ひねくれ提督の鎮守府建て直し計画   作:鹿倉 零

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キノコ提督

「ぁん…?」

重さを感じ、瞳を開けると、

何故だか眼前には白いお腹があった。

「…?」

なぞるように、視線を上にやる。

風の名を冠する、兎耳のようなリボンをつけた

金髪の少女が、何故か自分の上に跨がっていた。

「起きるのおっそーい!」

ニヒッと笑みを浮かべる島風。

俺は頭を抱えた。

 

「そうだった…!!今日はこいつの…!!」

暁ら四人組はどうとでもできる。

まだまだ餓鬼だ。何とかなるだろう。

朝潮や時雨は割と大人だ。

最低限の良識くらいは弁えているだろう。

おおよそ、一番厄介なのは…

「今日は私が看病するもーん!

おっおー!おっおっおっおー!!」

…どう考えてもコイツなんだよなぁ…ッ!!

てか看病するなら俺の上でピョンピョンするな

呆れるように溜め息をつき、

何気なくベッドに手をつくと、

ふにっとした柔らかい感触が手を包む。

「なっ」

「やっ」

「えっ」

"三人"の声が重なり、

俺がゆっくり、恐る恐る目をやると、

赤い顔をした長波が気まずそうに頬を掻いていた

「お、おはよー…提督…」

だから俺は、笑顔で島風を抱き上げ、

そっと俺の上から退かすと、

ゆっくりとベッドから降り、膝をついてー

 

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「司令官!!看病に来たわっ!」

大きな音を立てドアを開ける雷。

「………。」

「げっ…」

「あっ…。」

こちらを振り向きもせず土下座をする提督。

まずったという顔でこちらを見る長波と島風。

あまりの光景に固まっていると、

背後から電が不思議そうな顔で室内を覗き込み

困惑しきったような声を漏らす。

「あ…あの…?」

彼女の、そんな、心底不思議そうな声を皮切りに

とても大きな男の声が彼の部屋に響いた。

「すいませんでしたッ!!!!」

 

「いやだからアタシは別に…」

「悪かったわざとじゃないんだ違う」

「聞け?!アタシの話を聞け?!?!」

「すまんかった本当にすまんかった」

そういいながら震える手で紙を取り出す提督

「違うんだ許してくれいやいっそ許さなくていいかすまない許されると言う行為自体烏滸がましかったな存在しててごめんなさいすぐに俺も」

「いや何とりだし…辞表っ?!?!」

長波が紙に書かれた文字を読み上げた瞬間、

全員の顔が青ざめる。

「ていとくっ?!」

「司令官!?」

島風と雷が目を白黒させ、

「何してるのですか?!」

「と、取り押さえるんだ!!!」

電と響が大声をあげる。

「…ふにゃー…皆どうしたのよ?

レディはそんなに慌ててはいけないのよ?」

まだ眠い目を擦りながら遅れて入ってきた暁。

長波、島風、雷、電、響の

五人に押さえ付けられた提督は暴れた。

「後生だお前ら良いから離せッ!!

こんな糞提督存在しない方が良かったんだ!」

「だからアタシは気にしてないって!!」

「それは流石にあんまりだよ?!」

声をかける島風と長波だが、提督には届かない

「何があったかは分からないけどダメよ?!」

「力が強いのです!?はにゃー?!?!」

ブンブンと振り回され始める雷と電。

響が耐えかね、暁に声をかける。

「くっ…暁!何をぼうっと見ているんだ!

司令官が辞めても良いって言うのかい?!」

「ふぇっ?!」

「その辞表を奪い取るんだ!!

…クッ…何て力を…!

艤装を展開してないとはいえ艦娘を…!」

「辞表?!?!?!」

それを聞き、慌てて取り上げる暁。

提督の身体から力が抜けたのを確認し、

島風たちはそっと手を離した。

「こんな糞提督なんて…」

両手両膝をつき、提督は下を向きながら呟く。

「だから気にしてないって…

勝手に潜り込んだのはアタシなんだし…

別にその…むしろ嬉しいというか何というk」

「は?」

「島風顔!!顔が怖いって!!!」

四人が首を傾げていると、

島風に詰め寄られた長波が大声で訊ねる。

「って!てか!!そう!

