨み付けている。

「…あぁもう…悪いなピンク頭。コイツは…島風、今日此処に着任した艦娘…駆逐艦だ。仲良くしてやってくれ。」

島風の頭をポンと叩きながら言った。

「はい?!」

「挨拶は後でやらせるが…その前にお前らには見せときたくてな。色々と教えてやってくれ。」

俺の目的は二つ。

一つはコイツらの部屋を清掃すること。

そしてもう一つ、島風の頼れる相手を作ること。

それも、信頼できる奴じゃないといけない。

無論この短期間でコイツらを信頼している訳ではないが、其処らの奴よりはよっぽど俺が"期待"している奴らだ。

きっと島風ともうまくやっていくだろう。

いまだ困惑したような表情を浮かべるピンク頭に、俺は笑顔で言ってのけた。

「…まぁ、それは置いといて…外に出てくれ」




今回もご覧いただきありがとうございます…!
もしも私が島風ならかなり傷ついていますね…
もう少し彼には反省していただきたいものです。
はい!二部に分けてしまいましたごめんなさい!!
というのもあまりの長さにこれは駄目だなと思った次第でありまして…ほんと、文字数が一話毎に大きく増減してしまって申し訳ありません…
さらに!オリ主のタグをつけ忘れてしまっていたようで本当に本当に申し訳ありません…!
報告いただいた方、対応していただいた運営様、本当に本当にありがとうございますそして申し訳ありませんでした…っ!!
ダメダメな私ではございますがどうか彼等の事をこれからも温かく見守っていただけると幸いです…!!

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