響達はどうしたんだい?何で提督の部屋に?」

「看病に来たのよっ!」

「今日は島風達の番だよっ?!」

「おや?手伝ってはダメだ、

というルールを聞いた覚えはないね。」

「なのです!!!」

「えぇー…そんなのズルじゃんか…」

「暁もこれはあんまりよくないと思うわ…」

暁がぼやき、響は空気を入れ換えるように

パン、手を叩いて言う。

「何はともあれ、そこでキノコを生やしている

提督を何とかしようか…」

視線の先では、部屋の隅で膝を抱え

しくしくと座る男の姿があった。

 

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「な、なんて負のオーラなのです…」

思わず呟く電。

辺りにはどんよりとした空気が漂い、

床にキノコが生えるんじゃないかと思うほど

ジメジメとした空気を出している。

「そうだよな…俺の存在が負だよな…」

「そんなこと一言も言ってないのです?!」

電の鋭い突っ込みも届かず、

暗い瞳でハハハと乾いた笑いを出す提督。

「いや、本当…どうしたらいいんだ」

「お腹でも空いちゃったのかしら?」

「かけっこすれば治るかな?」

「別に気にしてねーのに…」

ぼやく四人を背に、暁が提督の前にしゃがみ込む

「司令官…?大丈夫?」

「暁か、どうしたこんな糞司令官に話しかけて」

スッと暁の手が提督の頭に伸びる。

「司令官は私の自慢の司令官よ!レディね!」

「レディではないと思うわ!」

「ははは…暁は優しいなぁ…」

「ふにゃぁ…」

撫でられて幸せそうな声を出す暁。

「司令官、私も。」

響がずいと頭を差し出す。

「提督ー!私もお願いしまーすっ!!」

「司令官!雷も撫でて欲しいわ!」

「い、電も…なのです!」

「ちょっ皆?!」

わいわいわらわらと集まってくる少女たち。

部屋の隅でその光景を見ていた小さな妖精が、

クスクスと小さく笑った。

 

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その後、なんとか回復した提督は、

執務室で書類を整理する。

「提督、こっちは終わったぜ。」

「…おう。…ありがとう」

「………。」

「………?」

「…ちゃんとこっちを見ろよっ!!!!」

両頬を挟み、ぐいっとこちらを向かせる長波

顔を固定されているにも関わらず、

意地でも視線を反らそうとする提督と、

ズイッと顔を近づけていく長波。

「…ぐっ…」

「あっこら!目ぇ瞑りやがって!」

「長波。顔が近いと思うな。」

響が一瞥をすることもなく、

クレヨンで絵を描きながら言う。

「頭の側面に目でも付いてるの?!」

「だ、だってさぁ…っ!」

思わず突っ込む島風と赤い顔でたじろぐ長波

「だって…傷付くだろ…

好きな人にそんな態度とられ…。…ッ?!」

そこまで言って、

長波は手をわたわたと動かした。

「違う!!違うから!!今の無し!!!」

「…無しだよな…違うよな…」

「だぁぁッ!!!なんなんだよっ!このっ…」

ヘッと自虐的に笑う提督を見て、

頭をかきむしった後に、

赤い顔で、目を反らしながら、

今にも消えそうな小さい声で、ボソリと呟いた

「まぁ…好き…だよ。提督…。」

「あら?どうしたの?何か言った?」

絵に夢中だったのだろう。

雷が、顔をあげて訊ねる。

「好きだよ提督しか聞こえなかったのです!」

「電ァァ!!!」

「はにゃー?!?!」

長波に肩をつかみ揺らされ、

ぶんぶんと上下に振られる電。

いつにもまして賑やかな執務室。

提督もつられて静かに笑った。

 

「…ありがとうな。お世辞でも嬉しいよ」

「何でそうなるんだよ!!!」


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